国土交通省航空局 フライトチェッカーの修理 私もすっかり忘れていたこのシリーズですが、このところネタを探すのが面倒なときは5大紙(殊に朝日新聞)の社説に文句を垂れるパターンが続いていましたので、今日は『官報』の「政府調達」から一つ取り上げることにしました。
入札公告 次のとおり一般競争入札に付します。 平成20年9月25日 支出負担行為担当官 国土交通省航空局長 前田隆平 ◎調達機関番号020 ◎所在地番号13 ○第0434 号 1 調達内容 (1) 品目分類番号77 (2) 購入等件名及び数量 BD700型機用APUの修理作業1台(電子入札対象案件) (以下略)
「BD700型機」というのはボンバルディア・エアロスペース社の双発ジェット機です。同社はランディングギアの不調で胴体着陸して日本でも一躍有名になりましたが、あの事故機はDHC-8-Q400という双発プロペラ機で、ボンバルディアのオリジナルではありません。DHC-8シリーズは1980年代の初め頃にデハビランド・カナダ社が開発したもので、1996年にボンバルディアに買収され、今日に至っています。
ちなみに、「BD」というのはボンバルディア、「DHC」というのはデハビランド・カナダを示しています。エアバス社の機体も頭に「A」が付されますし、ボーイング社も「B」が付き、ボーイング社に買収された旧マクダネル・ダグラス社の機体にも「MD」が付きます。ま、こうした呼称は航空業界の習慣なのでしょう。
余談が続いて恐縮ですが、ボンバルディアも事故で有名になりましたが、「MD」といば第4世代ジェット旅客機で全損事故率ダントツ1位(100万便あたり3.45回は2位のA310の2倍以上)の悪名を轟かせたMD-11が有名ですね。これも現在はボーイング社が取り扱って(尻ぬぐいして)います。例えば、JALが「J-bird」と称し、一機一機に鳥の名前で愛称まで与え、低燃費の次世代機として鳴り物入りで10機導入したMD-11も事故の多さゆえ早々に退役となりました。その機体はボーイング社で改装され、現在はUPS社で貨物機として運用されています。
話を戻しましょうか。この案件で修理の対象になっている「APU」というのは、「Auxiliary Power Unit」即ち、「補助動力装置」のことです。ジェット機やターボプロップ機(ガスタービンエンジンのプロペラ機)はメインエンジンの自力始動ができなかったり、エアコンや機内与圧のコンプレッサー、発電器、油圧ポンプなどを駆動する動力をメインエンジンから取り出す構造になっていなかったりしますので、補助動力装置(大抵は小型のガスタービンエンジン)がそれらを担うわけですね。
国土交通省航空局が保有するBD700 では、国土交通省はこうした航空機をどのような目的で運用しているのでしょうか?
空港へのアプローチラインには、VORTACなどの航空保安無線施設があります。この施設からは方位・距離情報などが電波で送られており、離着陸時に重要な指標として利用されています。こうした施設が正常に機能しているかどうかは地上からのモニターでも確認されていますが、モニターアンテナより遠くの空間における電波の状態を確認するのは地上設備だけでは限界があります。
そこで、国土交通省はフライトチェッカー(飛行点検機)と呼ばれる飛行機を飛ばして、実際に空中から電波を受信し、施設が正常に機能しているかどうかを確認するわけです。要するにこのBD700は飛行の安全確認のために運用されているということですね。
私たちが日常生活で利用している交通機関や、もっと広範な社会インフラも同様の保守点検作業が日々行われています。いわば縁の下の力持ちとなる方々の努力によって私たちの日常は支えられているということですね。
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タマちゃんブーム便乗事業 「あんなブームがあったことなど忘れていたよ」と仰る方も多いでしょう。いえ、かくいう私も忘れかけていましたし。何故いまさらこんなネタを持ち出したのかといいますと、詳しくは書けませんが、国土交通省の外郭団体の関係者からこれにかかる話を聞いたからです。
話のとっかかりは毎週日曜日、朝7:30からTBSでオンエアされている『
がっちりマンデー!! 』という番組でした。昨年の10月7日の放送内容は「
PR戦略 」と題され、PR会社という業種が取り上げられていたんですね。私もたまたまこの回の放送は見ていました。
例えば、テレビのCM枠とか、新聞の広告欄を埋める仕事をするのは広告代理店ですが、新製品の発売などでプレスリリースを流したり、記者発表会を仕切ったり、といった感じでニュースとしてメディアに取り上げてもらうようなPR活動を支援するのがPR会社なんだそうです。
番組ではPR会社の老舗的存在の
プラップジャパン を大々的に取材していましたが、「
PR成功例CASE4 タマちゃん騒動 」で、2002年に多摩川に現れたアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」にも彼らが関わっていたことを紹介していました。
タマちゃんを媒介、あるいはきっかけとすることによって川に足を運んでいただく機会が増えたり、「国土交通省は川でこんな事をやっているんだ」という事を知っていただくきっかけ作りが出来たと思っています。全体的に国土交通省のイメージアップに繋がったのではないでしょうか。
とプラップジャパンの担当者が語り、クライアントは国土交通省の
京浜河川事務所 であったことが明かされていました。
ネットを眺めていると、この番組を見て「タマちゃんブームを仕掛けたのはPR会社と国土交通省だった」「びっくりした」みたいな感じでblogや掲示板などに書いている人がたくさんいました。確かに、讃岐うどんやキシリトールなどを認知させたのもPR会社の仕込みだった的な番組の流れでしたから、正直なところ私もそんなイメージで受け取っていました。
が、プラップジャパンの代表取締役が川崎市自治推進委員会の資料として製作したと思われる『
あなたは「PR」を知っていますか? PRの手法とその発想法 』(←リンク先はPDFです)というものを見つけ、よく読んでみると何となく真相が見えてきました。
タマちゃんのくだりは22頁以降の「ケース2 アゴヒゲアザラシ「タマちゃん」PRプロジェクト 国土交通省京浜河川事務所」にありますが、ブームのはじまりは以下のように書かれています。
「タマちゃん」ブームのはじまり ●8月7日多摩川を訪れた人が川でアザラシを発見 ビデオをフジテレビに投稿したところ同日夜にニュースで紹介。 翌日のワイドショーでも紹介された。 ↓ ●これを見た当社社員 「もしこのままアザラシがいるのならPRに使えるのでは?」 住民の方に川に親しんでいただく「親水事業」や事業内容のPRが主な業務。
プラップジャパンがタマちゃんの存在を知ったのは既にメディアが取り上げていたからで、彼らがメディアに仕掛けたわけではないことがプラップジャパンの製作した資料に明記されていました。ということは、彼らがタマちゃんをブームを作ったというより、単に便乗したというべきでしょう。
『がっちりマンデー!!』のサイトもよく読んでみますと、タマちゃんブームにPR会社が「絡んでいた」とは書かれていますが、「仕掛けた」とはどこにも書かれていませんでした。
プラップジャパンが京浜河川事務所のサイトにタマちゃんのコーナーを作って、最高時にはYahoo!の検索ランキングで2位になり、1日12万アクセスを記録したというのは大変なPR効果だったと思います。京浜河川事務所は多摩川に定点カメラを持っていますから、これを利用してweb上で「実況中継」されたというのもブームを盛り上げる効果はあったと思います。が、タマちゃんブームの仕掛け人が京浜河川事務所とプラップジャパンだったというのは事実誤認でしょう。
多摩川のタマちゃん で、国土交通省の外郭団体の関係者である某氏は京浜河川事務所の事情にもかなり明るい人物です。その人が先日、ポロッとこんなことを漏らしていました。
「あれって、実はメチャメチャ金かかってるんですよね。一千数百万くらい? そんなところですよ。」
2002年のケースはたまたま利用できる素材としてタマちゃんブームがあったからで、京浜河川事務所は従前から同様の広報活動を行っていたんですね。毎年ではなさそうですが、「多摩川広報催事運営業務」という件名で、プラップジャパンとこれまでにも何度か随意契約しているようなんです。タマちゃんの一件以外は世間一般に全く知られていない活動ですから、どこまで「広報」なのかは謎ですが。
さすがに6年前となると京浜河川事務所のサイトにある「
入札・契約情報 」では確認できませんでした。が、色々探してみますと、「平成18年度多摩川広報催事運営業務」の
随意契約結果書 (←リンク先はPDFです)を発見しました。消費税等を含む契約金額は1449万円ということで、某氏の言っていた金額と比べてもかなり近いですね。6年前の契約もこんな感じだったと思います。
改めて言うまでもありませんが、このお金は私たちが納めている税金です。さすがに2002年の広報催事運営業務も、その全てがタマちゃんに注がれていたなどということはないでしょう。が、それでもかなりの額が割かれていたように思います。
前述の『あなたは「PR」を知っていますか? PRの手法とその発想法』を見ますと、
●フジテレビ「とくダネ!」 キャスターの小倉智昭さん「国交省にしては粋なはからいだね」
などと京浜河川事務所のサイトを評するメディアのリアクションも紹介されていますが、その「粋なはからい」はそもそもフラップジャパンというPR会社があつらえたもので、そこにはそれなりの額の税金が投入されていたわけです。そうと知っていたなら、小倉さんのコメントもかなり違ったものになっていたのではないでしょうか?
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警察庁 指掌紋自動押なつ装置 入札公告 次のとおり一般競争入札に付します。 平成20年3月10日 支出負担行為担当官 警察庁長官官房会計課理事官藤本史 ◎調達機関番号009 ◎所在地番号13 〇第313 号 1 調達内容 (1) 品目分類番号25 (2) 購入等件名及び数量 指掌紋自動押なつ装置140台 (以下略)
旧来の指紋照合は被疑者の指紋を紙とインクで採取し、その原紙を警察庁の指紋センターへ郵送、そこで原紙をスキャニングして自動指紋識別システムで照合するといった段取りで、照合結果を得るまで3~4週間もかかっていたそうです。
これに替わるシステムとして、平成9年から全国の警察本部と警察署へ「指掌紋自動押なつ装置」の導入が始まっていたそうです。警察署は全国に1270ほどあるそうですから、全てを網羅するのはかなりのコストと手間がかかりそうです。
デジタル指紋照合システムともいうべきこれは、各警察署に配備された「指掌紋自動押なつ装置」で被疑者の指紋を光学的にスキャニングし、そのデジタルデータは警視庁および各道府県警本部を経由し、衛星回線で警察庁の指紋センターへ送られ、指紋照合にかかる時間を大幅に短縮するそうです。
過去の実績を見ますと、NEC製や日本ユニシス製などが納入されているようです。具体的な例としましては、2005年にNECが190台を約5億6000万円で落札していたり、2007年には一度不落(注)になって日本ユニシスのグループ会社であるユニアデックスが約4億円で148台を随意契約していますから、1台当たり270~300万円くらいといったところでしょうか。
(注):不落というのは入札金額が予定価格に達しなかったなどの理由で、入札不成立となったことをいいます。この場合、最低金額を入札した業者と交渉の上、随意契約となる場合が多いので、2007年の日本ユニシスもこのパターンではないかと思われます。ただ、近年は随意契約が癒着の温床になっていると見なされる風潮にあります。そのため、随意契約へは移行せず、調達数量や予定価格を見直した上で仕切り直しになるケースが増える傾向にあるようです。
日本ユニシスの指掌紋自動押なつ装置「ライブスキャナ」 また、警察庁の公示資料を見ますと、この改修ソフトやシステム構成用品を随意契約している実績がありました。例えば、ユニアデックスが2006年に69台分の改修ソフトを納入していますが、その契約価格は22,588,461円となっています。つまり、1台当たり327,369円という金額になるわけですね。
こうしたシステムに付随するものは「排他的権利の保護」という名目で競争入札が行われないのが普通ですから、どこまで妥当な価格なのかよく解りません。もっとも、こうしたオーダーメイドのシステムを民生品の感覚で高いか安いか判断するというのも正しくないのでしょうけど。
このシステムを日本全国へ展開すると単純計算で350~400億円くらいかかるでしょうか。国民一人頭で割れば数百円の負担ですから、このシステムを展開することで犯罪検挙率が上がってくれれば悪くない買い物ということになるでしょう。逆に、警察の仕事を楽にする効果しかなかったというのでは納得いかないところですが、果たして実態はどうなっているのでしょうか?
もっとも、犯罪検挙率という統計数字は「認知件数に対する検挙件数の割合」ですから、どこまで意味があるのかという問題もありますね。交通事故死者も事故から24時間以内に亡くなった人しかカウントされないとか、警察庁が公表している数字にも色々トリックめいたものがあります。ま、この辺をつつき始めたらキリがありませから、今日のところはこれくらいにしておきます。
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国税庁 法定調書の手引き 本シリーズ前回に続き、昨年の5月に試験収集したときのネタです。
入札公告 次のとおり一般競争入札に付します。 平成19年5月22日 支出負担行為担当官 国税庁 長官官房会計課長 百嶋計 ◎調達機関番号015 ◎所在地番号13 ○第1号(No.1) 1 調達内容 (1) 品目分類番号 76 (2) 購入等件名及び数量 平成19年分給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引 5,358,000部 (3) 調達件名の特質等 入札説明書による。 (4) 納入期限 平成19年9月28日(最終) (5) 納入場所 当庁の指定する場所。 (以下略)
お役所ではあれこれフォーマットが小うるさいわけですが、最近は説明や指導がかなり親切になってきましたね。国税庁も源泉徴収票などの法定調書について、作成と提出の手引書を発行して配布しているそうです。ネット上でもPDFで配布されていますが。
『
源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引 』
こうした手引書も以前は堅苦しかったかと思いますが、ページの余白にはイータ君(e-Tax:国税電子申告・納税システムの広報キャラクター)の挿絵を入れたりして愛嬌もでてきました。
イータ君と今年のキャンペーンに起用された池脇千鶴 イータ君の誕生日は平成16年10月1日で性別は男 特技はパソコンと空を飛べることだそうです。 何故空を飛ぶ必要があるのかは謎です。 一方、池脇千鶴の誕生日は昭和56年11月21日。 もう26歳になるんですねぇ。 でも、何といいますか、旧態依然のお役所らしいデリカシーのない感じも未だに目に付きますね。例えば、2頁目の
第1 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書) (中略) 1 提出する必要がある者 平成19年中に俸給、給料、賃金、歳費、賞与、その他これらの性質を有する給与(以下「給与等」といいます。)を支払った者です。
賃金などを支払うのは「事業者」とは限らず、「個人」の場合もありますから、表現としては難しいところもあるとは思います。が、「者」という表現はどうなんでしょう? 私の語感にはちょっと引っ掛かる気がします。『今昔物語集』の「者は極(いみじ)き臆病の者よ」ではありませんが、どうも国民が「見下されている」感が拭えません。
いえ、彼らに見下しているつもりなどないかも知れません。が、そうだとしても言葉遣いに配慮が足りない感じがします。一般的な民間企業であれば、この場合は間違いなく「者」ではなく「方」になりますね。「提出する必要がある者」ではなく、「提出していただく必要がある方」と表記するのが常識でしょう。
もう少し役所臭を残しつつ、見下している感を解消したいなら、「事業者または個人等」といった感じにすべきでしょうか。「提出する必要がある事業者または個人等」と表記すれば、表現としては多少くどくなるかも知れませんが、イメージ的にはかなりマトモになると思います。
ま、そうはいっても、平成18年度版では「提出する必要がある者」ではなく、「提出しなければならない者」と表記されていましたので、彼らなりに表現を考慮した痕跡は窺えます。根本的な何かが民間企業の感覚とはズレているような気もしますが。
それにしても535万8000部という非常に切りの悪い数字はどうやって弾いたんでしょうか? お役人さんがこうした物品購入の数量を決定するとき「適当」では通りません。何しろ、納税者から徴収した血税を使うのですから、「根拠」が必要です。
例年の配布状況から経験的に割り出しているのかも知れませんが、何らかの積算をしているのは間違いないと思います(机上計算のような気もしますが)。そうした部分も是非知りたいところですね。
昨年の5月下旬、『
官報 』の「政府調達」をチェックしているときに私はふと思いました。
その人はどんなものを買っているのか? どんなことにお金を使っているのか? 消費行動を調べてみると、その人となりも浮かび上がってくるのではないか? ならば・・・ 日本という国がどんなものを買っているのか、どんなことにお金を使っているのかを調べてみれば、日本という国を様々な角度で観察できるかも知れない 個人的にはナイスアイデアと思い、このタイトルでこれに特化したblogを立ち上げようと思ったほどでした。
そこで、数週間(2007年5月下旬~6月上旬にかけて)試験的にネタ集めをしてみたんですね。ところが、思ったほど面白い案件が頻繁に出てくる訳でもなく、面倒になったといいますか、飽きてしまったといいますか、要するに私のやる気が萎えてしまって、結局お蔵入りさせたという過去があります。
しかしながら、当blogも話のネタが無尽蔵にあるわけではありませんので、とりあえず引き出しは多くしておいて、手詰まりになったら過去に拾ったネタを出すとか、何か面白いネタを見つけたら単発的に出すとか、柔軟に展開したらええやんけ、と思い直しました。
ただ、現実問題として「オマエごときが興味を引かれた政府調達案件でどこまで掘り下げられるのか?」「オマエごときの知識でどこまで真に迫れるのか?」と問われれば、「あまり自信はありません」と答えるしかありませんので、ま、ここは軽い読み物といった感覚でお付き合い頂いた方が良いかもしれません。
さて、前回のエントリでも触れた部分と少し重なりますし、やや小難しい話になってしまいますが、基礎知識をざっと纏めてみましょうか。
日本政府が使うお金、即ち国の歳出に関しては内閣がその予算を作成し、国会の審議を受け、議決を経なければなりません。(日本国憲法第86条)
しかしながら、そうした予算の枠組みは極めて巨視的なもので、具体的にどのような物品を購入しているのか、どのような役務(サービス)を受けているのか、そうしたディテールは日常的な新聞やテレビなどの報道では殆んど解りません。
日本政府や関連機関が物品・役務の調達を行う場合、通常は入札ないし随意契約が行われます。こうした政府調達は公正を期すため、また、WTO(世界貿易機関)の枠組みに沿うため(日本政府の調達に参加する機会を海外の企業などにも与えるため)、相応の告知が行われています。ある一定の条件に達すると、独立行政法人国立印刷局(旧財務省印刷局から改組)が発行している『官報』の「政府調達」に掲載されるんですね。
その「ある一定の条件」というのはかなり込み入った話になるため割愛しますが、中央政府機関の調達案件としては物品・役務とも現在の政府調達協定(有効期限は2008年3月末まで)の基準額で2000万円以上が対象となります。逆にいえば、基準額が2000万円未満の案件については官報の政府調達には載らないわけですね。
その場合は、個別に公告されることになりますが、通常は各機関の建物にある掲示板や各機関のサイトを用いて公告されます。
掲示による入札公告の例 実は他にも色々例外があるのですが、話がさらにややこしくなりますし、私も詳しく知らない部分が沢山ありますので、触れるのはやめておきます。
ところで、政府機関や特殊法人、地方自治体などは「競争入札」という調達方法が主流です。近年は「随意契約」が癒着の温床とみなされる傾向がどんどん強まっていることもあって、より一層、入札によって取引相手を決定することが多くなっています。
この「入札」という言葉は皆さんもよく耳にすると思いますが、具体的にどのようなことが行われているかご存知でしょうか?
以前、TBSの『
噂の東京マガジン 』という番組である地方自治体の調達案件について掘り下げていました。レポーターが「これがその仕様書です」などと示していたのですが、別の案件でも仕様書を示すといったことが何度か繰り返されると、パネラーの一人が「仕様書好っきやなー」という発言をしていました。勿論、好き嫌いで仕様書が作られるわけではありません。こうした発言が出てくるということは、競争入札というシステムを全く理解していない証拠です。
私が業務で関わった入札案件で仕様書が存在しないものは一つたりともありませんでした。というより、仕様書またはそれに類する書面がない政府調達案件など日本には存在しないでしょう。何故なら、競争入札というのは基本的に「仕様書の内容を満たした上で最も安い金額を提示した者が落札する」というのが常識なのです。ごく稀に予定価格に最も近い金額で落札となるケースもあるようですが、その場合も「仕様書の内容を満たした上で」という条件が外されることはありません。
要するに、お役所あるいはそれに順ずる組織というのは、入札案件の基本条件を一定に保って公正を期すため、必ず「仕様書」というものを発行しているのです。私たちが普通に物を買う感覚とは全く別次元の手続きが行われているということですね。
お役所というからには文字通り「お役所仕事」で買い物をしているのだろうという想像はつくと思いますが、このようにお役所独特の買い求め方というのはあまり世間一般には知られていないと思います。
この企画ではそうした部分も含めて、どのような物を買っているのか、どのように買っているのか、といった世間一般にあまり知られていないであろう部分をクローズアップしていきたいと考えています。
ということで、かなりの分量になってしまいました。具体的な例は次回からご紹介します。
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