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酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

タイラップ用ニッパー (その2)

私がタイラップの余分を切り取ることに拘りを持つようになったきっかけは、初めてサイクルコンピュータを導入した高校時代にさかのぼります。

クロモリのロードレーサー(当時はロードバイクという言葉はなかったと思います。また、フレームマテリアルもまだアルミがボチボチ出始めた頃でした)は入門用で決して高価とはいえませんでした。が、思い入れはたっぷりありましたので、当然のように屋内で保管していました。その保管場所は二階にあり、外へ運び出すには屋外の非常階段を担いで降りるのが手っ取り早かったんですね。

ある日、肩に担いでいたそのロードレーサーを地面に降ろそうとしたとき、ダウンチューブが腿を擦りました。サイクルコンピュータの配線を這わせていたそこには等間隔に何本かのタイラップがあったのですが、このときにタイラップの余分を切り落とした切断面が私の腿を激しく引っ掻きました。一部は殆ど裂傷といって差し支えがないくらい血が滲み、ド派手なミミズ腫れになってしまったんですね。汗をかいたり風呂に入ったりするとしみるのなんの何の、かなり痛い思いをしました。

そもそも、ニッパーは圧着切断ですから、切断面が山型に尖ります。また、バンドを固定するヘッドのギリギリで切りたいと思っても刃の厚みがありますから、キワまで寄れません。普通のニッパーで切るとこうした切り残しの尖った部分が出っ張ってしまいますから、場合によってはそれが凶器になってしまうということなんですね。

私はこの経験がトラウマとなってしまい、それ以来タイラップの切断面をカッターナイフでまっ平らに整え、切断面が頭とツライチになっていないと気が済まないという変態的な性癖を持つようになってしまったのでした。私がタイラップフェチになっていったのはこうした性癖から屈折し、あらぬ方向へ発展してしまった結果かも知れません。

しかし、この端面処理はなかなか面倒くさい作業です。勢いあまってカッターで周囲を傷つけてしまわないよう、神経も使います。配線を処理するときなどは特にそうですが、ワイヤレスでもフレームやフォークに余計な傷はつけたくありませんから、カッターによる端面調整というのはやはり細やかな作業になります。


半年ほど前だったと思いますが、電工関係の工具を扱っているネットショップでタイラップ用のニッパーと称するものを見つけました。やはり圧着切断ですが、刃が一般的な両刃研ぎではなく、片刃研ぎになっていたんですね。要するに、一方の切れ端の切断面は山型に尖りますが、もう一方はほぼフラットに切れるというわけです。

しかも、これは刃がキワまで寄っているということですから、タイラップの頭とほぼツライチでカットできます。今までカッターで端面をフラットに削っていた作業を省略できるという、願ったり適ったりの構造というわけですね。思わず脊椎反射で購入しそうになりましたが、メーカー不明でハンドルグリップの色も無粋なそれに躊躇し、同様のアイテムが有名メーカーから出ていないか探すことにしました。

私の場合、ハサミものはドイツのクニペックスかスウェーデンのバーコが好みで、自転車いじり用の工具箱に入れてあるロングノーズプライヤーや普通のニッパーはいずれもクニペックスです。ということで、早速クニペックスのカタログを調べてみますと、やはりラインナップされていたではありませんか!

工具というのはつくづく業界の垣根みたいなものを感じます。ある業界では当たり前の工具でも、別の業界では全く知られておらず、原始的な作業をしているなんてことが時々あります。

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KNIPEX 7803-125

で、購入して使用してみますと、これが実に快適でした。何故もっと早く気付かなかったのかと自分を呪いたくなるほどです。

knipex- blade
クニペックス7803-125の刃先

写真では解りにくいと思いますので、刃の模式的な断面図を示しますと、以下のような格好になっています。

blade_profile.gif
クニペックス7803-125の刃の断面図
厳密な形状は若干異なりますが、
おおよそこんな感じです。


ご覧のように片刃になっており、しかも若干Rが付いていますから(図はかなりオーバーですが)、タイラップのヘッドのギリギリまで刃を寄せて切ることができ、切断面もほぼフラットになるというわけです。ちなみに、クニペックスはこれを「フラッシュカット」と称しています。

section.jpg
切断面の比較
クニペックス7803-125でカットしたもの(手前)と
一般的なニッパーでカットしたもの(奥)


ご覧のようにクニペックス7803-125で切ったものはタイラップのヘッドとほぼツライチ、切断面もほぼフラットですから、カッターナイフで端面処理などしなくても充分にキレイです。一方、普通のニッパーで切ったものは1mmに満たない程度ですが、尖った切断面が出っ張ります。これで素肌を引っ掻くと、場合によってはかなり酷いみみず腫れになるか、最悪の場合は裂傷になることもあるでしょう。

また、安価なニッパーは「バチン」と力で断ち切るような感じになりがちですが、これは「サクッ」と小気味良く切れます。ま、元々クニペックスは切れ味に定評がありますから、これが特別というわけでもありませんが。

あとは個人的なことですが、私が愛用しているロングノーズプライヤーやニッパーなどと共通したデザインの樹脂ハンドルで統一感があるのも喜ばしいところです。

knipex_tools.jpg

ま、正常な人はタイラップの余分を切断した端面など気にもしないのでしょうから、殆ど無意味な工具なのかもしれません。が、私としてはあのトラウマを克服してくれる工具ということで特別な存在なのです。

(おしまい)
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テーマ:自転車 - ジャンル:趣味・実用