酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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猫がムササビになる未来像を信じる人たち

日本での放送は4月5日だったヒストリーチャンネルの番組『人類滅亡 -LIFE AFTER PEOPLE-』ですが、一昨日の20時と昨日の15時にも再放送されていました。朝日新聞の論説委員は恐らくこの5回目ないし6回目の再放送を見て今日の社説のネタにしたのだと思います。

地球環境―人類の足場が危うい

 人類が突然いなくなったとしたら、この地球はどう変わるのか。今年1月、科学者たちの予測をもとに、米国のテレビ局、ヒストリー・チャンネルが「ポスト人類」の世界を描いた。番組の結論はこうだ。

 人類消滅から6カ月後、都市近郊にオオカミの仲間や山猫が入り込み、我がもの顔で動き回る。5年後には都市部の大半がツタや樹木で覆われる。200年後にはニューヨークの摩天楼もパリのエッフェル塔も崩れ去る。千年後には近代都市は跡形をとどめず、原始のような森と小川が戻る。

(後略)

(C)朝日新聞 2008年4月30日


私がこの番組を見たのは途中からで、確かヒラメのポンプヘッドをバラして中の部品の写真を撮るとか、そんなことをやりながらの「ながら見」でしたので、少々うろ覚えになります。が、あまりにも短絡的で荒唐無稽な内容を多く含んでいたため、バカバカしくなって途中で見るのをやめました。

例えば、放置された自動車は50年で原形をとどめなくなるというCGを作成し、「人類が滅亡した50年後にはこうなる」みたいな映像が創作されていました。この50年という根拠は、鉄は毎年コンマ何ミリ腐食していき、車体の鉄板の厚さは何ミリだからといった単純計算だったんですね。

しかし、実際には何層にも塗り重ねられた塗料や下地の防錆処理などが効いてくるハズですから、こうした単純計算は成り立たないでしょう。強風に乗った砂塵を浴びてこうしたコーティングがすぐに剥がされてしまったり、海の近くで潮風にさらされるような過酷な条件であれば、あながち間違いとも言い難いところです。が、気候が穏やかで湿度が低いところなどはそれほどでもないでしょう。この番組ではそうした条件の一切を無視していたんですね。

buildings_decomposing.jpg

また、この番組では「人類が滅亡すると猫が都市部に繁殖する」というようなハナシも出てきました。その根拠はコロッセオなどローマの遺跡に野良猫がたくさん棲み着いているからという一例を示すのみで、実にアホくさい作り話としか思えませんでした。

しかも、そうした状況を想定した専門家と称する人物は、適応変化で猫がムササビのようになり、摩天楼の高層ビルの間を飛び回るかも知れないとも妄想していたんですね。しかし、朝日新聞の社説でも紹介されているように、この番組では摩天楼の崩壊は200年ほどと想定しています。猫が繁殖可能になるのは生後6~9ヶ月ですから、200年では世代を重ねてもせいぜい300世代前後といったところになるでしょう。

また、ムササビのなかまは最も重い種でも1.5kg程度ですから、猫はその2~3倍ほどの体重があります。前足と後足の間にムササビのような飛膜を獲得し、飛行可能な体型の新種が猫から発生する可能性は決して高いと思えません。仮に、そうした新種が現れたとしても、どれくらいの確率で種として固定できるかの判断も難しいところです。いずれにしても、わずか200年、せいぜい300世代ほどで、ムササビ化した猫の新種が固定すると考えるのは荒唐無稽としか評しようがありません。

それ以前に、種の分化が数百年単位で起こると考えるのが非常識だと思います。例えば、ムササビやモモンガのなかま(モモンガ亜科)がリスのなかま(リス科)から分かれたのは4000万年くらい前と見られているようですが、その共通の祖先であるパラミスというリス亜目の齧歯類が発生したのは6000万年くらい前と見られています。つまり、リスのなかまがムササビの始祖として分化して種を固定させるまで2000万年くらいかかったと考えられるわけですね。200年とは桁が5つも違います。

そもそも、コロッセオなどの遺跡に棲み着いている野良猫は観光客に餌付けされ、狂犬病の恐れがある野良犬のように捕獲されないから繁殖しているだけだと私は思うんですけどねぇ。その辺までキッチリ調べた上であのような推論を展開していたのでしょうか?

ま、この猫のハナシなどはかなり酷いほうだったのかも知れませんが、それにしてもコロッセオの野良猫から摩天楼を飛び交うムササビ猫を妄想するとんでもない大飛躍に私はとてもついて行けませんでした。なので、この時点でバカバカしくなった私はスカパー!のチューナーの電源を叩き切ってしまいましたから、その後は見ていません。

ヒストリーチャンネルでは「各分野でのトップレベルの専門家の解説」と謳っていますが、どの分野のトップレベルなのだろう? SFコメディの専門家? というのが正直な印象です。

eiffel_tower_decomposing.jpg

しかし、朝日新聞の論説委員は社説のネタにしてしまったくらいですから、この番組をかなり真に受けていたのだと思います。この社説には以下のようなくだりもありました。

 国際社会は環境破壊を黙って見過ごしてきたわけではない。国連での論議を経て条約が結ばれ、各国が対策を取ってきたことで、紫外線を防ぐオゾン層の保護が進みつつある。地球温暖化対策に取り組む国も増えてきた。


オゾン層の破壊や地球温暖化などの人為説は単なる仮説でしかなく、科学的な矛盾をたくさん含んでいるということは当blogで何度も触れてきた通りです。猫が数百年でムササビになるような未来像を疑うことなく受け容れてしまう人たちが科学的根拠の不充分な環境破壊説を盲信してしまうのは、むしろ当然の帰結なのかも知れません。

メディアが子供たちの「理科離れ」を危惧するようになって久しい昨今ですが、それ以前にメディア自身がこの救いようのない「理科オンチ」ぶりを何とかすべきだと私は思います。
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フロアポンプの憂鬱 (その2)

ヒラメの横カムをいう神器の構造をパクり、しかしラバーブッシュをリバーシブルの米仏兼用にしてしまったが故にその構造を生かせなかったクイッカー・フィックスプロですが、全般的なつくりはなかなかのものでした。肝心なポンプの性能も非常に高く、高圧もしっかりこなせます。現在手持ちのタイヤではMAX14気圧のものが最高ですが、これも難なく入りました。

「高圧になったらシリカのピスタじゃなければ無理」というハナシもよく耳にしますが、これは完全に都市伝説の類です。少なくともSKSエアベースプロとクイッカー・フィックスプロに関しては14気圧でも余裕で入りましたので、それ以上も充分にいけるでしょう。ちなみに、シリカのゲージは15気圧までしかありませんが、SKSエアベースプロのゲージは17気圧まで、クイッカー・フィックスプロは16気圧まであります。

ま、シリカはパッキンなどのスモールパーツが入手しやすいので末永く使えるとか、重いスチールベースで安定感があるとか、ロゴがカッコイイとか、佇まいが素晴らしいとか、色気があるとか、そういう部分も含めて「最高」というのであれば特に異論はありません。が、高圧までストレスなく入るポンプ性能だけに関していえば、代わりはいくらでもあると思います。

ということで、クイッカー・フィックスプロが全般的にイマイチだったなら諦めもつきますが、かなり良い線を行っているだけに、返す返すもあのヘッドは惜しまれます。ブッシュを圧縮する構造そのものは理想的なヒラメの横カムと全く同じレバーアクションでありながら、バルブの締め付け具合を安物の携帯ポンプと大差なくしてしまった全ての原因は、バルブをくわえるラバーブッシュのつくりの悪さです。リバーシブルで米仏兼用にしてしまった中途半端でありがちな構造が残念でなりません。

rubber-bushing.jpg

前回の写真の使い回しで恐縮ですが、こちらを向いている穴がプレスタ(仏式)バルブに合わせるほうです。プレスタバルブに合う部分の奥行きは3mmほどで、その奥はシュレーダー(米式)バルブが納まる内径になっています。このせいでラバーブッシュの締め付けが弱く、剛性も低く、一応エア漏れは防げるレベルまで締るものの、バルブの先端部が奥の空間で遊んでしまい、非常に落ち着きが悪いという状態なんですね。

ヒラメはプレスタバルブが丁度納まる内径の真鍮削り出しの部品でラバーブッシュをサンドイッチしてガッチリと圧縮しています。そのため、剛性が非常に高く、奥に入っていくバルブ先端も遊ばず、バルブの抜き差しがしやすいのに確実に絞まり、バルブをしっかり固定してくれます。

シュレーダーバルブ対応にするにはその中身を別売のものと入れ替える必要があるのですが、定価で630円のほどの部品です。製造原価はもっと安いでしょうから、その分のコストを裂いてでも、同じような構造にすべきでした。ゲージ部分にバルブを設けて減圧できるようにした無意味なギミックを仕込むくらいなら、肝心のヘッドで妥協すべきではなかったでしょう。

hirame-adapters.jpg
ヒラメのシュレーダー用(上)とプレスタ用(下)
いずれも真鍮削り出し(プレスタ用はメッキがけ)で、
左の部品が右の部品の中にあるラバーブッシュを圧縮します。
プレスタ用は定価420円、シュレーダー用は定価630円で入手可
ラバーブッシュだけなら定価105円で入手可能です。


いやもう、こんなに勿体ないと思ったことは最近あまりありませんね。折角ヒラメと同じ構造でブッシュをキッチリ圧縮できる構造を持っていながら、肝心のブッシュが安物の携帯ポンプと同じですから。そこで私は考えました。ヒラメのブッシュをエア漏れなくキッチリ圧縮し、バルブが中で遊ばないように最低限の空間を確保するスペーサーを作ってやれば良いのでは? と。

ということで、こんな部品を作ってみました。

original-spacer.jpg
ラバーブッシュやOリングに密着してエア漏れがないことを確認しましたので、
普段は見えないところに納まる部品に過剰な表面研磨は必要ないと判断しました。
仕上げはかなり粗いところでやめましたが、ちゃんと機能してくれます。


東急ハンズで入手した15mmφ×20mmの真鍮の円柱を加工しました。外径を14mmまで削り、内径6mmの穴を開け、長さを12mmほどに切り、これにヒラメのプレスタ用ブッシュを買ってきて組み合わせました。あの役に立たないデフォルトのラバーブッシュをゴミ箱に叩き込み、この自作部品とヒラメのブッシュを仕込んだら、全ての感触はヒラメと全く遜色ないレベルに至りました。

加工は全て自力でやりましたので、かかった費用は真鍮の円柱とヒラメのスモールパーツ代を合わせて350円弱といったところです。たった350円の出費であのトホホなヘッドが世界最高のポンプヘッドとほぼ同じになりました。手間はかかりましたが、もの凄く得した気分です。(と同時にかねてから欲しいと思っていた旋盤が本気で欲しくなってしまいました。)

上の写真のような部品を製作できる方には、リーズナブルで最高レベルのフロアポンプになるクイッカー・フィックスプロはかなりオススメです。が、こうした部品を作れないという方は下位モデルでも良いので、素直にヒラメのヘッドに替えた方が後悔しないと思います。

(おしまい)

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フロアポンプの憂鬱 (その1)

世界最強のポンプヘッドとして誰もが認めるヒラメの横カムにそっくりなポンプヘッドが付属しているクイッカー・フィックスプロというフロアポンプを購入した私は、帰宅するなり早速玄関先に置いてあるクロスバイクで試してみました。

ヒラメに瓜二つのそれをバルブに装着してみると、何かに当たって弁棒が押され、ドバーッとタイヤのエアが吐き出されていきました。口金部分よく見ると、奥にはシュレーダー(米式)バルブの逆止弁を解放するディプレッサーが覗いているではありませんか。シュレーダー専用か? と思いましたが、そんな断りはどこにもありませんでした。もしやと思って口金を外してみると・・・

rubber-bushing.jpg

ご覧のように「リバーシブルでプレスタ(仏式)もOK!」というよくあるパターンの構造になっていました。嫌な予感はしましたが、慌てず騒がず裏返し、もう一度バルブに装着してみました。案の定、同じ構造の安物携帯ポンプにもありがちな落ち着きの悪さでした。いえ、口金のネジを締め込んでいけばエア漏れには至らないのですが、ヒラメのようにビシッとくわえ込む感じとは程遠い、悲しいほどプアな装着感だったんですね。

パクるなら徹底的にパクって、中途半端なアレンジなんかするな

というのが正直な感想です。ま、パナレーサーで使っていた横カムのヒラメを移植してやれば済む話ですが、あれもまだ充分に使えるので退役させるつもりはありません。「チェーンカッター」のエントリでもお話ししましたように、クルマに自転車を積んで遠征することを目論んでいますので、パナレーサーのそれはコンパクトさと折りたためる足が車載に丁度良かろうと考えているところです。

ま、ヘッドについては大いに不満ですが、ポンプそのものの性能は大いに満足できるものでした。特にインナーチューブのハードメッキでポンピングがウルトラスムーズだという評判に間違いはなく、これに関してはSKSエアベースプロをも凌駕するレベルで、感動的と表現しても大袈裟ではないでしょう。もっとも、それがいつまで持続するかは解りませんけどね。

重量は公称1.6kg(実測も全く同じでした)でこの種のポンプにしてはかなり軽い部類ですが、各部の作りはかなりシッカリしています。下位モデルのフィックスベーシックは樹脂ベースであるのに対し、このフィックスプロはアルミ製で、剛性感も申し分ありません。その軽さゆえシリカのような安定感には及びませんが、ここに足をかけてやればその辺は関係なくなるでしょう。

quicker_base.jpg
プレス加工のアルミ製ですが、厚さがそこそこありますし、
樹脂の裏打ちもしてありますので、剛性感は充分です。


また、ゲージも変に凝ったデザインだったり文字盤を無意味なカーボン柄にしたりといった小細工もなく、読みやすい部類だと思います。ベゼルの動きもスムーズで、クリック感もちゃんとしています。肝心の精度もフロアポンプ付属のゲージとしてはかなり正確な部類になると思います。

quicker_gauge.jpg
ゲージを囲うベゼルや六角形の意匠のせいで
写真では相対的に小さく見えますが、
指針は20mm(メーター中心から針先まで)ですから、
超定番の単体ゲージパナレーサーBTGより20%ほど長く、
読みやすさという点でも充分に及第点をあげられます。


あえて気に入らない部分を指摘するなら、ハンドルでしょうか。滑り止めを狙ったのか上面が凹凸になっているのですが、10気圧を超えるような高圧になってくると掌に食い込んで痛いので、これはない方が良かったと思います。

quicker_handle.jpg

もっとも、このポンプは普段使いのクロスバイク専用とするつもりで買いましたので、常用は6気圧を想定していますから、この範囲では何ら問題ありません。もし頻繁に高圧で使うというのなら、この凹凸を削ってしまうとか、クッションバーテープを巻くとか、対処のしようも色々あるでしょうから、特に騒ぐほどでもないでしょう。

また、ゲージの下側に四角く黄色いボタンが付いていて、それを押すと減圧できるようになっています。が、ヘッドを装着する際にバルブを開放してやらなければ意味がありませんし、そこまで深く差し込んでしまうとヘッドを外すときに相応のエアが漏れ、むしろ正確なエア管理は難しくなるでしょうから、あまり意味があるとも思えません。

とはいえ、全般的にはかなり良くできたポンプだと思います。

(つづく)

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フロアポンプの誘惑

ロードバイクユーザーにとってフロアポンプの王道はやはりシリカのスーパーピスタあたりになるのかも知れません。同様に頑丈なシリンダで高圧がキッチリ入るということではゼファールのハスキーもショップ筋やオールドユーザーの間ではしぶとくその地位を守っているように思います。

私がメインで使っているのはT-モバイル(現ハイロード)などのプロチーム御用達ということで、このところ人気が上がってきたSKSエアベースプロです。それまで使っていたのはこれまた定番のパナレーサーBFP-SGTW2で、特に不具合はなかったのですが、もう10年選手なんですね。メーターが上に付いて見やすいものが欲しいという物欲に負けました。

いえ、本当の理由は違います。例の普段使い専用クロスバイクは玄関に置いてあるのですが、MTBやロードバイクなどは二階の廊下の奥に置いてあり、自転車いじりも専らそこでやっています。なので、ひとつのポンプを行ったり来たりさせるのが面倒になって、例のクロスバイクを組んだしばらく後、SKSを買ったという次第です。

pana-sks.jpg

ご覧の通り、大きさが大人と子供ほど違いますね。最初はSKSのほうがやたらデカく感じました。いくら成人男性の平均身長が日本人よりドイツ人のほうが10cmくらい高いからといって、このデカさはないだろうってな感じでした。が、慣れというのは恐ろしいもので、いまではパナレーサーのほうがアホみたいに小さく感じ、子供用を無理して使っているような気分になってくるんですね。こっちもSKSに替えてやろうかと思ったくらいです。

ま、でも高価なフロアポンプを何本も持てるような身分ではありませんので、もう少し安いところで何か良いポンプはないだろうか? と思って色々検討し、白羽の矢が立ったのがクイッカーのフィックスプロでした。

pana-sks-quicker.jpg
ご覧のようにハンドルの幅は若干狭くなっていますが、
クイッカー・フィックスプロとSKSエアベースプロの体格は殆ど同じで、
ストロークもだいたい同じくらいです。


ここんちは押しても引いても入り、しかも11気圧きっちり入るという例の携帯ポンプが話題になりましたが、フロアポンプもインナーチューブにハードメッキが施され、驚異的にスムーズだという評判を聞いていました。で、新たにラインナップされた上位モデルにはヒラメの横カムレバーにそっくりなポンプヘッドが付いているということで、俄然興味をそそられました。

実は、私もヒラメ信者です。SKSもレバーアクションのポンプヘッドがついていましたが、樹脂製のありがちな安物で、ヒラメのそれに比べたらオモチャ同然でした。なので、即行でヒラメに替えてしまいました。

ちなみに、SKSのエアベースプロは、デフォルトのヘッドに設けられた突起部分を本体の溝に引っかけてホースを納める構造なので、ヒラメに替えるとそういうわけにいかなくなります。なので、このヘッドを切り刻み、本体の溝に引っかける部分をポンプヘッド近くに取付けました。

modifed_sks.jpg

この樹脂がかなり性能の良いエンジニアリングプラスチックを使っているようで、普通の棒ヤスリやクラフトナイフなどではなかなか削れなかったんですね。結局、ディスクサンダーを持ち出して力業で削り込んでいきました。ですから、こういうパワーツールか、人並み以上の根気をお持ちでない方にはあまりオススメできません。

それまで使っていたパナレーサーのポンプも玄関先に置きっぱなしとはいえ、ヒラメのヘッドはそのまま残しています。また、MTBにはコンプレッサーを使って入れることもあるのですが、これにも縦カムのヒラメを使っています。なので、我が家には3本のヒラメヘッドがあるわけですね。

余談が続いて恐縮ですが、エアツールやスプレーガンなどを使うために普通に売られているAC100V電源のエアコンプレッサーというのは最大吐出圧が8気圧くらい、タンク内圧が6~6.5気圧を切るとコンプレッサーが再始動するといったパターンが一般的ですから、実際には7気圧前後が常用域なんですね。ロード用としてはかなり物足りないわけですよ。

さらに、コンプレッサーのスイッチを入れてエア圧が上がっていくまで数分かかりますから、ロードバイクのようにエアボリュームがないタイヤの場合はむしろフロアポンプを使って手動で入れてしまったほうが早いんですね。

逆に、MTBの場合はエアボリュームがありますし、求められるエア圧もコンプレッサーの守備範囲内です。少し下がったエア圧を適正範囲に上げるときなどは特に必要性を感じませんが、タイヤやチューブなどの交換でエアを全部抜いてしまうような場合はコンプレッサーを使ったほうが楽なので、時々使うことがあります。

また、MTBはどうしても埃まみれになりますので、込み入ったところはブロワーで吹き飛ばすといったこともよくやります。なので、MTBのメンテにはコンプレッサーを回しながらというケースが非常に多く、こうした時にタイヤのエア調整もやるとしたら、やはりコンプレッサーを使うというのが私のパターンです。

話を戻しましょうか。3本のヒラメヘッドと暮らすほどヒラメ信者の私ですから、それにそっくりなヘッドが付いているというのは見過ごせませんでした。ヒラメの横カムは普通に買うと4000円くらいします。ですから、それと同じものが最初から付いているということはその分だけお得なのでは? と思ったわけですね。SKSエアベースプロにヒラメの横カムを付けると定価で16,000円くらいになりますから、クイッカー・フィックスプロとは約9,000円差ということになります。

hirame-quicker.jpg
ヒラメ横カム(左)とクイッカー・フィックスプロの付属品(右)

ご覧のようにレバーからカムに至る一連の構造は全く同じです。むしろ見た目は野暮ったさが若干軽減されたように思います。カムの動きもレバーを動かしたときの感触も全く同じといって良いつくりです。これほどあからさまなパクリはヒラメ信者的に許し難いようであり、しかしヒラメのハイプライスはどうにかならんのか? と思っていたこともあり、非常に複雑な印象でした。

しかし、実際にクイッカーのそれを使ってみると、これがとんだ食わせモノだったということを思い知らされ、私の中でヒラメはさらに神格化されていくのでした。

(つづく)

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アテになったり、ならなかったり

先般購入したシマノのWH-7850-C24-TUですが、実はまだタイヤを物色中で使っていません。が、とりあえす身体検査は済ませました。

まず、タイヤを貼ってしまうとなかなか測れない重量ですが、これはかなり良好な結果でした。メーカー公称値(平均重量)ではフロント527g、リヤ727g、計1254g(いずれもクイックシャフトを除く)となっていますが、私の許に届いた個体の実測値は以下の通りでした。

wh-7850-c24-tu_weight.jpg

フロントが519g、リヤは719g、計1238gですから、メーカー公称値より16g、1.3%ほど軽かった訳ですね。ま、誤差の範囲ですが、軽さを求めるホイールでマイナス誤差というのはうれしいものです。ちなみに、昨年購入したWH-7850-C50-TUはフロント646g、リヤ827gのメーカー公称値に対し、実測はフロント660g、リヤ847gで、2.5%ほど重かったのですが、ま、これも充分に誤差の範囲といえますね。

私はシマノ党と思われがちですが、実はそれほど入れ込んでいるわけではありません。価格性能比やスモールパーツの供給体制など、総合的に見てシマノにしておいたほうが何かと都合が良いという結論に至ることが多いだけです。殊に、スモールパーツはショップでも通販でもかなり細かいところまで対応できています。私のようにメンテは基本的に自分でやりたい人間にとって、これは大きなポイントになりますね。

ま、いわゆる「シマノ商法」のようなやり方は私も望むところではありませんが、マヴィックのようなアテにならないカタログスペックは出さないとか、先のサイクリンググローブの自主回収(シマノの社内基準を超えるベンジンが検出されたため、日本の基準には合致しているにも関わらず、回収しているそうです)のような真摯なスタンスは好ましいところです。

と、褒めたところで何ですが、WH-7850-C24-TUの取説に載っているスポークテンションは「この数値は目安です」と書かれているようにあまりアテになりません。フロントとリヤ右側(フリー側)が1000~1400N、リヤ左側が600~1000Nと記載されていますが、私が実測した値ですと、フロントが1200~1300Nくらい、リヤ右側が2000N前後、左側が600N前後でした。フロントはほぼ中央値でしたが、リヤの左側はほぼ下限値、右側は上限値を遙かに上回っているという状態だったんですね。

ただし、私が所有しているスポークテンションメーターはホーザンのC-737とパークツールのTM-1ですが、ホーザンのそれは換算表が#13~15のプレーンスポークのみでエアロスポークには対応していませんし、パークツールの換算表もWH-7850-C24-TUのスポークに100%合致したデータは載っていません。ということで、上記の実測値はホーザンおよびパークツールで測定したものを各々の換算表からより条件が近いと思われるデータと付き合わせたものです。ま、でも両者共かなり近い値になっていましたから、だいたい合っていると思います。

そもそも、C24とC50の取説が同じでスポークテンションの参考値も共通になっているのは少々解せませんね。C24とC50はリムハイトが倍以上違い、リヤはC24のほうがフランジ幅が広くなっていますから、その分だけスポーク長も異なります。さらに、C50は前後とも普通のディープリムですが、C24のリヤは左右のスポークテンションをより近づけようとするオフセットリムになっています。これだけプロフィールが異なっているC24とC50の両モデルともスポークテンションの目安が同じというのは少々おかしな話です。ちなみに、実測ではC50のほうが10~20%くらい高い感じでした。

ま、それはともかく、自分で手組みする分には煮て食おうが焼いて食おうが、余ったスポークをバーベキューの串代わりに使って本当に焼いてしまおうが、どうでも良いと思えます。汎用パーツはある程度マージンを見込んでいることも多いでしょうし。

でも、完組ホイールはメーカーが色々最適化しているハズですので、下手にいじると耐久性に影響が出たり様々な面で性能のバランスを崩してしまう恐れもあるでしょう(特に今回のホイールは軽量のカーボンリムですし)。なので、多少は加減することがあっても、なるべくデフォルトに近い状態で乗ることにしています。ま、私ごときの力量でメーカーの設定を上回るようなセッティングを見つけられるとも思えませんし。

ということで、私が新品の完組ホイールを下ろすに当たってスポークテンションのデフォルトの値を把握しておくのは、今後のメンテナンスのためにも重要なデータになります。世の中にはメーターなんか使わなくてもメーターには表れないような何かを感じ取れてしまう、神の手を持つ職人さんもいるようですが、私のような凡人は最大限こういう道具を活用しなければならないということですね。

(試乗記へ)

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チェーンカッター

いままで、自転車を積めないクルマに乗っていた私は、自転車を積めるクルマに買い換えようと決意し、現在納車待ちということは何度も書いてきたとおりです。この買い替えは要するに自転車を積んであちこちに遠征しようという目論見が発端ですから、それに備えて自転車を車内に固定するキャリアなども物色中の今日この頃だったりします。

これまで私が遠征するときは、主に輪行袋へ入れて鉄道で移動、駅のトイレで着替えてコインロッカーに荷物を預けるというありがちなパターンでした。工具は携帯用マルチツールを軸に必要最小限しか持てなかったわけですね。でも、クルマならば私が保有している工具の全ては無理ですが、普通の工具箱なら難なく積み降ろしができます。

とはいえ、いま自宅に置いてある自転車いじり用の工具箱はぼちぼちツールチェストに替えねばと思っているような状態で、重量もかなりかさんでいます。ですから、気軽にひょいひょい持ち運べるような状態ではないんですね。また、あれだけの重量となれば燃費にも悪影響が懸念されます。かといって、自転車を積んで出かける度に適当な工具をピックアップして小振りな工具箱に移し替えるのも面倒なハナシです。

そこで、使用頻度の高い工具をもう1セット取り揃え、クルマに自転車を積んで走りに行くとき手軽に持ち出せるようにしようと考えたわけです。もっとも、これまで使いやすさやクォリティの高さなどを求めて買い換えた工具が結構ありまして、死蔵状態の工具も沢山眠っていますから、これらを再活用するという線を中心に考えています。新たに買い求めようとしているのは、ボロくなって捨ててしまったり、人にあげてしまったり、もはや規格が合わず使えなくなってしまったり、といった理由で不足しているものを補充する感じです。

前置きが長くなりましたが、掲題のチェーンカッターも携行用の小振りなものを除いて10s対応のものは1つしかなく、買い足すことにしたんですね。

これまで私はホーザンのC-370を愛用してきました。ホーザンも年々値上げしていますので税込定価がほぼ4000円になってしまいましたが、実売価格は3300円前後くらいといったところでしょうか(数年前に私が買ったときは確か3000円しなかったと思いますが)。他社のチェーンカッターも2000円を切るものが減っている昨今ですから、とりわけ高価というほどでもないと思います。むしろ、価格性能比ではかなりのハイレベルではないかと思います。

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HOZAN C-370

これをもう一つ買っても良かったのですが、シマノ用としては一つの究極といえるTL-CN32を値上げされる前に買っておいたほうが良いのでは? という悪魔のささやきに抗しきれず、実は例のホイールを買う勢いに乗じてしまいました。

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SHIMANO TL-CN32

届いたそれを手にとってみて、思いました。まるで高級なワインオープナーを思わせる贅沢なつくり、動きの良さ、所有欲を満たす佇まい、やはり一つの究極だと。

実際に使ってみますと、ハンドルが大きく握りやすく、本物の木製で手触りも最高に良いのですが、チェーンを切るという作業にここまでのクォリティが必要とも思えませんでした。毎日使うプロの仕事であれば、この手に優しいハンドルも意味があるのでしょうけど、私の使用頻度では完全にオーバースペックです。

シマノTL-CN32は贅沢なつくりもさることながら、軽い力でスムーズに切れるという、その使用感も評判になっていると思います。スムーズに切れる秘密は矢の付け根の部分にボールベアリングが仕込まれており、滑らかに回って抵抗が非常に小さいからでしょう。また、ピンを抜いてもチェーンが保持されるホルダーが設けられています。

shimano_tl-cn32_2.jpg
シマノTL-CN32はピンを押す矢の根元に
ボールベアリングが仕込まれており、
スムーズに回るため軽い力でも良く切れます。
また、チェーンを保持する構造が設けられているため、
作業性も非常に優れています。


このホルダーによってピンを抜いた途端にディレイラーのテンショナーに引っ張られてチェーンが飛んでいくということもなく、またチェーンをつなぐ際もここに引っかけてやれば簡単にピンを装着することができます。(チェーンの着脱時にはチェーンホイール内側にチェーンを外しておくという人には関係ありませんが。)

しかし、これらはシマノTL-CN32だけのものではありません。実は、ホーザンC-370にも矢の根元のボールベアリングとチェーンホルダーが設けられています。申し分ない滑らかさで充分に軽く、作業性に大きな差はないといっても過言ではないでしょう。強いていうなら、シマノは矢を送るT字のハンドルが長いぶんだけトルクをかけやすいのですが、実用上は大した差とも思えません。

hozan_c-370_2.jpg
ホーザンC-370にも矢の根元に
ボールベアリングが仕込まれており、
また作業性の良いチェーンホルダーもあります。
つまり、チェーンカッターとしての基本性能は
シマノのTL-32と遜色ないつくりになっています。


例えていうなら、数万円の高級ボールペンと何千円かのそれと、リフィルを比べたら大差なかったという、そんな感じでしょうか? あくまでも個人的な感想ですが、ホーザンC-370で何の不足もなく、私ごときの使用頻度でこれ以上を求める必要はなかったというのが正直なところです。

ちなみに、シマノTL-CN32は矢のスペアがハンドル内に格納でき、デフォルトで2本付属しています。もちろん、スモールパーツとして求めることも出来、10本入りで3000円ほどになるようです。一方、ホーザンC-370はカシメてあるので矢だけの交換ができず、T字のハンドルごと入れ替えになりますが、1セットの実売価格は600円強といったところでしょうか。これを頻繁に交換する必要があるのはプロユースが殆どでしょうから、やはりアマチュアならホーザンのほうで充分な気がします。

ま、私の場合は買ってしまったので、シマノTL-CN32を自宅用、ホーザンC-370を出先用として使い分けるつもりですが、出先でチェーンを切る必要があったのは過去にも数えるほどしかありません。しかも、クルマに積んである工具箱にたどり着かないところでチェーントラブルが生じれば、結局携帯用マルチツールのそれを利用することになりますから出番はありません。やはり死蔵に近い状態になってしまうのでしょう。ゴメンねC-370。

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SRMを食べながらSRMの混入に大騒ぎする日本人

昨日、吉野家が仕入れたアメリカ産牛肉にSRM(特定危険部位)の「脊柱」が混入していたということで、新聞やTVニュースなどが大きく報じていましたね。

吉野家向け米国産牛肉に特定危険部位

農林水産省と厚生労働省は23日、牛丼最大手の吉野家向けに伊藤忠商事が輸入した米国産牛肉に、牛海綿状脳症(BSE)の原因物質が蓄積しやすく、輸入を認めていない「特定危険部位」の脊柱(せきちゅう)が混入していたと発表した。特定危険部位の混入は06年7月の米国産牛肉の輸入再々開以降初めて。問題の牛肉は、消費者には販売されていない。

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(後略)

(C)朝日新聞 2008年4月23日



こういうニュースが流れる度に私はつくづく思います。「違反は規則がつくる」と。

脊柱は多くの国でSRMに指定されていますが、例えばEUの基準では以下の場合に限って脊柱の使用を例外的に認めているんですね。

●国産牛にBSEの発生がありそうもないと科学的に評価されたEU構成国
●国産牛にBSEの発生が報告されているか、発生がありそうだと科学的に評価されたEU構成国において、反芻動物へ哺乳動物タンパク質の給餌禁止が有効に執行された日付以後に生まれた牛。

本当はもう少しグチャグチャと条件に尾ひれが付いているのですが、短いセンテンスでは非常に解りにくくなってしまうので少し整理させて頂きました。細かいニュアンスは省きましたが、おおよそこんな感じだとご理解下さい。

一方、日本の国内基準でSRMに指定されている腸の部位は「回腸遠位部」のみですが、国際的な指標となっているOIE(国際獣疫事務局)の基準では「腸全体」をSRMとしています。日本では現在でも焼肉やホルモン焼、モツ煮込みなどで普通に牛の腸を食べることができますが、海外では原則的に禁じられているわけです。

そもそも、OIEが腸全体をSRMに指定したのは2004年のことでした。この流れに至る発端となったのは、2000年にフランス食品衛生安全庁から提出された意見書でした。その意見書では以下の理由で腸全体のリスクを唱えています。

●回腸遠位部以外の腸の諸部位も僅かではあるが、異常プリオン(BSEの原因と考えられている物質)の増殖が可能なリンパ組織、神経組織を含んでいる。
●腸のクリーニングを行っても、異常プリオンの増殖が可能なこれらの組織を全て除去することが殆ど不可能であることが顕微鏡分析で確認された。
●これらの部位がマウスにBSEを感染させた例がないなど若干の実験的根拠はあるものの、マウスでの実験が牛から牛への感染よりも敏感とはいえず、これを科学的に保証するものではない。

こうした理由からフランス食品衛生安全庁の意見書は「回腸遠位部以外の感染性も否定はできない」とし、腸全体にもリスクが存在すると結論づけています。

これを受けてEUの科学運営委員会も同年にこの意見書を支持する意見書をOIEに提出しました。それから3年半ほどの審議を経、日本の反対意見を棄却し、OIEは腸全体をSRMに指定したというわけです。日本の反対意見が棄却されたのは、ひとえに有効な科学的根拠が示されなかったからでしょう。

当時の亀井善之農水相は「風評被害と申しますか、それらの問題につきましては、国民、消費者の皆さんに正確なリスクコミュニケーションと、こういうことも努めなければならないと思います」とコメントしていました。科学的根拠を伴わない日本政府の見解は、科学的根拠を伴うOIEの決定が日本に「風評被害」をもたらすかもしれないと懸念していたわけです。故人をなじるのも何ですが、彼は「風評」の意味を理解していたのでしょうか?

日本政府はこのOIEの決定を批准せず、国内基準を維持しました。その理由は、世界で唯一全頭検査を行っている日本でこうしたリスクは極めて低いからというものでした。しかし、その舌の根も乾かぬ2004年7月初旬、全頭検査で月齢の若い個体でも漏れなくBSE感染を確認できるのか検討しなければならない旨、日本政府は初めて公式見解として発表しています。

ちなみに、そのタイミングは参院選直前で、しかも自民党が票稼ぎのために「曽我ひとみ・ジェンキンスファミリー、ジャカルタで涙の再会」をお膳立てし、メディアの目は全て選挙とこの再会劇に集中している時分でした。政府はこの隙にひっそりとプレスリリースしたというわけです。例の9.11テロ当日、イギリスの政府関係者が「今日は政府にとって都合の悪いことを発表するには最高の日だ」と発言して大ヒンシュクをかったそうですが、いずこも考えることは同じということですね。

上述のように日本政府は国産牛に全頭検査を実施しているためリスクが低く、腸全体をSRMに指定する必要はないとしてOIEの決定を批准しませんでした。が、それから3ヶ月も経たない8月下旬、月齢の若い個体は異常プリオンの蓄積レベルが低く、現在の検査薬の感度ではBSE感染を全頭検査で漏れなく確認できるとは限らないという国際的な常識に沿う公式見解を初めて示しました。

こうして日本政府がリスクは低いとしていた根拠の一部が崩れたにもかかわらず、また科学的根拠を示すこともなく、OIEがSRMと指定している腸の消費が日本国内では認められ続けているんですね。何故、誰も説明を求めようとしないのか不思議で仕方ありません。単に牛モツが食べられなくなるのは嫌だからということでしょうか?

ま、それはともかく、EUでは条件付で認められている脊柱の混入で大騒ぎする一方、国際的に認められていない腸が何の疑いもなく消費されているというのが、BSEを取り巻く日本の状況なんですね。日本と海外のスタンダードが異なるのは、その背景に様々な事情が交錯しているからだと思います。なので、どちらがどうとは明言しがたいところですが、今回の騒動も傍から見ていると実にバカバカしいと思われるものでした。

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タイラップ用ニッパー (その2)

私がタイラップの余分を切り取ることに拘りを持つようになったきっかけは、初めてサイクルコンピュータを導入した高校時代にさかのぼります。

クロモリのロードレーサー(当時はロードバイクという言葉はなかったと思います。また、フレームマテリアルもまだアルミがボチボチ出始めた頃でした)は入門用で決して高価とはいえませんでした。が、思い入れはたっぷりありましたので、当然のように屋内で保管していました。その保管場所は二階にあり、外へ運び出すには屋外の非常階段を担いで降りるのが手っ取り早かったんですね。

ある日、肩に担いでいたそのロードレーサーを地面に降ろそうとしたとき、ダウンチューブが腿を擦りました。サイクルコンピュータの配線を這わせていたそこには等間隔に何本かのタイラップがあったのですが、このときにタイラップの余分を切り落とした切断面が私の腿を激しく引っ掻きました。一部は殆ど裂傷といって差し支えがないくらい血が滲み、ド派手なミミズ腫れになってしまったんですね。汗をかいたり風呂に入ったりするとしみるのなんの何の、かなり痛い思いをしました。

そもそも、ニッパーは圧着切断ですから、切断面が山型に尖ります。また、バンドを固定するヘッドのギリギリで切りたいと思っても刃の厚みがありますから、キワまで寄れません。普通のニッパーで切るとこうした切り残しの尖った部分が出っ張ってしまいますから、場合によってはそれが凶器になってしまうということなんですね。

私はこの経験がトラウマとなってしまい、それ以来タイラップの切断面をカッターナイフでまっ平らに整え、切断面が頭とツライチになっていないと気が済まないという変態的な性癖を持つようになってしまったのでした。私がタイラップフェチになっていったのはこうした性癖から屈折し、あらぬ方向へ発展してしまった結果かも知れません。

しかし、この端面処理はなかなか面倒くさい作業です。勢いあまってカッターで周囲を傷つけてしまわないよう、神経も使います。配線を処理するときなどは特にそうですが、ワイヤレスでもフレームやフォークに余計な傷はつけたくありませんから、カッターによる端面調整というのはやはり細やかな作業になります。


半年ほど前だったと思いますが、電工関係の工具を扱っているネットショップでタイラップ用のニッパーと称するものを見つけました。やはり圧着切断ですが、刃が一般的な両刃研ぎではなく、片刃研ぎになっていたんですね。要するに、一方の切れ端の切断面は山型に尖りますが、もう一方はほぼフラットに切れるというわけです。

しかも、これは刃がキワまで寄っているということですから、タイラップの頭とほぼツライチでカットできます。今までカッターで端面をフラットに削っていた作業を省略できるという、願ったり適ったりの構造というわけですね。思わず脊椎反射で購入しそうになりましたが、メーカー不明でハンドルグリップの色も無粋なそれに躊躇し、同様のアイテムが有名メーカーから出ていないか探すことにしました。

私の場合、ハサミものはドイツのクニペックスかスウェーデンのバーコが好みで、自転車いじり用の工具箱に入れてあるロングノーズプライヤーや普通のニッパーはいずれもクニペックスです。ということで、早速クニペックスのカタログを調べてみますと、やはりラインナップされていたではありませんか!

工具というのはつくづく業界の垣根みたいなものを感じます。ある業界では当たり前の工具でも、別の業界では全く知られておらず、原始的な作業をしているなんてことが時々あります。

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KNIPEX 7803-125

で、購入して使用してみますと、これが実に快適でした。何故もっと早く気付かなかったのかと自分を呪いたくなるほどです。

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クニペックス7803-125の刃先

写真では解りにくいと思いますので、刃の模式的な断面図を示しますと、以下のような格好になっています。

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クニペックス7803-125の刃の断面図
厳密な形状は若干異なりますが、
おおよそこんな感じです。


ご覧のように片刃になっており、しかも若干Rが付いていますから(図はかなりオーバーですが)、タイラップのヘッドのギリギリまで刃を寄せて切ることができ、切断面もほぼフラットになるというわけです。ちなみに、クニペックスはこれを「フラッシュカット」と称しています。

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切断面の比較
クニペックス7803-125でカットしたもの(手前)と
一般的なニッパーでカットしたもの(奥)


ご覧のようにクニペックス7803-125で切ったものはタイラップのヘッドとほぼツライチ、切断面もほぼフラットですから、カッターナイフで端面処理などしなくても充分にキレイです。一方、普通のニッパーで切ったものは1mmに満たない程度ですが、尖った切断面が出っ張ります。これで素肌を引っ掻くと、場合によってはかなり酷いみみず腫れになるか、最悪の場合は裂傷になることもあるでしょう。

また、安価なニッパーは「バチン」と力で断ち切るような感じになりがちですが、これは「サクッ」と小気味良く切れます。ま、元々クニペックスは切れ味に定評がありますから、これが特別というわけでもありませんが。

あとは個人的なことですが、私が愛用しているロングノーズプライヤーやニッパーなどと共通したデザインの樹脂ハンドルで統一感があるのも喜ばしいところです。

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ま、正常な人はタイラップの余分を切断した端面など気にもしないのでしょうから、殆ど無意味な工具なのかもしれません。が、私としてはあのトラウマを克服してくれる工具ということで特別な存在なのです。

(おしまい)

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タイラップ用ニッパー (その1)

私が初めてサイクルコンピュータを導入したのは高校生の頃で、キャットアイのCC-6000という有線式でした。ま、この頃は無線式なんて存在しませんでしたけどね。

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CATEYE CC-6000
自転車用のスピードメーターというと
小中学生の頃にフロントホイールから回転を取り出す
機械式のそれで体験していました。
が、抵抗が大きく、それを付けると却って遅くなる
というジレンマに悩まされました。
この非接触マグネット式は私にとって神の降臨に等しく、
購入してから既に20年以上経ちますが、
捨てることなど出来ません。


当然のことながら、有線式はセンサーと本体を繋ぐコードをフレームに這わせなければなりません。そのためにタイラップを駆使することになるんですね。特に私が愛用していたキャットアイCC-6000はケイデンスセンサー付でしたから、それとホイールセンサーを左側のチェーンステーに取り付け、BB下を経由してダウンチューブ下を這わせなければなりませんでした。あまり目立たないように、でもコードが弛まないように、といった条件を同時に満たすタイラップワークはそれなりのセンスが要求されたものです。

無線式が主流になると、かつてのようなタイラップワークなど必要なくなりました。が、今度は別の形でタイラップのお世話になることになりました。

昔はハンドルバーもフォークなども細くて形状も単純な円形や楕円形が普通でしたから、本体やセンサーのブラケットも樹脂成形のバンドというよりクランプリングに近い構造で固定していました。挟み込むゴムの厚さや固定ネジの締め込み具合で大抵は網羅できたんですね。

ところが、今日ではロードだけでなく、太さが大幅に異なるMTBのサスペンションフォークも網羅しなければなりません。また、ロードはカーボンフォークが当たり前になった今日、形状の自由度も上がっており、空力特性も考慮されて縦長断面が増えています(私の愛車:スコットCR1チームイシューの場合、センサーを取付けている部分は縦50mm前後、横20mmほどで、かなり強烈な縦長になっています)。

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こうなってくると昔のようなクランプリングに近い構造では殆ど対応できません。結局、フレキシブルに対応でき、しかも原価が非常に安いタイラップで固定する方式が主流になりました。私がCR1に装着しているのはポラールのCS200cadですが、これも本体ブラケット、センサーともタイラップで固定します。サイクルコンピュータとタイラップは今後もお友達であり続けるのでしょう。

で、以前「インナーワイヤープライヤー」の回でもお話しましたが、どうも私は真性のタイラップフェチらしく、長さや太さや色の違う何種類かを100本入りくらいで購入して常にストックしています。いえ、全て自転車に使うわけではありませんけどね。

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常時ストックしているタイラップの一部
特にお気に入りなのは中央にある一際長い束
幅3mm×長さ250mmのものです。
一般的に長くなれば太くなり、適度な細さのものは短く、
最近のファットチューブのフレームには対応しにくいのですが、
これは適度な細さでありながら、充分な長さがあります。
東急ハンズ横浜店でこれを発見したときは
小躍りしたくなる衝動を抑えながらレジに向かいました。


こうしたタイラップの締め上げには以前ご紹介したインナーワイヤープライヤーが便利ですが、余分を切り取る切断工具はなかなか良いものに巡り会えませんでした。「タイラップなんてニッパーで切ったったら仕舞いやん」と思われるでしょうが、私の場合はそれで済まない性癖があるのです。

(つづく)

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先達のほうがスゴイ

昨日のインディ・ジャパンで女性ドライバーのダニカ・パトリックが優勝し、一般紙などでもそれなりに扱われましたね。

インディ・ジャパンで女性初優勝 パトリック選手

 栃木・ツインリンクもてぎで20日に行われた自動車レースのインディ・ジャパン300マイル(約480キロ)で、ダニカ・パトリック選手(26=米国)が女性ドライバーとして同シリーズ史上初勝利を挙げた。男女が同じ土俵で戦うモータースポーツで、サーキットを使った主要レースで女性が優勝したのは初めて。

 インディカー・シリーズは時速300キロを超す高速レースで、米国以外では日本のみで開催。77年に女性が初参戦し、昨年5月の伝統レース「インディアナポリス500マイル(インディ500)」には出場33人中、史上最多の3人の女性が参加。女性の初優勝が注目されていた。悪路などを走るラリーでは、80年代初めの世界選手権でフランスの女性が優勝したことがある。

 参戦4季目のパトリック選手は最も優勝に近いと見られていただけに「勝てたとわかった時、涙が出た。女性の優勝第1号になるのは自分だと信じてやってきた」と通算50戦目での初勝利に感激していた。

(C)朝日新聞 2008年4月20日


でも、やはりパトリックはモータースポーツ史上最高の女性ドライバーといえるレベルには、まだ至っていません。朝日新聞の記者もモータースポーツに関してはかなり疎いようですから、「悪路などを走るラリーでは、80年代初めの世界選手権でフランスの女性が優勝したことがある。 」などと極めて簡単に書いていますが、彼女は「優勝したことがある」というレベルではありませんでした。

そのフランスの女性、ミシェル・ムートンこそ、モータースポーツ史上最高の女性ドライバーだと私は断言しますし、これに異論のある人はいないでしょう。



彼女は4WDラリーカーの先駆けとなったアウディ・クワトロを駆り、1981年のサンレモでWRC(世界ラリー選手権)に初優勝しました。が、これはほんの序章に過ぎませんでした。翌1982年にはポルトガル、アクロポリス、ブラジルで優勝、最終戦のアイボリーコーストまでドライバーズチャンピオンシップの首位にいました。彼女はワールドチャンピオンのタイトル争いをリードしていたのです。

アイボリーコーストに入る直前、ムートンは父親を病気で亡くしました。その父の最後の願いだったワールドチャンピオンに向けて彼女は自らを奮い立たせ、戦いに挑みました。既にマニュファクチャラータイトルを獲得していたアウディワークスも全てを彼女の勝利に向けて一丸となっていました。

アフリカの過酷なグラベルロードでしたが、ムートンは鬼気迫る走りでトップを守っていました。しかし、最終レグでエンジントラブル、間もなくトランスミッションも壊れ、リタイヤを余儀なくされました。結果、タイトルはオペル・アスコナを駆るウォルター・ロールの手に渡ってしまいました。

最終戦の最終レグまで、ミシェル・ムートンは世界のトップを快走していました。もし、あのときマシントラブルさえなければ、彼女はワールドチャンピオンを獲得していた可能性が極めて高かったと思います。WRCでの優勝は4回、表彰台9回、ステージトップタイム160回、生涯獲得ポイント229。こんな女性ドライバーは今後二度と現れることはないと私は思います。

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ジロはディフェンディングチャンピオン復帰

今年のツール・ド・フランスに昨年の覇者であるアルベルト・コンタドールが出場できそうもない状況にあることは以前お伝えしました。急激に力を伸ばした選手は必ず疑われるのがこの世界の常となって久しいわけですが、彼の場合はどちらかというとUCIとグランツール主催者との軋轢に巻き込まれた悲運といった感じでしょう。

一方、ツールと並ぶステージレースのジロ・デ・イタリアですが、こちらの昨年の覇者であるダニーロ・ディルーカも今年の出場は厳しいのではないかと見られていました。彼は昨年の第17ステージ後の検査でホルモンの値に異常があったことから生理食塩水などの注射があったのではないかと疑惑が持たれていたんですね。要するに、ドーピングの隠蔽工作があったのではないかと疑われていた訳です。

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CONIの公聴会出席のためローマ五輪スタジアムに入るディルーカ

その約1ヶ月半後の7月14日にはCONI(イタリア五輪委員会)の公聴会が開かれ、彼は潔白を主張していましたが、10月15日にはUCIから3ヶ月の出場停止と、このとき総合首位だったUCIプロツアーのポイントも剥奪されてしまいました。さらに、CONIは彼に対して2年間の出場停止処分を求めていましたが、それを不服としたディルーカは12月にCAS(スポーツ仲裁裁判所)へ提訴し、この4ヶ月を戦ってきた訳ですね。

で、彼が所属していたリクイガスのマッサーである中野喜文氏のblogよりますと、「今回の件(血漿及び水の点滴の疑惑)だが、特にそれ自体がドーピング行為と判断されるべきではない」との理由で、CONIが請求していた2年間の出場停止処分は退けられ、ディルーカ勝訴というかたちで決着がついたようです。

思えば、CONIは同じく昨年のジロの後、アレッサンドロ・ペタッキに対してもドーピングの疑いをかけました。ペタッキは持病の喘息に対して気管支拡張薬サブタモールの投薬が承認されていましたが、昨年のジロ第11ステージ後に行われた尿検査で規定値を約15%オーバーしていたことが問題視されました。

投与された薬物が尿に排出される量というのは体調によって左右されることもありますし、投薬量を間違えた単純なケアレスミスだったのかも知れません。が、いずれにしてもCONIはこれをドーピングとみなし、1年間の出場停止を請求したわけですが、7月24日にFCI(イタリア自転車競技連盟)はCONIの処分請求を棄却しました。

ま、私もイタリアのスポーツ界の事情、特に各々の機関がどういう関係になっているのか、その裏には政治的な摩擦や癒着などがあるのか、全く解りません。また、選手と薬物の関係も実際のところは解らないことだらけです。が、それにしても、競技以外でも戦わなければならないこの無駄なエネルギーの消耗は何とかならないものかと思います。

ディルーカの場合、昨年のUCIプロツアーチャンピオンになる可能性は非常に高かったと思いますが、それは叶わず、リクイガスとも契約切れで更新はならず、今年は下位のコンチネンタルプロであるLPRブレーキへの移籍を余儀なくされました。(ちなみに、同チームにはアスタナからパオロ・サヴォルデッリも移籍してきています。)

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LPRブレーキへ移籍したディルーカ(右)とサヴォルデッリ(左)

ディルーカは昨年の世界選手権直前から実戦を離れ、半年が経過しています。トレーニングを充分にこなしてこれたとしても、レース勘を取り戻すなど、実戦モードへの調整が間に合うのか、微妙ではないでしょうか? ジロの開幕はあと3週間ほどです。

テーマ:自転車ロードレース - ジャンル:スポーツ

山掛け

最近、ブリヂストンが更生タイヤのテレビCMを盛んに流してますね。

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新品タイヤしか知らない人は、新しい省資源・環境対策技術っぽく感じてしまうかも知れません。が、こうした技術は大昔からありました。「リトレッド」とか「リキャップ」という言葉も以前からありましたが、日本では「更生」とか「再生」などと呼ばれるのが普通です。

そもそも、これまで日本で更生タイヤを求めてきたのは品質より安さを求めるようなマーケットでした。特に不整地を走るなどタイヤの消耗が早いダンプカーを始め、建設業界での需要が高かったように思います。

余談になりますが、ダンプカードライバーの方々の雰囲気は皆さんもよくご存じかと思います。彼らに「リトレッド」などと言ったりしたら、「何スカして横文字なんか使ってやがんだよ。日本人なら日本語使え、日本語!」と怒鳴られるかも知れません。こうした業界筋では新品タイヤを「地山(じやま)」というのに対し、更生タイヤは「山掛け(やまがけ)」といわれているそうです。

ま、そんなことはどうでも良いのですが、更生タイヤは新品タイヤに比べて真円度が低いなど、全般的に品質が劣ります。高い輸送品質が求められるような輸送業界では敬遠される傾向もあるでしょう。また、更生タイヤを使用している場合も、品質の劣るそれを前輪に使用するとステアリングに悪影響が生じるなどの懸念があるため、後輪に使用するのが一般的になっているようです。ブリヂストンのCMでもイメージ映像が後輪に被さる編集になっていますが、それは前輪への使用を推奨していないからだと思います。

一方、航空業界の場合、真円度などの品質については自動車ほどシビアな性能が要求されませんから(耐久性や信頼性などは重要でしょうけど)、ほぼ例外なく更生タイヤが使用されています。特に着陸から制動する際にはかなり摩耗が進みますから、数百回の離着陸で張り替え、5~6回くらいそれが繰り返されるのが一般的になっているようです。また、タイヤそのものも張り替えを前提とした設計になっているそうです。

以前は新品タイヤの売り上げが落ちることから、メーカーは更生タイヤに関してかなり消極的だったように思います。主体となっているのは各地にある中小規模の業者といった印象でした。いまでも実際にネットで検索してみますと、具体的な情報が得られるのは殆どがこうした業者になると思います。

メーカー本体のサイトでは技術の紹介が主体となっており、具体的な製品やサービスの情報も事欠くような状態で、「販売店、または販売会社にご用命ください」といった案内にとどまる感じです。ただ、スケールメリットの見込める大手輸送業者向けには新品の導入から更生、メンテナンス、廃棄処分などライフサイクルをトータルでプロデュースしたプランなども提案されているようですが。

ブリヂストンの場合は2004年にイタリアのマランゴーニ・トレッド社と合弁でベルギーにブリヂストン・リトレッド・システムズ・エヌヴイ/エスエーという子会社を立ち上げ、トラックやバス用タイヤのリトレッド事業を本格始動させています。

また、2007年にはアメリカのバンダグ社を買収し、完全子会社化しました。同社はアメリカ、ベルギ-、ブラジル、メキシコに合計10カ所の自社工場を持ち、更生タイヤの製造・販売を行うフランチャイズショップを世界90カ国以上で900店以上展開しているそうです。このところブリヂストンがテレビCMで更生タイヤをPRし始めたのは、こうした事業展開にかかるものではないかと私は想像しています。

しかしながら、国内の展開を見てみますと、ブリヂストン本体はリトレッド材料の製造販売にとどまっているようで、一般向けのタイヤ更生は販売会社ないしタイヤ更正業者へ委ねる格好になっているようですし、規模も大したものではない印象です。

海外では積極的なのに日本ではそうでもないというのは、メーカーだけの責任とはいえません。メーカーが積極的に取り組もうと思っても、マーケットが応えてくれなければ独り相撲になってしまいます。さしあたってメーカーに出来ることはメリットと品質のアピールになるでしょう。

日本での更生タイヤの普及は、まず一般的な認識レベルを引き上げ、社会全般の意識を変えていくことが重要になるでしょう。ま、あのCMの雰囲気からすると、環境指向に訴えるありがちな企業イメージアップのキャンペーン広告みたいになってしまった感じですが、リーディングカンパニーのアクションとしては悪くないと思います。

省資源化というのは状況にもよりけりで、実際の効果が見込めるか否か微妙な部分も含むものなんですね。タイヤの場合は製鉄やセメント製造などの炉で燃料として燃やされる「サーマルリサイクル」も進められており、現在では国内の廃タイヤの50%程度が熱エネルギーとして再利用されているといわれています。

将来、更生タイヤの普及でタイヤに用いられる石油資源に余剰が生じたとして、これが別の用途に振り向けられた場合、そちらの分野ではタイヤよりリサイクルレベルが低かったとなれば、逆効果になる可能性すらあります。環境対策全般にいえることですが、省資源化も広く関係分野をまたいで総合的に評価していかなければ、本当に環境負荷を低減させているのか結論づけるのは難しいように思います。

ただ、現実には廃タイヤの不法投棄問題も根強く残っています。また、廃棄物処理業者の経営破綻で回収された廃タイヤが行き場を失ってしまったり、廃タイヤを「マテリアルリサイクル」して、ゴム製品を製造していた業者が経営破綻状態となり、ストックされていた20万本の処分に税金が投入されたという長崎県のケースなど、まだまだ廃タイヤの処分を巡ってはクリアな状態とはいえないのも事実です。

こうした現状を鑑みれば、廃タイヤを減らそうという動きには意味があるでしょう。ブリヂストンのCMで更生タイヤが一般にも広く知られる存在となり、様々な角度で検討が重ねられる良いきっかけになることを望みたいところです。

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値上げにつられて駆け込み購入

プロフィールにも書いてありますが、私は現在機械メーカーに勤めています。ここ数年は原材料(ウチの場合は主に鉄、ステンレス、ゴムなど)の高騰が続いており、一律5%というかたちで製品価格を毎年値上げしてきました。今年も5月から値上げが決まっています。

既にネット上でも話題になっていますので皆さんもご存じかと思いますが、シマノのサイクルパーツも5月から(7月からという情報もあり)値上げになるそうです。ま、どこも台所事情は同じということですね。シマノの場合は一律ではなく、製品によってバラツキがあるそうで、概ね5~10%くらい(2~8%という情報もあり)になるそうです。

シマノは昨年5月初旬にスモールパーツを、6月下旬にはコンポーネンツとホイールも3%程度値上げしていましたので、2年連続になるかと思います。が、今年は昨年より値上げ幅が大きいので、ユーザーとしては厳しいところですね。もっとも、値上げしなければならない事情は痛いほど解りますので、口が裂けても文句は言えませんが。

それにしても、同じシマノでも釣具部門と自転車部門ではカスタマー・サティスファクションに対する取り組み方がかなり違う感じです。昨年もそうだったのですが、釣具部門は事前にちゃんと一般向けに価格改定のパブリシティをしているんですよね。しかも、製品毎に改定前後の価格を詳細な一覧表にまとめて、ネット上でも公開しているのは非常に親切で良いことだと思います。

が、一方の自転車部門はショップに通達は出していても、何故か公式サイトには掲載しようとしないんですよね。自転車部門のサイトで「価格改定」とキーワード検索しても何も引っかかりません。シマノの自転車部門と釣具部門を売り上げで比べると7:3くらいと聞いたことがありますが、事業規模が小さい分だけ釣具のほうが小回りが利くのでしょうか?

それとも、ヨーロッパのサイトのほうが情報が早かったり、日本のサイトの「製品案内」では省かれているアイウエア工具などもヨーロッパのサイトではちゃんと掲載されてますので、単に日本のサイト運営が怠慢なだけなんでしょうか? ま、どうでも良い話ではありますが。

で、この価格改定の情報が流れると、私の中の物欲という悪魔が騒ぎ出し、思い切り背中を押されてしまいました。発売当初から購入するかずっと迷い続けてきたWH-7850-C24-TUですが、私が知る範囲の最安で約12.4万円ですから、仮に値上げ幅が5%でも6,200円ほど、10%なら12,400円程も高くなってしまいます。ということで、この勢いに任せて駆け込み購入してしまいました。

wh-7850-c24-tu
SHIMANO WH-7850-C24-TU

これまで迷っていたのは話題の第3世代ホイール、マヴィックR-Sysにも少し興味があったからでした。ま、でも前後合計重量は公称値同士の比較でほぼ100gの差(マヴィックの公称値はいつもアテになりませんから、実際の差はもっとあるでしょう)も大きいですし、何より、実売価格で見るとWH-7850-C24-TUのほうがずっと安いですから、結局R-Sysは却下することにしました。もし、R-Sysがチューブレス対応だったら、ロード用チューブレス未経験の私にはかなり刺さってきたと思いますが。

で、WH-7850-C24-TUですが、昨日届いたばかりなのでまだ何もしていません。一通り目視で仕上がり具合を確認したり、フリーを回してみたり、ベアリングの感触を確かめてみたり、そんなところです。実は、まだタイヤも入手しておらず、現在のところ物色中です。なので、しばらく寝かせておくことになりそうです。

私の場合、もはやリムセメントとは決別してミヤタのTTP-1で貼ってますので、前後1セット貼り替えると、このテープ代だけで正味750円くらい無駄になります。また、リムのほうはともかく、タイヤのフンドシ(リムフラップ)に付着したテープを剥がすのは猛烈に手間がかかりますから、クリンチャーのように手持ちの適当なタイヤでとりあえずテストとか、そういう気にはなかなかなれないのが欠点ですね。

色々お膳立てしておくとすぐに使いたくなるのが人情ですが、使う前に重量とかスポークテンションとか、色々チェックしておきたいこともあります。私みたいにこらえ性が弱い人間にとっては、こういうすぐに使えない状況にしておくほうが却って好都合なんですね。

(後日談へ)

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プリウスの運転はクラウンより疲れるのか?

現在納車待ちのプリウスですが、先週トヨペットから連絡がありまして、予定通り来月下旬になりそうだとのことでした。話によれば、需要がまた伸びているそうで、現在はさらに納期がかかる状況になっているそうです。

以前にも触れましたが、今年のデトロイトショーでトヨタは家庭用電源から充電できるプラグイン・ハイブリッドを来年末くらいに投入したいとアナウンスしていました。フルモデルチェンジもその頃と考えれば、現行プリウスはもはやモデル末期ということになります。が、むしろ需要が伸びる方向にあるというのは、要するに燃料コストのメリットが時流に乗った大きな商品力になっているということなのでしょう。

このままいくと自動車重量税の暫定税率が4月末で期限切れとなりますから、上手くすれば34,200円安くなる可能性も出てきました。もし安くなるのなら、待たされたのは却って良かったと思えるようになるでしょう。

ま、そんな話はどうでも良いんですが、何とも聞き捨てならない話が毎日新聞の熊本地方版で報じられていました。

水俣市:「議長公用車エコカーに」 市民団体が署名運動

 水俣市が今年度、買い替えを予定する議長公用車について、市民団体「環境モデル都市を考える会」(赤木惇子代表)が14日、より安価で環境に優しいエコカーに変更するよう求める署名集めを始めた。

 買い替え予算は477万円。会によると、ハイブリッドカーのトヨタ・プリウスに変更すれば、予算は296万円に抑えられ、燃費も向上するという。会は「環境のまちづくりを進めている水俣らしい車種に変更してほしい」と主張している。

 現在の議長車は日産のグロリア。92年の購入から16年経つことから市が2月議会で買い替えを提案した。トヨタ・クラウンの購入提案に対し、一部議員はプリウスへの変更を求める修正案を提出したが、安全性や運転手の疲労軽減を理由に否決された。同市では市長公用車もクラウンを採用している。

(C)毎日新聞 2008年4月15日


現行のクラウンに乗ったことはありませんが、2代前のクラウン・マジェスタには乗ったことがあります。父が以前ソアラ(現レクサスSC430)に乗っていたので何度か借りて乗っていますし、これをプログレに買い替えたときも少し乗らせてもらいました。私が勤めている会社の管理職クラスの社有車はカムリですから、最近3代のそれには何度も乗っています。安全性についてはともかく、疲労に関してはどの車種がどうといった違いなどなかったのは言うまでもありません。

今般のプリウスの商談の折、もちろん試乗もしています。短時間ではありましたが、運転感覚は至って普通のトヨタ車そのものでした。強いて難癖をつけるなら、Aピラーが太い上に大きく寝ているため、斜め前方の視界の邪魔になるといった程度です。もちろん、上に列挙したトヨタ車と比べて疲労に影響しそうな明確な違いは一切なかったといえます。ま、ムキになるのも大人げない話ですが。

新聞記事がいい加減だということはよく知っていますので、毎日新聞熊本地方版の記事も額面どおり受け取ってよいものか迷いもありますが、それにしても解せない話です。水俣市議会の理由は単なる言いがかりといいますか、殆ど妄想といいますか、何にしても理由になっていませんね。地方議会とはいえ、政治家ならもう少し頭を使ってマシな理由を考えるべきでした。

例えば、プリウスとクラウンに明確な差があるとしたら、それは運転席ではなく、後部座席の居住性のほうが遙かに大きいでしょう。初代よりマシになったとはいえ、プリウスの後部座席の座面前後長はまだ短かい部類になります。また、後方へ絞り込まれたルーフラインの影響でヘッドクリアランスは初代より10mm削られ、座高の高い人でなくてもやや圧迫感を感じるでしょう。ここに座って移動しながら公務も行うとなれば、やはりクラウンに分があるのは認めざるを得ません。また、後部のルーフが絞られている分だけ、乗降性もクラウンより劣るというのも確かです。

プリウスへの買い替えを否決した議員たちは、要するプリウスに乗ったことなどなく、間近で見たことすらなく、単なる思い込みで適当な理由を考えたといったところでしょう。

toyota_prius.jpg
TOYOTA PRIUS
私が納車待ちしているこのクルマに対し、
水俣市議会はクラウンより安全性が劣り
クラウンよりドライバーを疲労させると断定しました。
ま、後部座席に乗るならクラウンのほうが快適なのは
間違いないと思いますが。


それ以前に、議長公用車なんて必要なのだろうか? と思い、「議長公用車」というキーワードで検索してみました。すると、北九州市の議長公用車は1118万円で購入したレクサスLS460だということで祭り状態になっていました。これには驚きましたが、同時にアホくさくなったので深入りするのはやめました。

ま、アレですね。若者のクルマ離れがメーカーにとって頭痛の種になっている昨今ですが、権力の笠の下にいる老人たちにとって、クルマというのは依然として権力の象徴であり続けていると、そういうことのようです。

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ハブボルト折損は不可避なのか? (その2)

国土交通省が自動車メーカーや自動車関係団体に対してハブボルトの緊急点検を実施するよう指示する一方、「大型車のホイール・ボルト折損による車輪脱落事故に係る調査検討会」を設置したのは2004年4月のことでした。

中日新聞の社説でも触れられているとおり、同年2月に北海道でダンプカー(日野自動車)の車輪が脱落して2人を死傷させる事故が発生しています(運転していた運送会社社長は後に業務上過失致死傷罪で有罪判決を受けています)。国土交通省が車輪脱落事故について本格的な調査に乗り出したのはこの事故の約2ヶ月後のことですから、常識的に考えてこの死傷事故がきっかけになっていたと見るべきでしょう。

ま、それはともかく、この調査では様々な分野から報告を募っており、社団法人・日本自動車機械工具協会は「インパクトレンチの問題点を調査したところ、エア圧の管理不良、締付時間の管理不良、適正な能力のレンチ選択不良等により、過締め傾向にある。」と報告しています。

実際、私が自動車業界人だった頃に散々現場を見ていますが、エアーインパクトレンチで一気締めしてトルク管理なんてやらないというのが普通でした。

余談になりますが、一昨日の『報道ステーション』では自動車重量税の暫定税率期限切れの絡みで車検を5月に延期する人が増えているという話題を取り上げていました。その取材で中小の自動車整備工場に行ってカメラを回していましたが、そのカメラの前で思いっきりインパクトレンチでのホイールナット一気締めをやっていたのには笑いました。ま、映っていたのは乗用車でしたからトルク管理の義務はありませんが、私はこの映像を見て「こんな工場に愛車の整備は任せたくない」と思いましたね。

実は、日本のトラックは左側(助手席側)のハブボルトが逆ネジになっています。要するに、制動時にかかるトルクで締っていく方向にネジ山が切られているということですね。これについて、某トラックメーカーの技術の方と話をしたとき、「伝統的に逆ネジを使っているので何とも言えませんが、日本ではホイールナットのトルク管理が等閑だということも考慮されてきたからでしょう。」というようなことを言っていました。

「向こう(ヨーロッパ)ではホイールナットもトルク管理をキッチリやるのが常識だそうですから、現在は逆ネジなんて使っていませんし。」とのことで、実際、ベンツやボルボやスカニアなどのヨーロッパ製トラックも輸入されていますが、みんな左側のハブボルトもISO規格の順ネジになっているそうです。

日本ではホイールナットのトルク管理がいい加減というのはトラック業界では誰もが認めるところでした。そこで、2007年には「自動車点検基準」(省令)と「自動車の点検及び整備に関する手引」(告示)が改正、同年4月から施行されました。大型車についてはホイールナットを規定トルクで締め付けることや、12ヶ月の定期点検時にはホイールを外してボルトを詳細に点検すること、日常点検でもホイールナットの脱落や緩み、ハブボルトの折損など異常がないことを点検するよう義務付けられたんですね。

また余談になりますが、国土交通省の検討会の報告書などから、こうした法改正の動きを察知した私は、老舗トルクレンチメーカーである東日製作所の株を買っておこうかと思いました。が、調べてみたら同社は未上場でした。


大型車のホイールナット用トルクレンチ
締め付けトルクは650N・mを超えるものもあるため
レンチの全長は1300mmを超える巨大なものになっています。
また、差し込み角が表裏に設けられており、
逆ネジには裏返して対応する方式が一般的です。


このように車輪脱落事故について、問題の把握と対策の実施は4年も前から進められ、昨年には法令も改正されていたわけです。このとき、整備事業者に対しては罰則も設けられました。にもかかわらず、死亡事故が繰り返されてしまったのは、要するに使用者レベルまで徹底されていなかった故でしょう。整備事業者に罰則があっても法定点検や日常点検を遵守しない使用者に罰則がなければ片手落ちもいいところです。

国土交通省のサイトのトップページ右上にはサイト内検索があります。ここへ「車輪脱落」というキーワードを入力して検索すれば上記に関するようなプレスリリースや資料の類が山ほどヒットします。数時間かけて読み込んでいけば、これまでの経緯がかなり詳しく解るハズです。

が、大衆メディアは何故こうした情報を精査しようとしないのか、私には全く理解できません。それこそ、バス運転手の誕生日プレゼントがどうのこうのといったどうでも良い話を取材をしている暇があったら、こうした経緯をきちんと把握しておくべきです。

中日新聞が社説で金属疲労について頓珍漢なことを書いたのはご愛敬として、触れられていた同様の事故例などは恐らく自社のデータベースから過去記事をつまみ食いした程度でしょう。国土交通省のサイトをほんの数時間覗くだけでもっと深い内容に突っ込んでいけたハズなんですが、そいういう勉強はしていなかったというわけですね。

中日新聞の社説で少しだけ褒めても良いと思ったのは、ありがちな感情論に突っ走らなかったことです。加害者に対する批判もありましたが、これは至極常識的な意見と見るべきもので、無意味なバッシングにはなっていなかったと思います。また、「運輸当局」即ち国土交通省に対しても一応は注文を付けていた点も好しとすべきでしょう。

しかし、一介の会社員である私が片手間で(しかも非営利で)書いているblogで示せる程度の経緯すら全く知らずに社説を書いているようでは、大手新聞社として情けないことです。ま、私の場合は元業界人という強みもありますが、業界の事情が解らないのなら、解る人間に意見を仰げば済むことです。そんな取材など新聞社なら朝飯前だと思うんですけどねぇ。

(おしまい)

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ハブボルト折損は不可避なのか? (その1)

昨日のエントリで取り上げた例の東名高速の車輪脱落事故について、5大紙はいまのところ社説で取り上げていません。が、中日新聞は今日の社説で取り上げていましたので、気になった点を指摘しておこうかと思います。

【社説】 脱輪タイヤ事故 放置するな金属疲労

 走行中に脱輪したタイヤの恐怖がまた現実になった。タイヤを締めるボルトが破断しており、さびも出ていて金属疲労が一因とみられる。予測可能ともいえる事故を何度も繰り返してはならない。

(中略)

 タイヤのボルトは締めすぎや緩みすぎでも破断するが、近年は金属疲労によるボルトの劣化が原因とされるケースが増えている。

 金属部品はほっておいても一定年月がたてば疲労して抵抗力が弱くなる。ましてトラックのタイヤに使われるボルトには、過大な重力がかかる。時には過積載もあろう。こうした状態で高速道路や悪路を走れば、金属疲労の進む速度が通常より速くなるのは確実だ。

(中略)

 運輸当局やメーカーも業界に対し、定期点検を厳守させ金属疲労への警戒を強めることが急務だ。

 タイヤが人の生命を奪う悲惨な事故を二度と起こさない対応を強く求めたい。

(C)中日新聞 2008年4月15日


金属疲労について素人の思い込みで書いてしまったのがマズかったですね。読んでいて思わず失笑してしまいました。ここは専門家の査読を受けておくべきでした。特にダメなのが「金属部品はほっておいても一定年月がたてば疲労して抵抗力が弱くなる。」という部分です。

この社説に限らず、世間一般の金属疲労に対するイメージもこんな感じなのだと思います。恐らく、1985年の日航機墜落事故の原因となった圧力隔壁(アルミ合金製)の疲労破壊で金属疲労のイメージが刷り込まれてしまったのでしょう。その後も同様の原因と思われる事故は色々報じられていますが、いずれも金属疲労が生じる条件については無知のまま、単純な思い込みで消化してきたといったところでしょう。

そもそも、金属疲労は「一定年月」で生じるものではありません。どれだけの「荷重」がどれだけ「繰り返されたか」が決め手となります。つまり、どんな金属でも繰り返し荷重がかからなければ疲労は起こりません。ま、ハブボルトには繰り返し荷重がかかりますけどね。

アルミのように「疲労限界点」が存在しない金属の場合、どんなに小さな荷重でも繰り返されるうちに疲労が進行します。が、鉄やチタンなどのように「疲労限界点」がある金属の場合、この「疲労限界点」に満たない荷重であれば何度繰り返されても疲労は進行しません。トラックのハブボルトは言うまでもなく鉄で出来ています。

要するに、設計時の想定を上回る荷重が繰り返されない限り、理論的にハブボルトの折損は起こり得ないということです。裏を返せば、設計時の想定を上回った荷重が繰り返されれば、ハブボルトは折損してしまうこともあり得ます。ですから、今般のようなハブボルトの折損による車輪脱落事故が生じる条件は大きく分けて以下の二つが考えられます。

(1) 設計時の見積りが甘く、使用実態に見合っていなかった場合。または、製造工程にエラーがあり、設計基準を満たしていなかった場合。

(2) 指定トルクを遵守せずにホイールナットを締め付けたり、過積載で運行するなど、使用者の取り扱いに問題があった場合。または、極端な悪路での使用など、設計時の想定を超過する条件で酷使された場合。

(1)のケースは三菱ふそうのハブが破損した例の一件を思い浮かべられる方もいらっしゃるかと思います。が、個人的にはハブの強度不足と断定されてしまったのは事態の収拾を優先させるための拙速な判断だったかも知れないと思っています。というのも、ボルトの強度とハブの強度のバランス次第では、上記(2)の条件でもボルトではなくハブが破損してしまう可能性も充分にあり得るからです。(このことについては、いずれエントリを改めて述べたいと思います。)

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現実的には、殆どのケースが(2)になるかと思います。実は、こうした車輪脱落事故は何年も前から問題になっており、2004年には国土交通省が自動車メーカーや自動車関係団体に対して緊急点検の実施を指示する一方、「大型車のホイール・ボルト折損による車輪脱落事故に係る調査検討会」を設置して対策が検討されていました。

中日新聞の社説を書いた論説委員はこうした経緯を知らず、小手先で「警戒を強めることが急務だ」と書いています。が、その取り組みは既に4年も前からスタートしていました。にも拘わらず、死亡事故が繰り返されてしまった訳です。「警戒を強めること」をしてきたのに、功を奏することがなかったのは何故か? 本当に問題視すべき点はここです。ここまで論が及ばなかった中日新聞の社説は、やはり浅薄な内容であったと評するしかないでしょう。

(つづく)

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事故をドラマにする人々

先週の金曜日(4月11日)に東名高速道路で発生した例の事故、産廃運搬業者のトラックの後輪が脱落して観光バスに突っ込み、運転手が死亡、乗客7人が負傷したあの事故ですが、大衆メディアの報じかたはお決まりのパターンにハマっていますね。

加害者はこんなに無責任だった、こんなにいい加減だったと強調する一方、被害者の殊に亡くなったバス運転手の素性や行動などと対比しつつ、感情に訴えかけるという、いつものパターンです。

亡くなった運転手はこんなにいい人だった、絶命まで乗客の命を守るためにブレーキをかけ続けた、所属するバス会社では「師範運転手」で、指導に当たる立場の優秀ドライバーだった、当日は57歳の誕生日で、出発前には同僚運転手やバスガイドらからプレゼントを受け取っていた、などといった情報を根掘り葉掘り取材して伝える必要があったのか少々疑問です。

ま、ブレーキに関してはともかく、誕生日プレゼントなどは事故と何の関係もありません。これについては単に世間の同情を引くための要素でしかないでしょう。こうして美化できるところは徹底的に美化し、被害者に対する哀れみや加害者に対する怒りといった感情を煽れるだけ煽り、読者・視聴者がこのネタに飽きるまで引っ張れるだけ引っ張ってやろう、大衆メディアの魂胆はそんなところにあるような気がします。

日本では毎日20人くらいが自動車事故で亡くなっています。今回の事故当日の死亡者数が何人だったのかは解りませんが、あのバス運転手の他にも亡くなった人は少なからずいたでしょう。同じように何の落ち度もなく命を奪われた人もいたと思います。そうした人たちは無視され、あのバス運転手の死だけが大きくクローズアップされたのは何故でしょうか?

それは、あの事故が珍しかったからという以外に大きな理由はないでしょう。

例えば、交差点へ進入する際に安全確認を怠って歩行者を轢いて死なせてしまった、といったありがちな事故はあまりニュースになりません。こうした事故は年間に何百件も起こっていますから、一々取り上げていたらキリがないでしょう。安全確認を怠って歩行者を轢いてしまった事故と、今回のように車両点検を怠って車輪を脱落させてしまった事故と、両者を比較して加害者の過失責任に決定的な差があるといえるでしょうか?

私はこれも一種の偏向報道だと思っています。今回の事故は偶然が重なった非常に珍しいものでした。タイヤが突っ込んだバスのフロントガラスはメチャメチャに壊れ、ビジュアル的にもインパクトのある映像素材となりました。

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亡くなったドライバーの状況は如何にも悲惨でしたが、乗客の被害は最小限で済みました。そのため、ドライバーの行動はヒーロー的に扱える上、取材してみると同情を誘うようなエピソードもいくつか出てきました。

一方の加害者サイドは運送事業者に選任が義務づけられている整備管理者や安全運転管理者が全く機能しておらず、ドライバーに車両管理を任せきりにしていました。また、法定点検も怠っていたり、過積載を繰り返してきた疑いもあるなど、事故を起こしてしかるべき状況だったことも解りました。また、この業者がそうした状況に甘んじていたのは原油高による燃料価格の高騰などで経営状態が厳しくなっていたからという非常に解りやすい理由もありました。

メディアがこの事故に食い付いたのは、食い付きやすい条件や素材が揃っていたからでしょう。

今回のケースでは破断した8本のハブボルトのうち2本の破断面が錆びていたことや、法定点検を怠っていたこと、過積載の疑いもあったことなどから、メーカー(いすゞ自動車)への責任問題には発展しないでしょう。恐らく、あの錆びた破断面がテレビ画面に映し出されたとき、いすゞの関係者は「三菱ふそうの二の舞にならずに済んだ」と胸をなで下ろしたと思います。ま、いずれにしても、責任追及の矛先が向けられるとしたら、それは加害者である産廃運搬業者になるのは間違いないでしょう。

こういうとき、大衆メディアは加害者を血祭りに上げれば、それが再発の抑止力になると勘違いする傾向があります。が、「同じような事故を繰り返さないように」と本心から願うのであれば、加害者バッシングなどしても殆ど無駄です。同業者へも戒めとなるプレッシャーをかけることができたとしても、数年を経れば忘れ去られ、忘れた頃に同じような事故が繰り返されるのがオチだと私は思います。

ま、今回の加害者は大型トラック1台、中型以下8台、計9台という吹けば飛ぶような零細業者ですから、メディアも本気で叩くかどうかは微妙ですが。

自動車の点検および整備は道路運送車両法第4章に定められています。今回の事故を起こした車両で違反があったとされる3ヶ月の法定点検は、同48条で規定されています。が、これには罰則がありません。罰があっても守れない人はたくさんいるのですから、罰がなければ尚のこと法令遵守の徹底が難しくなるのは子供でも解ることです。

こうした部分をしたたかに指摘して、管轄官庁である国土交通省に厳しい注文を付けているメディアは私の知る範囲で現在のところ全く見当たりません。しかし、本当に再発防止を願うなら、こうした視点を軸に論説を展開していかなければならないでしょう。

少なくとも、事故当日にバス運転手へ誕生日プレゼントが渡されたことを伝える暇があったら、こうした法制度の実態をあぶり出し、世に知らしめるのが真摯なジャーナリズムというものです。結局のところ、今回の事故も感情に訴える劇場型報道が繰り返されただけというのが個人的な印象です。

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進化するコンタドール

昨年のツール・ド・フランスを制したアルベルト・コンタドールが今年のブエルタ・アル・パイス・バスコ(以下バスク一周)でも総合優勝しました。ま、日本では殆ど無名ですし、ツールの1/3にも満たない6ステージのレースではありますが。

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バスク一周2008の表彰式
カデル・エヴァンス、トーマス・デッケル、
ダミアーノ・クネゴといった実力者たちを抑え、
ポディウムの中央に立つアルベルト・コンタドール。


このバスク一周でコンタドールが示した注目すべき実力は、最終の第6ステージも制したことでしょう。というのも、このステージは個人タイムトライアル(以下TT)だったからです。

昨年のツールでは、ミカエル・ラスムッセンがドーピング疑惑で棄権に追い込まれたため、コンタドールは第17ステージでマイヨ・ジョーヌを手にしました。が、第19ステージの個人TTではリーヴァイ・ライプハイマーに2分18秒、カデル・エヴァンスにも1分27秒の大差をつけられました。マイヨ・ジョーヌは守ったものの、これによって総合タイムもそれぞれ31秒、23秒まで迫られてしまったんですね。TTには不安を残す戦績といわざるを得ず、彼は典型的なクライマーだと私は見ていました。(TTにも山岳にも強い選手はオールラウンダーと呼ばれるのが普通です。)

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バスク一周2008 第6ステージのコースプロフィール

今年のバスク一周の第6ステージは前半に約4kmで約250m登っている区間もありますが、絶対的な距離が短いですし、全般的に見てもクライマーに有利なコースプロフィールというほどではないでしょう。TTにも定評のあるエヴァンスや、2004年と2005年にTTのオランダチャンピオンとなったトーマス・デッケルを抑え、コンタドールはこのステージを制しました。この結果を見れば、着実に苦手を克服してきたのではないかと感じさせられます。

まだ25歳で伸びしろも充分にある若手の活躍には、これからも注目したいところです。が、以前にもお伝えしたとおり、彼の走りを今年のツールで見ることは出来ません。中には昨年のツールで「ラスムッセンに食らいついていけたあの走りはドーピングなしで可能なのか?」という疑惑の目を向けているメディアもありますが、ラスムッセンもドーピングの事実が確認された訳ではありません。

ま、この辺はよく解りませんが、今年のツールからコンタドールが(というより、彼の所属するアスタナが)締め出されることになった原因は、以前にも触れたように政治的な軋轢といった印象も拭えず、残念でなりません。

世界最高レベルの実力者を擁する世界最高レベルのチームを締め出して行われるレースが世界最高のレースたり得るでしょうか? こうしたことが続くとしたら、ツール・ド・フランスは長い歴史と伝統にしがみつくばかりで、主催者の自分よがりな中身の薄いスポーツイベントへと堕してしまうかも知れません。

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紙なら良いのか?

いまごろ気付いたのですが、カップ麺の元祖である日清食品の「カップヌードル」のカップが紙になったんですね。

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カップヌードルの新しいパッケージ「ECOカップ」

またぞろ「エコロジー」なんだそうですが、プレスリリースを読んでみますと、お決まりの根拠不明瞭・イメージ先行の似非エコっぽいパターンです。

[1]「地球のために」
石油のような限りある資源をできるだけ削減し、循環型資源である紙を使用したECOカップに変わります。
※紙は「バイオマス」の一つで、燃焼時にCO2を発生しますが、木が生長する際にCO2を吸収するため、ライフサイクル全体でCO2が増加せず、地球に優しい資源です。


バイオマスがカーボンニュートラルでCO2の増加にはつながらないとするのは部分評価でしかありません。林業も機械化が進んでいますので、木材の生産や輸送段階などで化石燃料が投入されています。製紙やカップへの加工時についても同様なのは言うまでもありませんね。つまり、ライフサイクル全般を通して評価すれば紙もカーボンニュートラルであるというのは全くの幻想です。この辺は以前バイオエタノールについてお話ししたことと同様ですね。

ですから、「ライフサイクル全体でCO2が増加せず」というくだりはLCA(ライフサイクルアセスメント)がどういう手法で行われているのか全く理解していないド素人の発想か、消費者を騙して誤ったイメージを刷り込もうとする悪意ある情報操作か、どちらかということになるでしょう。

また、石油資源の利用削減を謳うのは結構なことですが、以前レジ袋に関して述べたエントリでも触れたとおり、石油資源の用途は約80%が燃料です。石油化学製品の消費を抑える部分削減だけで根本的な解決に至る保障などないということを知るべきでしょう。

そもそも、「従来の発泡スチロールは紙に比べて環境負荷が大きかったのか?」という極めて基本的なことを科学的に検討しなければ、容器を紙に替える意味がありません。また、容器の素材を変更するということは工場設備の大幅な入れ替えを伴うはずです。ということは、その入れ替える新規設備の生産や資源調達、従来設備の廃棄処分などにかかる環境負荷も含めた上で、本当に意味のあることなのかという検討も行わなければ、真の意味での環境対策とはいえません。

結局のところ、日清食品はこういうLCA的な評価などやっていないでしょう。例えば、ISO14040シリーズに則ってLCAを行い、容器を発泡スチロールから紙に切り替えることでどのような環境負荷がどれだけ抑えられるかという具体的な調査結果が得られていたなら、それは格好の宣伝材料になります。お金をかけて調査を行い良好な結果が得られたものをプレスリリースに載せないなどということは常識的に考えられません。

発泡スチロール再資源化協会の資料では紙より発泡スチロールのほうがライフサイクルで評価すると環境負荷が小さいとしています。ま、発泡スチロールの業界が出している資料ですから、彼らにとって有利な値を取っている可能性が極めて高いと思いますけどね。

でも、これに比べれば世間一般のイメージのほうが遙かにアテになりません。世間一般には、「紙は大昔からある素材だし、原材料は木材などの天然素材だし、紙はリサイクルもやってるし、だから環境にも良さそうだ」という、その程度の認識でしかないでしょう。そこには木材などから繊維を取り出して紙を作るのにどれだけたくさんの熱エネルギーと化学薬品と水資源が投入されているかということは一切考慮されていないと思います。

アメリカでもマクドナルドのビッグマックなどのパッケージが発泡樹脂であったことが非難され、その声に圧されるかたちで紙に変わりました。が、後に環境負荷がどれだけ低減したかというLCAが数年がかりで念入りに行われたものの、結果的に大差なかったということが解ったそうです。

企業のイメージアップや商品の販売促進に利用されている環境技術や環境性能の類は、実際のところ本当に環境負荷の低減につながっているか怪しいものが多いというのが個人的な印象です。たとえ錯覚であっても消費者が地球環境に良いことをしている気にさせる「自己満足」を上手く引き出す技術や性能が、企業にとっての環境技術や環境性能という付加価値の実態なのかも知れません。

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くだものコワイ

今朝、NHKの『おはよう日本』でクローン動物の安全性に関するレポートをやっていて、少し気になりました。

FDA(米食品医薬品庁)が牛や豚などの体細胞クローン動物でも安全性に懸念はないという、事実上の安全宣言をしたというのですが、私は「何故いまさら?」と思いました。彼らがそれを発表したのは今年の1月15日でしたから、既に3ヶ月近く経っているんですね。身支度をしながら見ていたので番組が今頃取り上げたポイントとなる部分を見落としただけかも知れませんけど。

ま、そういう些細な話はともかく、『おはよう日本』のレポートはFDAの説明など通り一遍の等閑な感じで、一般市民や消費者団体など専門知識のない、いわばド素人が安全性を疑う談話ばかり並べていたようですが、これはどうかと思いましたね。単に「クローンなんて得体が知れないのでヤバそう」「人工的で自然の摂理に反している」みたいなイメージだけを伝えていたような気もします。かくいう私も実際のところはよく解りませんけどね。

既に実用化されている哺乳類の体細胞クローンは、核遺伝子だけを複製し、細胞質は別の卵母細胞を用いているそうで、細胞全体の完全なコピーではないそうです。また、成体からのクローンはテロメアが短くなり、寿命にも関わるとの指摘もあります。が、こうした指摘には反論も多く、科学的な決論には至っていません。

ただ、クローンは私たちのごく身近にも沢山存在しているんですよね。なので、クローンをイメージだけで怖がっている人が身近にいると、私は必ずこう教えてあげます。

「ソメイヨシノって実はクローン植物なんだよ。」

あちこちに書き散らしてきましたので、以前にどこかで書いたのをお読みになっている方もいらっしゃるかと思いますが、日本人の大好きな桜の代名詞でもあるソメイヨシノは全てクローン植物なんです。

ソメイヨシノが人工交配によるのか自然交配なのかは解っていませんが、自家不和合性ですから他系統の株とでなければ有性生殖ができないんですね。つまり、ソメイヨシノはソメイヨシノとして種を残すことができないということです。

なので、隅田川の河川敷にあるソメイヨシノも、靖国神社のそれも、大阪城公園のそれも、ワシントンのポトマック公園のそれも、みんな、1本の原木から接ぎ木や挿し木などで人工的に増殖されたクローンなんです。

え? 周りから眺めるだけなら危険はない? ま、そうかも知れませんが、私たちは食べているかも知れないんですよね、ソメイヨシノを。桜餅をくるんでいる塩漬けの桜の葉は通常大島桜の葉を用いるそうですが、ソメイヨシノの若葉で代用されることもあるんだそうです。

え? 桜餅の葉っぱなんて食べない? そうですか。では、こういう話はご存じですか?

いま、日本で最も多く生産されているリンゴは「ふじ」ですが、これは「国光」と「デリシャス」から創られた人工交配種です。ふじもソメイヨシノと同じく1代限りの自家不和合性ですから、有性生殖ではふじという品種のまま子孫を残すことができません。なので、ふじもソメイヨシノと同じく、1本の原木から増殖されたクローンなんです。

といいますか、ふじだけでなく、市場に出回っているている果物の殆どはクローン植物なんですよね。種子から作る作物とは違って、果樹に実る果物は殆どがクローンで人工増殖されたものなんです。

何故かといいますと、「桃栗三年柿八年」の例えもありますが、果樹が実を結ぶようになるには長い時間がかかります。品種改良された遺伝子を安定させ、品種を均質化するには何代も世代を重ねなければなりません。が、果樹でそれをやろうと思うと猛烈に時間がかかってしまうため、非現実的なんですね。なので、挿し木や接ぎ木といったクローン増殖が行われるわけです。

動物と植物ではクローン技術も異なりますが、これらをどこまで同列に考えて良いのか、現在の段階では恐らく誰にも解らないでしょう。先にも触れましたが、クローン動物が短命といわれる原因について、テロメア説が正しいのか否か解っていません。同様に、野生種の桜の寿命が数百年なのに対して、ソメイヨシノの寿命は60~70年と充分に短命である原因もまた解っていません。

それにしても、クローン動物の安全性については多くの人が疑問視する一方、クローン植物の安全性については気にする人が全くいないというのも不思議な話です。


え? 果物を食べるのが怖くなった? それって私のせいですか?

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206じゃない

「人体を構成する骨の数は206」

テレビからこんなナレーションが聞こえてきました。20世紀FOXのドラマ『BONES―骨は語る―』のDVDのレンタルが開始されたというCMでした。

bones.jpg

が、これは聞き捨てなりませんでしたね。聞き捨てならずにつまらない蘊蓄を書いたことが以前にもありましたが、こういうことに関して私は小姑みたいに反応してしまう性分のようです。

で、人体を構成する骨の数ですが、正しくは206ではありません。成人の場合は概ね206ですが、厳密には200~208と幅があります。特に解りやすいのが尾骨で、胎児期には尾椎の原基が9個あるのですが、次第に退化してゆき、上方の3~6個が残って癒合し尾骨を形成します。

このように人体を構成する骨の数は成長過程で変化します。8ヶ月の胎児は約270ですが、新生児は約350へ増加しています。思春期を経て最終的には約206に落ち着くのですが、それは分娩や成長に対応するためです。

産道を通って分娩されるとき、骨は最も細かく分かれた状態になっています。その後、成長に伴って骨も大きくなっていきます。このとき骨の成長速度にバラツキがあると歪みが生じてしまいますが、細かい骨が軟骨でつながった状態になっていることで、この速度差を吸収することができるというカラクリになっています。

大人になるまでの間に細かく分かれていた骨が癒合して纏まっていくというわけなんですね。ですから、より正確を期すなら・・・

「成人の人体を構成する骨の数は約206」

としなければなりません。「彼女は骨の全てを知っている」と言われましても、いきなり不正確なナレーションが入っていると私の場合はそこで幻滅してしまいますから、興味はそそられませんよねぇ。ファンの皆さんには水を差すようで恐縮ですが。


話はガラッと変わりますが、先日、ザッピングしていたら「クイズ!ヘキサゴンⅡ」のスペシャル番組が放送されてました。そのときたまたま出題されていたのが「閏年」だったので、ちょっと気になってそこのところだけ見ることにしたんですね。

正確には覚えていませんが、「閏年」を何と読むか? みたいな感じだったと思います。「またぞろ4年に1度とか、そういうことを言うんだろうな」と思ったのですが、「通常は4年に1度」といったヒントが出ていたので少々驚きました。

閏年についての詳しくは以前書いたエントリを参照して頂きたいと思いますが、この番組の問題を考えているスタッフはわざわざ「通常は」と断っていますから、閏年が常に4年に1度ではないということを知っていたんですね。こういう人はそんなに沢山いないと思います。(まさか当blogを読んでいたなどということもないでしょうし。)

あの番組は普通より知識レベルが劣るタレントの珍回答を笑い飛ばし、自分より劣った人間がいることを確認して安心するような人が特に好んで見る番組かと思っていました。が、意外にも制作スタッフのレベルは低くなかったようで、ちょっとだけ感心しました。

AKY 2

いま、公共広告機構は全国キャンペーン「しっているを、しているへ。」で地球温暖化は人為的なものと断定し、レジ袋を使わないことなどが地球温暖化防止になるという科学的根拠の希薄な運動を推奨するテレビCMを流しています。

人為的温暖化説の根拠はコンピュータの中に作られた仮想の地球を動かした単なるシミュレーション結果に過ぎません。が、これを既成事実化してきた人たちの常套句は「科学的な事実関係が明らかになるのを待っていたら手遅れになる」というものでした。

一方、「オゾンホールは南極固有の季節現象である」という科学的知見が広まる前に、「フロンガスはオゾン層破壊ガスである」ということにされてしまいました。こうした前例を鑑みれば、単なる仮説をあたかも真実であるかのようにプロパガンダし、先走った行動を扇動するのは危険かも知れません。(省エネルギー・省資源化など、それ自体は良いことだと思いますが。)

人為的温暖化説を盲信する世間の空気に流され、本当のところは何も「しっている」わけではない状態で「明日のために、いま始めよう。」と捲し立てるようなテレビCMを流すことに、私は強い抵抗を感じています。


ところで、私がこれまで最も好ましいと思った公共広告機構のテレビCMは2002年にオンエアされていた『IMAGINATION』という作品です。

このCMの企画・制作は電通になりますが、カンヌ国際広告賞銀賞を筆頭に、アジア太平洋広告祭ではテレビCM部門グランプリ、公共サービス部門金賞、The Best Director賞と各賞を総舐めにし、ニューヨークADC賞銀賞、全日本CMフェスティバル銅賞、クリオ賞銅賞、クレスタ賞など、数々の賞を受け、内外で高く評価されました。

60秒ないし90秒という長尺であったゆえ、実際にはBSデジタル放送でのオンエアに限られていましたから、殆どの日本人はリアルタイムで見ていなかったと思います。最近は地上波の番組で取り上げられることもあって、それで初めて見たという人のほうが遙かに多いのだと思います。ま、私もそのクチですが。

どのような内容かは実際にご覧頂いたほうが早いでしょう。

『IMAGINATION』(90秒編)


公共広告機構のアーカイブにはこのような説明文が掲載されています。

子供たちは、大人の常識をはるかに超えた想像力や発想力を持っています。しかし、それに気づかない大人たちは、そんな自由な感性を、教育の名のもとに既成の枠に押し込み、結果として没個性で画一的な子供を大量に生みだしているのではないでしょうか。この作品は、そんな思いを込め、実際にスタッフの一人が子供の頃に体験した実話をベースにドラマ仕立てで制作しました。


現実問題としてこういう枠にはまらず周囲に流されない個性的な子供ばかりになってしまったら、逆に先生のほうがノイローゼになってしまう恐れもありますが、このCMが伝えようとしていた主旨は非常に良い方向を向いていると思います。AKY(あえて空気読まない)という姿勢も支持したい私としては、かなり好感度の高い作品といえます。

このような広告を展開してきた公共広告機構が、既成の枠に押し込まれ、画一的な環境指向に流されたテレビCMをオンエアしている現状は残念でなりません。

余談になりますが、上記の説明文を読んでいたら、ふと思いました。この文章の一部を入れ替えれば、いまのエコヒステリーを説明する文章になるのではないかと。

地球環境は、人間の常識をはるかに超えた複雑な仕組みを持っています。しかし、それに気づかない人間たちは、そんな複雑な仕組みを、環境保護の名のもとに既成の枠に押し込み、結果として短絡的で画一的な環境問題を大量に生みだしているのではないでしょうか。

AKY

昨年、「KY」などというスラングが話題になり、周囲の空気に同調しない人間は若者の間でも揶揄されていることが改めて示されました。

思えば、小泉元首相も「注意深く状況を見極め、適切に判断していく」みたいな台詞を頻繁に(特に国際問題に関して他国の出方を見ようとしているときは必ず)使っていましたが、この根っことなる心理は全く同じで、周囲の空気に流されやすい日本人の国民性を物語っています。

昨日のエントリで触れた映画『靖国』の上映中止やプリンスホテルが日教組の集会をドタキャンした一件も、結局のところ権利侵害云々という問題ではなく、こうした国民性の問題に帰着するのだと思います。

日本経済新聞の社説でも「いわば作品を取り巻く「空気」を読んで中止を決めた。そういう状況だろう。」と書かれていますが、上映中止を決めた映画館運営会社4社のうち3社は、実際に何の抗議も受けることなく撤退しています。これでは空気を読んで過剰に反応し、状況に流されてしまったと見られても仕方ないでしょう。

『靖国』の上映中止に対する大衆メディアの反応は、おしなべて「表現の場が失われた」といった論調でした。ならば、テレビ局などはこうした状況を嘆く前に、自らその場を提供するれば良いのです。例えば、権利を取得して放送すれば、いまなら話題性も手伝って大変な視聴率を稼げるのは間違いありません。

が、実際に『靖国』を放送しようなどと本気で考えるようなテレビ局はひとつとしてないでしょう。こうしたタブーに触れ、大きな議論の的となるような作品に関しては、民放の場合スポンサーの獲得がまずできないでしょうし、それ以前にテレビ局自身が尻込みしてしまうでしょう。

5大紙のうち、産経新聞以外は社説に「表現の自由」を持ち出していました。殊に朝日新聞は文化庁に視聴を要望した自民党・稲田議員の「上映を中止していただきたくない」という談話に対して「それが本気ならば、上映を広く呼びかけて支えるなど具体的な行動を起こしたらどうか」とまで書き立てています。が、何だか他人事のような軽薄さを感じます。

そもそも、靖国問題を煽動してきた(靖国問題を創造したという人もいますが)その張本人は他ならぬ朝日新聞です。ならば、自分たちこそ『靖国』の上映を支援すべきでしょう。

朝日新聞に限ったことではありませんが、的外れな口は出すけど、本質を支えるための手は出さない、自分たちが矢面に立つのは嫌だと、私の目にはそういう風に見えなくもありません。上映を中止した映画館運営会社に対してあまり批判的な論調にならず、むしろ同情的な雰囲気すら漂っていたのは、つまり自分たちのスタンスもそれに近いという自覚があったからかも知れません。

ところで、上述の「KY」でリンクした日本語俗語辞書には、その派生語として「AKY」というスラングも解説されています。

AKYとは「あえて空気読まない」の略で、「空気読めない」を意味するKYの派生語にあたる。KY(空気読めない)が注目され、集団生活や仕事において空気が読めることの重要性が叫ばれる中、あえて空気を読まない=周囲の雰囲気や状況を気にしない、振り回されないといった姿勢がAKYである。

(後略)


『靖国』やプリンスホテルの問題は、「憲法で保障されている国民の権利の侵害だ」などという履き違えた議論ではなく、空気に流されやすい日本人の「国民性」こそ議論されるべきでした。「KY」よりも「AKY」という姿勢をクローズアップし、「異なる主義主張に対しても毅然と意志を示す国民性を養え」といった方向へ主要な論点を向かわせるべきだったと私は思います。

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憲法の主旨を知らない日本人

例のドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』(以下『靖国』)の上映中止を巡り、この週末の情報番組などはこぞって話題にしていました。



が、どうもピンボケなことを言っているのが気になりましたね。特に「憲法で保障されている表現の自由の危機だ」的な論調は根本的な部分を履き違えていて、かなり間抜けだと思いました。

そもそも、憲法とは国家や政府の原理や規範を定めるものです。ですから、憲法によって保障されている国民の権利というのは、国家権力の行使によって侵害されてはならない国民の能力や自由を意味します。同様に、憲法に定められている義務もまた、国家と国民の間にかかるものです。

いうまでもなく、今般の騒動は国家権力によって上映中止に追い込まれたものではありません。映画館を運営する民間会社のヒューマックスシネマ、ティ・ジョイ、Q-AXシネマ、エスピーオーの4社(5館)が自主的に撤退してしまっただけです。

ヒューマックスシネマに関しては右翼の街宣車が抗議を行ったり、脅迫めいた抗議電話などもあったようですが、それ以外の3社には具体的な抗議や申し入れすらなかったそうです。もし右翼から抗議があったら近隣へ迷惑がかかるだろうといった配慮だったり、安全な上映環境が整わなかったなどの判断で上映中止が決まったという状況です。

もちろん、日本での上映が全面的に中止されたわけでもありません。当初18館で上映される予定だったのが、先週末までの時点で5館減って1館延期になって1館増えて、13館になっただけです。これは怖じ気づいた一部の映画館が離脱しただけと見るべきでしょう。

日本政府が裏からプレッシャーをかけて上映中止に追い込んだというのなら話は別ですが、そのような国家による弾圧があったとはまず考えられない状況です。首相や官房長官、文科相らは、こうした自粛に対して公的に遺憾の意を表していますし、そもそもこの映画の制作には文化庁所管の独立行政法人である日本芸術文化振興会から750万円の助成金が出ています。

例の国会議員を対象とした試写会が検閲めいており、上映中止が広がるきっかけになったと論じているメディアも少なからずあります。確かに、経緯としては自民党の稲田朋美衆院議員らがこの映画に公的な助成金が出ていることに疑問を呈し、視聴の要望を受けた文化庁が試写会をお膳立てしたのは事実です。

しかしながら、当の稲田議員自身が「私たちの行動が表現の自由に対する制限でないことを明らかにするためにも、上映を中止していただきたくない」との談話を発表しているほどですから、「国家による表現の自由の侵害」という構図は、どう考えても成り立つような状況ではないでしょう。ま、試写会はデリカシーに欠けていたと思いますけどね。

むしろ、今回の騒動は議員を対象としたこの試写会よりも、『週刊新潮』が「反日的」と評したことで右翼が動き始め、それがきっかけとなったような気がするんですけどねぇ。ま、大衆メディアは案外同業他社に甘いので、論点をすり替えてしまったのかも知れませんが。

それはともかく、こうした状況を以て、今般の上映中止騒動が「憲法で保障されている表現の自由の危機だ」と騒ぐ人達は、憲法が規定している主旨が何なのか理解していないということになるでしょう。5大紙のうち、「憲法の理念をあえて持ち出すほどの問題だろうか」とした産経新聞を除く各紙の社説はそういう意味で全て的外れといわざるを得ません。

念のため、この問題に対する個人的な見解を明らかにしておきますと、私も一部とはいえ上映が中止されたことについては非常に残念だと思っています。これは日教組の集会をドタキャンしたプリンスホテルに対しても全く同じことが言えますが。

映画『靖国』の上映中止騒動にしてもプリンスホテルの一件にしても、憲法に反するとか何とか、そういう問題ではありません。いずれのケースも、民事の問題です。恐らく、日教組はプリンスホテルに対して契約不履行の損害賠償請求というかたちで民事訴訟を起こすでしょう。示談による和解が成立しなければ、プリンスホテルは間違いなく敗訴し、相応の賠償金を支払うことになるでしょう。

しかし、プリンスホテルが憲法違反で告発されるなどということは絶対にあり得ません。もちろん、『靖国』の上映を中止した映画館の運営会社4社も同様です。何故なら、日本国憲法・第3章「国民の権利及び義務」は民間人同士の権利や義務を縛るものではないからです。

こうした憲法の主旨が理解されていない現状は教育の失敗といわざるを得ないでしょう。憲法改正の論議を始める前に、まずは国民の再教育を優先させるべきかも知れません。

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それなりに効くが・・・

BD-1の20インチ化を済ませ、想定通りブレーキが効かないことを確認した私は、よく効くと評判のスイスストップのシューを発注したというところまでお話ししましたね。そのシューが届いたので、この週末に交換しました。

BD-1_swissstop.jpg

まだそれほど走り込んでいないので、リムとの当たりも充分に付いたとは言い難い状態です。なので、最終的な評価はできませんが、それなりに効くようになった印象です。私はBD-1をポタリング専用と考えていますので、そういうのんびりとしたペースで乗る分には特に問題ないレベルになったと思います。恐らく、普通の人が普通にBD-1と付き合うなら、このくらい効けば我慢ならないということはまずないでしょう。

が、私の場合、マグラの油圧リムブレーキをインストールできないだろうか? というアイデアを思いついてしまいましたし、今は使っていない現物もありますし、ワンオフでアルミの切削加工をしてくれる業者も知っていますし、これは少々マズイ方向へ風が吹き始めてしまったかも知れません。

ただ、シフターをVブレーキ用のデュアルコントロールレバーにしてしまったので、これは使えなくなります。ま、使えなくなっても普段使いのクロスバイクに転用するなど、引き当て先がないわけでもありませんが。

油圧リムブレーキをインストールする具体的なプランとしては、アルミ材を加工してグランジの700Cトランスファー(リヤに関してはこれを使えばとりあえずインストール可能でしょう)のようなアダプターを製作するというパターンになるかと思います。

もちろん、ネックになるフロントサスペンションのスプリングとの干渉を避けるため、相応の工夫を凝らして設計しなくてはならないでしょう。最初はいくつか試作して現物突き合わせで色々調整してみて、決定版ができたらデザインを整え、加工業者にワンオフでキレイなものを作らせるといったやり方が良いかも知れません。それなりにコストもかかるでしょうけどね。

問題はこれから2ヶ月を待たずしてクルマを購入するため、あまり自由になるお金がないということですね。その後もMTBのコンポやホイールの入れ替えを検討していますので、やるとしても数年がかりになる可能性がありますし、その間のモチベーションを維持できるかも解りませんけど。

そうそう、20インチ化で長さが合わなくなってしまったスタンドの問題はかなり良い感じで解決しました。

BD-1_special-stand1.jpg

ESSSというブランドのNBS-2というアジャスタブルスタンドで、エンドに共締めし、24~28インチに対応できるというものです。スナップリングを外すことでアジャスト機構の部分を分解することができましたので、足を引き抜いてハックソーで適当な長さに切りました。

と書くと簡単そうですが、適当な長さというのがかなり微妙なんですね。実際にはやや長めのところから数mm単位で切るということを何回も繰り返し、その度に合わせてみて試しながら最適な長さを探りました。

BD-1_special-stand2.jpg

実は、18インチのときもフロントバッグを付けるとかなり不安定になり、フロントバッグ内にワイヤー錠より重いものを入れると、そのままコケてしまうほどでした。が、スタンドの長さを慎重に最適化したたことと、スタンドの長さが増した分だけ足の付く位置も車輪から遠くなりましたから、かなり重いものを入れても自立できるくらい安定性が改善されました。

ただ、スタンドのピボット部にかなり厚みがあるので、デフォルトでは折りたたんだ時にハンドルと干渉してしまう恐れがあります。私の場合はハンドルポジションチェンジャーで50mm前に出していますので、特に問題はありませんでしたが。

ということで、ブレーキの件は経済的な理由もありますのでしばらく凍結しますが、進展があったらまたお話しすることにします。(でも、あまり期待はしないで下さい。)

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フロンはオゾン層を破壊できるのか? (その3)

「フロンがオゾン層を破壊する」という仮説で説明されているプロセスは科学的に欠陥だらけだということはこれまで述べてきた通りですが、百万歩譲ってそのプロセスが成り立つとしても、大きな疑問が残ります。それは・・・

フロンによって破壊されたオゾン層なんてものが確認されていない

ということです。「じゃあ、オゾンホールは何なんだ?」と思われましたね。あれが生じる原因をフロンで説明しようと思うと、却って多くの矛盾が生じてしまうんです。

そもそも、オゾンホールは殆ど南極にしか生じません。北極も似たようなオゾン濃度の低下現象が起こったり、小規模のオゾンホールが確認されたこともありますが、南極のそれには到底およびません。ま、どちらにしても、その原因がフロンであると考えると、理論的に苦しくなるでしょう。

まず、フロンの主要な用途は初回にご紹介したとおり、洗浄剤や発泡剤などの産業用として用いられていたもので、殊に先進国の工業地帯から大量に排出されていました。その工業地帯の大部分が北半球にあります。南極はいわば世界で最もフロンの主要排出源から遠い場所と考えても差し支えないでしょう。

もちろん、南極には半導体工場も発泡樹脂工場もありませんし、クーラーや冷蔵庫なども必要ありません。それ以前に、南極に住んでいる人間は各国の観測基地などで活動している観測隊員が殆どで、その数は極めて少数です。つまり、南極にはフロンの排出源など存在しないといっても過言ではないでしょう。

何故、フロンの主要な排出源の上空にはオゾンホールが生じず、それらから最も遠い土地である南極上空にオゾンホールは現れるのでしょうか? フロンガスは大気の4倍近くも重い気体ですから、気流に乗ってもそうそう遠くへは運ばれないハズです。

大衆メディアはオゾンホールが過去最大とか、ここ何年かで最大とか、特に大きく発達したときしかニュースにしません。なので、世間一般の認識としては「南極上空には常にオゾンホールがポッカリと空いていて、年々大きくなっている」と思われているかも知れません。が、実は南極のオゾンホールというのは(北極のオゾン濃度低下も)「季節現象」なんですね。

南極にオゾンホールが生じるのは8月中旬~11月初旬くらいにかけて2ヶ月半~3ヶ月くらいの期間限定です。8月中旬といったら、北半球は夏ですが、南半球は冬です。極地の夏は「白夜」となって日が沈まなくなりますが、冬は逆に日が昇らない「極夜」となります。

8月中旬の南極は極夜の真っ最中です。つまり、強力な紫外線どころか太陽光そのものが届かない時期なんですね。これでどうやってフロンが分解されて塩素が生じ、オゾン層が破壊されるというのでしょうか?

一方、オゾンホールが消失する11月初旬というと南極は初夏で紫外線がいよいよ強くなり、しかも白夜で太陽光が途絶えない時期に入っています。これが逆なら話は明解ですが、フロンでオゾンホールを説明しようとすると話がアベコベになってしまうんですね。

south-pole_ozone.jpg
南極上空のオゾン分布
NASAの人工衛星オーラが観測した
いまから1ヶ月ほど前のデータになります。


上図の下のほうにあるカラーサンプルは左に行くほどオゾン濃度が低い状態を示しています。このデータが観測された3月初旬の南極は晩夏あるいは秋口といったところだと思いますが、この時期にはオゾンホールなど存在しないということがよく解りますね。

ちなみに、NASAの人工衛星オーラに搭載されているOMI(オゾン観測機器)は紫外線や可視光線の放射からオゾン濃度を観測していますので、太陽光が当たらないと観測はできません。つまり、極夜で太陽光が届かない場所はオーラのOMIで観測できなくなってしまうわけですね。これは見方を変えればオーラのOMIで極夜の範囲がどこまでか解るということになります。

south-pole_polar-night.jpg
南極の極夜の範囲
2007年8月15日のデータになります。
OMIは太陽光がないと観測できませんので、
データが抜け落ちている部分(白い部分)が
太陽光の届かない範囲ということになります。
周囲が鋸刃のようになっていますが、
これは時間差がある観測データを
つなぎ合わせているために生じるものです。


ご覧のように、図に向かって南極大陸右上のほう(南米大陸に近いほう)にかなりオゾン濃度が低下している部分が覗いていますが、南極大陸のほぼ全体が極夜で太陽光の届かない範囲に入っています。南極のオゾンホールはこのように強力な紫外線どころか太陽光そのものが届かない時期に始まっているということがよく解りますね。

実は、オゾンというのは強い紫外線の作用で生じるものなんです。ですから、極夜で太陽光が届かなくなれば、当然のことながらオゾンの供給はストップします。南極も北極も冬の後半くらいからオゾンの濃度が低下していくのは、極夜で太陽光が届かなくなるからだと考えるほうが遙かに自然でしょう。

また、大抵の化学反応がそうであるように、オゾンも温度が低いほど作られにくいといわれています。北極より寒い南極のほうがオゾンの供給が落ち込む期間が長く、その地域が広くなる傾向もこうした要素を考慮すると理解しやすいですね。

加えて、オゾンホールは暖冬ほど小さくとどまり、厳冬ほど大きく発達するという顕著な傾向があるんですが、これもオゾン供給量の変化がオゾンホールの原因になっていると考えたほうが理に叶っているといえるでしょう。

いずれにしても、「フロンがオゾン層を破壊する」と言い張る人達は、オゾン層の穴を塞ぐ方策を考える前に、自分たちの仮説の穴を塞ぐ方策を考えるべきですね。


このオゾン層破壊問題も地球温暖化のそれと同様に不完全な科学的根拠で盲目的に既成事実化が進められ、国際的な取り決めが結ばれました。こうなってしまうと、もう誰にも止めることはできなくなります。狡猾な人間がこれに便乗して利権をむさぼるという、お決まりのパターンになっているのかも知れません。

ま、そもそもこのオゾン層破壊問題そのものが利権絡みの陰謀めいていますけどね。何せ、この問題が本格的に騒がれ始めたのはフロンの特許が失効し、誰でも自由にフロンを作れるようになる何年か前のことでしたから。

「フロンは環境破壊ガスだ」という濡れ衣を着せてしまえば、「フロン廃絶」という国際世論の一丁上がりです。ウイーン条約だのモントリオール議定書だの、フロンを規制する国際的な取り決めが発効したことで、「誰でも自由に作れる安価で便利なガス」になるはずだったフロンは「誰も作ってはいけない環境破壊ガス」ということになってしまいました。

先進国の巨大資本ケミカルメーカーがこぞって「オゾンを破壊する塩素」を含まないハイドロ・フルオロ・カーボン(HFC)など代替フロンの開発とその特許取得に血道を上げていたのは、まさにフロン廃絶へ向けて国際的な取り決めが策定されていた時分でした。

ミステリーを解く鍵は「得をするのは誰か?」という動機を探るのが定石です。フロンを取り巻く問題がミステリー小説だったとして、「誰が何のために矛盾だらけの環境問題を国際世論に発展させたのか?」と考えれば、動機はモロバレ、タイミングもドンピシャですから、作品として成立しないでしょう。

いえ、こうした利権絡みのストーリーは私の勝手な憶測に過ぎませんから、鵜呑みにしないほうが良いかも知れませんけど。

(おしまい)

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フロンはオゾン層を破壊できるのか? (その2)

科学的な事実関係はともかく、世間では「フロンがオゾン層を破壊する」という単なる仮説があたかも事実であるかのように認識されています。

しかし、フロンガスは大気の4倍近くもある非常に重い気体ですから、これがオゾン層のある成層圏まで10年ないし数十年かけてジワジワ昇っていくとはちょっと信じられません。また、上昇気流に舞い上げられて成層圏まで達すると考えるのも無理があるように思います。というのも、上昇気流は対流圏上部まで昇ることはできますが、その上限である圏界面に達すると、それより上、即ちオゾン層がある成層圏へ上昇することはないからです。

対流圏上部では気温が-70℃前後という低温なんですが、成層圏ではオゾン層が太陽の紫外線を吸収することで暖められ、相対的に対流圏より気温が高くなっているそうです。冷たく密度が大きい対流圏の気流が、それより暖かく密度の小さい成層圏へ分け入ることは難しいということです。

実際、上昇気流は圏界面に達すると、それに沿って水平方向へ広がっていきます。「かなとこ雲」と呼ばれる雲はそうした理由で生じるわけですね。

incus.jpg
かなとこ雲
鍛造や板金作業などで用いられる
鉄床に似ていることからこの名がつきました。
上部が広がっているのは成層圏と対流圏の
温度と密度の差によるもので、
上昇気流は圏界面でブロックされる
ということをこの雲の姿が示しています。


もし、フロンガスが上昇気流に乗って圏界面まで運ばれても、このかなとこ雲が生じるのと同じ理由で成層圏まで分け入っていくことは難しいでしょう。また、フロンがオゾンを破壊するには太陽からの紫外線を浴びて分解されるのを待たなければなりません。分解されるまで大気の4倍近い重さの気体がその高度を維持できるのでしょうか?

こうしたことを考え合わせるとフロンがオゾン層まで到達しているのかどうか、かなり怪しいところです。また、これまで「フロンは強力な太陽の紫外線を浴びることで分解される」という仮説を踏まえて話を進めてきましたが、実はこれもかなり嘘くさい話なんです。

「フロンがオゾン層を破壊する」というのは単なる仮説に過ぎません。が、その仮説が正しいという前提の下で国際的な取り決めが設けられ、日本もそれに準じて1988年に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(通称:オゾン層保護法)」が制定されされました。

これによってフロンの使用が制限され、また使用済みのフロンも回収し、適切な破壊処理が義務づけられることになりました。が、その破壊処理技術を詳しく見ていきますと、世間一般に盲信されている仮説は荒唐無稽な作り話のように思え、私の疑念はさらに深まっていきました。

フロンの破壊処理方法でメジャーなのは「ロータリーキルン燃焼分解技術」とか「高周波プラズマ法」とか「高温水蒸気分解法」とか、かなり大掛かりな仕組みになってしまうんですね。

ineos-chemical_mihara.jpg
高温水蒸気分解法によるフロン破壊処理施設

フロンは成層圏で浴びる強い紫外線で分解されるというストーリーになっています。ならば、これほど大仰な工場なんて作らなくても、UV灯などを用いて強力な紫外線をたっぷり浴びせてやれば簡便に分解処理できるのでは? と普通なら考えるでしょう。

何しろ、UV灯を用いた殺菌灯や殺虫灯などは微生物や虫などを殺してしまうわけですから、自然界ではあり得ないほど強力な紫外線を照射できます。こうしたUV灯ならば自然界の紫外線で分解されるはずのフロンを分解するなど造作もないでしょう。

しかし、フロンの破壊処理技術の資料を見ますと、「紫外線単独での分解は極めて困難」とか「紫外線だけでは殆ど分解できない」と書かれているんですね。これを読んだ瞬間、私は腹をかかえて大笑いしました。

くどいようですが、「フロンがオゾン層を破壊する」という仮説の大前提は、太陽の紫外線によってフロンが分解され、そうして生じた塩素によってオゾンが破壊されるというストーリーです。しかし、実際に自然界ではあり得ないほど強力な紫外線をフロンに照射してみても殆ど分解することが出来なかったんですから、理論が崩壊しているとしか評しようがないでしょう。

ちなみに、紫外線でフロンを分解する技術もありますが、それはアルコールなどの溶媒を用いなければならず、自然界では常識的にあり得ない条件になるようです。しかも、この溶媒を用いる技術は全てのフロン類に対応できるものではないそうです。

それにしても、紫外線によるフロンの破壊処理技術を研究していた人たちは物凄い根性をしていますね。環境問題の対策技術を研究していたら、その環境問題をなす理論そのものに矛盾があったと気付いたハズです。が、彼らはそのことについて沈黙を守り、紫外線でフロンを分解するために溶媒の研究をして何とかその方法を編み出し、特許を取得し、それでビジネスをしようとしていたんですから。これはもう詐欺に近い気がします。

(つづく)

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フロンはオゾン層を破壊できるのか? (その1)

最近は地球温暖化問題ばかりですっかり忘れ去られた感がある「フロンによるオゾン層破壊」の問題ですが、私はこれについても「地球温暖化人為説」と同様にかなり疑っています。もう忘れてしまったという方や、大衆メディアの中途半端な報道で正しい認識が出来ていない方のために、とりあえずザッとおさらいしておきましょうか。

そもそも、この化学物質を「フロン」と呼んでいるのは日本人だけで、外国人に「フロン」といってもまず通用しないそうです。国際的には「CFC」というのが普通なんですね。ま、私としても「フロン」という呼称に馴染んでいるので以下もそう表記しますけど。

CFCというのはクロロ・フルオロ・カーボン(Chloro Fluoro Carbon)の略で、要するに「塩素」と「フッ素」と「炭素」の化合物ということを示しています。後でもう少し詳しく説明しますが、オゾンを破壊するのはこのうちの塩素だとされています。

テレビニュースなどでこの「フロンによるオゾン層破壊」が伝えられるときはバカの一つ覚えみたいにエアゾールを噴射するイメージ映像を流していましたから、フロンの用途として皆さんが真っ先に思いつくのはスプレーの噴射剤かと思います。ま、一種の刷り込みですね。これ以外で思いつくのは冷蔵庫やクーラーなどの冷媒といったところでしょうか。

でも、実際は噴射剤と冷媒を合わせても消費量全体のせいぜい30%ほどだったんですね。日本では1988年に規制法が作られましたが、それ以前の3年間で用途別の平均出荷量を見てみますと、エアゾール用が約8%、冷媒が約17%でした。

残りの殆どは産業用で、一番多かったのは半導体やプリント基板などの洗浄剤として用いられたもので約49%、次に多かったのが発泡樹脂を製造する際に用いられた発泡剤で約25%となっていました。世界的に見ても洗浄剤:発泡剤:冷媒:噴射剤の割合は、おおよそ4:3:2:1くらいだったんですね。つまり、スプレーなんて大した排出源ではなかったんです。

このフロンは化学的に安定していて分解されにくく、一度放出されると大気中に長くとどまるといわれています。こうした性質から、「フロンがオゾン層を破壊する」と言い張る人たちは以下のような仮説でそのプロセスを説明しているんですね。

まず、フロンガスは10年ないし数十年かけてジワジワと成層圏へ昇って行きます。そして地表付近より強力な太陽の紫外線を浴びることで分解されます。前述のようにフロンは塩素とフッ素と炭素の化合物ですから、これが分解されると塩素が生じます。この塩素によってオゾンが破壊されてしまうというストーリーです。

ozone-depletion.gif
フロンによるオゾン層破壊問題の概念図

でも、私はこうした科学的にかなり無理のある仮説を鵜呑みに出来ません。

フロンが規制される以前、カーエアコンの冷媒にはフロン12というガスが用いられていました。そのフロン12が入れられているボンベなどには大抵こんな注意書きがあったそうです。

ピットの上で充填・抜取り作業を行わないで下さい


ピットというのは自動車の下廻りの点検・整備などを行うために掘られた縦穴のことです。車両をリフトアップさせるのではなく、人が下に潜って作業したほうが都合の良い場合もあります。なので、そうした目的で縦穴の地下スペースを設けている自動車整備工場もたくさんあるんですね。

で、フロンをピットの上で扱うと何がマズイのかといいますと、フロンガスは大気比重で3.7くらいあるメチャメチャ重い気体だからです。そんなに重い気体をピットの上で扱って漏れ出してしまったら、それがピット内の大気を追い出してしまいます。そうなるとピットはフロンガスで満たされたプールと化しますから、そこへ人が降りたら酸欠状態に陥り、ただでは済まなくなるわけです。

大気の4倍近くもある非常に重い気体がジワジワ昇っていくという、その様が私の頭では全く想像つきません。でも、「フロンがオゾン層を破壊する」という仮説はこの重いフロンガスが「10年ないし数十年かけて成層圏まで昇っていく」というストーリーなんですね。いえ、これが上昇気流で舞い上げられ、その後ジワジワと降りてくるというなら理解できますけど。

では、フロンは上昇気流に舞い上げられて成層圏まで到達すると考えればよいでしょうか? でも、そうした考え方もかなり無理がありそうなんです。

(つづく)

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スバルへ増資するトヨタ

一昨日のエントリでタタ・モーターズによるジャガーの買収について書きましたが、余談としてアストンマーティンとプロドライブの関係にも少し触れました。このとき、記憶違いがないか念のためネットでも確認してみたんですね。すると、プロドライブがF1参戦の暁にはアストンマーティンの名を用いるのではないかとする憶測が結構ありました。

当のデイビッド・リチャーズ代表はこうした憶測を否定するコメントを発していたようですが、それ以前に彼のプランはかなり混沌としてきました。FIAのマックス・モズレー会長も昨年末くらいに「プロドライブに認められた2008年のF1参戦権が自動的に2009年へ持ち越されることはない」といった発言をしていましたから、本当に彼らはF1参戦を果たせるのか、かなり雲行きが怪しくなってきたように思います。

もし、プロドライブがマクラーレン以外からカスタマーシャシーの供給を受けられるとしたら、どんなパターンがあり得るだろうか? と色々妄想してみたのが昨日のエントリの元ネタになっています。ま、エイプリルフールということで、突飛なほうが面白かろうと思い、かなり強引なストーリーになってしまいましたが。

ちなみに、プロドライブの社屋の写真以前に書いた内容に嘘はありません(もしかしたら細かい記憶違いはあるかも知れませんが)。それ以降は、プロドライブとスバル、スバルとトヨタ各々の関係について書いた段落を除く5段落が嘘です。ま、改めて解説するのも無粋かも知れませんが。


ところで、昨日あんな嘘っぱちを書いたら、今日になってトヨタが富士重工への出資比率を拡大するというニュースが飛び込んできました。(タタ・モーターズが早ければ今夏くらいまでに東証上場を目指すというニュースでかき消されてしまったようですが。)

トヨタ、富士重に出資拡大・17%、グループ入り視野

 トヨタ自動車は富士重工業への出資比率を現在の8.7%から17%程度に引き上げる方針を決めた。約300億円で富士重が保有する同社株約8%分を追加取得する。両社は国内工場で相互に車両生産を委託し合うほか、新型車を共同開発するなど国内外の事業で全面的に協力する。トヨタは2005年に富士重と資本・業務提携した。原油高や新興国メーカーの台頭など自動車業界を取り巻く環境が激変するなか、富士重のグループ入りも視野に提携関係を大幅に強化する。

 公正取引委員会の審査を経て、富士重の金庫株6425万株(発行済み株式の8.2%相当)全株の取得を目指す。トヨタはダイハツ工業と日野自動車では株式の過半を握り子会社化したが、富士重やいすゞ自動車などへの出資比率は一ケタ台にとどめ、一部の車両・エンジンの生産委託など緩やかな協業関係を築いてきた。

(C)日経ネット 2008年4月2日


2005年にGMが放出した富士重工の株式は約1億5700万株で、発行済み株式の20.1%ほどでした。そのうちトヨタが取得したのは6800万株で8.7%ほどでしたから、筆頭株主といっても行使できる株主権はたかが知れています。記事にもあるとおり、「出資比率は一ケタ台にとどめ」「緩やかな協業関係」というかたちに抑えていたわけですね。

2005年にGMが放出した株式のうち、トヨタが取得しなかった分は富士重工自身が市場から買い戻していたようですから、トヨタによる今般の増資は富士重工がGMから間接的に買い戻した株式の7割強をトヨタへ売却する格好になるのだと思います。とはいえ、それでもまだ約17%ですから、既にトヨタの子会社化しているダイハツや日野と富士重工は全く立場が異なります。

ま、この辺は独占禁止法との兼ね合いも出てくるでしょうから、トヨタがどこまで富士重工の経営に関われるかは法的な判断も絡み、かなりややこしい話になるでしょう。そうなってくると私のような素人に出る幕はありませんね。

GMが富士重工の株式を放出した理由の一つは、スバルの主力車種が極めて個性的だったからという見方もあります。国際的な自動車メーカー再編の動きはもう誰にも止められない状態で、また同時にプラットフォーム共用化の動きもどんどん進められています。しかし、レガシィやインプレッサなどはフロントオーバーハングに水平対向エンジンを搭載するいう世界でも他に類を見ないレイアウトですから、他社との共用化が極めて困難になります。

GMはスバル株を放出する1年ほど前、サーブブランドでインプレッサを北米市場に投入していました。プラットフォームを共用した別車種の展開ではなく、既存車をそのまま流用したリデザインモデルというパターンですね。

このインプレッサベースのサーブは、BMWやアウディなどのプレミアムコンパクトワゴンに対抗するモデルといった位置づけだったようです。フロント周りを中心にサーブらしく意匠変更し、サスペンションを改め、インテリアも高級感を演出する方向へ振られたものでした。

saab9-2x.jpg
SAAB 9-2X

彼らはレガシィでも同様のモデル展開を検討していたようですが、結局のところスバル株の放出と同時にプロジェクトも消滅しました。ま、インプレッサをベースとしたそれもアメリカのメディアにはサーブとスバルの合の子ということで「SAABARU」などと呼ばれていました。ですから、こうしたバレバレのリデザインモデルがプレミアムカーとして成功したか微妙な気もします。

さて、トヨタとスバルの関係はどうなっていくのでしょうか? プラットフォームの共用が難しいからといって、水平対向エンジンにインラインレイアウトの4WDというパワートレーンをスバルから奪ってしまったら、スバリスト達から総スカンを食うのは間違いないと思いますが。

あるいは、ホンダのビジネスジェットに対抗して、富士重工の航空宇宙部門に資本投入し、そちらへ進出させるとか? ・・・こういう妄想は来年のエイプリルフールのネタにしたほうが良かったかも知れませんね。

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スバルが20年ぶりにF1復帰へ

モトーリ・モデルニというと、かつてミナルディ(現在のトロ・ロッソ)などへV6ターボエンジンを供給していたイタリアのエンジンサプライヤーです。スバルは1990年にこのモトーリ・モデルニと共同開発したエンジンをF1に供給していたんですが、皆さんはご存じだったでしょうか?

1987年からF1に参戦していたコローニはイタリアのレーシングコンストラクターですが、スバルはこのコローニへ資本参加すると共に、3497ccの180度V型12気筒60バルブエンジンを投入したんですね。

subaru-coloni_c3b.jpg
SUBARU COLONI C3B
スバルのサイトでは水平対向となっていますが、
左右の向かい合ったシリンダで
クランクの位相角はゼロでしたから、
正しくは180度V型ですね。


ま、実際には全く振るわず、予選通過もままならない有様で、同年7月には撤退するという極めて短命に終わってしまいましたが。ただ、これでスバルはWRCに専念できたと考えれば正しい判断だったのかも知れませんね。

一方、イギリスのプロドライブは、かねてからF1参戦を表明しており、2006年にはFIAから12番目のF1チームとなることが承認されていました。今年からカスタマーシャシーが解禁となるレギュレーション変更を睨み、マクラーレンからのシャシー供給、メルセデスからのエンジン供給という青写真でプロジェクトが進められていたようです。が、実際には頓挫し、今シーズンの参戦は見送らざるを得ない状況になってしまいました。

プロドライブの代表、デイビッド・リチャーズは、かつてフラビオ・ブリアトーレの後任としてベネトン(現在のルノー)でマネージメントディレクターを務めましたし、その後もB.A.R(現在のホンダ)のチームマネージャーを務めるなど、F1界での実績も申し分ない人物ですが、自身のF1チーム発足にはかなり苦闘してきたようです。

prodrive.jpg

リチャーズはこうしたキャリアから水面下でルノーやホンダとも協議を重ねていたようですが、これも上手くいきませんでした。しかし、思わぬところから道は開けるものですね。

プロドライブは1990年からスバルと提携し、スバルワークスのWRCマシン開発とチーム運営を担っており、現在でもその良好な関係は続いています。一方、トヨタは2005年にGMから放出されたスバルの株式を取得して筆頭株主となり、スバルと業務提携を結んだのはご存じの通りです。

スバルが橋渡し役となってトヨタのシャシーがプロドライブへ供給されるという筋書きはこれまで誰も考えていなかったでしょう。このアクロバチックな契約は、さらに驚くべき内容が盛り込まれていました。何と、エンジン供給はスバルが担当するというのです。

トヨタは既にウィリアムズへもエンジンを供給していますから、都合3チームへの供給となるとキャパシティ的にかなり厳しくなります。そこで、プロドライブ向けにはトヨタのエンジンと基本的に同じものをスバルが製作し、供給する体制をとるそうです。

そのため、スバルの子会社であるSTI(スバルテクニカインターナショナル)へ増資、ベルギーのザヴエンタムにあるスバル・ヨーロッパにSTIのF1エンジンファクトリーが設けられる計画です。もちろん、スバルによる開発は行われません。一部の部品と技術データなどがトヨタから供与され、スバルはエンジンの製造とプロドライブに対するサービスおよびメンテナンスに専念することになります。

目処は2010年とのことですから、スバルにとっては丁度20年ぶりのF1復帰となるわけですね。かたちとしてはライセンス生産みたいな感じで、かなり変則的ではありますが、それだけにスバルのコスト負担も最小限に抑えられるでしょう。また、プロドライブとしてもエンジニア同士のコミュニケーションは相手がトヨタより馴染みのあるスバルのほうが却って好都合でしょう。


・・・上手に嘘をつくのは難しいものですね。来年までにもう少し本当っぽい嘘を考えておきます。

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まとめ

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