酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その8)

シグマDPシリーズはアクセサリといっても外付けストロボ、フィルター(46mmΦ)を取付けるためのアダプタ(専用フード付属)、クローズアップレンズ、ケース類や電源関係などで、それほど豊富とはいえません。が、ビューファインダーはなかなかマニア心をくすぐるアイテムだと思います。

フレーム枠が切り替わらない初期のレンジファインダーカメラは、交換レンズの焦点距離に応じてアクセサリーシューに専用のビューファインダーを装着するのが当たり前でした。もちろん、ライカMシリーズのようにフレーム枠が切り替えられても対応しない画角のレンズを使うときは専用のファインダーを用いるのが普通でした。なので、昔はこうしたビューファインダーが豊富に揃っていたんですね。

当然のことながら外付けファインダーはパララックス(視差)が非常に大きくなり、ファインダーから見える状態と写る画には相応の差が生じます。一眼レフが普及する以前はそれが当たり前でしたから、当時の人は我慢して経験と勘で何とか対応していたのでしょう。が、狙い通りの構図を得るのはそれなりのスキルを要します。なので、構図を等閑にできないときは素直に液晶モニタを用いたほうが無難でしょう。

私の場合、このビューファインダーを装着していても実際に利用する機会はそれほど多くありません。絞り込んでパンフォーカスにしておき、スナップショットで構図に凝らずに速写するといった使い方には向いていると思いますが、そのデータをSDカードへ書き込むスピードが遅いわけですから、そもそも連写に向かないカメラです。また、場合によっては絞り込むことで感度の低いイメージセンサの限界付近で使うことにもなります。そういう意味でもイマイチといった印象なんですね。

ただ、こうした使い方はバッテリーを長持ちさせるのにかなり有効です。ビューファインダーを用いて液晶モニタをOFFにしておけば、すぐに情報表示が見られないという支障はあるものの、相応に撮影枚数を増やせます。また、パンフォーカスにしておけばレンズの行ったり来たりもなくなりますから、さらに持ちが良くなります。

パララックスをあまり気にせず、銀塩時代のように撮影結果などその場で確認しないで撮るといった割り切りがあれば、予備バッテリーを持たずに出掛けてもそこそこ撮影枚数を伸ばすことができますから、より軽快感も増すでしょう。こうした使い方こそ、このビューファインダーには相応しいのかも知れません。

また、ビューファインダーは見た目の印象を変えますから、実際に使うかどうかはともかく、装着することで独特の雰囲気を醸し出すアクセサリとして効果的です。DPシリーズには何冊かムックも出ていまして、純正ではないケースやフードの類と並び、ビューファインダーも社外品を用い、「オリジナリティを演出する小道具」といったニュアンスで紹介されています。このアイテムは昔のレンジファインダーカメラによく用いられたこともあり、やはりクラシカルな装いが似合うと思います。

ツートーンスタイル
『シグマDP2&DP1マニュアル』に紹介されていたアレンジ例
ユングフラウレザーのハーフケースには一目惚れしましたが、
どうやら現在は受注中止のため入手困難なようです。
ペトリのフードやPax M2用ビューファインダーなど
いずれのアイテムも普通に入手できそうもないレアもので、
真似したくてもそう簡単にはいかないでしょう。


これは『シグマDP2&DP1マニュアル』に載っていたもので、かなりレアなアイテムを導入していますから、そのまま真似ることは非常に難しいでしょう。それ以前に、この例はDP1でファインダーも28mm用ですから、41mm相当のDP2には合いませんし。いずれにしても、私のセンスでここまで格好良く纏めるのは不可能だと思います。なので、見た目にはあまり拘らず、実用性重視のアレンジでいくことにしました。

自動開閉キャップ装着例
『シグマDP1マニアック・マニュアル』に紹介されていた改造例

こちらは『シグマDP1マニアック・マニュアル』に載っていた例で、リコーGX200用の自動開閉式レンズキャップ(LC-1)を流用するというアイデアです。

純正は被せ式のキャップで、外し忘れて電源を入れると「レンズキャップをはずし、電源を入れ直してください」とエラー表示されます。その状態からレンズキャップ外すだけではダメで、指示通り電源を入れ直さなければなりません。起動がトロいDPシリーズですから、レンズキャップの外し忘れくらいで一度電源を落とし、再起動させるというのは思いのほか鬱陶しいものです。なので、これはなかなかのナイスアイデアだと思い、真似してみることにしました。

ちなみに、上の写真はDP1ですから、レンズの繰り出し量が少ないうえ、焦点距離が28mm相当になります。そのままでは分割されたキャップの先端部分で少し蹴られてしまうそうで、裏にガイドレールを追加してキャップの開度を増すという芸の細かい改造が施されています。が、穴を開けたオリジナルキャップとの接合は粘着テープを巻いただけという大雑把な仕上げが私の感覚では満足できません。

また、GX200用は中心から直線で三分割されており、あまり色気を感じませんでした。その後に発売されたGXR用(LC-2)は少しひねりが入っており、そのほうが私には格好良く見えましたので、そちらをチョイスしてみました。

SIGMA_DP2(開)

サイズはドンピシャで、レンズの繰り出し量が大きいDP2にはガイドレールの追加など細かい改造も全く不要でした。純正のレンズキャップをコンパスカッターで切り抜き(刃の付いているほうとは逆回しにするとPカッターのように溝を切っていくことができます)、しかる後にエポキシ接着剤で自動開閉キャップを接着しました。芯出しを入念に行ったため、カッターで開けた穴も取付けた自動開閉キャップも肉眼では偏芯を確認できないレベルに追い込めました。

SIGMA_DP2(閉)

手前味噌で恐縮ですが、事情を知らない人に見せて改造したものだと言うと驚かれる程で、接合部は我ながらキレイに仕上げられたと思います。純正の被せ式のように一々着脱しなくて済みますし、外し忘れて再起動という手間も回避できます。厚さも9mm程度(カメラ本体+純正キャップの厚さに対して約15%)しか違いませんので、普段はこの状態にしています。

別のアレンジとしましては、フードを社外品にするというパターンも試みています。ムックで紹介されているようなクラシカルでマニアックな見た目重視ではなく、浅くてあまり役に立たない純正のフードより高い実用性を狙いました。

アチコチ探してみたところ、フィルター枠にネジ込む方式の花形フードというものを発見しました。ネジ込み式では丁度良い位置で固定できないのではないか?と思われるかも知れませんが、リング状のカウンターナットで締め加減を調整するという賢い対処方法で問題をクリアしています。ただ、最小でも49mmΦまでしかなく、DP2純正アダプタの46mmΦには合わないため、ステップアップリングを噛ましてあります。

SIGMA_DP2(花形フード付)

見た目はかなり間延びし、ソニーのα-NEXを「レンズデッカチ」と莫迦にできないような雰囲気になってしまいますが、フードの深さは純正の2倍以上あるお陰でそれなりに効果が増します。逆光に弱いDPシリーズにとってはかなり実用性の高いアイテムといえるでしょう。

なお、このフードは35mm判で焦点距離24mmまで対応するとのことですから、28mm相当のDP1でも蹴られることはないと思います。ただ、この状態にビューファインダーを付けてもフレーム下方の3~4割くらいを遮られてしまいますから、殆ど使い物になりません。こうしてみますと、純正のフードが中途半端な深さなのは、ビューファインダーとの兼ね合いによるのかも知れません。

この花形フード付は見た目も私の趣味ではありませんし、ネジ込み式のフードはバヨネット式のそれほど脱着が簡便ではありませんし、かといって付けっぱなしだと嵩張ります。アダプタごと脱着したほうが簡単なのでそうしていますが、フードを付けた状態のアダプタもやはり鞄の中に入れておくには少々嵩張ります。

ということで、これは見た目も携帯性もあまり良いアレンジではありませんが、フードの機能を重視するならこれがベストに近いかも知れません。気軽に持ち出そうというときにはまずやりませんが、鞄に余裕があるときなどはこの格好で使用することもあります。一眼レフをメインで使用する際のサブとして携行するとき、この格好にしておくことが多いでしょうか。

他にも社外品でいくつかDPシリーズ用のアイテムが売られていますし、昔からアクセサリーシューや三脚ネジなどを利用したアクセサリも色々ありますし、それらを使ったアレンジも紹介されています。が、このカメラにあまりゴチャゴチャした雰囲気は似合わないと思いますので(あくまでも個人的な趣味の問題ですが)、私はこの程度に抑えることにしました。

シグマの偉いところは、基本構成をシンプルにし、純正オプションもアッサリ目に設定していながら、こうしたアレンジの余地があるようなツボを押さえているところです。ストラップを通すループ部分も、普通のコンパクトデジカメや携帯電話にありがちな構造ですが、2点支持として首から提げたときカメラ本体が水平になるようにしてあります。

また、付属のストラップは途中に汎用性の高い幅を持つループが設けられていますから、そこから先を一般的なストラップに挿げ替えられるようになっているのも「解っている人」の判断によるのでしょう。多くのDPシリーズユーザーはやはり好みのストラップに挿げ替えていると思います。私も下の写真のように附属品とは違うストラップを装着しています。

SIGMA_DP2(ストラップ付)

DP2はコンパクトカメラらしい軽さなので、太いストラップは必要ありませんが、細すぎても貧弱に見えてしまいがちです。そこで、以前FinePix S9000に付けていた銀一とアルティザン&アーティストのコラボストラップをリユースすることにしました。銀箔押しのロゴは使い込むと剥がれ落ちてノーブランド品になるというのが売りのストラップですが、思ったより耐久性があるのか、私の使用頻度が少な過ぎるのか、まだ十二分に判読可能です。

このDPシリーズは、コンタックスTシリーズなどから始まったかつての高級コンパクトカメラとはもちろん毛色が大きく異なります。前述しましたように、かつての高級コンパクトは素材や構造にコストのかかる贅沢な仕様が色々仕込まれていましたが、DPシリーズは非常に淡泊な感じで、高級感もなく、むしろ安っぽいと感じるところも散見されます。

しかしながら、画質に拘った単焦点レンズをはじめとして多くの部分が潔く割り切りられ、限られたサイズの中にやりたいことを押し込めた凝縮感という点ではかつての高級コンパクトに通じる作り手の意思を感じさせるものです。複数の交換レンズを用意して「お客様の用途に合ったモノをお選び下さい」といいながらマーケットが偏るのを避ける無難なところで商売をしている大手メーカーのアプローチとは一線を画すものです。

2,652×1,768×3層=約1406万画素と謳うスペックはご愛敬で、3層あっても1画素は1画素ですから、実際には約469万画素という低解像度です。現状では感度の低いフォビオンセンサの限界がこの画素数なのかも知れません。が、プリントするにしてもA4程度までならこの解像度でもそれほど見劣りすることはないでしょう。私が持っているプリンタはA4までしか対応しませんし、大概のアマチュアユーザーも同様でしょう。むしろ、最近のコンパクトデジカメのほうが無駄に解像度を高くしていると見るべきかも知れません。

まだまだ未完成なカメラゆえ、DP1もDP2も1度マイナーチェンジが行われ、現行モデルはDP1sとDP2sになり、先行したDP1は2度目のマイナーチェンジも近いようで、DP1xの発売が予定されています。こうして改良が重ねられていくことは今後の熟成を期待させるものでもあります。もはや煮詰まってしまった感の否めない普通のコンパクトデジカメにはない伸び代を感じさせるところも、このカメラの魅力の一つといえるかも知れません。

(おしまい)
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80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その7)

脇色彩研究所のRWカラーバランスシステムには手軽にグレイサンプルが撮れるディフューザーが付属しています。それは76×76mmですから、汎用の角形フィルターホルダーにセットするのが正しい使い方です。が、光源に向けてワンショットするくらいなら左手に持ってレンズの前にあてがうだけでも殆ど支障がありません。

かつてカラープリントに熱中していた時分の私は、これをフィルターケースの中にしのばせておき、光源の色温度などが微妙なときや初めて使うフィルムでデータがないときなどに取り出してはグレイサンプルを撮っていました。

同キットのカラーチャートと撮ったサンプルとを照らし合わせれば、フィルターの補正値も解るという非常に便利なシステムでした。といっても、実際にはチャートの指示通りの補正をしても完璧なニュートラルグレイが得られるとは限らず、微妙な追い込みは必要です。が、私の技量では何もないところから始めるよりテストプリントの回数をかなり減らせましたし、それは手間とコストの削減にも繋がりましたから、大いに意義がありました。

もちろん、人間が観賞するものですから完璧なカラーバランスに整えるより記憶色に従ったほうが自然に感じることもありますし、あえて特定の色を強調して演出するのも写真表現という世界では珍しくない手法ですから、その辺は焼く人間の自由です。自家現像は苦労も沢山ありますが、そうした自由があるだけに楽しかったりするわけですね。

で、こうした便利なアイテムもカラープリントをやっている趣味人の絶対数が非常に少ないですから、当時でもそんじょそこらでは売ってませんでした。写真専門誌でその存在を知ってアチコチ探し回っても見つからず、仕方ないのでヨドバシカメラに注文して取り寄せてもらったのですが、何だかんだと3ヶ月は待たされたでしょうか。ちなみに、当時はネット通販どころか個人がインターネットに接続することも事実上不可能な時代でした。

色転びしやすいDP2を購入したことで十数年眠らせていたこのアイテムを復活させたわけですが、プラスチック製ですから経年劣化でカラーバランスが狂っている懸念もありました(昔の樹脂は紫外線を受けて劣化し、黄ばみやすいものもありましたし)。そこで様々な光源の下で新品のグレイカードとの比較テストをしてみましたが、そのような傾向は一切見られませんでした。引出しの中という暗所で眠っていたからか、そもそも劣化しにくい素材が吟味されていたからなのか、その辺りは解りませんが。

上述のように、銀塩のプリントではこうしたツールを使ってもテストを重ねることが必要で、それだけに手間もコストもかかりました。が、デジカメはRAW現像ソフトの簡単な操作でもかなりのレベルで補正ができてしまいますし、かかるコストもパソコンを動かす電気代のみでタダ同然ですから、私にとっては全く負担になりません。

現像しなければ結果がわからない銀塩写真と違ってモニタで調子を見ながら補正できるのですから、トライ&エラーといってもたかが知れています。RAW現像ソフトやフォトレタッチソフトでアレコレ弄るのは暗室ワークに比べればカネはもちろん、手間のかかりかたも時間のかかりかたも桁違いです。

思えば、マイコン制御の恒温バットが買えなかった学生時代の私は、バイメタルという非常に原始的な機構しか持たないヒーターで何とか薬液の温度を管理していました。不退色のダイクロイックフィルターを装備したカラー引伸機を手に入れたのも社会人になってからですが、その前はモノクロ引伸機のフィルターポケットにマゼンタとイエローのラッテンフィルター(コダックのゼラチンフィルターです)を抜き挿ししていました。

カラー引伸機はダイヤル一発でフィルターを調整できます。例えばマゼンタを60から75に増やしたいと思ったらダイヤルを60から75まで15目盛捻れば済みます。が、モノクロ引伸機では濃さの違うフィルターを重ねてポケットに挿入しますから、いま40と20のフィルターを重ねて60にしているけれど、15はないから20を抜いて30と05を加えて75にするといった具合になります。こうして手持ちのフィルターの中で組み合わせながら調整していくわけですから、やはり面倒な作業になります。

もちろん、ちゃんとした暗室も持っていません。遮光カーテンくらいでは隙間から漏れてくる光が強すぎて昼間にカラーは焼けません。なので、遮光カーテンだけでもほぼ暗黒にできる夜間に集中してやらなければなりません。ま、「カネはないけど暇はある」学生時代だったからこそ、手間をかけ、四苦八苦しながらカラープリントに挑むことができたのでしょう。いま思えば我ながら良くやったと思います。

が、デジカメで育った世代、否、銀塩での経験が豊富でも現像やカラーリバーサルでちゃんとしたフィルターワークを経験したことがない人たちは1枚の写真を仕上げるのに手間がかかるのは信じられないことなのかも知れません。そういう人の中にはDP2のようにカメラ任せで撮って時々変な色が出てきたりすると許せないという人もいるのでしょう。私などはそれを補正する手間が少々かかっても、写真と戯れていると感じることができますし、そのプロセスも殆ど苦になりません。

DP2(というよりフォビオンセンサを用いたカメラ全般というべきかも知れません)は、かなりのじゃじゃ馬で、クセはあっても一定の傾向が保たれていることが多いフィルムよりも扱いにくいと感じることもあります。が、銀塩の現像に比べればRAW現像はあらゆる面で簡便ですから、トータルでいえばやはり銀塩の自家現像とは比べものになりません。

DP2はホワイトバランスを「オート」にしておくと微妙に転んでしまうことが時々あります。そういうときは「カスタム」にして件のディフューザーを被せて光源を狙い、ニュートラルを出してやると概ね無難なホワイトバランスが得られるようです。より万全を期すためにRAW現像でジックリと補正をかけるならホワイトバランスを「晴れ」(太陽光)にして撮影し、その際の光源でグレイサンプルを撮っておいたほうが良いと思います。

ちなみに、エツミが輸入している「baLens」(←リンク先はPDFです)もRWカラーバランスシステムのそれと全く同じ発想でレンズにディフューザーを装着してグレイサンプルを得ようというものですが、そのディフューザーをレンズキャップ一体にしてしまったというのはなかなか面白いアイデアです。

とはいえ、結構いい値段ですし、DP2に合うサイズのものがないのでこれだけ持って歩くのも何ですし、RWカラーバランスシステムのディフューザーとは比べものにならない厚さがありますから、私としてはあまり欲しいとも思いませんが。

なお、DP2は光源に由来するホワイトバランスとは関係のない色かぶりも時々起こります。これもサンプルの取り方次第で補正の目安は作れなくもないのですが、私の場合は上述のようにカラーの自家現像という「昔取った杵柄」がありますので、経験と勘で適当に対処するようにしています。色に対する感覚はブランクで多少鈍ってしまったかも知れませんが、手間をかけることに対する耐性はさほど失われていませんので、銀塩写真の現像とは比較にならないほど簡便なRAW現像ソフトでの補正は苦になりません。

こんな風に書いてしまうとDP2はとんでもなく面倒くさいカメラと思われるかも知れませんが、実際には普通のデジカメに比べると少々カラーバランスが不安定というくらいです(希に「少々」では済まないときもありますが)。普通のデジカメも常に完璧なカラーバランスが得られているわけではなく、程度の問題でしかありません。私がこのDP2を使ってきた限りでは派手に転んだり被ったりしたことは数えるくらいしかありませんし、中にはこうした不安定さも「個性」として楽しめる人もいるでしょう。

フォビオンセンサの素性を理解して使う分には実に楽しいカメラだと思います。ま、その個性がかなり強烈ですから、当然のことながら人によって「合う」「合わない」が分かれるわけですが。

(つづく)

80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その6)

自転車が趣味という人の中にはパーツを自分で交換する人も少なくありません。フレームセットを買ってきて、好みのパーツで1台組み上げるということも、工具が揃っていればそれほど難しいことではありません。どの程度に仕上げられるかは技量の問題ですが、ロードバイクくらいなら上級者でなくてもとりあえずカタチにすることは可能でしょう。

が、完組みホイールが当たり前となった今日にあって、リムとハブを買ってきて、所定の部位を測定した結果からスポークの長さを計算して(ピタゴラスの定理と三角関数が出てきます)適切な長さのそれを用意し、自分でホイールを組んでしまうという人は割合的にかなり少ないと思います。プロショップでも完組みホイールの販売が手組みを下回るところなど滅多にないでしょう。そうした流れのせいか、パーツの選択肢が減っているのは残念ですが。

写真の現像にも似たようなことがあります。中学あるいは高校レベルの部活でもモノクロの現像くらいは普通にやっていると思いますが、カラープリントを経験している人はそれほど多くないでしょう。写真専門学校でもカラープリントを必修科目にしているところはあまり多くないと思います。カメラ好きで知られるTHE ALFEEの坂崎幸之助さんも「モノクロは自分で現像できるけど、カラーは難しいのでできない」というようなことをラジオで語っていたのを聞いたことがあります。

カラープリントの敷居が高いのは現像液の温度管理がシビアだったり、セーフライトもアンバー系のかなり暗いものしか使えなかったり、カラー用の引伸機が高価だったり(次回に詳しく述べますが、モノクロ用でも手間を厭わなければカラーを焼くことは可能です)、他にも色々な要素があります。が、やはり一番の障壁は適切なカラーバランスに整えるための補正が難しいというところに尽きるでしょう。

三原色といいますと、光の三原色である「赤/緑/青」をイメージされると思いますが、これは「加法混色」の三原色です。絵の具などのように特定の波長の光を効率よく反射する物質を混ぜて色を再現する要領は「減法混色」といいまして、その三原色は「シアン/マゼンタ/イエロー」になります。カラープリンターのインクもそれに準じているわけですね。銀塩写真のカラープリントもこの「シアン/マゼンタ/イエロー」三色のフィルターでカラーバランスを調整するのですが、通常はシアンを固定しておきます。

これは平面を水平に整える作業をイメージして頂けば解りやすいでしょう。例えば、テーブルは最低3本の脚があれば天板を固定できます。天板を水平にするために脚の長さを調整するとき、3本とも適当に延ばしたり縮めたりしていたのでは高さも角度も定まりにくくなります。そこで、1本を基準にして残りの2本の長さを調整してやれば、天板の高さも狙ったところからさほど狂わず、水平も得やすくなります。

LPL_C7700のヘッド部
カラー引伸機のヘッド部
これは私が所有しているLPL C7700というカラー引伸機で、
普段は固定しておくシアンの調整ダイヤルが向かって左側、
頻繁に調整するマゼンタとイエローのダイヤルが右側にあり、
右利きの私には非常に使いやすいレイアウトだと思います。
ちなみに、モノクロを焼くときはシアンの調整ダイヤルの下にある
黄色いレバーを引いてカラーフィルターをキャンセルします。


写真のカラーバランスも同じで、テーブルの天板の高さは即ち露出に相当し、その水平が得られているかどうかはカラーバランスに相当すると理解すればよいでしょう。シアンを固定しておいて、マゼンタとイエローの2色のフィルターを調整し、色の水平を得ようというわけです。

が、これは言葉でいうほど簡単ではありません。まずはテストプリントをしてみて、全体にどの色に偏っているかを確認し、それを見ながら補正を行います。どの色相にどの程度偏っているかを見抜き、その色をマゼンタとイエローの2色で補正していくのですから、色彩に関する知識と色を判別する鋭い感覚がないと殆ど手探り状態の作業になります。なかなか一筋縄ではいかないわけですね。

例えば、赤に偏っているとすれば、マゼンタとイエローを同量、偏っている分だけ足してやります。青に偏っていればイエローを減らし、黄緑に偏っていたらマゼンタを減らしてイエローを足すといったことをするわけですね。色相環が頭に入っていて、ある色の補色がどれに当たるのか、そのバランスや量についてもすぐに見当を付けられる職人的な感覚が必要になってきます。

ま、カラーアナライザーという道具もありますが、これはやはり機械的です。サービスプリントなどはこうしたアナライザーを装備したオートラボでプリントされますが、画面に占める割合の多い色の補色に偏る「カラーフェリア」と呼ばれる現象が生じたりします。

例えば、画面に赤い色が多く占めていると、その中にいる人物の肌の色が青ざめた感じになってしまうといったことがあるんですね。これはデジカメでも起こり得ますが、最近は画像処理エンジンが賢くなってきたせいか、それなりのレベルで補正されるようになったと思います。

フィルムはメーカーが異なればもちろん、同じメーカーでも銘柄が変われば同じ補正で正しい色が出せるとは限りませんし、下手をすれば同じ銘柄でも生産ロットによって微妙に違う場合もあります。いうまでもありませんが、撮影時の光源によっても大きく変動します。なので、私は初めて使うフィルムや、光源の状況によっては補正の基準となるグレイサンプルを撮っておいたものです。

グレイサンプルといいますと、グレイカードを撮れば良いと考えがちですが、そこにはちょっとした落とし穴があります。グレイカードの中には反射式メーターで露出を測るために反射率18%に整えてあっても、カラーバランスがちゃんとニュートラルグレイになっていないものがあるようなんですね。銀一のシルクグレーカードやコダックのR-27ようにカラーバランスもニュートラルに整えられたものならともかく、そうした性能を謳っていないグレイカードは露出判定用と考え、カラー補正の参考にはしないほうが無難でしょう。

また、グレイカードはA4判やエイトバイテン(8×10インチ)などが一般的で結構嵩張ります。小さくカットしても良いのでしょうが、画面一杯に写し込みたいと思っても色々制約が生じやすく、何かと面倒だったりします。なので、私は脇色彩研究所の「RWカラーバランスシステム」というキットに付属していた専用のディフューザーを用いていました。これは18%グレイカード(もちろん、カラーバランスがニュートラルなもの)を画面いっぱいに写しこんだのと同じコマが撮影できるというスグレモノです。

RWカラーバランスシステム
RWカラーバランスシステム
カラーの自家現像をサポートするために開発されたもので、
写真手前右に見えるCCフィルタの補正値を示すカラーチャートなどと
キットで販売されていました。(当時でも入手しにくいキットでしたが。)
グレイサンプルを撮影する白色半透明の専用ディフューザーは
ケンコーのSQフィルター用マルチホルダーでの使用が推奨されていました。
ちなみに、左のほうに見えるヒョウタン形のギザギザした黒い物体は
ハンザの露光判定ツールで、グレイサンプルを焼くとき
印画紙の上でコマのように回すと中心に向かって順に露光時間が短くなり、
適切な露光時間の判定をするのに便利というアイテムです。


前述のように、シグマDP2は色分離が悪いフォビオンセンサの宿命ゆえか色転びしやすいのですが、光源に由来するホワイトバランスを補正するにはグレイサンプルを撮っておくとかなり楽になります。カラープリントに入れ込んでいた学生時代には当たり前のように撮っていたグレイサンプルですが、社会人になると忙しさにかまけてカラープリントは殆どやらなくなり、このキットも引出しの奥底に眠らせていました。まさか、こんなカタチで復活させることになるとは夢にも思いませんでした。

(つづく)

80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その5)

普通のデジカメの場合、画像を拡大していくと最終的に少しぼやけた感じになり、エッジ部分もクッキリと際立たないものです。それは偽色を抑えるために仕込まれているローパスフィルタのせいです。

EOS5D2の等倍サンプル
一般的なデジカメ画像の等倍表示

上の写真はEOS 5D MarkⅡを三脚に据えて厳密にピント合わせを行い、F11まで絞り込んで撮影したものです。A4にプリントしてもクッキリと鮮鋭な画像が得られているのですが、モニタ上で等倍表示しますと、ご覧のようにエッジが甘くなっています。ま、この画像は元の5616×3744画素から440×330画素を切り出したもので、ここまで極端なトリミングをすることなどまず考えられませんから、このレベルでの解像力を問うのもあまり意味はないかも知れませんが。

一方、各画素で三原色を分離し、画素間で情報を保管し合う必要がないフォビオンセンサは原理的に偽色が発生しませんから、ローパスフィルタも必要ありません。そのため、このイメージセンサがとらえた画像を拡大していってもぼやけた感じにはならず、非常にクリアな質感の画が得られます。

DP2の等倍サンプル
フォビオンセンサによる画像の等倍表示

こちらはDP2で撮影したものです。イメージセンサのサイズも画素数も大きく異なるカメラで撮った画像が等倍表示で同じように仕上げられるようにするのは非常に難しく、またコチラは絞り込むのを忘れたため、被写界深度がかなり浅くなってしまいました。が、ピントが合っている数字の「60」近辺の解像感の高さは一目瞭然ですね。ローパスフィルタが存在しないことのメリットがハッキリ認識できると思います。

もっとも、このフォビオンセンサの例も2652×1768画素から440×330画素を切り出したものです。有効画素数ではEOS 5D MarkⅡの1/4にも満たず、全体の情報量もそれだけの差があるわけですから、同じ画素数を切り出して比較するのはフェアではありませんし、逆に同じ撮影倍率で比較すれば解像感に対する評価もかなり違ってくるでしょう。

近年ではコンパクトデジカメでも1000万画素を超えるものなど当たり前で、一眼レフではAPS-Cサイズでも2000万画素に手が届きつつあります。画素が気になり始めるレベルに拡大したときの解像感が評価されることはそれほど多くないように思います。が、ここに拘るならば、やはりローパスフィルタは邪魔者という印象に繋がってくるでしょう。そうした視点ではフォビオンセンサの画質を好ましく感じるようになると思いますが、個々の趣味の問題でもあります。

また、世の中そんなに甘くないもので、前回軽く触れましたように、この3層構造のフォビオンセンサは3層であるがゆえの大きなデメリットがあります。普通のイメージセンサは前回示した図のようなベイヤー配列でカラーフィルタを用い、それで色を分離させます。必要な光以外はかなりの部分をフィルタが濾し取ってくれるわけですから、それだけ色分離が良いと考えられます。

一方、フォビオンセンサはシリコンの膜を光が透過していく際、波長の短い光から順に下の層へ届きにくくなるという性質を利用しています。一番上の膜は全ての光を受けますが、その下層には青やそれより波長の短い光があまり届かなくなり、さらにその下層へは赤やそれより波長の長い光以外は届きにくくなります。

各々の膜に届いた光のデータを引き算して三原色のデータとして扱うわけですが、光がシリコンの膜を透過するのとカラーフィルタを透過するのとでは能率やそのバラツキにかなりの差があるでしょう。色分離が悪く、感度が低いという欠点が生じているのは、こうした仕組みに因むと見てよいと思います。

シグマは頑張ってこのじゃじゃ馬のようなセンサを乗りこなし、明るいところなら非常に美しい画像が得られるところまで持っていきましたが、それでも色が転びやすく、薄暗いところではノイズまみれになるという欠点は克服できていません。ま、全般的に優れた特性でデメリットが殆どないなら、とっくの昔に他社もこうした多層センサを採用しているでしょう。

ベイヤー配列による偽色の発生やそれを抑えるためのローパスフィルタというのはデジカメ特有のクセに繋がるわけで、原理的にそれらを必要としないフォビオンセンサはより素直な画像が得られます。しかしながら、色分離の悪さが原因と思われるカラーバランスの崩れやすさ、それに加えて感度の低さという素人にも解りやすい欠点に弄されることになるわけですね。

偽色の発生などベイヤー配列の欠点は解像度を上げることで目立たなくなります。例えば、中判のペンタックス645D(645と名乗っていますが、本来の645判が55×41mmで35mm判の約2.7倍の面積になるのに対し、このカメラのイメージセンサは44×33mmで約1.7倍しかありませんが)などは約4000万画素数という高解像度ということもあって、ベイヤー配列のイメージセンサでもローパスフィルタを設けていません。

今後、35mm判やAPSなどでもこのレベルの画素数に至れば、ローパスフィルタレスという流れになるかも知れません。あるいは、画像処理エンジンによる誤魔化しのテクニックが向上していくかも知れません。ベイヤー配列のイメージセンサが持つクセはこれまでにも改善されてきましたし、現段階でも全く気にならない人は少なくないでしょう。

それに比べて、採用実績が極めて乏しいフォビオンセンサは弱点の克服やそれを目立たなくさせる術がまだまだ磨かれていないといったところでしょうか。同様の多層センサは富士フイルムやキヤノンなども開発を進めているという噂ですが、まだまだ技術的な課題が山積しているのでしょう。

現段階においてこうした扱いづらいセンサは、「80点主義」でトータルバランスを重視したら、とても採用に踏み切れる状況ではないというのが普通の大手カメラメーカーの判断なのでしょう。ま、かく言う私も1台で大概のことをこなす必要がある状況だったらDP2を選ぶということはまずありません。薄暗いところでも撮る必要があるなら迷わずEOS 5D MarkⅡを選びますし、長時間で体力が必要なときはEOS kiss x3に委ねるでしょう。

このシグマDPシリーズは特異な素性を理解した上で割り切って使う必要があるわけですね。個人的には明るい野外で散歩でもしながら、のんびりとスナップを撮るといったシチュエーションに丁度良いのではないかと思います。(あくまでも個人的な感想です。)

近年のカメラ、否、近年の日本の工業製品としてここまでメリットに拘り抜きながらデメリットを許し、それゆえに突き抜けたキャラクターを持つものは非常に珍しいと思います。が、どれもこれも同じような性能に子供騙しの付加価値を設けて差別化しようとする大手メーカーのそれに辟易している人には、未完成ながら極めて野心的なこのカメラのほうが面白いと感じられるでしょう。

(つづく)

80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その4)

昔のデジカメは動作が鈍く、電源を入れてから撮影が可能になるまで時間がかかり、10秒以上待たされるというのもザラでした。私が前に仕事用として使っていたカシオのEXILIM EX-Z3は当時の世界最速である2秒弱という起動時間を実現し、シャッターのタイムラグやデータの書き込み、再生画面の切り替え速度などにも注力され、「サクサク動くデジカメ」という路線を示したモデルでもありました。(関連記事『デジカメ代替え』)

近年ではごく当たり前となった「機敏な動作」という面でもシグマDPシリーズは大きく劣っており、ありとあらゆる点がスローで、かなり前時代的な使用感です。DP1に比べてレンズの繰り出し量が大きいDP2の起動時間が約4秒と遅めなのは仕方ないにしても、ピント合わせもかなり遅いといわざるを得ません(この原稿の執筆をモタモタやっている間にマイナーチェンジ版のDP2sが発売され、DP2の半分くらいの時間で合焦するように改善されているそうです)。

何より遅いのはデータの書き込みで、最もファイルサイズが大きくなるRAWでは1ショット約7秒という遅さです。もちろん、バッファメモリもありますからRAWでも3ショットまでなら連続撮影できます。が、3ショット連写すれば、それが書き込み終わるまで20秒くらい待たされますから、どちらにしても連写は苦手です。

私は公称30MB/sで書き込めるサンディスクのSDHCを奢ってみましたが、安価なトランセンドのClass6(実質8~9MB/s程度になるようです)でも大差ありませんでした。やはり、全般的な処理速度が遅いのでしょう。その原因がハードの問題なのかソフトの問題なのか両者ともに問題なのか解りませんが、大手メーカーほどの総合力を持たないシグマのウィークポイントといわざるを得ないでしょう。

また、イメージセンサの物理的な感度が非常に低いようで、これもまたかなり前時代的だと思います。マトモに使えるのはISO400くらいまでで、それ以上はかなり画質が荒れます。それゆえ薄暗いところは大の苦手で、感度を高めに設定しようが、低めに設定して露光時間を長くしようが、何をしてもノイズまみれとなります。夜景はもちろん、夕景でも辛いと感じる場面がしばしば巡ってきます。

今日ではコンパクトデジカメに当たり前の装備となった手ブレ補正も備えていませんが、個人的にはこの種のマニアックなカメラに手ブレ補正など不要で、むしろシンプルであるほうが好感が持てるくらいです。そもそも、上述のように暗いところが非常に苦手なカメラですから、手ブレ補正が威力を発揮するような場面では初めから割り切る必要がありますし。

取り急ぎ改善してもらいたいと思うスペックは液晶モニタの解像度です。約23万画素でも構図の確認には支障ありませんが、被写界深度の確認にはかなり辛いものがあります。一眼レフではEOS kiss x3のようなエントリーモデルでさえ約92万画素という高精細モニタ(x4ではアスペクト比が3:2となって、横方向が拡大され、当代随一といえる約104万画素になりました)を搭載している昨今です。このカメラを好んで使う人たちの多くはそうした改善のためのコストアップなら受け容れるでしょうから、是非とも検討してもらいたい部分です。

もっと細かいところでいえば、起動時にレンズを繰り出す際、「ウィヨ~~ン!」という盛大なメカニカルノイズが鳴り響くのもどうかと思います。電源OFF時に沈胴するときは何故かずっと静かなので、同じように静かに作れなかったものかと思ってしまいます。バッテリーやSDカードのスロットがある底蓋を開けた部分もプラスチック表面に質感を持たせるような加工が何も施されていないため、トイデジカメのように色気がありません。

DP2とDMC-FX35のスロット部比較
LUMIX DMC-FX35とDP2のスロット部比較
写真では解りにくいかも知れませんが、
LUMIX(上)は普段見えないスロット部も
表面に梨地のシボ加工が施されており、
凹モールドでSDカードやバッテリーのマークを
あしらうなど、見られることを意識した仕上げです。
一方、DP2(下)のスロット部は完全にノッペラボウで、
バッテリーやSDカードの挿入方向はスロット内側の側面に
ステッカーを貼付することで示しています。


よく見ますと、DP2のほうは単にノッペラボウなだけでなく、フローマークが生じていますね。赤い矢印で示したところが特に解りやすいかと思いますが、年輪のような縞模様になっています。これは金型の中を溶けた樹脂が流れるときに生じるもので、金型に熱を奪われて樹脂が固まりかけながら圧入されると起こる現象です。この写真の場合、向かって右から左に材料が流れていった様子が解ります。

凹凸になっているわけではなく、色ムラになっているだけなので、見た目が悪いという以外に問題はありません。が、見られることを意識している場合はキチンと温度を管理して樹脂の流動状態をコントロールし、こうしたフローマークが生じないように仕上げるものです。LUMIXなどはわざわざシボ加工を施して見られることを意識していますから、それと比べてしまうと如何にも等閑な感じです。こうした細部の仕上げが徹底されていないと、やはり安っぽい印象に繋がってしまうものですね。

ちなみに、自動車の樹脂バンパーなどは大きな部品ということもあってフローマークが生じていることも多いのですが、乗用車の場合は塗装してあるのが普通で、それが解らなくなっています。ただ、商用車の場合は無塗装が当たり前ですから、こうしたフローマークが見られることも多く、特に経年で表面が劣化してくると非常に目立つようになってきます。

ハナシを戻しましょうか。バッテリーは常識的なリチウムイオン電池ですが、消費電力が大きいのか、近年の常識的な感覚では持ちが悪いといわざるを得ません。これをメインで使うなら最低でも1つは予備が必要でしょう。ま、純正でも実勢価格が2000円足らずで比較的リーズナブルですから、それほど大きな不満ともいえませんが。(DP2sでは電源のマネジメントをDP2よりきめ細かくし、この点も少し改善されているそうです。)

で、このDPシリーズ(というより、同じイメージセンサを用いているシグマのデジカメには共通すると思います)において上述の「感度が低い」という欠点に並ぶ大きな問題点が「カラーバランスが崩れやすい」というものです。いずれも「フォビオン」という他に類例が殆どない特殊な構造のイメージセンサを採用していることと深い関係があるのでしょう。逆に、このフォビオンセンサの特性がこのカメラの大きな魅力にもなっており、功罪相半ばする(罪のほうが多いかも知れませんが)イメージセンサというべきでしょうか。

フォビオンというイメージセンサはCMOSセンサの一種で、アメリカのフォビオン社が開発したものです。生産はアメリカのナショナル・セミコンダクタ(2004年にイメージセンサ部門をコダックへ売却)、韓国のハンビジョンなどが行ってきたようです。採用実績は非常に少なく、いまフォビオンセンサを用いたカメラで普通に入手できるのはシグマ製だけでしょう。

かつてはポラロイドx530というカメラにも採用されていたそうですが、日本では発売延期が繰り返されている間に正規代理店のHNJが倒産し、日本では幻のカメラになってしまいました。アメリカではちゃんと発売され、ネット上には作例も見つかりますが、商業的にはやはり失敗だったと見て間違いないでしょう。ちなみに、このポラロイドx530については『デジカメWatch』で河田一規氏がレポートしています

このフォビオンセンサの特徴は、何といっても各画素が3層構造になっており、1画素で3原色を分解するという仕組みに尽きます。

ベイヤーセンサ
一般的なベイヤー配列のイメージセンサ

普通のデジカメは上図のような「ベイヤー配列」と呼ばれる配列でカラーフィルタを設け、1画素で1つの原色しか受光せず、周囲の画素と色の情報を補完し合っています。こうした方式では色が切り替わるところにある画素が不適切な情報を得てしまい、本来とは違った色を再現してしまう「偽色」の発生に繋がります。特に細かい縞模様などではモアレ(干渉縞)が発生してしまいますから、こうした現象を抑えるため、通常は撮像素子の前にあえて像をぼかす「ローパスフィルタ」というものが設けられています。

フォビオンダイレクトセンサ
フォビオンX3 ダイレクトイメージセンサ

一方、フォビオンセンサは1つの画素が3層に分かれており、画素毎で完結しています。周囲の画素と色の情報を補完し合う必要がないため、原理的に偽色が生じません。上述のように普通のデジカメのイメージセンサは像をぼかすローパスフィルタを設けないと偽色が発生しやすくなりますが、フォビオンにはその必要がなく、それゆえ解像感の高い画質が得られるというわけです。その魅力に取り憑かれた人たちには他に代え難い特性で、DPシリーズ最大の魅力もここにあるといって良いでしょう。

(つづく)
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まとめ

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