酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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『“環境問題のウソ”のウソ』のウソ (その2)

武田邦彦氏の著書『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の批判本である山本弘氏の『“環境問題のウソ”のウソ』は終盤の70頁弱(259~325頁)を「第8章 地球温暖化問題・どこまで本当なの?」として、総括しています。

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山本氏は地球温暖化人為説に対する懐疑論は「トンデモ」であると断定的に捉えているフシがあり、それらに対抗する論述が中心になっている感じです。私には彼が偏った先入観を持っているのではないかと思われてなりません。

山本氏はこの章の序盤で「相対性理論否定説」や「アポロ計画捏造説」「9.11自作自演説」などを並べたてています。「地球温暖化問題そのものが、専門家にもよく分かっていない部分が多すぎる」ゆえ、これらと「同列に論じることはできない」としながらも、行間からは「人為的温暖化懐疑論はトンデモだ」とする意向が滲み出しているのは明らかです。

特に私が見過ごせなかったのは、266頁で

大多数の科学者がある説を信じているなら、それなりのしっかりした根拠が必ずある。それを素人がくつがえせるなどという幻想は抱かない方がいい。


と主張していたところです。

山本氏には気の毒ですが、彼がこの章の冒頭部分で持ち出した「相対性理論」はアインシュタインがスイスの特許庁で審査官をやっていた時代にその基礎が構築されました。つまり、当時殆どの物理学者が支持していたニュートン力学の「絶対時間」や「絶対空間」といった概念を素人だったアインシュタインが覆したのです。

そもそも、山本氏のような考え方は科学の基本理念に反します。科学における真実とは、決してコンセンサスで決まるものではないからです。

何千何万人の科学者が支持している定説であろうと、科学的な検証で事実関係が確認されなければ、それはただの仮説に過ぎません。逆に、たった一人の素人が提唱した新説でも、科学的に実証されれば、それは真実です。科学的に実証されていなくとも、偉い学者大先生の多くが認めることならば真実と見做すべきというのでは、宗教と何ら変わるところがありません。

もっとも、実際には日本でも欧米でも懐疑派の研究者は存在します。彼らの主張が全て合理的ともいえませんが、そのうちのいくつかはCO2温暖化説の根幹に関わる不確実性を指摘するものです。また、そうした疑義に肯定派から納得のいく反論がなされていないものもあり、半ば泥仕合のような場面も見受けられます。

本題に戻りましょうか。誰が読んでも明らかだと思いますが、山本氏の基本的なスタンスは懐疑論に対してかなり否定的です。懐疑派から出されている疑義に反論を試みてもいますが、それ以前に彼の知識レベルはお世辞にも高いとはいえません。特に酷いのは296頁でしょう。

 懐疑論者は「すでに『大気の窓』は飽和している」と主張する。簡単に言うと、CO2が赤外線をさえぎる能力には限界があり、すでにその限界に達しているから、これ以上CO2が増えても気温は上がりようがない、というのだ。


少しでも地球温暖化問題について勉強した者なら、山本氏が「大気の窓」が何であるのか、この極めて初歩的な用語さえ全く理解していないことがすぐに解ります。

地表から放射される赤外線のうち8~9および10~12μmくらいの波長域は、その多くが大気圏外へ到達します。それはCO2を含め、自然界にある温室効果ガスの殆どがこの波長域の赤外線を吸収できないからです。「大気の窓」とはこの部分を指すわけですね。

また、フロン類などの人工的な温室効果ガスにはCO2換算で数万倍も強力な温室効果があると定義されているものもありますが、それはこの波長域の赤外線もよく吸収してしまう、即ち「大気の窓」を塞ぐガスであるという理由もあるからなんです。

懐疑派のCO2温室効果飽和説の正しくはこうです。

地球から放射される赤外線のスペクトルを大気圏の外から観測したデータがあります。最も有名なのはアメリカの技術観測衛星ニンバス4号によるものですが、これを見ますと15μm近傍の波長域が大きく落ち込んでいるのが解ります。

地表から放射される赤外線のうち、CO2が吸収できる波長域は限られます。その波長域こそ、大きく落ち込んでいる15μm近傍なんですね。しかも、その放射強度は50erg・sec-1・cm-2・sr-1/cm-1を下回っています。これは高空の大気による赤外線放射(220Kの黒体放射に相当)と同レベルです。

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上図のように、サハラ砂漠、地中海、南極と、地表温度が大きく異なり、地表から放射される赤外線の強度も同様に異なっているはずの地域で各々観測してみても、CO2の赤外線吸収帯域である15μm近傍の放射強度は高空の大気による放射強度と差がありません。

従って、地表からの赤外線放射のうち、CO2の吸収帯域は既にCO2によって吸収しつくされ、CO2による温室効果はとっくの昔(このニンバス4号による観測が行われたのは1971年です)に飽和状態に達していた、と考えられる訳です。

こうした実測データに基づくCO2温室効果飽和説が真実なのか否かは殆ど議論されていませんし、検証もろくに行われていません。本来であれば、このような指摘に対してCO2温暖化説の支持者はCO2による温室効果が未飽和であることを証明しなければなりません。

しかし、彼らは「リアルな地球」から放射される赤外線がどうなっているのか精密な観測を行おうとしません。何故、実測データを以て温室効果の状況を評価しようとしないのでしょうか?

その一方で彼らの多くはスーパーコンピュータの中に作り込んだ「バーチャルな地球」を動かし、それがあたかも現実に起こっていることのように主張するばかりなんですね。私もCO2温暖化説を鵜呑みにできないと考えるのは、こうした疑念があるからです。

山本氏は懐疑派のこうした説を退けようとする著述を幾つか摘み食いして書いたのではないかと思われますが、それだけに底の浅さを露呈してしまったようです。ま、結局のところ山本氏もこの温室効果飽和説を覆す論拠は示さず、

正直言って、このへんの議論はかなり専門的で、僕もついていけない。


と、完全にさじを投げています。中途半端に疑義を示し、しかし結論に近づくことすら出来ず、初歩的な知識が欠落していることを露呈し、結果的に恥をかくようなかたちになってしまった訳ですね。山本氏が何を意図してこうした話を持ち出したのか、私の感覚では全く理解できません。

(本当は2回で終わらせるつもりでしたが、もう1回だけつづく)
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『“環境問題のウソ”のウソ』のウソ (その1)

前回のエントリでも述べましたとおり、武田邦彦氏の著書『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(以下『環ウソ』)およびその続編(以下『環ウソ2』)に問題点が多いということは私のような素人でもすぐに気付きました。この『環ウソ』に対して異を唱えたのがトンデモ本の研究を行っている「と学会」会長でSF作家の山本弘氏でした。

山本氏は動画配信サイト「ミランカ」の時事トーク番組である『博士も知らないニッポンのウラ』第10回の「環境問題のウラ」で武田氏と直接対峙しました。が、その時点では知識レベルの差が大きかったせいか、かなりボコボコにやり込められてしまった印象が拭えず、遺恨を残すような感じだったかも知れません。

ま、山本氏がどのような動機で『環ウソ』および『環ウソ2』の批判本を書こうと思ったのかは解りませんが、『“環境問題のウソ”のウソ』(以下『環ウソのウソ』)もあえて言わせて頂くなら、「目くそ鼻くそを笑う」といったレベルでしかない感じでした。

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そもそも、『環ウソのウソ』にはつまらない批判が多すぎるんですね。例えば、武田氏は『環ウソ』の118~119頁で

 記事には「北極の氷が溶けて海水面が上がる」と書いてあるが、北極の氷が溶けても海水面は絶対に上がらない。これは気温が高くなるとか低くなるとかいう問題ではなく、北極のように「水に浮いている氷」が溶けても水面の高さは変わらないという「アルキメデスの原理(浮力の原理)」があるからである。


と述べています。これが「北極海の海氷」について語っているのは小学生が読んでも解るでしょう。しかし、山本氏は『環ウソのウソ』の88~89頁で

ひとくちに北極といっても、海の氷でだけではない。世界地図を見れば分かるが、グリーンランドの大半、カナダ、アラスカ、ロシア、スカンジナビアの北部も、北極圏に含まれるのだ。その陸地にある氷河や万年雪が溶ければ、当然、海水面は上がる。


と批判しています。確かに、武田氏の「北極の氷」という定義は曖昧かも知れませんが、私たちの一般的なイメージやメディアの捉え方も「北極の氷」といったら、それは殆どの場合が「北極海の海氷」を指すでしょう。

気象庁ではIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書を和訳していますが、ここでもやはり「北極」という単語とセットで用いられるのは例外なく「海氷」で、陸地の氷などを含める場合は「北極地方」といった表現が用いられています。例えば、『IPCC 第4次評価報告書 第1作業部会報告書 概要及びよくある質問と回答』(←リンク先はPDFです)の34頁では

北極地方における永久凍土の表層部の温度は、1980年代以降最大3℃上昇した。


と記述されており、やはり一般的な「北極」に対する認識とかけ離れるものではありません。また、この種のレポートで「グリーンランドの氷床」といえば、ほぼ例外なく個別に扱われるものですから、これを「北極の氷」と表現するほうが非常識です。

同様に、『環ウソ2』63~66頁のツバルが水没しそうだという報道に対する部分

 私が最初に調査したときにデータがないのは当たり前だった。まだ国家として独立しておらず、原爆実験がされたような地域で詳細なデータがなかったからだ。


と述べていたくだりに対して、山本氏は

僕はこの文章を読んで首をかしげた。
ツバルの近くで核実験なんてやったっけ?

(中略)

 つまり、ツバルに関するデータが少ないのは、アメリカやフランスの核実験とはまったく何の関係もないのだ。たとえて言うなら、台湾に関する資料が見つからないのを「広島に落ちた原爆のせいだ」と言うのと同じくらい見当違いである。


と批判しています。しかし、これも殆ど読み方の問題だと私は思います。

山本氏も指摘しているように、アメリカが核実験を行ったマーシャル諸島は当時アメリカの信託統治領でしたし、フランスが核実験を行ったタヒチもフランス領ポリネシアです。同様にツバルもイギリスの植民地だったんですね。また、こうした南太平洋の島嶼の多くは旧日本軍に占領されていた歴史もあります。

武田氏はこのくだりでマーシャル諸島についても言及していますから、データがなかったと言っているのは南太平洋一帯の島嶼を総括して述べていると解釈しても無理があるようには思えません。

そういう読み方をすれば、近代化が大幅に遅れ、旧大日本帝国や欧米列強に従えられ、軍事拠点として利用されたり、核実験が行われてきた南太平洋の島嶼で詳細な自然観測など行われず、データがかったのも当然だと読み取ることが出来るわけですね。

このように似通った歴史的背景を持つ南太平洋の島嶼が置かれていた状況を以て武田氏が一括りに述べていたなら、マーシャル諸島やタヒチとツバルとの地理的な位置関係や距離を問題にした山本氏の批判のほうが、むしろ見当違いかも知れません。

あるいは、マーシャル諸島やポリネシアやツバルなど南太平洋の島嶼を一緒くたにした武田氏の扱い方は大雑把で乱暴すぎるとしても、鬼の首を取ったように騒ぎ立てる程のことではないように思うんですけどねぇ。

余談になりますが、太平洋戦争以前の台湾は南太平洋の島嶼のように原始的な文明レベルではありませんでした。当時の台湾は日本の植民地になっていましたが、農業振興が国策となっていたんですね。もちろん、農業には自然環境との擦り合わせが必要ですから、相応のアセスメントも不可欠です。実際、日本の台湾総督府は台湾南部の乾燥や塩害対策としてダムや用水路の建設も行っています。そういう意味では南太平洋の島嶼と台湾は置かれていた立場が根本的に違います。

『環ウソのウソ』にはこうした不毛な指摘や批判が非常に多かったように思います。このような取るに足らぬものを排除していったら、恐らく330頁を超える分量(といっても、終盤70頁ほどは『環ウソ』から離れて地球温暖化問題に関する内容になっていましたから、正味は260頁ほどでしょうか)を確保できず、本としての体裁はかなり薄いものになっていたでしょう。

書店の棚に並んだとき、厚さ約14mmの『環ウソ』と約19mmの『環ウソ2』に見劣りしないようにしたかったのか、その辺の意図は定かではありませんが、紙幅を割いて約18mmの厚さに仕上げてみたら、揚げ足取りや当て擦りの類で水増しされて肝心の内容が薄くなっていたというのでは、かえってお粗末というものです。

とはいえ、『環ウソ』で展開された武田氏のいい加減なデータを丁寧に検討してその実態をあぶり出した点は大いに評価すべきです。特にペットボトルのリサイクルについては参考になるデータが非常に乏しい中にあってよく調べ上げたと思います。『環ウソ』を読んでデータの信憑性に疑いを感じられなかった人は、必ず『環ウソのウソ』も併せて読むべきでしょう。

ところで、同書は上述のように終盤70頁ほどを割き、武田氏の『環ウソ』からは離れて、地球温暖化問題について様々な懐疑論に対抗しています。が、その内容は極めて稚拙で、根本的な勘違いも散見されます。生意気なことを言わせて頂くなら、地球温暖化問題に関する山本氏の認識レベルは私よりかなり劣っている感じです。非常に初歩的な用語も理解できていませんし、全般的な構成もお粗末といわざるを得ません。ということで、詳しくは次回に。

(つづく)

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『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の功罪

名古屋大学大学院教授・武田邦彦氏がよみうりテレビの『たかじんのそこまで言って委員会』に出演して以来、彼の著書『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(以下『環ウソ』)はベストセラーとなりました。

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私は『環ウソ』もその続編も初版を購入して読んでいましたが、実際にデータの出典について調べてみますと、かなりおかしな点があることに気づきました。

また、ダイオキシンはさほど毒性が強くないとする主張もあながち間違いではないと思いますが、実際にダイオキシン類は200種類くらいあり、中には非常に毒性の強いものもあります。なので、これを十把一絡げに論じるのも乱暴じゃないか? という疑問もありました。

LCA(ライフサイクルアセスメント:資源調達から最終廃棄されるまで製品の生涯を通じた環境負荷の評価)をかなり否定的に論じている点も、その根拠が極めて不明瞭で全く同意できません。

ま、他にも気になった点は山のようにありましたが、列挙するだけでも大変な作業になりますので割愛します。

この『環ウソ』が出版されてからしばらくして、PETボトルリサイクル推進協議会から武田氏のデータは捏造されたものとするパブリシティがなされ、『環ウソ』に書かれたデータの信憑性に対する疑いは一層強くなりましたし、レフォ本としては到底使い物にならないと判断しました。

ただ、私の基本的なスタンスは「是々非々」です。『環ウソ』には誤りも沢山ありますが、もちろん全てがそうという訳ではありません。正しいことも沢山書かれています。

また、世間一般の環境問題に関する短絡的な認識を正そうとする姿勢も大いに評価できます。それまで殆ど顧みられることなどなく、「これをやっておけば環境に良い」といった安直な環境指向に一石を投じた功績は見逃せません。

例えば、PETボトルリサイクル推進協議会の公式サイトは私も以前から散々見てきましたが、それまではペットボトルの回収率ばかりを大きく取り上げ、世界最高レベルの回収率だということを強調するばかりでした。また、彼らは「回収率」を「リサイクル率」と称してきましたが、これも欺瞞であると言わざるを得ません。その一方、肝心の再利用状況についてはかなり曖昧なデータしか掲載していなかったんですね。

回収した使用済みペットボトルの処理能力は大きく謳うものの、処理されたそれが具体的にどのような製品としてどれだけ再利用されているのか、といったデータは大雑把な重量換算データが表で示されていた程度で、詳細を追えるような代物ではありませんでした。

こうした状況も手伝って、私はペットボトルのリサイクルに胡散臭さを感じていましたし、「PETボトルリサイクル推進協議会は回収率を自慢するために組織されたのか?」と不満が鬱積していました。

しかし、『環ウソ』による指摘に端を発するかたちで、各メディアからの質問も相次いだらしく、情報開示の状況がかなり改善されてきたのは事実です。これは「怪我の功名」というべきかも知れませんが、結果的には非常に良い効果だったと認めるべきでしょう。

もちろん、『環ウソ』のその論旨を補強するはずのデータがあのいい加減さでは説得力も半減します。また、徒に混乱を招く恐れもあります。そうした懸念はこの『環ウソ』の批判本である『“環境問題のウソ”のウソ』(以下『環ウソのウソ』)を著した山本弘氏と同感です。

SF作家でトンデモ本研究の大家である山本氏の『環ウソのウソ』には『環ウソ』の問題点が子細に述べられています。そういう意味では私の出る幕など殆どないでしょう。私が『環ウソ』に対して気になった点の詳細は割愛させて頂きましたが、その多くがこの『環ウソのウソ』で非常に詳しく検討されています。

が、実はこの『環ウソのウソ』も私の観点から言わせて頂けば、かなり問題の多い本なんですね。ある意味では『環ウソ』より酷いかもしれません。結局のところ両者を読み比べて後は各々が判断していくしかないということになるでしょう。

『環ウソのウソ』についての詳しくは、エントリを改めて述べていきたいと思います。

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当てたヤツ

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今日、業務で横須賀へ行ってきたのですが、いま話題沸騰中のあの船が停泊してました。艦番号177ですから、同型艦の「あしがら」ではありません。まさにヤツです。

いえ、それだけです。

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日本は狭いのか?

日本経済新聞の2008年2月25日の社説から抜粋します。(見出しにリンクを張っておきますが、主旨は全く関係ありませんので、別に参照しなくても良いと思います。)

社説 サミットに向け日本の理念と政策を・低炭素社会への道

(前略)

 乾いたタオルは神話

 日本が国内総生産(GDP)当たりのCO2排出量が世界一低いのは家庭と運輸部門の排出が他の先進国より抜きんでて低いからだ。温暖な気候に加え、狭い家と国土が排出源単位を抑制している。

(後略)


主旨に対しても言いたいことは山ほどありますが、明日から数日間、環境問題がらみの書評を展開する予定ですので、今日のところはスルーします。ということで、私が今回問題にしたいのは「狭い家と国土」という部分です。ま、家が狭いのは確かなので、そこは特に異論ありませんけど。

常々思うことなんですが、日本の国土って狭いですかね?

先週も業務で関西空港へ行ってきましたが、私は北海道から九州まで、日本国内のあちこちに出張します。諸般の事情で東京~盛岡を自動車で往復したこともありますし、プライベートで神戸まで行ったときは、S2000に乗って一般道をひた走ってきました(箱根と鈴鹿のワインディングロードを走りたかったというのもあったものですから)。

ま、自転車で日本列島を縦断してしまう人も沢山いますから、私みたいにクルマに乗って長距離を走っても何の自慢にもなりませんが、それでも十何時間もステアリングを握り続けていると「日本って全然狭くないじゃん」と思います。

逆に、これで狭いと思う向きには「植民地を抱えていたあの時代が普通だったと思ってんじゃないの?」と言いたくなります。「狭い日本、そんなに急いで何処へ行く」みたいなセリフも大昔からありますが、「それはアンタの行動範囲が狭いだけで、日本を知った気になってるだけなんじゃないの?」と思ってしまいます。

日本にも北方領土や竹島、尖閣諸島など領有権問題が色々ありますし、世界的に見ても同様の領土問題は沢山ありますから、集計元の見解によって多少バラツキが生じてしまいますけど、日本の国土面積は世界ランキング60位くらいなんですね。国連加盟国は現在192カ国ですから、単純に国土面積で見た場合、日本は上位1/3に入ります。これはむしろ広いほうと考えるべきかも知れません。

日経の社説のような書き方ですと、日本は先進国の中でも抜きんでて国土面積が狭いように読めてしまいますが、そんなことはありません。ヨーロッパを見渡しても、日本より広い国はたったの5カ国しかないんですから。さすがにロシアは別格ですが、ウクライナは日本の約1.6倍、フランスは約1.5倍、スペインは約1.3倍、スウェーデンは約1.2倍といった感じで、遙かに広い国という程でもありません。もちろん、これら以外のヨーロッパ諸国はいずれも日本より狭いんですね。

ま、人口密度で日本は世界ランキング30位ですから、そういう意味では狭いかも知れませんが、それでもオランダやベルギー、韓国なんかよりマシですし、インドとも大差ありません。日本の現在の憲法では戦争も出来ませんから、国民一人あたりの国土面積を広くしたいと思ったら人口を減らすしかないでしょう。

ちなみに、国土面積に200海里の排他的経済水域を加えたかたちで考えてみますと、日本は世界で9番目の広さになります。排他的経済水域だけなら世界で6番目の広さです。

日本人は常々自国を「狭い」と言いますが、それは一体何を基準にしているのでしょうか?

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間違い電話

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私が会社から支給されている携帯電話はドコモのP506iCIIですが、この電話番号が非常にキレイなんですね。

090-○△□□-☆☆××

という感じで、下6桁が2桁ずつ同じ数字が重なっています。しかも、その数字がかなり縁起が良い感じなんです。そのせいではないのでしょうけど、たまに間違い電話がかかってくるんですよね。

一番多いのがどうも某野党(ATOK2008は「坊や党」と誤変換してくれましたが、ある意味で正しいかも知れません)のテレビにもちょくちょく出てくる有名な某国会議員らしいんですね。「○○先生でいらっしゃいますか?」てな感じでかかってくるんですよ。きちんとデータを取っているわけではありませんが、頻度としてはおおよそ数ヶ月に1回くらいでしょうか?

自分が過去に犯した間違い電話のパターンから類推して、恐らく隣のキーとの押し間違いになると考えられますので、2桁続きの数字を連続して押し間違う可能性は低いように思います。とすれば、「090」の次に来る2桁のうちどちらか1桁が違うだけのような気がします。キーの配置も考慮しますと、5~6通りかけてみればその国会議員の携帯電話の番号が割り出せそうです。

あるいは、今度かかってきたときに「何番におかけですか?」と聞いたら、案外サラッと聞き出せてしまうかも知れません。

これを調べて、しかるべき筋に売ったら金になるかな? なんて思ったりもしましたが、残念ながら「しかるべき筋」といっても具体的に思い当たるルートはありません。

ま、たまにかかってくる超低姿勢の間違い電話で有名政治家気分を味わうのも悪くないかも知れませんね。

さらば、S2000 (その3)

S2000の前に乗っていたユーノス・ロードスターはほぼ2年落ち(20,000km弱)の中古で、前のオーナーがロールケージだの強化スタビだの、少しだけ手を加えていましたので、脚をやり直し、吸排気系のライトチューンを施しました。

手を加えていくとそれなりに変わりますが、もちろん善し悪しもあります。足を固めればコーナリングのフィールは良くなりますが、バンピーな路面でのロードホールディング性能や乗り心地も低下します。ロールして踏ん張ってくれなくなれば、タイヤの性能に頼らないとテールハッピーにもなります。トータルバランスはノーマルに近いほうが良かったでしょうね。

都市伝説の巣窟」でも書きましたが、メーカーの開発の方と話をすると、彼らがどれだけハイレベルなプロフェッショナルか解ります。コストや安全性、扱いやすさなど、いくつものシビアな足枷がはめられた中で様々な要素を高次元でバランスさせ、如何に最適化していくかということを追求するプロ中のプロなんですね。巷のチューニングショップの仕事はそのバランスをあえて崩し、いくつかの犠牲を払いながら部分的な性能を向上させる格好になる場合が殆どかと思います。

S2000の走りはヘタレの私にとってほぼ完成されていました。ピーキーといわれるコーナリングですが、私が無理なく御せるスピード域ではそのピークを越えてしまうことも滅多にありませんでした。路面のμが低いとか、よほどのことがない限りはオンザレール感覚で難なく思い通りのラインで曲がってくれたんですね。

一度だけ、予期せぬテールスライドを経験したことがあります。あれは確か晴海通りを築地の交差点で左折する時でしたが、ちょうど雨が降り始めて路面のホコリが浮いてきた頃合いに、マンホールの蓋だかゼブラゾーンのペイントだかの上でツルッと滑ってしまったんですね。

何もせず流れに身を任せていたら、そのままスピンして反対車線にはみ出し、我が愛車は鉄屑になっていたかも知れません。が、幸いにも身体が自然に反応してくれました。かなりの量のカウンターステアになりましたが、それも半ば無意識だったと思います。戻しが若干遅れた分だけ少しオツリはもらいましたが、総じてさほど不細工な動きではなかったと思います。

若いうちにテールハッピーなスポーツカーで箱根あたりのワインディングロードでヤンチャして、スピンとか色々体験しておくと、こういうときには役立ちますね。傍目には「あのバカ、何でこんなところでドリフトしてんの?」と思われたに違いありませんけど。

S2000も現代のクルマですから、レヴリミットの9000rpmを超過すると燃料カットされます。私もこのリミッターに当てるような若干のオーバーレヴを何度か経験していますが、不調をきたすことも何事もなく、至って普通に動き続けてくれました。ま、誰が扱うか知れない市販車ですから、相応のマージンは見てあるのでしょう。昔のF2みたいにメカニックに叱られるような気むずかしいレーシングエンジンとは根本的に違うようです。

正直なところ、ロードスターは絶対的な性能が高くない分だけ、私のようなヘタレでもあまり危険のないスピード域で限界付近の挙動を楽しむことが可能でした。が、S2000はそのハイポテンシャル故、非常に限界性能が高く、公道で合法的にそれを楽しむことが難しいクルマといえるかも知れません。少なくとも、私にとってはそんな感じです。

私がS2000に乗らなくなった最大の理由は自転車熱が再燃したことにあります。S2000を買うため、目標金額400万円の貯金に一所懸命励んでいたときはチューニングだドレスアップだ何だかんだと色々夢想していましたが、実際に手に入れて走ってみると、その必要性をあまり感じず、自然にお金が自転車の方へ流れていった感じでしょうか?

最近は追い打ちをかけるようにガソリンの値段も上がりました。天候が悪いとか荷物が多いとか、そういうことでもない限り、片道20km程度の近場なら例のクロスバイクで事足りるようになって(そういう風に身体も出来てきたのだと思います)、昨年1年間の走行距離は恐らく2,000km前後に落ち込んでいたのではないでしょうか?

あとは以前にも書いたとおりで、自転車を積めるクルマではありませんし、もっと走ってくれるオーナーに飼われたほうが彼も幸せでしょうし、それなりに高く売れるうちに売ってしまったほうがお得かな? という思惑もありましたし、そんなこんなで手放すことにしたんですね。

腰高なプロポーションやフロントバンパー下左右にあるダミーのエアインテークは私の第一印象を悪くさせる大きな要因でした。デジタルメーターも私の理想とするスポーツカー像には当てはまりませんし、さほど低くないシートポジションも好ましくない部分でした。リヤサスのジオメトリが気に入らないのも前回詳しく述べた通りです。S2000は私にとってパーフェクトだったとはいえません。

しかし、あのS2000はホンダが創業50周年を記念し、その集大成とする渾身の1台だったと思います。フロアパネルも、エンジンも、トランスミッションも、全て専用のものを開発し、他への転用は全く視野に入れず、故にそれぞれが非常に贅沢でマニアックなスペックを誇っていました。

現行の2.2リッターはかなり毒抜きされ、コストダウンもされているようで、私のハートを揺さぶる多くの要素を捨ててしまいました。やはり、私の愛車だったS2000は私にとって愛すべきスポーツカーだったと思います。

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某買取業者に引き取られていく我が愛車の後ろ姿

彼は今日、私の許を去りました。「次のオーナーにはたっぷり走ってもらい、たっぷり可愛がってもらえよ」と思います。

(おしまい)

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さらば、S2000 (その2)

S2000に乗ってまず驚いたのはボディ剛性の高さでした。「ホンダのボディは剛性が低い」という都市伝説は私が中学生の頃からありました。いえ、私が中学生の頃は都市伝説とはいえなかったかも知れませんが、いずれにしても、S2000のあの剛性は量産メーカーが普通に作っているオープントップの量産車としては世界最高レベルでしょう。専門誌などでも「ポルシェ・ボクスターを凌駕している」という評を何度か見かけたことがあります。

私の場合、それまで乗っていたのがユーノス・ロードスターでしたから、さらに比較対象が悪かったかも知れません。あれは幹線道路などの轍が酷いところで車線変更したり、段差を斜めに越えるときなど、シェイクする感じがありました(脚まわりを固めるとその印象はより強くなると思います)。なので、初めてS2000を走らせたときは、想像を遙かに上回る剛性の高さに感動したものです。

一時期、父がソアラ(レクサスSC430)に乗っていたので、何度か借りて乗らせてもらいましたが、あれもオープンにしてはかなりの剛性でした。ただ、あの剛性感はS2000とは明らかに違う印象でしたね。ソアラのプラットフォームはアリストの派生です。4ドアセダンのフロアパネルに手を加え、しこたま補強材を仕込み、物量作戦でガッチリ作った感じです。それ故、ソアラは1800kgに迫る超重量級です。

もっとも、こうした手法は量産オープンカーの作り方として至極一般的といえるでしょう。フェアレディZもホイールベースを詰めるなど色々手は加えられていますが、プラットフォームはスカイラインなどとの共用です。そのZのロードスターも屋根を切って剛性が落ちた分、ブレースを仕込んで補っていますから、クローズドボディより200kgも重い1600kg程になっているんですね。

S2000はセダンとの共用など眼中にない専用のプラットフォームで、バックボーンフレームに似た太い太いセンタートンネルと高く分厚いサイドシルなど、基本構造で剛性を高めています。3ナンバーのボディサイズながら1200kg台前半に抑えられていたのはそのためなんですね(現行の2.2リッターは若干重くなっていますが)。

こうしてみますと、S2000は恐ろしく贅沢なクルマといえるでしょう。きょうび、年産1万台に届かないスポーツカーに専用プラットフォームを与えるなど、普通の量産メーカーでは他に殆ど例がありません。あのポルシェでさえ、ボクスターケイマンはもちろん、前半分は911とも共用になっている時代ですから。


同様に驚いたのはギヤボックスの出来の良さでした。ユーノス・ロードスターのそれもダイレクト感はかなりのレベルでしたが、所詮は2リッターのルーチェ用(すなわちタクシー用)がベースでした。特に冬場の寒い朝など、走り始めてまだ暖まっていない最初の15~20分くらいは、まるでノンシンクロのような悪癖もありました。素早くスムーズにシフトさせようと思ったらダブルクラッチが必須という有様だったんですね。

S2000はギヤボックスも非常に贅沢なものでした。一般的なマニュアルギヤボックスの場合、インプット/カウンター/アウトプット各々のシャフトの回転差がそれなりにあるため、シンクロの負荷もそれなりです。が、S2000はカウンターシャフトとアウトプットシャフトの間に独立した2次減速機構を設けることで、一般的な1次減速型よりもシンクロの負荷を軽減させているんですね。

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赤で示したギヤがIRS(2次減速機構)

しかも、2速はトリプル、1・3・4速はダブルシンクロでした。何故「でした」と過去形にしたかといいますと、現行は1・2速のみダブルで、他は全てシングルと、かなりスペックダウンされているからです。2リッター時代のS2000ほど贅沢なマニュアルギヤボックスが量産されることは今後二度とないかも知れません。極上のシフトフィールを味わいたいのであれば、2.2リッターになる前の中古のS2000を求めたほうが良いと思います。


では、エンジンは? 吹け上がりは素晴らしいものの、普通に街乗りで流れに乗っているときなど、低速域主体で走っている分にはパンチもなく、かなり大人しい印象です。もちろん、現代の市販車ですから、アイドリングが乱れたり何だかんだグズったり、昔のスポーツカーやカリカリにチューンしたエンジンみたいに神経質なところは一切ありません。オイルメンテナンスをちゃんとやっておけば、一般的なファミリーカーのように乗りっぱなしOKという、普通にイージーなエンジンです。

ホンダお得意のVTECという可変バルブタイミング機構(ま、いまどきは他社も普通にやってますけど)が高速側に切り替わるあたりから、「ホンマに自然吸気かいな?」と思うようなパワーを発揮してくれます。普段使いで常用域となる中低速の回転域では特に感動もありませんが、これだけ高速重視でレーシーなエンジンですと、VTECのようなカラクリがなければ中低速は恐ろしく低トルクで、かなり乗りにくいエンジンになっていたでしょう。低速でも普通に乗れるだけで御の字ですね。

高速側のカムに切り替わるのは7000rpm台後半からで、レヴリミットは9000rpmですから、私の技量でこの間に回転数を維持するのは難しいことですし、この回転数で3速以上に入れると、公道では殆ど非合法なスピードになってしまいます。ということで、このエンジンの本領が発揮できる場面は非常に限られてくる訳ですね。自動車評論家のT大寺氏が「オタク」と評したのもよく解かります。

ちなみに、現行の2.2リッターはレヴリミットが8000rpmまで落とされ、3000rpm辺りからかなりフラットなトルクカーブを描くようになりました。オタク度を下げ、中速域からもパワー感を演出し、普通の人にも解りやすいスポーツカーにしようという意図かも知れません。ギヤボックスのコストダウンもそうですが、エンジンのアレンジも最初からこうした格好であったなら、私はS2000を買わなかったかも知れません。


S2000のコーナリングはピーキーだといわれます。その主な理由はリヤサスをストロークさせると対地キャンバーの変化が大きくなるからでしょう。S2000は前後ともダブルウィッシュボーンで、リヤは上下ともモノコックにリジット結合されたサブフレームに取り付けられています。ボディ剛性を重視したためか、左右のリヤサイドメンバーのスパンが広めになっているせいで、そこに取り付くアッパーアームがかなり短いんですね。

s2000rsus.gif
S2000のリヤサスは青で示したロワーアームに比べて
赤で示したアッパーアームのほうが遙かに短い


かつて、ランチア・ストラトスのプロジェクトに途中から参加したジャン-パウロ・ダラーラは、即座にリヤサスをマクファーソン・ストラットに変更するよう提言しました。彼は逆台形のフレーム構造でダブルウィッシュボーンに拘ると、アッパーアームが極端に短くなって対地キャンバーの変化が大きくなり、挙動がピーキーになることを看破していたんですね。これはS2000が発売される30年近く前の話です。コンペティションで勝つことを目的として開発されるマシンはセオリーが最優先されるという良い見本かと思います。

しかし、S2000のような商品車はセオリーよりもカタログ映えのする方式を採用し、商品力を持たせるのがメーカーの判断としては正義なのでしょう。私はこうした子供騙しな発想を好みませんが、マーケットは私のようにオタッキー(死語か?)な人間が極めて少数派ですから、文句も言えません。

アフターマーケットで売られているS2000用のサスペンションキットは特にリヤをあまりストロークさせないようなチューニングになっているケースが多いのも、こうした理由によるのでしょう。もっとも、私の未熟なドライビングスキルでは、そうしたチューンの必要性も感じませんでしたけどね。

(もう1回だけつづく)

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さらば、S2000 (その1)

現在のF1ドライバーはF3で実力を示して(あるいはF3に参戦しながらF1のテストドライバーとなって)F1へステップアップするというパターンが非常に多いかと思います。が、そうした道筋を作ったのはアイルトン・セナです。彼以前はヨーロッパF2選手権を経てF1へステップアップするというのが一般的でした。

F2の跡を継いだF3000は、F1に上がり損ねたドライバーが次のチャンスを窺うカテゴリーのようになっている昨今ですが、かつてのF2は目の前にF1という最高のステージが待っている分だけ、若い選手の熱い走りが見られる面白いカテゴリーだったと思います。

1980年代初頭、ホンダがそのF2にV6エンジンを供給し、それまでディファクトスタンダードだったBMWの直4は常に後塵を拝すかたちになりました。全日本F2選手権も同様で、ホンダと懇意だった中嶋悟は1984年から3連覇を果たし、1987年からホンダの肝いりでF1へステップアップ、ロータスのセカンドドライバーとして日本人初のフルエントリーにこぎ着けました。

1986年は中嶋が日本国内で活動する最後の年でした。と同時に、全日本F2選手権も最後の年でしたから、ホンダV6・2リッターエンジンにとっても最後の年でした。また、富士スピードウェイも筆頭株主だった三菱地所がテーマパーク建設のためにサーキットを閉鎖する旨パブリシティし、反対運動が加熱していた時分でもありました。

もしかしたら富士スピードウェイも間もなく失われるかも知れないという雰囲気もあり、私は友人を誘って富士スピードウェイへ最後の全日本F2選手権を見に行きました。まだ高校2年生でしたから自動車の運転免許もなく、高速バスに乗って、安くあげるためにパドックパスも諦めました。ま、高校生の小遣いですから、こんなものでしょう。

でも、前座のレースに参戦していたRE雨宮の雨宮さんがパドックの外で談笑していたところに遭遇し、写真を撮らせてもらったりして、メインイベント以外にも非常に良い思い出が沢山出来ました。モタモタしていたお陰で帰りのシャトルバスに乗り遅れ、高速バスの停留所までの足を見つけるのにはかなり苦労しましたけど。

march86j-honda.jpg
March 86J Honda

このとき、中嶋がドライブしていたマーチ86Jホンダに搭載されていたRA266Eという最強のF2エンジンはレヴリミットが11,000rpm程で、最高出力は330psを超えていたそうです。が、相応にデリケートで、ドライバーがレヴリミットを少しでも超過させてしまうと、メカニックにこっぴどく叱られたといいます。

余談になりますが、ホンダの第2期F1活動の当初は、このF2用のエンジンがベースになっていました。クランクを替えてストロークを短縮、総排気量を1.5リッターに減らしてターボで過給していたんですね。こうしたパターンはBMWもルノーもハートもやっていた当時の常套手段だったんです。

かつて、若かりし頃の私が憧れていたのはフェラーリでもなくポルシェでもなく、ホンダのレーシングエンジンでした。殊に第2期F1活動につながるF2エンジンは私を大いに魅了しました。中学時代に田宮模型から「ホンダF2」の名で発売されていたRCカーのキット(ボディに断りはありませんでしたがラルトがモチーフだったと思います)を組んで走らせていたことも、それに対する思い入れにつながっていたでしょう。

ホンダというブランド、そしてそのエンジンは私がもっとも多感な時代の憧憬が詰まっています。S2000のエンジンは、同じ2リッターエンジンとして最強の名をほしいままにしたそれよりシリンダの数が2つ少なく、レヴリミットは2000rpmほど低く、最高出力も公称で80ps(正味は100psくらい?)低いエンジンでしたが、私にとっては特別な存在だったわけです。

(つづく)

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圧搾空気で走るクルマ

当blogでクルマのネタというと、プリウスかタタに集中してしまって恐縮ですが、かなり妖しげなニュースが飛び込んできましたので、個人的な感想を述べておこうかと思います。

インド・タタ、世界初の空気動力自動車…燃費リッター50キロ
年内にもニューデリーなどに投入

1月に約29万円の低価格車「ナノ」を発表したインドの自動車大手、タタ・モーターズが、フランスのベンチャー企業が開発した世界初の空気動力乗用車「OneCAT(ワンキャット)」の製造、販売を計画していることがわかった。英メディアが伝えた。

 新型車はインド国内で製造し、早ければ年内にも、ニューデリーなど人口過密の都市部の市場に投入。周辺国にも輸出する。

 英公共放送BBC(電子版)などによると、OneCATは、仏ベンチャー、MDIエンタープライゼズ(カロス市)が基本技術を開発。車体のシャシーに設置されたタンクに圧搾空気を満たし、動力とする。

 都市部の短い距離を移動するだけなら圧搾空気だけで間に合うが、長距離走行時にはガソリンなどの燃料でピストンを動かし、圧搾空気を補充する。時速50キロを上回るスピードが出るという。

(後略)

(C) FujiSankei Business i. 2008/2/19


以下要約しますと、GFRP製ボディで350kgまで軽量化し、燃費は50km/Lを豪語、価格も50万円ほどと伝えられています。詳しくはヘッドラインのリンク先をご参照ください。

onecats.jpg

タタが圧搾空気動力車のライセンスを取得したというニュースは昨年の7月にも流れていましたが、その動力システムを開発したフランスのMDIエンタープライゼズなるベンチャー企業はかなり胡散臭い会社なんですね。

5年くらい前に同社のMiniCATsというモデルがエアーカージャパンというところから日本でも発売されるとアナウンスされました。300気圧の圧搾空気を蓄え、それで水平対向ピストンを駆動、連続走行距離約170㎞、最高速度110㎞/hを豪語、エアコンやABSも装備して約90万円の販売価格が示されたうえ、2004年11月には日本国内生産もスタートするとのことでした。

が、間もなくエアーカージャパンのサイトは閉鎖され、話も霧散してしまいました。ね、もの凄く胡散臭いでしょ? だいたい、自動車が170kmも走れるほどのエネルギーを蓄えられるエアータンクがあるなら、野外で圧搾空気を使う業種(例えば建築とか土木とか)でバカ売れするでしょうから、わざわざ自動車なんか作らなくても大儲けできると思います。


実は、電力業界では夜間や休日などオフピークの余剰電力を利用して圧搾空気でエネルギー貯蔵するCAES(Compressed Air Energy Storage)というシステムがすでに実用化されています。ドイツのフントルフ(1978年より稼働)や、アメリカのマッキントッシュ(1991年より稼働)など、商用プラントもいくつかあるんですね。

でも、世界的にはあまり普及していません。特に、高圧空気貯蔵空洞の気密性と安全性を確保しつつ、いかに経済的にこれを建設するかが大きな課題となっているからなんですね。海外の事例ではいずれも地下の岩盤層に貯蔵空洞を作って数十気圧の圧搾空気を蓄える方法がとられています。が、地震国である日本ではまだパイロットプラントの稼働で安全確認のための実験がなされたくらいです。

しかも、CAESはさほどエネルギー効率が良くありません。先進国であるドイツKBB社の施設の場合、これによるエネルギー損失は50%程度だといわれています。つまり、圧搾空気を作って貯蔵し、その圧搾空気から得られるエネルギーは元の半分程度に低下しているということです。通常の余剰電力は貯蔵せずに捨ててしまうケースが殆どですから、半分でも蓄えられるというのはメリットがあるでしょうけど。


さて、タタが実用化すると報道されている圧搾空気動力車ですが、元ネタはBBCの電子版だそうです。イギリスの公共放送ではありますが、MDIのサイトにあるOneCATのスペックと食い違うところも多々ありますので、どこまでアテになる報道なのか現時点では何とも言い難いところです。昨年の報道からタタとMDIとの関係に脈絡がないわけではありませんが、実用化となるとやはり「ホンマかいな?」と思ってしまいます。

上述のCAESは回転運動で動力を取り出すガスタービンによりますが、それでもエネルギー効率は良くありません。さらに損失の多いピストンエンジンでの効率はいかばかりでしょうか? 果たして圧搾空気動力車は本当にエネルギー効率の優れたクルマといえるのでしょうか? 50km/Lと称する燃費は本当に実現可能なのでしょうか? 個人的には大いに疑問です。(といいますか、本心では「嘘こけ」と思っています。)

タタ・ナノ、ヨーロッパへ?(その2)」の結びで「こういう野心的なメーカーにはそれなりの結果を出してほしいと願っています」と書きましたが、それもやり方次第です。このニュースでは詳細がつかみきれませんので、どこかの段階で錯誤があって、振り回されているだけかも知れません。が、その責めがタタにあるのならば、私は彼らを少々過大評価し過ぎたかも知れません。

私の座右の銘は「君子は豹変す」です。自分の読みが誤っていたら速やかにそれを認め、見解を改めるのに抵抗はありません。



2008年5月7日追記

このエントリの内容は不完全な(というより誤った)報道によって生じた誤解を元に書いてしまったようです。後に調べて解った内容を踏まえ、続報というかたちをとらさせて頂きましたので、是非そちらもご一読下さい。→続報「エアカーの実態

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あの人もプリウス

ジェーン・フォンダとか、アンソニー・ホプキンスとか、トム・ハンクスとか、ダリル・ハンナとか、ジム・キャリーとか、キャメロン・ディアスとか、レオナルド・ディカプリオとか、オーランド・ブルームとかとか・・・

ハリウッドスターがこぞってプリウスに乗っているとか言われても、「売名行為ちゃうん?」なんて眉唾で見てしまいがちです。ま、子供の頃から天の邪鬼だのひねくれ者だのと誹りを受けてきた私の見解ですから、適当に受け流して頂きたいと思いますが。

アチラ側の人がどういうライフスタイルであっても私は全く興味ありません。が、コチラ側の人となれば話は別です。まして、それが憧憬の的であった人となれば、「オマエもミーハーだなぁ」とバカにされても、開き直れるものです。

日本の非メーカー系レースカー・マニュファクチャーの老舗であるムーンクラフトの代表、「違いのわかる男」(って、もう四半世紀近く前のCMですが)あの人も普段の移動用(特に東京~御殿場の往復)に乗っているそうなんですね。

日本の自動車誌の草分けである『カーグラフィック』で、かつて連載されていた同氏のコラムが私は大好きで、その一部が単行本になったと聞いたときは小躍りしながら書店に走ったものです。

何でも、ああいう世界の人ですから、高速道路も大人しく走らないそうで

僕が現在乗っているプリウスは僕の運転でも17km/リットル?!
みんなには「燃費悪~い」って言われますが、高速道路利用が50%を超えている僕の場合はアクセル全開率が高いので、プリウスのいい所が全く生かせないんですよね。 それでも17km/リットルは凄い数値だと思います。


だそうです。

さて、そんなに高速道路利用頻度が高いなら、由良さん得意の空力的味付けが活きるんじゃないか!!
空気抵抗の低減は市街地じゃ生かせないけど・・・そんな思いつきで、「エアロプリウス・YURASTYLE」を考えました。
今後の展開にご期待ください。


ということで、「エアロプリウスプロジェクト」がスタートしていたのだそうで、先月11~13日に幕張メッセで開催されていた「東京オートサロン2008」にも出品されていたのだそうです。

aero_prius.jpg
Aero Prius Yura Style

作った本人も自認しているようですが、雰囲気的にはボンネビルなどのスピードトライアル用モディファイに通じるようなテイストを感じます。真面目っぽいプリウスにこういうアプローチはなかなか面白いですね。ま、自分のクルマに施したいとは思いませんけど。

などと書いたところで少々気になったので調べてみましたら、トヨタは3年前、ワークス体制でボンネビルに挑んでいたんですね。

LandSpeedPrius.jpg
Land Speed Prius

かなりローダウンさせてますが、ドアミラーレスでホイールカバーが装着されている以外、外装はノーマルに見えます。ま、元々空気抵抗係数Cd:0.26という量産車としてはかなりのレベルにあるクルマですから、地上高を下げて車体下部の気流速度を上げ、揚力を抑える方向で良いと考えたのかも知れません。

このとき、彼らはハイブリッドカーの世界記録となる130.794mil/h(約210.5km/h)に達したそうです。ま、当時はライバルが殆どいませんでしたから、この数字にどれだけの意味があるかは解りませんが。


さて、日本の新車販売は期末に自社登録も辞さない醜いシェア争いを展開する業界でもあります。それに間に合うようなら通常より大きな値引きも期待できますが、プリウスの納期は在庫がなければ最短で1ヶ月程だそうですから、このタイミングはかなり微妙かも知れません。

私の場合、前職のツテでトヨタグループにも人脈がありますので、とりあえず根回しをしておきました。上手くすれば時期はあまり関係なく有利な商談に持ち込めるかも知れませんが、まだよく解りません。

実は、先日S2000の売却契約を済ませてしまいました。かなり値落ちしない車種だという認識はありましたが、私の場合は距離も伸びていませんので想像以上に高値が付きました。追い金もキャッシュですぐに用意できる程度です。

最後に箱根あたりをひとっ走りして来ようかとも思いましたが、それをやってしまうと後ろ髪を引かれそうなので、今度の日曜日の午前中にお別れすることにしました。

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「敵対的買収」3周年

2005年2月8日(火)午前8時過ぎ、ライブドアが時間外取引でニッポン放送の発行済み株式約29.5%を取得し、既得分を合わせて35%を占める事実上の筆頭株主となりました。このとき、ライブドアはニッポン放送の経営に関与する意思も明示し、逆に寝耳に水だったニッポン放送およびフジサンケイグループは不快感をあらわにしました。

私はこうした状況から翌9日の朝刊には「敵対的買収」という見出しが躍るものだと確信していました。

ところが、新聞やテレビの報道番組など、大衆メディアは一切この「敵対的買収」という言葉を用いませんでした。何故? このとき私の頭の中を脳内メーカー的なグラフィックで表現するなら「?」で埋め尽くされていたでしょう。

しかし、よくよく考えてみますと、私がそれまで「敵対的買収」という言葉を見聞きしていたのは『Newsweek』誌やCNNなど海外のメディアばかりでした。

この騒動で様々なところからコメントが寄せられましたが、自動車メーカーかどこかの重役が「こうした敵対的なやり方は・・・」みたいな話があったのは記憶していますが、メディア自身の言葉として当初は「敵対的」という表現が全く使われていなかったんですね。

なので、私はどこが最初に使うかウォッチすることにしました。ま、そうはいっても全てのメディアをチェックできるわけではありませんので、新聞5大紙や主なテレビの報道番組をチェックしていたに過ぎませんが。

結局、一番乗りは日本経済新聞でした。3年前の今日、2月19日(土)の朝刊に初めて「敵対的M&A」というヘッドラインを付けました。実にライブドアがアクションを起こしてから11日も経過していたんですね。日経と提携しているテレビ東京系の報道局もその日のニュースから「敵対的」という表現を使い始めました。

他紙や他の民放各局もその週明け2月21日(月)くらいまでには出揃った感じでしたが、最も遅かったのは案の定、NHKでした。

NHKは新型肺炎(正しくは重症急性呼吸器症候群)も略称の「サーズ(SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome)」をなかなか使わなかった過去がありましたので、予想通りでした。彼らが「敵対的買収」という表現を初めて使ったのは2月23日(水)からでしたから、実にライブドアがアクションを起こして半月も後のことだったんですね。

要するに、それまで「敵対的買収」という言葉は殆ど財界専門用語だったということなのでしょう。一介の会社員である私ですら知っていた言葉なのですから、大手メディアの経済部の記者なら知らないわけがありません。内々に検討して「敵対的」という刺激的な表現をしばらく自粛していたのかも知れませんね。

しかし、その一方で例の攻防がこう着状態になってくると「ポイズンピル」だの「ホワイトナイト」だの「レバレッジド・バイアウト」だのといった用語を連発するなど、中には面白がっているような雰囲気もありましたので、「やっぱりミーハーな奴らだな」なんて思ったりもしました。

結局、ライブドアとフジテレビのニッポン放送株争奪戦でつぎ込まれた資本は、日本国内においてはかなりの額といえたでしょうが、それでも時価総額で2000億円に達しない程度だったかと思います。

cx_livedoor.jpg
和解記者会見でメディアの求めに応え
握手を交わす堀江貴文と日枝久


日本の大衆メディアは救いようのない国際ニュース音痴なので期待するのは無理なのでしょうけど、2000年にボーダーフォンがマンネスマンの敵対的TOBに成功したあの携帯電話戦争の一件をきちんと報じていれば、ニッポン放送株争奪戦もかなり違ったスタンスで受け止めることが出来たのではないかと思います。

何しろ、ボーダーフォンがストックカレンシー(株式交換)で取得したマンネスマン株の時価総額は実に19兆円、ニッポン放送の時に動いたそれとは桁が2つも違ったんですから。

(余談になりますが、マイクロソフトが提案した買収額4兆円をヤフーが過小評価されたと受け止めたのも、ヨーロッパローカルの携帯電話会社(ま、マンネスマンの本業は鉄鋼ですけどね)が買収されたときのそれに比べて1/5程度の金額ですから、無理もないと思います。)

あの一件はヨーロッパのメディア、殊に当事国の英独では、それこそ「第3次世界大戦は企業同士の経済戦争だった」くらいの勢いで伝えられていました。日本のメディアが何故あの一件を殆ど伝えなかったのか私には解りませんが、もしマトモに報道されていたなら、ライブドアの一件でも「敵対的買収」という言葉が速やかに使われたでしょうし、もっと冷静でいられたと思うんですけどねぇ。

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ノロウイルス克服

自宅でメインに使用しているPCにはATOK2005がバンドルされており、特に不満なくそれを使ってきました。

もう1台の古いほうにはATOK13がバンドルされていましたが、最近は専らムービーファイルのエンコードなど時間がかかる作業とか、広いモニタを生かしてタブレットを使った作業などがメインとなっていました。文書作成などには使わないこともあって、IMEの出番も殆どなく、アップグレードの必要性は一切感じていませんでした。

会社のPCも長文入力はさほど多くなく、むしろ専門用語の入力が多いので、長年ユーザー辞書を鍛え込みつつ、デフォルトのMS-IMEをそのまま使っていました。が、最近は昼休みや休憩時間などに当blogの原稿をチェックしたり、ザックリ草稿を書いたりするなど、以前と状況が変わりました。あの誤変換の多いアホっぷりにはさすがに辟易してきたので、「やっぱATOKにするかな?」と思うようになってきたわけです。

また、自宅のATOK2005のほうで「ノロウイルス」を「呪う居留守」と誤変換され、「やっぱ、これもそろそろバージョンアップしたほうが良いかな?」と思うようになりました。

すると、まるで狙っていたかのようにベックルのソフト情報メールサービスから「ATOK2008ダウンロード版6,615円(税込)」という広告が舞い込んできたので、導入することにしました。

ATOK2008.jpg

普通に使っている分には文節の認識精度がやや上がったかな? という程度ですが、元々ATOK2005もMS-IMEよりずっと良くできていましたから、劇的に性能が上がったという印象は殆どありません。

ただ、「ノロウイルス」も一発変換されるようになりましたし、新語・流行語などをはじめ、固有名詞や人名などもかなり増え、単語のほうは強化されていることがはっきり感じられます。米民主党大統領候補の「バラク・フセイン・オバマ」は「バラ区・フセイン・小浜」になってしまいましたが、「ヒラリー・クリントン」は一発でしたし。

(ちょっと脱線しますが、「おばま」つながりで福井県の小浜市がオバマ氏を応援しているというニュースはアメリカにも伝えられているそうで、AFP伝のそれはYahoo!USAの全米ニュースアクセスランキングで2位になったそうです。アホですねぇ。小浜市のホテルせくみ屋の女性スタッフ2人もまさか自分たちの写真が全米で見られているとは思わなかったでしょう。)

ま、こうしてPCのIMEの性能が向上していくほど、私の頭の中のIMEの性能は低下していく訳です。世の中というのは、良くも悪くも自然にバランスが取れていくものなんですねぇ。

タタ・ナノ、ヨーロッパへ? (その2)

ヨーロッパ進出を目指すタタにとって、大きな壁となり得るのはブランドイメージです。というのも、北米市場と違ってヨーロッパはかなり保守的なんですね。チープカーといえど、一朝一夕ではなかなか認めてもらえない可能性も考える必要があるでしょう。



あくまでも個人的な見解ですが、現在のタタのブランド力では、現状のヨーロッパ市場にすんなり受け容れてもらえないように思います。ま、私は専門家ではないので明言できませんが、頑固なヨーロッパ人たちの購買欲をそそるブランド力をたかだか4年で身につけられるとは考えにくいですね。

あえて厳しい言い方をさせて頂くなら、彼らはグローバルマーケットを少々甘く見ているような気もします。ヨーロッパで成功したいと本気で考えているのなら、まずやるべきことは現地に開発拠点を構えることです。

ヒュンダイは比較的短期間に成功したと思いますが、その最大の要因はドイツに大規模なR&Dセンターを構え、ヨーロッパ向けの車種の多くをそこで開発してきたからでしょう。現地のスタッフを動員し、綿密なマーケティングリサーチを行い、現地で求められているものを現地で吸い上げ、現地法人に大きな裁量を与えることで、リニアに対応できたからだと私は考えています。

hyundai_eurodevelop.jpg
現代起亜ヨーロッパ技術研究所

台湾の2大自転車メーカーであるジャイアントメリダの成功も全く同様ですね。やはり現地法人をつくり、R&Dセンターなりデザインセンターなりを構え、しっかりとした基盤を整備してきたからだと思います。価格性能比が優れているからだけではないでしょう。

では、タタの場合はどうでしょうか? 私の知る範囲ではトラックなど商用車の販売拠点以外、ヨーロッパにはろくな足がかりがないというのが現状かと思います。これでは分厚い壁に弾き返されるのがオチではないかと私は予想します。 

この予想が的中しないこと祈りましょう。いえ、本当に祈っているんですってば。


(訂正:ナノのスタイリングはイギリスに拠点を置くタタのデザインチームで行われたそうです。)

これまで私はタタという自動車メーカーに色々注文をつけてきましたが、それは見るべきところがあり、論じるべきところがあるということで、それなりに彼らを評価しているからです。

ナノはトータルで見てさほど驚異的なクルマとは思えませんが、オリジナリティは認めるべきでしょう。殊に、それをキットフォームで出荷し、各地の下請業者をアッセンブリー工場として現地で組み立て、販売していくというアプローチは非常に興味深いものがあります。

こういう野心的なメーカーにはそれなりの結果を出して欲しいと願っていますし、アジアの新興自動車メーカーの手本となって欲しいとも思います。コピー三昧の中国の自動車工業界は彼らの爪の垢でも煎じて飲めと声を大にして言いたいですね。

(おしまい)

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タタ・ナノ、ヨーロッパへ? (その1)

タタってどうなの?」のエントリで「少なくともナノが日米欧の成熟したマーケットで売れるクルマでないのは間違いない」と書きました。が、どうもヨーロッパ進出を狙っているようなんですね。

タタ、4年以内に欧州でも「ナノ」を発売

タタ・モーターズは、今年1月のデリー・オートエキスポで発表した超低価格車「ナノ」を、4年以内にヨーロッパでも発売することを計画している。同社ナノ・プロジェクトのチーフ、ギリーシュ・ワグ氏がドイツ誌フォーカスに語ったところによると、欧州の排出ガス規制「ユーロ5」に準拠し、欧州の衝突安全基準を満たした欧州向けのナノを開発するという。
今秋インド市場に導入される第1世代ナノの燃費は、リッター20キロ。しかしワグ氏は「我々はこれに満足していない」と語り、同社のエンジニアはこれをリッター33キロ(3リッターで100キロ)とすることを目標に開発を続けているという。

フォーカス誌は、タタ・モーターズは最終的に年間100万台の生産を目標としていると報じている。

(C) VOICE OF INDIA 2008/02/12 Tuesday 10:39:07 JST


こうしたチープカーが売れるマーケットがヨーロッパにあるのなら、とっくの昔に日本の軽自動車メーカーが圧倒的なシェアを握っているような気もします。「チープカーは中古車と競合する」という話は以前にしたとおりで、クライスラー・ネオンは「それまで中古車しか買えなかった階層に新車を買うチャンスを与えた」ということが成功の要因と見られています。が、むしろ失敗例のほうが多いんですね。

例えば、1991年にフィアットは東西冷戦の終結で市場開放された東欧向けの戦略車として700ccと900ccのチープカーを企画しました。フィアット・チンクェチェントといいますが、ダンテ・ジアコーザの、あのキュートなリヤエンジン車ではありません。典型的なフロントドライブの2ボックス車で、名称も「500」ではなく「Cinquecento」と表記されていました。(余談になりますが、ナノも2気筒エンジンのRR車ですから、フィアット500と同じ構成になります。ま、そういう意味では前時代的というべきかも知れません。)

Cinquecento.jpg
Fiat Cinquecento

これが見事に大ゴケし、後に西側向けのアップグレード車が企画され、1100ccエンジンを搭載するに至りました。が、やはり販売台数はフィアットの思惑通りに伸びず、1998年に生産が打ち切られました。イタリア国内向けにエレットラという電気自動車仕様も投入されましたが、これは実験モデルとしてフィアットの最廉価車が利用されたと考えるべきでしょう。

また、「欧州向けのナノを開発するという」くだりを「新興マーケット向けのチープカーではなく、成熟したマーケットへ向けたパーソナル・シティコミューターを開発する」と解釈しても、容易なことではないと思います。何しろ、世界最古参のダイムラーでさえ、そうしたアプローチで興したスマートが成功しているといえるような状況ではありませんから。

いまやスマートの累積赤字は4000億円にも達していると見られ、親会社ダイムラーAG撤退の噂も絶えません。2年前にはイタリアのピアジオ(スクーターのベスパでお馴染みのあのメーカーです)へ身売りする噂もまことしやかに流れました。

ただ、近年は原油価格高騰と環境意識の高まりから、世界的にコンパクトカーが見直されてきているのも事実です。タタが目指している33km/Lという燃費が本当に実現できるならば、それはそれでヨーロッパのマーケットへ売り込む大きなバリューとなるでしょう。タタが時代の波に上手く乗ってブレイクするというストーリーも考え得ることです。

プリウスやシビックハイブリッドのような大仰なメカニズムではなく、専ら軽さと効率で良好な燃費を狙うほうが、イニシャルにかかる環境負荷も最終処分にかかるそれも、かなり抑えられ、LCA(生産から最終処分まで製品の生涯を通じた環境負荷の評価)という視点ではずっと有利になるでしょう。「プリウスのジレンマ」のような問題も抱えずに済むわけですね。

とはいえ、そんな燃費の実現可能性を彼らは楽観的に考え過ぎのような気がします。現行のナノの20km/Lという燃費は日本の軽自動車と比較してもさほど見劣りしません。が、エアコンやパワーウィンドウなどはもちろん、ラジオも助手席側のドアミラーすらも装備していません。(インドではろくにミラーなど見ないので、助手席側ミラーがないのは珍しくないそうですが。)

tata_nano_leftside.jpg
助手席側ドアミラーレスはナノのデフォルト

ナノの良好な燃費は、ないない尽くしで軽く仕上がっている故と考えるべきでしょう。これが、ヨーロッパの厳しい衝突安全基準をクリアしつつ、4年以内に33km/Lを実現しようというのは、ちょっと夢が大き過ぎるような気がします。

ということで、だいぶ夜が更けてきましたから、今日のところはこの辺で。

(つづく)

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ディフェンディング・チャンピオン不在のツール

現在、世界最強の呼び声高いサイクルロードレースのプロチーム、アスタナですが、今年のジロ・デ・イタリアから排除されることが既に決定していました。これを受けて、UCI(国際自転車競技連合)のパット・マッケイド会長はジロの主催者であるRCSスポルトを手厳しく批判するといった状況だったんですね。

ツール・ド・フランスの主催者であるASOもRCSスポルトに同調するような意向を滲ませていたことから、状況としては厳しいのかな? と思っていましたが、2月14日付のAFP伝によりますと、やはりアスタナは今年のツールからも排除されることが決定したようです。

ま、これまでの経緯を考えれば、このチームが排除されるのもある程度は仕方ないと思います。スペインの強豪チームだったオンセ時代はともかく、リバティーセグロス、アスタナ・ウルトと、マノロ・サイス監督時代から昨年に至るまで、常にドーピングスキャンダルで世を騒がせてきたことはでも書いた通りです。

とはいえ、今年のアスタナはチーム名とスポンサーこそ引き継がれましたが、組織は大きく入れ替わりました。監督をはじめ、主力選手も機材も、USメイルからUSポスタルサービスを経、ディスカバリーチャンネルとして活動してきたあのアメリカのチームから移行してきましたから、事実上は昨年までのアスタナではなくディスカバリーチャンネルだったチームと考えても良いくらいです。

こうした結果が予想されていたなら、スポンサーの撤退によって消滅したディスカバリーチャンネルの受け皿としてアスタナを継続させるより、アスタナも一度解体して、そのスポンサーを引き継ぐ新チームを結成していたほうが良かったのではないかと思います。



つい数日前、パルマデマジョルカの会見で、昨年のツール覇者アルベルト・コンタドールは「ツール・ド・フランスに参加できないとは思っていない」とコメントしていましたが、彼の希望は叶わなかった訳ですね。

トレーニングをアメリカのアルバカーキでやっていたのはたまたまかも知れませんが、現在のアスタナは機材もトレックにスラムというアメリカ色が非常に強いチームです。そんな彼らに対するフランス人の嫌がらせじゃないか? と考えるのは曲解が過ぎるかも知れませんね。

しかし、昨年のツールではアスタナと同様に撤退したチームがもう一つありました。テストステロンの陽性反応でクリスティアン・モレーニが失格となったコフィディスです。

フランスのスポーツオーガナイザーであるASOはツールの他にもパリ~ニースというクラシックレースの主催者でもあります。そして、今年のパリ~ニースのエントリーリストにアスタナはなく、コフィディスはあります。ツールのエントリーリストにもコフィディスは間違いなく載ることになるでしょう。

確かに、アスタナとコフィディスでは前科に差があります。が、昨年のツールで起こったことに両者の差はありません。これではフランスのオーガナイザーがフランスのチームを贔屓していると揶揄されても仕方ないでしょう。

そもそも、UCIがアスタナにプロツアーのライセンスを交付したのは、組織改革を認めた故です。RCSスポルトがジロからアスタナを排除したのはUCIの評価に抗するものですから、マッケイド会長が怒り、RCSスポルトを批判したのも無理はありません。こうした状況にあって、ASOもRCSスポルトに倣ったのは、あえてアンチUCIの姿勢を明示するためにも見えます。

UCIとグランツールの主催者達は元々仲が悪かったのはご存じの通りですが、アスタナはこうした政治的な軋轢に巻き込まれてしまったのでしょうか? ま、様々な憶測は尽きませんが、いずれにしても、遺恨を残しそうな決定ではあります。

ヨーロッパ人はこうした陰湿な小競り合いや足の引っ張り合いを大昔から繰り返してきました。F1を見ていても同様の不快なシーンにはよく出くわしますが、これも彼らの文化なのだということで、最近は受け流すようにしています。

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都市伝説の巣窟

読売新聞の2008年2月8日の記事から抜粋します。(すぐに切れると思いますが、見出しにリンクを張っておきますので、原文もご参照ください。)

燃焼効率UPは根拠なし、公取がカー用品19社に排除命令

 燃費向上などをうたったカー用品16商品の表示に合理的な根拠が認められないとして、公正取引委員会は8日、「ギガスマルチパワータブレット」を輸入販売したソフト99コーポレーション(大阪市)や「マグチューン」を製造販売したコムテック(名古屋市)など全国の計19社に対し、景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出した。

(中略)

 各社は、公道での自社テストや運送業者に使ってもらった結果などを根拠としたが、公取委は、自動車工学の専門家に意見を求めたうえで、「道路状況やアクセルの踏み方などで走行条件が変わるため、合理的な根拠とは認められない」と判断した。

 16商品は数千円~3万数千円で販売され、約20億円を売り上げた。

(後略)


gigas_multipower.jpg

このソフト99の商品も公取委から排除命令(←リンク先はPDFです)が下された一つですが、その効能書きを見ればすぐにインチキであることが解ります。

ガソリン・ディーゼル燃料添加剤

1.オクタン価向上・ノッキング防止
2.燃費を10.3%改善
3.消煙効果で環境保護
4.完全燃焼を促進
5.バルブを摩擦から保護


そもそも、燃料としての性状が根本的に異なるガソリンとディーゼルを一緒くたにしているところで既に終わっていますね。「オクタン価向上」がディーゼル燃料にとっては粗悪化であるのは前回のエントリでご説明したとおりです。

以下、根拠不明なのでコメントのしようがありませんが、「燃費を10.3%改善」という謳い文句を信じる人がどれだけいたんでしょうか?

ま、こういう商品は昔からありましたが、理論が破綻しているものばかりですね。恐らく買って行った人たちの殆ども半信半疑でしょう。たまにプラセボ効果で信じちゃう人がいるという程度なのだと思います。が、それにしてもこんなインチキ商品群が20億円市場に成長していたとは、少々驚きました。

でも、よくよく考えてみますと、カー用品ショップのケミカルコーナーにはこの種の胡散臭い商品が山のように売られていますね。エンジンオイル添加剤だの、ATフルード添加剤だの、バッテリー液添加剤だの、燃料タンクの水抜き剤だの、タイヤの保護剤だの、ビタミンE配合本皮シートクリーナーだの、全部がインチキとまでは言わないにしても、無駄なものが非常に多いですね。

私が自動車業界にいた時分、メーカーで開発をやられている人たちと一緒に仕事をしたことが何度もあります。ここだけの話ですが、実際にエンジンのベンチテストをやっている実験室内へ特別に入れてもらったこともあります。石英ガラスで作られたピストンを使って、下から超高速度カメラで撮影して、火炎伝播がどういう挙動を示すのか観察するみたいな現場も見せてもらったことがあります。

こういう現場で仕事をされている方と話もしましたが、世間一般には風説といいますか、迷信といいますか、ま、この種のインチキなケミカルなどと共に自動車には都市伝説の類が蔓延しているとの旨、仰る方が少なくありませんでした。

でも、一口に開発の方といっても、エンジンをやられている方と、車体をやられている方とでは分野がかなり違いますので、自分の畑から外れてしまうと、あまり詳しくご存知でないこともあるようなんですね。現代の自動車ってのは生物みたいに高度で複雑になっているんだなぁと実感したものです。

となるとですね、それこそ妖しげな健康法やダイエット食品が受け容れられているのと同様に、世間一般の皆さんが騙されてしまうのもある意味では仕方ないのかな? とも思います。

添加剤や燃料タンクの水抜き剤やタイヤの保護剤やビタミンE配合本皮シートクリーナーがどうして無駄なのかは、別の機会に譲りたいと思います。

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ハイオク軽油あります

次代プリウス?」のエントリで頂いたコメントで油種の話になって思い出したのですが、かつて日本列島がSUVブームに包まれた頃、ディーゼルエンジンのそれが普及したのに伴って「ハイオク軽油」なるものが登場しました。このエントリのタイトルにあるような看板や張り紙があちこちのスタンドに掲げられたシュールな光景に、私は失笑を禁じえませんでした。

ガソリンの場合、自己着火しにくいアンチノック性の指標として「オクタン価」が用いられ、この値の高いガソリンは「ハイオク・ガソリン」などと呼ばれています。が、ディーゼル燃料である軽油に求められる性能はこれと逆で、自己着火のしやすさを示す指標に「セタン価」が用いられます。

ご存知のように、ディーゼルエンジンは高圧縮で筒内温度を上げ、燃料を自己着火させるため、スパークプラグがありません。セタン価の高い燃料のほうが適切なタイミングで燃焼しやすいため、ディーゼルノックが抑えられる、より高品質な燃料といえるわけですね。

このように「セタン価」と「オクタン価」は全く逆の指標です。厳密には違いますが、感覚的には反比例するとイメージしても良いでしょう。ですから、「ハイオク軽油」などというものがもし本当にあるとしたら、それはとんでもない粗悪ディーゼル燃料だということなんですね。

ま、マトモなところはちゃんと「プレミアム軽油」と表示していましたけどね。でも、「ハイオク軽油」と掲げていた彼らは、自分たちが商品として売っている燃料の性質を全く理解していなかったということです。

ということで、この阿呆なスタンドの話は、実は予備知識といいますか、次回の話題につなげる前振りになります。続きは、また明日。



[お断り] このエントリの第2~4段落は2年近く前に某メールマガジンへ投稿し、掲載されたものを再使用しました(文体は当blogに合わせて少し変えましたが)。配信数3万を超えるメールマガジンですので、どこかで引用されているかも知れませんが、当方がオリジナルになります。

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明日は我が身?

プリウスのハイブリッドシステムについて色々勉強し直しているところですが、私は電気が苦手なので、かなり苦戦を強いられています。そもそも、トヨタのサイトにあるプリウスの技術情報は概念的な部分を素人向けに恐ろしく噛み砕いたものなので、知りたい情報が殆ど載っていないんですよねぇ。

で、ネットで色々検索してみますと色んな情報が引っかかって来るのですが、やはり玉石混交ですね。例えば、「あれこれ面白コラム」という頁がヒットしました(何故か愛知の眼鏡屋さんのサイト内にあるのですが)。

ニッケル水素電池の起電力はニッカドと同じく、約1.2Vです。プリウスでは40個を直列接続しているので、電圧は48V、容量6.5AHとなります。この電池がどのくらい容量が小さいかといえば、例えば、軽自動車に積んでいる普通の小型バッテリーと同程度ということになります。皆さん信じられますか?軽自動車と同程度のバッテリーを乗せて「21世紀に間に合いました」とは、「トヨタさん、これインチキじゃないの?」と言いたくなります。


これを書かれた方の電気の知識はそこそこのレベルにあると思いますが、根本的な部分で勘違いをされています。ここに書かれているのは初代プリウスの初期モデルになるようですが、これに積まれているバッテリーは48Vではないんですね。

初代プリウスの初期モデル(10型)のバッテリーは1.2Vのニッケル水素電池6本組みで7.2Vとしたモジュールを40個つないでいるんですね(ちなみに、後期モデルの11型は38個、現行はさらに減って28個です)。要するに、240個のセルを直列にした288Vのバッテリーということです。電圧を6倍も読み間違ってしまったら、それ以降の話で辻褄が合うわけはありません。

仮に、プリウスのモーターの最高出力30KWを全開にしたとすれば、わずか37秒で電池が空になる計算です。これでは電池と言うよりコンデンサと呼んだ方が適当かも知れません。カタログによれば、モーターの最高出力は30KWとなっています。エンジンの馬力に置き換えると約40馬力ですが、最高出力時モーターに流れる電流は600Aという途方もない大電流です。プリウスの小さな電池では絶対に?最高出力の電流は流せないと思います。仮に電池の内部抵抗を0.1オームと仮定すると電池内部に36,000Wという猛烈な熱を発生するからです。ということは、モーターの規格自体あまり意味のないものだと想像できます。


プリウスのバッテリー容量6.5Ahというのは3時間率ですが、電圧48Vなら上記の計算で間違いないと思います。が、実際とは6倍も違っているのですから、計算結果は全て出鱈目になってしまうわけです。知識や考え方は間違っていないのですが、根本的な要素を読み誤ってしまうと、こうした結果に至ってしまうということですね。

でも、この方に大きな落ち度はなかったように思います。

そもそも、トヨタのスペックシートのほうが不親切なんですね。動力用主電池の個数が40個と書かれていたら、1.2V×40=48Vと考えてしまうのはむしろ当然です。実際は1.2V×6=7.2Vのモジュールが40個ということで、7.2V×40=288Vになっているなど、このスペックシートを見た限りで思い至る人などいないでしょう。


初代プリウスのバッテリー

このバッテリーの写真を見ても比較になるものが他に写っていませんから、「軽自動車と同程度」という頭で見ればそう見えてしまうのも仕方ないでしょう。一度そう思い込んでしまったら、「スペックシートの書き方が普通ではないな」と気付くことができないのも無理ありません。より高度で専門的な知識を持った人なら別かも知れませんが。

ですから、これは私もやってしまいがちなミスといえます。達観したつもりでも、実は最初のボタンを掛け違えていたという過ちがこれまでになかったとは言えません。

ということで、当blogでも万全を期しているつもりですが、こういう初歩的なポカを本人が気付かないうちにやっている可能性があります。お気づきの点がありましたら是非、指摘賜りたいと思います。

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レスキュー車こぼれ話

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機動救助車(できたて)

ご免で済んだら警察要らない?」のエントリでご紹介しましたレスキュー車(機動救助車)です。納入先が警視庁ということがバレていますので、あまり大っぴらには言えませんが、ま、非常に零細な当blogですから、あまり差し障りのない範囲でちょっとだけこぼれ話をご紹介しましょう。

件のエントリのコメント欄で「この時期にこんな姿であってはいけなかった」と書きました。あの作りかけの写真は納期が迫っているのに、間に合うのか? 大丈夫なのか? という不安を抱えながら撮ったものだったんですね。

この種の特殊車両はトラックやバスなどを生産している大型車メーカーから「キャブ付シャシー」という状態で工場からロールアウトしたものがベースになります。これに特別な機械や車体を架装したり、艤装を施したり、塗装を行ったり、幾つかの専門業者で各々の工程を経て完成に至る訳ですね。

例えば、フロントバンパーの部分にアルミ縞板で作られたカバーが見えますね。あのカバーも一品物なんですが、その中にはウインチが格納されています。これが、そんじょそこらのウインチとは能力が違います。普通のバンパーなんかに直付けしたら一発でバンパーがひしゃげてしまうでしょう。

そのため、このアルミカバーを開けてもフックとガイドローラーしか見えません。ウインチ本体は前方へ延長されたシャシーフレームの間にガッチリと固定されています。

rescue3.jpg

これはリフトアップした状態で下から見た写真ですが、件のウインチ本体はこれだけ奥まったところにあるんですね。ですから、大型車メーカーの工場からロールアウトしたキャブ付シャシーは、まずキャブを下ろしてフレーム延長の改造が行われ、このウインチの取付を行います。そうしないと次の工程に移ることが出来ないんですね。

これが鬼門でした。こうした特殊車両も充分にニッチなマーケットですが、こうした特殊なウインチの需要はさらに希ですから、取り付ける業者も極めて限られてしまうんですね。しかも、消防や警察での需要が毎年変動しないのならばともかく、実際にはかなりの波がありますから、業者としても工場のキャパシティを安易に拡大する訳にはいきません。

ということで、この機動救助車の場合はタイミングが非常に悪く、最初の工程で思いっきりつまずいてしまったんですね。その後の工程を担当する業者も納期最優先でこなしてもらいましたので、何とか指定の検収日には間に合ったんですけど・・・。

そうは言っても最後は突貫工事でしたから、色々と指摘事項がありました。この辺は関係各位の立場もありますので詳しくは書けませんが。事情説明で検査官には納得して頂けたので、とりあえず検収は合格となりました。が、指摘事項を補修するために車両を工場へ差し戻して、所属への引き渡しは後日となってしまいました。

検収段階でも基本的には仕様書の条件を満たしていましたが、「仕様書に記載されない細部については別途指示」といった部分で、かなり微妙な仕上がりだったのは認めざるを得ません。ですから、このときは寛大な措置を頂けたのだと思います。

私はつくづく思いました。警察は「世の中の事情に対する理解力がある」と。特に警視庁の調達窓口は殆どの方が外勤経験者です。トラブルを起こした酔っぱらいの相手をしたり、ごねる交通違反者をなだめながら切符を切ったり、そういう仕事をしてきた人達なんですね。我々善良な一般市民より、よほど世の中の表裏を見てきた人達なんですよ。

他の官公庁では、国公立大学在学中に公務員試験をパスし、大学の正門からそのまま入省入庁してきた人間も沢山います。そういうパターンの公務員には世間知らずで下らない机上論をこねくり回す杓子定規の頭でっかちも時々いるんですね。皆さんが想像する官僚タイプを絵に描いたような人間が実際に存在するんですよ。

ちょっとアブナイ領域に話が差し掛かってきましたので、これくらいにしておきますが、私が業務を通じてお付き合いしてきた中で、世の中というものをよく知っておられる彼らは最も敬愛すべき人達でした。

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時効

いまから2年程前、某オンラインサイクルショップでパーツを購入しました。金額は確か4,000円くらいだったと思います。

1月中旬くらいにオーダーしたのですが、「欠品のため2月納期になるので、キャンセルするか否か指示して欲しい」というメールがあり、こちらも特に急いでいたわけではなかったので、そのまま取引を継続して欲しい旨、連絡しました。

しかし、2月に入るといきなり「入荷したので発送しました」とのメールが来て、直後に品物も届きました。本来なら振込先と振込金額を通知するメールが来て、それに従って私が入金してから発送となるハズだったんですけどね。

そもそも、振込先や送料などを含む振込総額が解らなければ、こちらも振り込めません。「ま、放っておけば連絡してくるだろう」と思い、そのままにしていましたが、私もいつの間にか忘れ去ってしまいました。

結局、その部品も諸般の事情であまり使わないうちにお蔵入りさせてしまったのですが、先月、それが眠っている段ボール(自転車パーツの墓場)をガサゴソと探っていたら出てきたので、約2年ぶりにそのことを思い出しました。(ちなみに、何故その段ボールを探っていたかと言いますと、例のハブダイナモを探していたからです。)

気になったので調べてみたところ、商法の第522条(商事消滅時効)ではこうなっていました。

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。


つまり、商行為によって生じた債権は原則として5年を経過したら消滅するというわけですが、問題は「ただし」の後ですね。他の法令に5年より短い時効期間があったら、それに従うということです。

で、他の法令に5年より短い時効期間がありました。民法の第3節(消滅時効)第173条です。

次に掲げる債権は、2年間行使しないときは、消滅する。
1.生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
(後略)


今回のケースはまさにこれです。

ということで、この度、晴れて時効を迎えることになりました。こんなことならもっと色々買っておけば良かったと思った私は、たぶん死んでも天に召されることはないのでしょう。

ちなみに、同174条にはこうありました。

次に掲げる債権は、1年間行使しないときは、消滅する。
(中略)
4.旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
(後略)


ということで、飲食代等は1年で時効だそうです。飲み屋とか飯屋にツケがあるアナタ、1年粘れば踏み倒しても法的な請求権は消滅してしまうのだそうですよ!

イタリアンデニッシュ

このところ硬い話題が続きましたので、ガス抜きに他愛のない与太話をひとつ。

昔、友人と行った某スキー場にあるレストランに「パキスタン人シェフが作る本場インドカレー」という看板がありました。

最初は「パキスタン人で本場インドカレーって・・・」とも思いましたが、「そういえば、パキスタンはインドのイスラム圏が分離独立した国家で、元々はインドの一部だったから別に良いかも?」と思い直しました。

そんな私でも非常に気になるパンがありました。私の家の近くにあったパン屋に「イタリアンデニッシュパン」というのがあったんですね。どうもデニッシュパンにトマトソースとかチーズを合わせてピザ風に焼き上げたパンのようなんですが。

改めてご説明する必要はないかも知れませんが、デニッシュパンというのはクロワッサンと同様にバターを何層にも折り込んだパイのようなパン生地になります。その「デニッシュ」という名は、要するにデンマークに由来するからなのもご存じの通りかと思います(オーストリア発祥との説もありますが)。

「イングランドの」とか「イングランド人」を「English」、「スペインの」とか「スペイン人」を「Spanish」というように、「デンマークの」とか「デンマーク人」を「Danish」というわけですね。

「イタリアンデニッシュパン」ということは、「イタリアのデンマークのパン」ということになってしまうわけです。何だか「日本中華そば」みたいな珍妙なネーミングですね。これが「イタリア風デニッシュ」とか「ピザデニッシュ」ならまだ解らなくもないんですけど。

でも、これが意外に人気のあるパンだったようなんですね。私は一度も現物を見る機会に恵まれませんでした。店頭には焼き上がり予定時間の貼り紙があったほどでしたから、すぐに売れてしまったようです。

しばらくするとそのパン屋は閉店してしまい、現在はパスタ屋になってます。いまにして思えば、一度で良いから謎のイタリアンデニッシュパンを見ておけばよかったと思います。

italian_danish.jpg
デニッシュパンとピザをコラージュした
イタリアンデニッシュパンの想像図

日本あんな調達こんな調達 (プロローグ)

昨年の5月下旬、『官報』の「政府調達」をチェックしているときに私はふと思いました。

その人はどんなものを買っているのか? どんなことにお金を使っているのか? 消費行動を調べてみると、その人となりも浮かび上がってくるのではないか?

ならば・・・

日本という国がどんなものを買っているのか、どんなことにお金を使っているのかを調べてみれば、日本という国を様々な角度で観察できるかも知れない


個人的にはナイスアイデアと思い、このタイトルでこれに特化したblogを立ち上げようと思ったほどでした。

そこで、数週間(2007年5月下旬~6月上旬にかけて)試験的にネタ集めをしてみたんですね。ところが、思ったほど面白い案件が頻繁に出てくる訳でもなく、面倒になったといいますか、飽きてしまったといいますか、要するに私のやる気が萎えてしまって、結局お蔵入りさせたという過去があります。

しかしながら、当blogも話のネタが無尽蔵にあるわけではありませんので、とりあえず引き出しは多くしておいて、手詰まりになったら過去に拾ったネタを出すとか、何か面白いネタを見つけたら単発的に出すとか、柔軟に展開したらええやんけ、と思い直しました。

ただ、現実問題として「オマエごときが興味を引かれた政府調達案件でどこまで掘り下げられるのか?」「オマエごときの知識でどこまで真に迫れるのか?」と問われれば、「あまり自信はありません」と答えるしかありませんので、ま、ここは軽い読み物といった感覚でお付き合い頂いた方が良いかもしれません。


さて、前回のエントリでも触れた部分と少し重なりますし、やや小難しい話になってしまいますが、基礎知識をざっと纏めてみましょうか。

日本政府が使うお金、即ち国の歳出に関しては内閣がその予算を作成し、国会の審議を受け、議決を経なければなりません。(日本国憲法第86条)

しかしながら、そうした予算の枠組みは極めて巨視的なもので、具体的にどのような物品を購入しているのか、どのような役務(サービス)を受けているのか、そうしたディテールは日常的な新聞やテレビなどの報道では殆んど解りません。

日本政府や関連機関が物品・役務の調達を行う場合、通常は入札ないし随意契約が行われます。こうした政府調達は公正を期すため、また、WTO(世界貿易機関)の枠組みに沿うため(日本政府の調達に参加する機会を海外の企業などにも与えるため)、相応の告知が行われています。ある一定の条件に達すると、独立行政法人国立印刷局(旧財務省印刷局から改組)が発行している『官報』の「政府調達」に掲載されるんですね。

その「ある一定の条件」というのはかなり込み入った話になるため割愛しますが、中央政府機関の調達案件としては物品・役務とも現在の政府調達協定(有効期限は2008年3月末まで)の基準額で2000万円以上が対象となります。逆にいえば、基準額が2000万円未満の案件については官報の政府調達には載らないわけですね。

その場合は、個別に公告されることになりますが、通常は各機関の建物にある掲示板や各機関のサイトを用いて公告されます。

pronouncement.jpg
掲示による入札公告の例

実は他にも色々例外があるのですが、話がさらにややこしくなりますし、私も詳しく知らない部分が沢山ありますので、触れるのはやめておきます。


ところで、政府機関や特殊法人、地方自治体などは「競争入札」という調達方法が主流です。近年は「随意契約」が癒着の温床とみなされる傾向がどんどん強まっていることもあって、より一層、入札によって取引相手を決定することが多くなっています。

この「入札」という言葉は皆さんもよく耳にすると思いますが、具体的にどのようなことが行われているかご存知でしょうか?

以前、TBSの『噂の東京マガジン』という番組である地方自治体の調達案件について掘り下げていました。レポーターが「これがその仕様書です」などと示していたのですが、別の案件でも仕様書を示すといったことが何度か繰り返されると、パネラーの一人が「仕様書好っきやなー」という発言をしていました。勿論、好き嫌いで仕様書が作られるわけではありません。こうした発言が出てくるということは、競争入札というシステムを全く理解していない証拠です。

私が業務で関わった入札案件で仕様書が存在しないものは一つたりともありませんでした。というより、仕様書またはそれに類する書面がない政府調達案件など日本には存在しないでしょう。何故なら、競争入札というのは基本的に「仕様書の内容を満たした上で最も安い金額を提示した者が落札する」というのが常識なのです。ごく稀に予定価格に最も近い金額で落札となるケースもあるようですが、その場合も「仕様書の内容を満たした上で」という条件が外されることはありません。

要するに、お役所あるいはそれに順ずる組織というのは、入札案件の基本条件を一定に保って公正を期すため、必ず「仕様書」というものを発行しているのです。私たちが普通に物を買う感覚とは全く別次元の手続きが行われているということですね。

お役所というからには文字通り「お役所仕事」で買い物をしているのだろうという想像はつくと思いますが、このようにお役所独特の買い求め方というのはあまり世間一般には知られていないと思います。

この企画ではそうした部分も含めて、どのような物を買っているのか、どのように買っているのか、といった世間一般にあまり知られていないであろう部分をクローズアップしていきたいと考えています。

ということで、かなりの分量になってしまいました。具体的な例は次回からご紹介します。

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だけじゃない、役人

毎日新聞の2008年2月5日夕刊から抜粋します。(すぐに切れると思いますが、見出しにリンクを張っておきますので、原文もご参照ください。)

国交省:マッサージチェアにカラオケセット…道路財源で購入、また

 揮発油(ガソリン)税などの道路特定財源を原資にする特別会計から国土交通省がレクリエーション費を支出していた問題で、冬柴鉄三国交相は5日の閣議後会見で、職員用のマッサージチェアを01年度までに23台購入していたことを明らかにした。国交相は「02年度以降の購入はなく、その後は内部通達で禁止した」と説明した。

 参院予算委員会でも5日、この問題が取り上げられ、冬柴国交相はカラオケセット1台を01年度までに国交省の関東整備局で購入していたことを明らかにした。価格は97万4998円だった。

(後略)


「揮発油(ガソリン)税」と書かれていると、この記者は「ガソリン税=揮発油税」と勘違いしているのではないかと勘ぐってしまいます。ガソリン税の正式名称は「揮発油税及び地方道路税」ですから、正しくは「ガソリン税=揮発油税+地方道路税」です。

そもそも、「などの」とボカしているのですから、「揮発油(ガソリン)税などの」ではなく、「ガソリン税などの」で充分でしょう。きちんとした知識を身に着けずに余計なことを書くと、恥もかくという見本のようなパターンといえるかも知れません。

また、国土交通省には「関東整備局」などというセクションはありません。正しくは「関東地方整備局」です。略称であれば「関東地整」となり、他の地方整備局もみな「○○地整」と略されます(旧建設省時代は「地方建設局」で、「○○地建」と呼ばれていました)。

ま、いずれも取るに足りない話ではありますけど、毎日新聞といえば日本の5大紙に入る超大手なのですから、こういう細かい部分であっても適切な報道を心がけてもらいたいものですね。

さて、私も国土交通省の地方整備局や出先の事務所には業務で出入りすることがあります。実は、先月Ochaさんのblogにコメントさせて頂いた話とかぶりますが、こうした国土交通省の事務所内に置かれているマッサージチェアの現物を何度か見たことがあります。

カネの出所が道路特定財源なのか何なのかは知りませんでしたが、いずれにしても公費での購入、即ち税金が使われていたのは間違いないだろうな、という察しはついていました。建前としては福利厚生の一環として職員の健康管理という題目になるのでしょう(ま、カラオケセットはどう考えても論外ですが)。

よく見かけるのは血圧計とか体脂肪率計の類です。廊下やエントランスの脇に置かれ、誰でも自由に使えるようになっていることが多いですね。トイレに検尿キットが置いてあることもあります。最近は駐車場などに転用されるケースが多くなっていますが、かつてはテニスやバスケットボールのコートなどを完備している事務所も少なくありませんでした。


国の歳入歳出などに関しては「会計法」によって定められていますが、支出負担行為の細則は「支出負担行為等取扱規則」に定められています。ま、条文を読んでもかなり解りにくいですけどね。

国土交通省の場合、各地方整備局の局長が「支出負担行為担当官」、各国道事務所などの所長が「分任支出負担行為担当官」となって支出負担行為の決裁を行います。原則として、入札を行って契約金額が確定し、契約書に調印する前に各々の担当官の確認および決議を完了しなければなりません。

しかしながら、実務上は事後処理になっている場合も少なくないようです。そうした体制が今般マスコミにつつかれているような無駄遣いとも取れる支出にどれだけ影響しているのか、私には解りませんが。

現在のところ、基準額が2000万円を超過する調達案件については『官報』の「政府調達」に掲載されますが、それに満たない案件は各庁舎の掲示板などでの公告となり、中央で集約的に把握することは非常に困難になります。全国にある官公庁の支出を詳細にチェックするのは市民オンブズマンみたいな組織でないとかなり辛いでしょう。

ま、役人の無駄遣いの監視は一筋縄ではいかないということですね。だからこそ、叩けばいくらでも同じような無駄遣いが次々に発覚するわけですが。


実は、こうした政府調達にかかる話題を取り上げる新企画を準備していました(というより、ネタ不足に備えて過去にお蔵入りさせた企画を復活させようというのが本当のところですが)。とりあえず、脈絡として良い取っ掛かりになりました。次のエントリではプロローグというかたちで、その新企画をご案内しようと思います。

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鳩と勝負!

中日新聞の2008年2月2日の記事から抜粋します。(すぐに切れると思いますが、見出しにリンクを張っておきますので、原文もご参照ください。)

赤色回転灯の効果抜群 足助署管内で国道沿い交通死ゼロに




足助署が交通事故防止の目的で、2006年から管内の国道を中心に設置した赤色回転灯が効果を上げている。設置開始から2年たち、国道周辺での交通死亡事故がゼロになり、街頭犯罪も激減した。

(中略)

07年までに60基を設置した結果、国道沿いでの交通事故死者数がゼロに。交通人身事故も13件減少し43件となった。足助署交通課の平野敬明係長は「回転灯を見て危険性を察知してブレーキを踏む車が増えた」と効果を話す。

(後略)


ま、警察官の格好をしたマネキンとか注意喚起のやり方は色々ありますが、こういうものの効果がどれだけ持続するのか疑問です。そもそも、人間も他の動物もそうですが、同じ刺激が何度も繰り返されると、それに対する反応は鈍くなるのが普通です。

殊に、こうした回転灯が増えたら回転灯に対する反応が鈍くなる恐れがあります。救急車や消防車といった緊急自動車に対する反応も鈍くなったらマズイでしょう。ま、警察車両には例外規定もありますが、原則として緊急自動車が緊急走行する場合にはサイレンも鳴らさなければなりませんから(道路交通法施行令第3章第14条(緊急自動車の要件)によります)、心配する必要はないかも知れませんけどね。

こうした注意喚起のやり方からついつい連想してしまうのが害鳥/害獣対策です。駅などにも鳩の糞公害対策として同心円がいくつか描かれたバルーンを吊るしてみたり、CDを吊るしてみたり、追い払うようなことを色々やってます。でも、大抵は最初のうちだけで、すぐに効果がなくなってしまうものなんですよね。

こうした回転灯の効果がいつまでも持続するとは思えませんが、もし持続するというのであれば、それはそれで「人間は鳩にも劣る単純な生き物」という実験結果になるような気がします。いえ、「人間は注意を喚起されたら、それを持続する知性がある」と好意的に解釈してあげるべきでしょうか?

そもそも、人身事故件数が設置前の56件から43件へ減少したとするデータも、個人的には微妙な気がします。何年か前からの推移と比較してどうなのかというデータであればともかく、単年度の比較で13件減少したことが変動の範囲内なのか否か、この程度の掘り下げ方では全く読めないと思うんですけどねぇ。また、記事には人身事故と死亡事故のデータしかなく、トータルの事故件数がどのようになっているのか書かれていないのもやや気になります。

あるいは、足助署の交通課や中日新聞の単純さは鳩並なのかも知れません。

プリウスのジレンマ

先のデトロイトモーターショーでトヨタは家庭用電源から充電可能な「プラグイン・ハイブリッド」を実用化する旨パブリシティしました(国土交通省の認可は昨年7月に受けているそうです)。これはより電気自動車に近い使い方もできる、ユーティリティの拡大と見て良いと思います。検討中のマイカー買い換えで候補に挙がっているプリウスですが、こうした情報を聞いてしまうと、かなりそそられてしまいます。

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が、目処は2009年末ということで、2年近く先の話になります(恐らく、フルモデルチェンジで採用ということでしょう)。その前に私のS2000は車検が切れてしまいますので、そこまで待つつもりはありません。

さて、件のプリウスですが、私もメカニズムやその運用システムにはそれなりに興味があったので、以前にも色々調べたことがありました。が、環境性能についてはあまり詳しく調べたことがなかったんですね。ハイブリッドカーであるプリウスは環境に優しいエコロジーカーという認識が定着していますし、私も当時は特に大きな疑念を抱いていませんでした。

しかしながら、最近は環境問題にかかる書籍やネットからの情報に触れる機会が増えてきたこともあって、LCA(生産されてから最終処分されるまで製品の生涯を通じた環境負荷の評価)などの考え方も理解するようになり、色々な疑問も感じるようになってきました。

殊に、プリウスはバッテリーや電気モーター、制御用のインバータなど特別な部品や構造の製造プロセスにはより大きな環境負荷がかかると想像されますので、それと良好な燃費から差し引かれる分とを突き合わせてみなければ本当に環境負荷の小さいエコロジーカーといえるか判断はつかないわけですね。

そこで、プリウスがどれだけ環境負荷の小さなクルマなのか、この機会に調べてみようと思いました。第三者機関による資料などもあれば良かったのですが、私の調べた範囲では見つかりませんでしたので、トヨタの公式資料(どこまでシビアに調査されているのかは解りませんが)をとりあえず精査してみることにしました。

トヨタのサイトにあるプリウスの環境仕様を見てみますと、ちゃんとLCAの実施結果が示されていました。これは好感が持てます。少なくとも、「新幹線のEgo主張?」のエントリで触れたような子供騙しの部分比較でないだけ遥かにマトモといえます。

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これがそのLCAによる性能比較ですが、やはり素材製造や部品製造といったイニシャルの環境負荷はプリウスのほうが大きいということが解ります。あれだけ大容量のインバータ(金属シリコンの精製には膨大な電力を要します)を使用していることに対して素材製造時のCO2排出量が見合っているのか、やや引っかかる部分もあります。が、イニシャルの環境負荷が同クラスのガソリン車をかなり上回っている実態はほぼ予想通りです。

やはり、プリウスが最終的に同クラスのガソリン車を逆転するのは、「走行にかかる環境負荷が小さい」というところなんですね。要するに燃費が良い分だけ排出ガスが少ないため、イニシャルでかかる環境負荷をランニングで相殺・逆転するということになるわけです。

ならば、走行距離が少なければ少ないほどそのメリットは生きてこないということになります。トヨタが示したLCAは生涯走行距離10万kmという常識的な条件によりますが、これより走行距離が少なければイニシャルの環境負荷などを含めたライフサイクル全般の環境負荷でプリウスが逆転できなくなる可能性も充分に考え得るわけです。

そこで、走行距離を減らし、それにかかる環境負荷を単純計算で減らしてみることにしました。生涯走行距離が4~5万kmあたりになるとかなり微妙な感じになってくるのですが、3万kmまで減らしてみますと下図のような状況になりました。(あくまでも単純計算によって走行にかかる環境負荷をトヨタの示した10万kmから70%減少させ、3万km相当としたものです。厳密なアセスメントに基づくものではないのでそこはご了承下さい。)

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こうなるともう、プリウスの敗北といって差し支えないでしょう。ま、この生涯走行距離3万kmを10年で消化すると年間走行距離が3000kmとなりますから、あまり一般的とはいえないかも知れません。でも、週末しか乗らないという人で、その度に60km程度しか走らないのであれば、プリウスは同クラスのガソリン車より環境負荷の高いアンチエコカーとなる可能性が高いわけです。

環境負荷を考えれば、自動車は極力使用しない方が良いというのは言うまでもありません。しかし、プリウスに関しては使用する機会が減れば減るほど通常のクルマより環境負荷が大きくなってしまうことがあるという皮肉なジレンマを抱えているわけですね。劇的な変化をもたらす魔法のような技術など、そんなに簡単に手に入れられる訳ではないということでしょう。

それにしても、環境問題を語る人達、殊に大衆メディアは何故こうしたジレンマを話題にしないんでしょうか? 単に無知で無邪気なのか、恣意的で偽善なのか私にはよく解りません。が、世間一般にはこうしたジレンマがあまり知られることもなく、良いイメージしか浸透していかないという現状が決して良いとは思えないのですが。

もし、私がプリウスを買ったとしてもエコロジストを標榜する気など毛頭ありません。どちらかといえば、ハイブリッドという特殊な機構を持つクルマである事、回生ブレーキや諸々のマネージメントについて非常に関心があり、そうしたクルマも体験しておきたいといった好奇心が先に立っている感じです。

燃料コストが安く済むことも求めたいところですが、同クラスのガソリン車と車両価格の差額でペイできるか、これも走行距離次第でしょう。走行距離が少ないほどイニシャルコストが高い分を相殺・逆転することができないという点は、やはり環境負荷と同様のジレンマですね。

そもそも、私の場合はS2000より確実に燃料費が安く抑えられるだろうということで、その分だけ自転車を積んであちこちに出かけようと考えています。ですから、差し引きゼロかプラスになる場合もあるでしょう。あるいは、浮いた燃料費で何か別のものを買ったりして、結局は環境負荷を与える消費行動をとったりするかも知れません。

無知で無邪気にエコロジストを気取るのが良いのか
知見を広めてジレンマにぶつかり、開き直るほうが良いのか

ま、どちらも同罪でしょう。私の場合は後者を選択することが度々あると思いますが、非があれば素直に認め、改善できなくとも偽善者にはならないよう努めたいところです。

テーマ:自動車全般 - ジャンル:車・バイク

試験運用期間終了

正月休みの暇つぶしに単なる気まぐれで立ち上げた当blogも、何だかんだで1ヶ月が経過しようとしています。

リンクを張らせて頂いているOchaさんのblog以外で私がblogを立ち上げたことは一切宣伝しておらず、家族や友人にも告げていません(身近な人に見られると、それはそれで少々こっ恥ずかしいので)。ですから、ご覧頂いている方の多くはOchaさんのほうからお出で下さったのだと想像しておりますが、お陰様でアクセス数は300を超え、最近の平均アクセス数も12回/日くらいで推移しているようです。

何処の馬の骨とも知れぬオッサンの拙いblogではありますが、御贔屓にして頂いています皆様には心より感謝申し上げます。


かつて友人相手に配信していた同名のメールマガジンは最初の7ヶ月が週刊、年末の繁忙期で2ヶ月途絶え、月刊で復活させて7本配信したところで仕事が死ぬほど忙しくなり(実際に勤務時間は過労死だの過労自殺だのでニュースになった人達と変わらないくらいでしたから)、とてもプライベートの時間を持てる状況ではなく、いきなり終了することになりました。

メールマガジン時代の『酒と蘊蓄の日々』の誌面

その後、転職するなど私の生活環境は大きく変わり、ゆっくりと本を読んだりネットで様々な知見を広めたり、人間的な生活が送れるようになりました。

とはいえ、週刊でやっていた頃もかなり大変でしたから、まさか日刊では無理だろう、いくら何でもネタが続かないだろう、と、当blogを立ち上げたときは思っていました。でも、実際にやってみますと、特に「与太話」にカテゴライズしたもののように至極下らないものもありますが、何とかなっていますね。

とりあえず1ヶ月は毎日更新でき、生活に大した支障もなく過ごせました。といっても、暇があると何か面白そうなネタは転がっていないかと考える習慣がついてしまったようで、全く影響がないかと問われれば微妙かも知れません。いずれにしても、「試験運用中」との断りは外すことにしました。

しかしながら、本格稼働という新たな気概は一切ありません。これまでと何ら変わるところはないでしょう。いえ、むしろネタが尽きて更新が滞ったり、下らないエントリが増える可能性も否定できません。今回は北海道出張中も「予約投稿」という小細工で毎日更新しましたが、今後はそこまでして更新しないかも知れません。

これからも硬軟とり混ぜながら色々な蘊蓄を傾けていきたいところですが、初めから万人受けは狙っていませんので、その辺りは適当にお付き合い下さい。今後とも宜しくお願い申し上げます。

ふゆトピア (その2)

ま、モーターショーなどもシンポジウムだ何だかんだと色々ありますが、結局のところ主役は展示会のほうです。企業も参加しますし、取材しに来るプレスにしても演壇に立った人の画より、大きな機械やそれが動いている画の方が素材として面白いですから。

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非常にありがちなことですが、この「ふゆトピア」も国土交通省肝いりのイベントですから、それなりに偉い肩書きの官僚が開会の挨拶をしたりします。

出展業者はさほど多くないのですが、そもそも雪氷対策関連の企業など一般の方にはまず馴染みがないでしょう。自動車メーカーとしての出展もトラックなどを製作している4社(日野、いすゞ、三菱ふそう、日産ディーゼル)のみです。あとは誰でも知っているメーカーといったら次の2社くらいでしょうか。

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実は皆さんもよくご存じのホンダも家庭用(?)の小型除雪機を作っています。とってもカワイイですね。

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そこへいくと、同じオートバイ屋でもカワサキはヘビーな業務用です。除雪ドーザーといいますが、可変式プラウ(除雪板)です。とってもゴッツイですね。

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こういうデモンストレーションもあります。ま、予めかき集めて積んでおいた雪の小山の周りをグルグル回るだけですが。

ぶっちゃけ、これもシンポジウムなどと同様で、毎年あまり変わり映えしません。こういう機械もだいたいのことはやり尽くされていて、画期的な技術やアイデアがポンポン出てくるようなジャンルではないので、当然ではありますけど。

あまり大きな声では言えませんが、こうした展示やデモはイベントの盛り上げ役みたいな側面もありますので、一部には撤退してしまったところもあります。特に北海道での開催は何だかんだでコストもかかりますし、地域格差がどうのこうの言われる昨今ですが、物理的な距離の壁はいかんともし難いでしょう。

ということで、私の趣味に属する展示会なら書いた本人さえ呆れるくらいのレポートにもなりますが、一般の人にとって面白くも何ともない展示会で、しかも私の素性があまり公になり過ぎないように配慮しながら書くのも大変しんどいことなので、このへんでギブアップします。

(おしまい)

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まとめ

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