サブフレームがフロート構造になっているため、左右だけでなく前後にも落ちにくく、ダンシングができる3本ローラーということで話題をさらったインサイド・ライドの「E-motion」ですが、このパテントをエリートが買ったらしいという噂は少し前に聞いていました。
Elite E-motion エリートのブースにそれが展示されていると俄然興味をそそられます。が、名称もまんま「E-motion」と変わっていません。要するに、権利関係をそのまま買い取ったということなのでしょう。ここに展示されていたのは、現物が間に合わなかったのか配色が変っただけで構造そのものもオリジナルのままですが、商品説明のパネルにはエリートお得意の「パラボリックローラー」と称する両端が糸巻き状に高くなっているローラーが採用され、フレームの意匠も配色も全く異なったものでした。
E-motion 商品説明パネル パネルだけのカットを撮り忘れていたので上の写真から切り出しました。 見にくいかも知れませんが、エリート独自のパラボリックローラーが採用され、 フレームの形状も配色も展示品とは全く異なっています。 ここから推測しますと、エリートがこれから発売するE-motionはインサイド・ライドからの単純なOEMではなく、エリート自身が全面的なプロデュースを行うということなのでしょう。とはいえ、発売時期も価格も未定ということで、完全に肩すかしを食った感じです。
インサイド・ライドのブランドで国内に入ってきたときは定価15万円ほど(税込)とかなり高価で、私の物欲は強制終了となりました。が、エリートブランドならば世界的なシェアが大きいでしょうし、国内はカワシマサイクル・サプライの扱いになるでしょうから、それなりに広い販路が見込まれます。以前に比べればより大きなスケールメリットが期待できる分だけ価格を抑えられるかも知れません。要注目ですね。
MOTOREX BIKE GREASE 2000 当blogの初期にグリスガンをご紹介ました が、「グリスガン 自転車」でググると1番目に「グリスガン」でも4番目にヒットする(本稿執筆時)せいか、当blogでは屈指のアクセス数になっており、今月だけ(12/29日まで)でもこれらのキーワード検索で34回のアクセスがありました。
昨年のサイクルモードでもシマノのサービスカーに置かれていたそれをご紹介しました が、ついにあのグリスガンを正式に採用した自転車用グリスが現われました。ノズルの仕様がリオグランデのアレと同じロングタイプで私やシマノのメカニックの方が用いている短いものとは違いますが、それ以外の造りは全く同じです。配色もなかなかクールですね。
自転車マナーアップ!オリジナルTシャツキャンペーン 近年の自転車ブームでルールやマナーに反した乗り方をしている人が急増しているようですが、それに釘を刺すイベントも催されたいました。自転車は軽車両ですから、原則として車道を通行しなければならず、歩道を走って良いのは「自転車通行可」の標識があるところのみであるとか、左側通行という極めて基本的なルールさえ知らない莫迦者が山のようにいます。そうした人たちを何とかしておかなければ自転車文化そのものの発展にも良くないと考えたのでしょう。
人垣が凄く、カメラを頭上に差し上げてノーファインダーで撮ったため、 構図はかなり酷くなってしまいましたが、TBSのプロデューサーであり 「自転車ツーキニスト」という言葉の生みの親でもある疋田智氏 (中央のスキンヘッドの人)を中心にマナー向上を喚起する トークショーも行われていました。 特に疋田氏は車道を右側通行している大莫迦者を見かけると「逆走すんな! ボケッ!!」といった感じで注意しているそうで、あの風貌でいきなり言われたら普通の人にはかなり効果があるでしょう。
今回のサイクルモードは全般的に自転車ブームを受けてカジュアル系の自転車やアパレルなどが増え、増床された分もそちらを中心に拡大したようです。マナー向上キャンペーンのようなイベントも、やはり自転車ブームが招いた「量の増加による質の低下」を抑えようという考え方なのでしょう。こうした流れ自体は決して悪いことではなく、裾野が広がることで全体的な底上げにも繋がるでしょうから、むしろ歓迎すべきことかも知れません。このイベントの主催者が目指している方向性は正しいと感じました。
「その1」でも触れましたようにジャイアントやキヤノンデール、コルナゴといったビッグネームが欠場するなど残念な部分もありました。今後もカジュアル系が勢力を増すのはともかく、個人的にはコンペティティヴなバイクが減少していくようなことにならないよう祈るばかりです。現状としてはあまり浮かれ過ぎたところがなく、何より
コンパニオン目当ての忌々しいカメラ小僧がいない という点でも非常に好感が持てるイベントなだけに、規模の拡大は必要性を感じませんが、東京サイクルショーのように消滅しないよう頑張ってもらいたいところです。
飽きっぽい日本人のことですから、この自転車ブームもいずれは一段落してしまうでしょう。が、ブームが過ぎてもサイクリストとして残る人はそれなりにいるでしょうから、ブーム前より多くの人口を抱え続けることになると思いますし、以前のような敷居の高さはかなり払拭されています。猫も杓子もといった状態が収束してからが文化としてより本格的な成熟期に入ると考えるべきでしょう。サイクルモードは今後も市況や流行など時代を映す鏡となると思いますが、個人的にはそういう存在で良いと考えています。
(おしまい)
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スペシャライズド、スコット、GT、マングースといったそうそうたるブランドのOEMを手掛け、ジャイアントに次ぐ台湾第二のメーカーとして充分な実力を持っているメリダですが、日本国内の展開はあまりパッとしませんでした。それは常々ビジネスパートナーとして選んだブリヂストンサイクルのアンカーブランドとマーケットの傾向や価格帯が被っているからではないかと言われ続けていました。
今年の8月にブリヂストンは
メリダとの販売契約を解消するとプレスリリースしました 。リンク先にあるブリヂストン側の理解も全くその通りで、契約解消の理由を“当社のトップブランド「アンカー」の成長と、メリダ社の高級化路線のバッティングによるもの”としています。
これでメリダが何の断りもなくいきなりミヤタと組んでいたら何だかえげつない感じになっていたところですが、ブリジストンのプレスリリースにも“新代理店として「宮田工業株式会社」を起用したいとの申し入れがあり、当社もこれに同意した”と書かれているように両者は決して喧嘩別れしたわけではなく、至って紳士的だったようです。
メリダのほうがブリヂストンより国際的なシェアや競争力を持っているのは間違いありません。こうした立場を考えれば、ブリヂストンとのビジネスが上手くいかないなら日本市場の戦略を見直すに当たってメリダ側から一方的にブリヂストンとの契約を打ち切るといったパターンもあったと思います。
が、彼らは新たなパートナーと組みたい旨を申し入れるなどブリヂストンに対してキチンと筋を通しました。こうした真摯な態度は非常に好感が持てますね。中国や韓国のように反日教育を施したり反日感情を煽るような情報操作をしている国と異なり、台湾は親日的と言われますが、そうした国民性によるのでしょうか? それとも、単にメリダの社風がそうなのでしょうか? ま、その辺はよく解りませんが、この一件で私はメリダを大いに見直しました。
ミヤタは古くからオランダのコガと提携しており、
コガ・ミヤタ というブランドは私が中学生のとき初めてロードレーサーを買うとき、ボロボロになるまで見たミヤタのカタログ(ロードレーサーやランドナーなどスポーツサイクルの専用カタログ)の中でも最高級モデルとして掲載されており、ただただ憧れるしかなかった雲の上のような存在でした。いまでもコガ・ミヤタは
FullPro2Light を筆頭に中~高級モデルが中心ですから、アンカーほどメリダのラインナップとぶつかることもないでしょう。
メリダもジャイアントに倣って早くからヨーロッパに拠点を置きました。ドイツのシュツットガルトにメリダ・ヨーロッパを設立し、デザイン・設計・開発部門を完全にヨーロッパへ移管して既に10年以上が経過しています。台湾資本ながらヨーロピアンブランドと変らないブレインが設計しているのはジャイアントと同じです。今度こそはメリダも日本で確固たる足掛かりが得られるよう期待したいところです。
CHERUBIM SPEEDMASTR 細身のクロモリチューブを生かした流麗なフォルムでセンスの良いフレームワークを見せてくれるケルビム(今野製作所)ですが、今年はハンドルやステム回りもオリジナルパーツとした見事な仕事ぶりを見せつけていました。写真のスピードスターはアームレストが存在しないゆえ普通にDHポジションをとれるのか微妙ではありますが、この造形はもはや現代彫刻というべき領域に踏み込んでいるような気がします。
ハンドルとフレームとの接合部はご覧の通りで、職人技炸裂といった感じです。こういう造形は擦り合わせで仕上げられるハンドメイドならではでしょう。逆に、大半を機械で作ってこのレベルのクリアランスを管理しようと思うと、かなりの工作精度を求められるでしょうから、生産台数によっては却って高くつくかも知れません。
ケルビムは『
ロードバイクインプレッション 』などのムックでも度々取り上げられますが、こうしたメディアはどちらかというとオーソドックスなモデルに集中しがちです。ケルビムのフレームはそちらも非常に素晴らしい内容ですが、他のフレームビルダーと決定的に違う個性を発揮するのは今回ご紹介したような分野かも知れません。
マスプロメーカーと違って様々な要望に柔軟に対応できるこうしたフレームビルダーのほうがトレックの色だけスペシャルなそれよりずっと高いレベルのオリジナリティを表現できるでしょう。いつかは町田にあるショップへ行って、今野さんとジックリ検討しながら私の自転車哲学を注いだ入魂の一台を作りたいと考えています。
(つづく)
個人的な思い出や思い入ればかり語ってレポートになっていないじゃないかという不満の声も聞こえてきそうですけど、ま、ここは完全非営利の個人blogですから、開き直って好き勝手に書かせて頂こうと思います。が、こうした傾向になってしまうのも初回に触れましたとおり今年は全般的に薄味で、あまり興味深いトピックがなかったからです。
思えば、近年は構造や規格の変化が目覚ましく、見ていても飽きることがありませんでした。ヘッドパーツに関しては独自規格が乱立して行き過ぎの感も否めませんが、長いことインテグラルヘッド化を見送ってきた保守的なトレックやコルナゴも宗旨替えしたのですから、時代の流れを感じたものです。
カンパニョーロも頑なに続けていたスクエアテーパー軸に見切りをつけてスルーアクスルクランクに寝返りましたし、それと前後してピナレロは独自規格の大口径55mmのBBを諦めました。コンパクトクランクも当たり前のラインナップになりました。上位モデルで流行したシートピラーやスルーアクスルクランクのベアリングカップをフレームに融合させるインテグラル化も一段落し、ここ数年の間に続いていたロードバイクの進化も一巡してしまったという感じでしょうか。
これまでフレームマテリアルとしてアルミやマグネシウムなど金属に拘ってきたキヤノンデールやピナレロなども上位モデルでは完全にフルカーボンへ軸足を移しましたし、同様にMTBもクロスカントリーやマラソン系のそれはカーボン化が行き渡った感じです。
逆の視点から捉えるなら、ここ数年でよくこれだけの変化が続いたものだと思います。私が知る約四半世紀を振り返っても、ビンディングペダルの登場やフレームマテリアルの脱スチール化、シフトレバーのインデックス化、リヤの段数増加、そしてデュアルコントロールレバーの登場など、進化はそれなりにありましたが、相応の時間を要してきました。
MTBは歴史が浅い分だけ著しい進化を遂げた時期もありましたが、ロードバイクは以前からかなりやり尽くされてきたと思われていましたから、状況は大きく違います。アヘッドステムのようにMTBから始まったトレンドも有効と解ればロードバイクにも応用されてきましたが、そうした大きな変化は時々起こっていたという感じで、最近ほど短期間に新たなトレンドが幾つも生まれ、変化が連続したのはあまり記憶にありません。それだけにしばらくは落ち着いてしまうのかも知れませんね。
個人的にはサイクルコンピュータのメーカーに一踏ん張りしてもらって、10万円以下くらいで導入できるリーズナブルなパワーメーターをリリースして欲しいと思いますが、どうでしょう?
キャットアイなどはカンパ互換のスクエアテーパー軸に磁歪センサを仕込んだ
アレ の失敗で(といっても、まだしぶとくカタログには残っていますが)、サイクルモードに来られているスタッフの方には毎回リクエストしているのですが、完全に及び腰になっている感じです。そもそも、カンパのスクエア軸を使っている絶対的なユーザー数が多くないのですから、最初のチョイスが間違っていたと思います。せめてISISやオクタリンクなどにも対応させておくべきでした。
もし、ここで一度仕切り直すのであれば、2007年にパテントが失効した老舗SRMと同じ方式(クランクのスパイダーアームに歪みゲージを仕込む方式)を採用し、とりあえずシマノ互換のクランクで(例えばスギノあたりと提携して)チャレンジしたら幾らかマシな結果が得られそうな気がするんですけどねぇ。ま、私のような素人が適当なことをほざいても、関係者にしてみれば「そんなに簡単なハナシじゃないよ」と一笑に付されてしまうのかも知れませんが。
Fisher Cronus Ultimate トレックのブースを見ても何だか惹かれるものはなく、いまさらゲイリーフィッシャーブランドのロードバイクが出てきても数年前にインテンスのそれを見ていますから全く驚きませんでしたね。(あくまでも個人的な感想です。)
会場に足を運ぶ前は現在最強のステージレーサーであるアルベルト・コンタドール選手がツール・ド・フランスで使用した実車でも見られるかと期待していました。が、色々ゴタつきながらアスタナに残留することが決まったものの、そのアスタナは器材供給元をトレックからスペシャライズドへ変更するようで、私の期待が裏切られたのもそうした兼ね合いゆえかも知れません。
トレックブースの前面に大きくスペースが割かれていたのは「世界にたった1台のあなただけのバイクを」と謳っている「
Project One 」というカスタムペイントを主軸としたセミオーダーバイクのサービスでした。
リンク先のサイトにある「プロジェクトワン バイクを作成」というところをクリックすればそのままメニューから選択して最終的にオーダーまで対応できるように整備されるようです。まずは車種を選び、次に16種類くらいあるカラーリングの基本パターンを選びます。その半分くらいはさらに細かい配色指定に対応していますから、かなり広い範囲で好みの色が選べるようになっているわけですね。
コンポーネンツもBTOの要領で選べますし、アウターワイヤーやバーテープなどはやはり好みの色を選択することが可能で、一部のホイールはデカールの配色も変えられるようです。ですから、全ての組み合わせが何通りになるのか想像も付かないくらい膨大な数になるのは間違いありません。「世界にたった1台のあなただけのバイクを」というのもこれだけ選択肢が多岐にわたれば大袈裟な宣伝文句とはいえないでしょう。
が、所詮は見た目重視のカスタムですから、スケルトンオーダーに対応するといった硬派なものではありません。カスタムペイントといっても、元々カスタムペイント屋からスタートしたリドレーがやっているようにロゴなどの素材とイメージを伝えればデザイナーが何パターンかのデザイン案を作成してくれたり、自分でデザインしたペイントにも対応してくれたりといったサービスに比べれば大したことはありません。
こうしてみますと、彼らも「何か新しいトピックを提供しなければ」と考えている様子は伝わって来るものの、目先の変化を付けただけといった印象が拭えません。ま、それでもトレックは何かしようという意思が感じられただけマシですが、全般的にこんな調子ですから、今年のサイクルモードであまり高揚感が得られなかったのは私だけではないと思います。
(
つづく )
高校時代に「スキー莫迦」というほどスキーに入れ込んでいる級友がいました。彼は18歳になるや普通免許を取得し、高校生の分際で(しかも受験生という立場で)ハイラックスだかパジェロだか車種は失念しましたがSUVを購入し、週末になるとスキー場に入り浸るという凄い生活をしていました。私たちが18歳の冬といえば、ホイチョイ・プロダクションズの映画『私をスキーに連れてって』が公開され、空前のスキーブームがやってきたまさにあの年です。
ふと、彼の上履きを見ると、マジックペンで色々イタズラ描きがしてあったのですが、その中でもひときわ目を惹いたのがルックのロゴでした。当時の私にとってルックといえばビンディングペダルのメーカーというのが一番最初に思い浮かぶイメージでしたが、彼にとってはスキーのビンディングメーカーということで上履きにそのロゴを手描きしていたのでしょう。
ご存じのように、ルックはスキー界で常識となっていたビンディングを自転車のペダルに応用した元祖ですが、そこから転じてフレームも手掛けるようになりました。ルックが自転車界にビンディングを持ち込む以前は、トウクリップとストラップでペダルに足をシューズごと固定するという非常にプリミティブな方法がとられていました。当初はビンディングペダルといわず、「ルックペダル」と呼ばれていましたが、それはトライアスロンやTTで用いられるDHバーが当初「スコットバー」と呼ばれていたのと同じです。
ルックペダルが出てきた当初、ベテランのサイクリストにはどちらかというと色眼鏡で見られていたような感じでした。それはまだシューズ自体の完成度が低く、引き足を使うと甲の生地が伸びがちで浮き気味になってしまい、それを嫌う人はシューズの上からストラップを巻くことで対処したといったこともあったでしょう。が、そもそも昔のサイクリストは保守的な人が非常に多かったんですね。
余談になりますが、シマノが600シリーズ(現在のアルテグラの先祖)で初めてインデックスシステム(シフトレバーにクリックストップを設け、中段のギヤを扱いやすくしたもの)を投入したときも「子供のオモチャ」と酷評する人が結構いましたし、シマノもそうした声を予期していたのか、そのインデックスをキャンセルできる機構も備えていました。
また、クリンチャータイヤ全盛となったいまでは信じられないことかも知れませんが、当時は「チューブラー使いにあらずんば、ロード乗りにあらず」という時代でしたから、クリンチャーなんて使っていたら半人前の初心者と見なされました。ま、昔はこの世界もバリバリの体育会系で、他のスポーツと同じく様式だけでなく、器材に関しても頑固な人が多かったということですね。でも、あのベルナール・イノーが真っ先にルックペダルを使い始めたのは日本のサイクリストにも少なからぬ影響を与えたと思います。
イノーは現役の選手時代から自分の名を冠したフレームを使用し、1985年に5度目のツール・ド・フランス総合優勝を果たしたときもそれを駆っていましたが、程なく彼はルックと密接な関係になっていきました。現在でも同社の技術アドバイザーとしてフレーム開発にも影響力を持っているといいます。
イノーは6年間を過ごしたルノーチームを離れ、1984年に健康食のチェーン店を展開するラ-ヴィ-クレールをメインスポンサーとした同名のチームを立ち上げました。彼が引退した翌年の1987年には東芝・ルック・ラ-ヴィ-クレールと名を変えました。一時代を築いたこのチームを通じてイノーとルックの関係は今日に続く深いものに育まれていったのでしょう。
このラ-ヴィ-クレールのジャージがまた実にハイセンスで、個人的にはこれを超えるデザインは現在に至ってもないと思っています(あくまでも個人的な趣味の問題ですが)。モチーフとなったのはオランダの抽象画家ピエト・モンドリアンの代表作である「Composition with Red,Yellow and Blue」でした。以前、
グリコのガムのCM (←リンク先はYouTubeですからいきなり音が出ます)で柴咲コウさんが同様にこれをモチーフとしたワンピースを着て踊っていましたが、ラ-ヴィ-クレールの黄金時代を知っている私としてはこの配色を見るとついつい反応してしまいます。
ですから、今年のサイクルモードに展示された「ルック586モンドリアン」のカラーリングには感慨深いものがあります。
LOOK 586 MONDRIAN プレミアムコレクション・スペシャルペイントモデルと書かれていますが、 希望小売価格522,900円(税込)と表示されていましたので、市販されるようです。 ペイント以外では従来の586と大きな違いはなさそうですが、 非常に完成度の高いフレームですから、変えるところがないのでしょう。 ベースはカーボン柄ですし、昔のルックのカーボンフレームとは違ってスコットあたりがやり始めた肉厚は薄く径は太いファットチューブにルックもかなり傾倒してきました。が、この鮮鋭なトリコロールはその名の通りモンドリアンの世界そのもので、あのラ-ヴィ-クレールを彷彿とさせ、私にとっては非常に懐かしく感じます。
さらに余談になりますが、このフレームの前で私の母と同世代と思しき初老の女性が熱く語り合っていました。走り仲間なのでしょうが、一昔前ではちょっと考えにくい光景でしたね。それだけスポーツサイクルのユーザー層が厚くなり、裾野が広がっているのだと思います。
彼女たちの会話のレベルからして近年のブームでロードバイクの魅力に取り憑かれたようで、齢は重ねていてもこのフレームを見て往年の名チーム、ラ-ヴィ-クレールに結び付くことはないのでしょう。ま、このカラーリングから四半世紀も前の光景を思い浮かべ、懐かしさに浸る私は、要するにすっかりオッサンになってしまったということですね。
(
つづく )
昨年のシマノはロード用の旗艦コンポーネンツであるデュラエースのフルモデルチェンジに加え、その変速系を電動化した7970シリーズを出品して大いに話題をさらいました。が、今年はロード用セカンドグレードのアルテグラがフルモデルチェンジされたというのが一番のトピックで、昨年の爆発的な動きに比べるとかなり地味だったといわざるを得ません。
フルモデルチェンジを受けて6700シリーズとなったアルテグラが7900シリーズのデュラエースと完全互換ではないとの旨は当blogでも早い段階にお伝えしましたので、それ絡みのアクセスが結構ありました。いまでも時々そうしたキーワード検索でアクセスしてこられる方がいますが、既に
シマノから正式なチャートが発表されています ので、そちらを参照されたほうが間違いないでしょう。
シマノは価格を改定するときもそうですが、釣り具部門に比べて自転車部門のパブリシティが雑すぎます。特にコンポーネンツに関しては価格と重量と互換性は誰もが気になるところです(私はシマノに軽さをあまり期待していませんから、重量よりも互換性のほうが気になるくらいです)から、製品の正式発表と同じタイミングで公表しておくべきです。
互換性が保たれているに越したことはありませんが、そのためにコストアップに繋がってしまったり、技術開発の足枷になってしまうのも問題です。そういう意味で適度の変化は許容しなければならないでしょう。が、それを許せないというユーザーが沢山いるのも現実で、「シマノ商法」だの何だのと文句を言われたりします。
もっとも、カンパニョーロなども互換性が保たれないことはよくあることです。例えば、同じ10sでもフロントディレイラーのウルトラシフトとクイックシフトではレバー比とシフターのワイヤー巻き量が異なりますので、完全互換ではありません。しかも、この規格はグレードや発売時期で五月雨式に変わっていますからシマノより解りにくいと思います。
こうした例からしても、互換性を保たない仕様変更はシマノだけがやっていることではなく、これを以てコンポの入れ替えを促そうとするようなセコイ商売と勘ぐるのはどうかと思います。そもそも、「シマノ商法」と騒いでいる人でどれだけの人がシマノ以外のメーカーの動きをキチンと捉えているのか疑問を感じます。
シマノが公表しているカタログスペックはかなり正確である(特に重量はマヴィックなどと違って非常に正直な値を出してきます)ということと、リコールの発表や製品交換の動きが良い点などで信頼しています。また、スモールパーツの供給体制やその価格も適切だと思います。が、価格改定や互換性などの公表がスムーズではないという点、特にロード系パーツなどは明らかにヨーロッパより情報が遅いところが気に入りません。
また、完組ホイールのマニュアルに記載されているスポークテンションの参考値も全然アテになりませんので、買ったらすぐに実測した値を記録しておいたほうが間違いないようです。ついでにいえば、ディープリムのようにデカールのセンスが見た目に大きく影響するようなところでもシマノはライバルに比べてイマイチなのがあまり好ましくないところでしょうか(ま、この辺は競技志向の強い方にはどうでも良いところでしょうけど)。
私の場合、主にコストパフォーマンスの高さからシマノを選ぶことが多いのですが、だからといってシマノ信者というわけでもなく、中学生の頃から四半世紀を超えて彼らとの付き合い方が自然に身についたということなのかも知れません。
ところで、今年もシマノはサポートカーを展示していました。車両は昨年展示されていたものと全く同じで、中身もそれほど大きくは変わっていません。が、昨年は置かれていなかった振れ取り台が今年はこれ見よがしに置いてありました。これがまた猛烈に贅沢なもので、ため息しか出て来ません。
私は定番の
パークツールTS-2 を愛用していますが、その上級モデルとしてラインナップされていたTS-3(定価は確か13万円強)です。しかも、ダイヤルゲージがミツトヨのデジタルゲージにモディファイされています。調べてみましたところ、ABSデジマチックインジケータ 543-551 ID-F125というモデル(標準価格45,000円)だと思われます。これを2つ備えていますから、TS-3との合計で定価なら20万円オーバーです。これ以上贅沢な振れ取り台はそうそうないでしょう。
TS-3の造りの良さはいつ見てもTS-2とは比べものになりません。安いネットショップなら10万円未満で買えましたから、私もいつか手に入れてやろうと思っていたのですが、数年前に生産中止になってしまいました。いまでもたまにネットオークションに出てきますから狙い澄ましていれば入手できなくはないでしょうけど、やはり新品で買えるうちに買っておけば良かったとかなり後悔しています。ま、手に入らなくなると欲しくなる気持ちも倍増するというのは人のサガというものなのでしょうけど。
メカニックの方が一服するときに使っていると思しきコーヒーメーカーとミルはイタリアのデロンギ製です。実は、ミルのほうは私も全く同じものを愛用しています。一般的な日本製の電動ミルはミキサーと同じように羽根が高速回転してコーヒー豆を叩き割っていくタイプが一般的ですが、そうした方式は摩擦熱による風味の劣化や粒度のバラツキが大きく、微粉も生じやすく、あまり褒められたものではありません。が、このミルは臼で挽く低回転コーン式で、手動式と遜色ない挽き上がりになります。
また、普通のミキサータイプの電動ミルは手に持って挽きムラが生じないように振りながら、細かさは刃を回している時間でコントロールしなければなりません。が、このミルは予め粒度の細かさをダイヤルでセットしておけば、豆を投入して電源連動のタイマーをセットするだけで勝手に挽いてくれるため、手間もかかりません。シマノのメカニックの方が豆の挽き上がりに拘ってこれを選んだのか、それとも豆を挽くために余計な手間を取られない点を買ったのか、その両方か、いずれにしても良いチョイスだと思います。
ということで、シマノの新製品については殆ど語りませんでしたが、それだけ個人的に興味を惹かれるものがなかったということですね。ま、シマノといえども毎年毎年大きな話題となるようなニューモデルを出し続けるのは無理なのでしょう。
(
つづく )
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