先般東京都の「ディーゼル車NO作戦」について、6回におよぶ連載の中でかなり際どい情報も示しつつ、批判を展開させて頂きましたました。が、東京都としては条例を施行して都内の道路を利用する人達に負担を強いている以上、無意味なことではなかったということにしたいのでしょう。
SPM濃度調査:07年度都内、全地点で基準達成 ディーゼル車規制の効果か /東京
自動車の排ガスなどから大気中に浮遊する微粒子(SPM)の濃度が07年度、都内計80カ所の測定地点すべてで環境基準を下回ったことが都などの測定で分かった。全測定地点での基準達成は2年ぶり。光化学スモッグを引き起こす光化学オキシダントは基準を達成できなかったものの、光化学スモッグによる被害者は8年ぶりにゼロだった。
都環境局によると、測定は都と八王子市が住宅地46カ所と幹線道路沿い34カ所で実施した。SPMは平均濃度でも住宅地で1立方メートル当たり0・025ミリグラム、道路沿いで同0・030ミリグラムとなり、いずれも環境基準の0・10ミリグラムを下回った。ディーゼル車規制の効果とみられるという。
一方、環境基準が厳しく設定されている光化学オキシダントは19年連続で全地点未達成となった。最高濃度は0・193ppmと8年ぶりに0・2ppmを下回ったものの、平均濃度は上昇傾向。酸性雨の原因物質の一つとされる二酸化窒素の平均濃度も低下傾向にあるものの、その幅は小さかった。
都大気保全課は「引き続き原因物質の削減に取り組んでいく」とコメントしている。【須山勉】
(C)毎日新聞(地方版) 2008年8月5日
まず、誤解を招きそうな書きぶりになっていますので指摘しておきますが、光化学スモッグなどの原因になると考えられている窒素酸化物に対して、東京都はディーゼル車の排出ガスに何の規制も設けていません。彼らが規制しているのは粒子状物質だけです。つまり、「光化学スモッグによる被害者は8年ぶりにゼロだった。」という点は東京都のディーゼル車規制による手柄ではありません。
さて、以前にも触れましたが、国の排ガス基準は段階的にどんどん厳しくなっています。ここ15年の間に4回も規制が強化されていますから、3〜4年で新たなステージに上っている状態です。殊に、メーカーはその間に技術開発を済ませ、量産体制を整え、新型への切り替えのタイミングをはかり、在庫を残さないよう管理し、販売体制を整えるなど、大変な負担を強いられています。
一方、何度も述べていますが、東京都は初度登録から7年を超えて使用する場合に限って粒子状物質を削減するよう規制しているだけです(厳密にいえば、国の排ガス規制で最新より二つ以上前の車両を7年超で使用する場合に適用されますが、最近は国の規制が3〜4年で切り替わっていますから、7年も経てば大抵は最新より二つ以上前の規制に該当します)。東京都はこのように古い車両に対してのみ規制を実施しただけですから、彼らの政策が浮遊微粒子の大気濃度を削減する実効性があったのか疑問が残ります。
また、昨今の燃料コスト高騰の影響で道路の混雑が緩和される傾向も見られます。首都高も中央環状が新宿線まで延長され、それに絡む道路の渋滞はかなり緩和されているハズです。もっとも、例のタンクローリーの火災で
エライことになってしまいましたが。
このように、大気中の浮遊微粒子が減少する要因はいくつも考えられます。個人的には国の排ガス規制のほうが遙かに強力な効果をもたらしていると思われますが、仮に国の規制や交通量などの変化がなかった場合でも、東京都のディーゼル車規制が数値に表れるほど浮遊微粒子の大気濃度を減少させていたと言えるのでしょうか?
ちなみに、東京都環境局は浮遊微粒子の大気濃度の推移を集計したデータを示しています。

これを見る限り東京都のディーゼル車規制が功を奏していると読み取ることは不可能だと思うのですが、彼らが主観を排除して科学的に評価できているのか甚だ疑問です。例えば、東京都のような独自のディーゼル車規制がない他の大都市圏と比較して顕著な差が見られるとか、そうした具体的な根拠となるデータがなければ説得力のかけらもありません。
逆に、そうしたデータもないまま、単なる思い込みで「ディーゼル車規制の効果とみられる」というのでは、手柄の横取りといいますか、言ったもの勝ちといいますか、いずれにしても非常に不誠実な態度になると思います。少なくとも、石原知事はあのとき「国は怠慢」と言い放っていたのですから、国の手柄を横取りするようなことは断じて許されません。
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私もCO2温暖化説云々は別として、有限である化石燃料は少しでも先の未来へ残すべく、省エネを進めようという意向に諸手を挙げて賛同します。が、実効性の伴わない(宗教じみた)精神論は排除すべきだと考えています。
こうした立場からいわせて頂けば、朝日新聞の社説は今日も笑止千万でした。例によって短絡的な発想で、見当違いの似非エコ精神論を開陳していたからです。
身近な省エネ―便利を少し我慢しよう
コンビニエンスストアの深夜営業を抑制しようという動きが各地で起きている。地球の温暖化を食い止めるため、電力の消費を身近なところから減らそうという考えからだ。
(中略)
そう思いながら夜の街を歩けば、省エネにつなげられそうなものが次々と目に飛び込んでくる。大音響が響き渡るゲームセンターやパチンコ店、やけに明るい歓楽街のネオン、24時間営業のレストランや飲食店……。
とはいえ、一律に規制するのは乱暴だ。社会的な機能を評価したうえで、利用者とサービスの提供者の双方が、例えば営業時間などの便利さや手軽さを少しずつ我慢して、生活のあり方を変えていく。そうした積み重ねで省エネの暮らしをめざしたい。
(中略)
化石燃料を燃やす人類一人ひとりの生活の結果が、地球の負荷になる。だれかが何かを我慢し、生活の形を変えて、地球の重荷を減らす。
難しいことだが、豊かな地球を子や孫に残すため一歩を踏み出さなければいけない。便利さを犠牲にしてでも。
(C)朝日新聞 2008年7月28日
石原都知事も以前からコンビニの深夜営業を規制したいとする同様の意向を示していましたが、このように物事の一部分しか見ない単純な発想で論を進めていくのは、世の中の仕組みについて無知であることを露呈するものです。彼らは「何故、深夜電力が割引料金になっているのか」ということを全く理解できていません。
電力供給というのはピーク需要に余力を持って対応できるような体制が整えられていますが、一方ではオフピークの余剰電力を如何に有効利用するかということで様々な技術が開発されています。日本では揚水式水力発電が比較的大規模な対策として導入されてはいますが、やはり決定打となるレベルには程遠いものがあります。
原子力は始動や停止に大変なコストがかかりますから、事故や点検時以外に止めることは殆どありません。逆に、出力調整が比較的容易な石油火力やガス火力、貯水池式水力などは昼と夜とで電力供給量を変化させています。しかし、自動車などもアクセルの開閉を頻繁に行うより一定に保ったほうが燃費が良くなるように、発電も出力はできるだけ一定に保ち、それに最適化して設計されたプラントを運用するほうがエネルギー効率は良くなります。
電源の組み合わせ上図は電気事業連合会による電力供給力の資料になりますが、この山と谷をできるだけ近づけ、平準化を進めることがエネルギーの利用効率を高めることにつながるわけです。つまり、
減らすことに意味があるのはピーク時の電力需要であって、オフピークではないということです。電力会社が深夜の電気料金を割引き、その需要を拡大しようとしているのも平準化を進めようという考え方に基づくもので、「ディマンドサイドマネジメント」と呼ばれています。こうした意味においては、例の「
ライトダウンキャンペーン」の類も実質的な効果は殆どなく、精神的な自己満足に浸るものでしかありません。
新聞社が「省エネを推進しよう」というのなら、まずは新聞そのものの在り方について根本的に考え方を改め、手本を示して見せるべきでしょう。この電子化が進んでいる世の中にあって、紙に印刷したそれを毎朝毎夕全国に配達するといった極めてエネルギー効率の悪い旧態に甘んじている状況こそ、そろそろ本気で見直すべきです。
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ツバルのゴミ問題が異常事態といえるのは、政府が危機感を微塵も感じておらず、何の手立ても打とうとしないところです。
前々回ご紹介した『Newsweek(日本版)』以外にもネット上でこの惨状を伝えている人達は沢山います。「ツバル ゴミ」でイメージ検索すれば画像も沢山見つかりますので、改めてご紹介しましょう。
建物と椰子などの茂みの間をゴミが埋め尽くしています。
民家の庭先までゴミが押し寄せています。
家電製品などもそのまま投棄されています。
クルマもそのまま投棄されています。
浜辺や茂み、建物などを除く空きスペースが
殆どゴミで埋め尽くされてます。アルピニストの野口健氏もツバルを訪問し、アピサイ・イエレミア首相と会談しているそうで、その模様は
彼の公式サイトでも紹介されています。ただ、彼も温暖化人為説を鵜呑みにしており、「ツバルは地球温暖化による海面上昇によって沈む島」という世間一般の認識と全く同じ先入観を持っているようです。が、そんな彼をしても『
ごみに埋まるツバル』というレポートでこう述べています。
海面上昇の前にごみによって滅びやしないかと思わせるほどごみの島だ。
また、同レポートにはこうあります。
海面上昇に対しては熱弁を振るうイエレミア首相だが、ごみに関しては質問してもさほど関心がなかったように感じられた。首相に限らず島民にごみに関して意見を聞いてみてもやはり気にしている様子がなかった。これは環境教育がなされてこなかった事と、以前は捨ててもごみになるような物がなかったのが、急激に生活習慣が変化し、以前と同じようにプラスチックやガラス、金属を捨てればすぐに土に戻るものだと考えているようだった。温暖化による被害でツバルは日本、台湾を筆頭に豪州やニュージーランド、イギリスなどからあらゆる援助を受けているが、ごみ問題に関しての援助はなされていない。またツバル政府にもごみ処理計画なるものはないに等しいとのことだった。
何故、ツバルではゴミ処理を行わず手当たり次第に投棄し、汚水処理を行わず海に垂れ流し、サンゴ礁を掘削して道路建設の骨材にしたり、元々洪水が発生していた低地の沼を埋め立てて居住区を拡大するなど無計画な土地利用を行っているのでしょうか? 『Newsweek(日本版)』のレポートによれば、それはツバル政府が腐敗しているからのようです。
(前略)
今では住民1万2000人の半数近くが、増え続けるゴミと青い海のはざまで暮らしている。政府はゴミ問題に対処する力あるいは意思がなく、外国の支援もほとんど無駄になっている。
昔ながらの生活の術は忘れられ、食料は輸入食品(大半が缶詰)に頼りきっているありさま。食品の包装材は、フォンガファレ島を中心とするフナフティ環礁を汚染する主要な原因の一つとなっている。
今では小さい島や環礁を離れたり、外国へ移住する人が後を絶たない。ツバル政府は彼らを「温暖化難民」と呼ぶが、政治の失策をごまかす言い逃れにすぎないとみる向きもある。
(中略)
この国では、政府が経済を牛耳っている。政府は漁業権やインターネット上のドメイン名「.tv」の売却益などでも稼いでいるものの、主な収入源は外国からの援助だ。
(中略)
外国援助への依存は腐敗を生みやすいが、ツバルも例外ではない。ドイツのNGO(非政府組織)トサンスペアレンシー・インターナショナルは04年の報告書で、ツバルの「閣僚は国内外の会合などに出席する際、滞在期間を延ばして不当な日当を受け取ったり、私的な海外旅行に公費を流用している疑いがある」と指摘している。
南太平洋諸島の大半の国で、政府関係者は毎年かなりの期間を海外出張にあてる。収入はそれほどでもない彼らの多くがオーストラリアやニュージーランドに別荘を持ち、子弟を海外で学ばせている。
政府関係者の懐は潤っても、緊急に対処すべきゴミ問題に外国からの援助金が投じられる気配はない。ゴミの山はどんどん大きくなるが、ゴミ処理計画を実施しようという政府の動きはみられない。
(後略)
(C)Newsweek日本版 2007年7月11日号
ツバルのサンゴ礁の白化現象やマングローブの森が失われようとしている状況を生んでいる直接の原因がゴミや汚水、無計画な土地利用によるものなのかどうか、具体的なデータを見ていませんので私には判断できません。が、昔から高潮時に洪水が発生していたその場所に居住区を拡大したことが、洪水による被害を拡大している要因の一つとなっているのは間違いなさそうです。
こうした状況を鑑みれば、各国のメディアがツバルで起こっている被害の全てを地球温暖化による海面上昇のせいにしているのは、偏向報道というより誤報というべきかもしれません。政府の無策から誰が見ても解る環境破壊が進んでいても、それは世界中どこにでもあることゆえ目して語らず、海面上昇との因果関係が不明瞭な洪水を「先進国が引き起こした気候変動による被害だ」と断定的に伝えるのは、誠実なジャーナリズムの対極に位置する姿勢ではないかと思います。
もっとも、虚構で大衆をミスリードするパターンは、地球温暖化を彩るエピソードとして決して珍しいものではありませんが。
(おしまい)
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ツバルは環礁ですから、固い岩盤の島ではなく、サンゴ礁に土砂などが堆積してできた島になります。環礁の形成過程にはダーウィンの
沈降説が有力だと思われますが、いずれにしても、サンゴ礁が維持されるには、刺胞動物門・花虫綱に属する「動物」であるサンゴがストレスなく生息できる環境が必要です。
サンゴ礁を形成する造礁サンゴは例外なく褐虫藻という藻類を共生させ、光合成によってつくられた炭水化物を栄養源としています。この褐虫藻が減少してしまうのが、いわゆる「白化現象」です。このサンゴの白化現象は一般に地球温暖化による海水温の上昇の影響だとされることが多いようですが、これだけを原因とするのは拙速に過ぎます。
人為的温暖化説を既成事実化したがっている国立環境研究所でさえも、この点については慎重な所見を述べています。
温暖化による長期的な海水温の上昇に加え、短期的な海水温の上昇がエルニーニョなどの気候的な原因でも引き起こされます。1997〜1998年に世界的に大規模な白化が起こった年は、高水温がエルニーニョによってもたらされました。沖縄周辺では2001年と2007年夏にも白化が起こりましたが、これは全世界的な現象ではなく、沖縄周辺での暖水塊の発生によるものと考えられています。
また、高水温だけでなく、淡水や土砂の流入、強光などすべてのストレスが白化を引き起こします。これらストレスの複合効果も考慮しなければなりません。高水温と強光、高水温と淡水・土砂流入の複合効果によって白化が起こった可能性が指摘されています。
要するに、海水温の上昇だけでなく、塩分濃度や日照条件など、サンゴの生息にかかわるあらゆる環境の変化によって白化現象は生じ得るというわけです。また、サンゴは水質の悪い海には生息できませんから、海が汚染されれば、やはり白化や死滅の危機に直面します。
ツバル天然資源・環境省環境局長のマタイオ・テキネネ氏は今年6月に日本の外務省が主催した「太平洋島嶼国の環境と支援を考える国際シンポジウム」でこう述べています。
サンゴは、熱ストレスに弱い。ツバルのサンゴは少しずつではあるが白化が起きており、今後、増えていくとみられている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今後30〜50年間、毎年、白化現象は起こると予測している。サンゴ礁は、高潮の最初の防護壁で、サンゴの白化が起きると島民の主たるタンパク源である魚類も減ってしまう。
しかし、ツバルのサンゴにとっての脅威は海水温の上昇だけではありません。同シンポジウムでは東大大学院教授(沿岸海洋学・環境変動論)の茅根創氏が講演の中でこう述べています。
人口増により増えた生活用水や豚の飼育に伴う汚水が垂れ流されている。これらの排水が海水の富栄養化をもたらし、サンゴや有孔虫の生育力を弱め、海水面上昇の最初の“防護壁”になる環礁、砂浜の成長を阻害している。
汚水を垂れ流しにする養豚舎首都フナフティでは食用に約4500頭の豚が飼育されていますが、
排泄物や雑排水を処理する施設はなく、汚水はそのまま
ラグーン(環礁に囲まれた浅い環湖)や外洋へ垂れ流されています。
この写真右手にもやはりゴミの山です。一方、南太平洋地域環境計画の報告では、フォンガファレ島の道路建設にあたって、骨材を採取するためにラグーン側のサンゴ礁を掘削、そこへ海岸の砂が流入するかたちで侵食が進んでいるといいます。政府がところ構わずゴミを投棄したり、野焼きを行っているような国ですから、この道路開発計画とそれに伴うサンゴ礁の掘削に合理的な環境アセスメントが行われていたとは考えられません。
また、前回引用した国立環境研究所の所見にも重なりますが、元々は人が住んでおらず、昔から洪水が発生していた沼地などを埋め立て、人口増加に対応するための居住区を拡大した点も看過できません。こうした無思慮な土地利用が洪水の被害を拡大しているのは間違いないでしょう。
これらの実情を勘案すれば、ツバルが直面している環境問題というのは彼らの無計画な行動のしっぺ返しになる部分も少なくないと考えるべきです。つまり、これは世界中どこでも見られる典型的な環境破壊であって、彼らの被害が地球温暖化せいであると結論づけるのは事実を歪曲する行為になるでしょう。
(
つづく)
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南太平洋の島国、ツバルといえば「地球温暖化による海面上昇で水没の危機に瀕している国」というイメージが完全にすり込まれてしまいました。しかし、個人的な結論を先に述べさせて頂きますと、「地球温暖化の被害者」「先進国の所業のしわ寄せを被る哀れな小国」といったイメージは、メディアなどによるセンセーショナリズムに煽られた結果であり、虚構に近いものだと思っています。
全世界の海面上昇は1961年から2003年まで平均1.8±0.5mm/年と見られています。一方、オーストラリア政府(国際開発局)の出資により、ツバルで信頼できる潮位の観測が始まったのは1993年からで、2005年までの12年間の海面上昇は平均4.3mm/年と、比較的大きな値になっています。が、これは短期の観測結果ゆえ、エルニーニョや短期的な潮汐変動などの影響を除いた値ではありません。長期変動の傾向がきちんと把握されていないのが実情というわけです。
いずれにしても、10年単位で数cm程度でしかない海面上昇だけで深刻な洪水を説明するのは無理があります。というのも、南太平洋応用地球科学委員会の報告書によりますと、ツバルの高潮時の海水面は平均海水面から1.2mも高くなるそうですから。10年でたかだか数cmの海面上昇が洪水の決定的な主因であると考えるのは非現実的です。
そもそも、ツバルでこうした洪水が発生するようになったのは最近のことではありません。イギリス王立協会が保有している100年前のツバルの地質図には首都フナフティのあるフォンガファレ島はラグーン(環礁に囲まれた浅い環湖)側の高地に100人程度の集落があるだけでした。中央低地は沼地などからなり、そこでは海水が湧き上がる現象が見られたという記述も残されているそうです。
現在、洪水に見舞われている地域もまさにこうした低地になります。つまり、解っているだけでも100年前から繰り返されてきた現象で、その頻度についてはともかく、近年の地球温暖化による海面上昇によって生じるようになったと考えるのは明らかに誤りです。
日本の
国立環境研究所(以下、環境研)の
江守正多氏(地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室室長)はNHKをはじめとしてテレビ番組にもよく出演しており、「地球温暖化人為説」を盛んにプロパガンダしています。彼らの公式見解は「温室効果ガスの増加が最近の温暖化の主要な原因であることはほぼ間違いない」というもので、この
仮説を既成事実化したくてしたくてどうしようもない機関になります。
その環境研にあっても、ツバルの洪水を地球温暖化による海面上昇だけのせいにはしていません。
ツバルにおける海水の湧き出しによる洪水の深刻化は、潮位だけでなく、島の地形、土地利用、地下水、降水、波力など複数の要因が関わって生ずる現象であると考えられますが、その全体のメカニズムは十分に解明されていません。しかしながら、原因と疑わしきものをいくつか挙げることが出来ます。
まず、上述の近年の短期的な平均潮位の上昇傾向は、その原因の候補の一つです。また、月・太陽と地球の位置関係によって起きる潮の干満と潮位の季節変動との組み合わせにより、毎年春先に記録される年間最高潮位は約4年半の周期で上昇・下降することが分かっており、年間最高潮位は高い年と低い年で10cm以上の差があります。この年間最高潮位の周期的変化は平均潮位の変化傾向には直接影響しませんが、大きな洪水が生ずるのは、その年間最高潮位が発生する時ですので、これもまた島の住民が証言する洪水被害の深刻化に関わりがあるかも知れません。
さらに、20世紀に続いた人口増加にともない、1970年代以降に、沼沢地を埋め立てて出来た低地にまで居住地が拡大されてきたことが分かってきました。それらの地域の中には、春先の高潮時に海水面以下となるところもあり、海面上昇に対して脆弱な地域への居住者が増えたことになります。そのような社会的条件の変化も、高潮時の洪水被害増加に関わりがあると考えられています。
以上が環境研の見解(一部抜粋)になりますが、やはり大衆メディアが伝える短絡的な結論ではなく、それなりに慎重な評価を行っているようです。
ただ、環境研は現地での詳細な調査活動など行っていないと思います。潮位の観測データなどは検討しているようですが、現地では他にも深刻な環境問題が山積しています。そのうちいくつかは洪水に影響する可能性が否定できないものです(詳しくは
次回に述べます)が、それらについては殆ど触れていないのが何よりもの証拠です。
ところで、先々週の土曜日、NTVで『北京開幕直前 さんま&櫻井翔 栄光への道SP』という番組を放送していました。この中で元女子レスリング選手の山本聖子氏をレポーターとして北京オリンピックのツバル代表、陸上女子短距離選手を取材していました。が、やはり一般にイメージされがちな青い海と白い砂浜、牧歌的な生活を送っている現地民の映像ばかりが流され、ツバルが直面している現実からは完全に目を背けていました。その現実とは・・・
ツバルは海に沈む前にゴミに沈む国ということです。ツバルは首都フナフティの近郊を中心として島のあちこちにおびただしい量のゴミが投棄されています。その理由は政府がゴミの焼却施設を作ったり、計画的な最終処分場を確保するなど、常識的なゴミ処理の手立てを行おうとしないからです。そのため、民家にゴミの山が迫っている地域がいくつもあります。
フォンガファレ島のゴミ投棄現場『Newsweek(日本版)』2007年7月11日号に掲載された
首都フナフティ近郊にあるゴミ投棄の現場写真です。
右手の建物には衣類などの洗濯物が干してありますから、
実際に人が住んでいる民家であるのは間違いないでしょう。上述のNTVの番組もそうですが、日本のメディアもツバルの現地取材を何度となく行っています。しかし、このような写真や映像は決して流されることがありません。それは要するに、彼らが「事前に準備したストーリーに合わないから」というのがその理由なのでしょう。
(
つづく)
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