酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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人網汲汲密にしても漏らす (その2)

ヨーロッパのサイクルロードレースのプロ選手はチームから離れて行動するとき、必ず所在をチームに報告しなければなりません。それは24時間・365日、いつでも抜き打ちドーピング検査が行えるようにするためです。まるで執行猶予付きの有罪判決を受けた犯罪者のごとき厳しい監視下に置かれている選手達は、スポーツの「尊厳」を守るために人としての「尊厳」を奪われているようです。

昨年のツールで優勝が確定的といえる程のリードを築いていたミカエル・ラスムッセンは第16ステージを制した直後にチームから解雇され、レースのリタイヤを余儀なくされました。その直接の理由はドーピング検査で陽性反応が出たからではありません。チームに対して虚偽の所在報告をし、抜き打ちドーピング検査を忌避したことからドーピングの疑いがかけられたためです。いまの段階ではあくまでも疑惑であって、物的な証拠が確認されているわけではありません。

実際のところ、ラスムッセンがシロなのかクロなのか私には解りませんが、そういう疑惑の目で見られている選手を抱えたくないという意向が働いているのは間違いないでしょう。彼はいまも所属チームが見つからずに浪人生活を強いられています。

自分の居場所を常に知らせる義務を負い、いつドーピングの検査官がプライベートな時間に踏み込んで来るか解らない状況は選手にしてみれば精神的苦痛を伴うでしょう。私の目には人権侵害にも見えます。

もし、ラスムッセンが本当はシロだったとして、プライベートな時間を守りたいという気持ちから虚偽の所在報告をしたというのなら、同情の余地もあるでしょう。また、こうした異常ともいえる状況に嫌気がさして、他のスポーツへ転向してしまう有能な選手も出てくるのではないかという危機感も覚えます。

現在、ヨーロッパのサイクルロードレース界は基本的にUCI(国際自転車競技連合)とAIGCP(国際プロサイクリングチーム連盟)の2団体がドーピングを監視しています。このほかにも国によっては法律でドーピングが禁じられていることもありますから、警察が捜査を行い、検挙に乗り出す場合もあります。有名なスペインのオペラシオン・プエルトなどもその類です。

UCIとAIGCPは以前から協調関係にありますが、UCIと犬猿の仲ともいえるASO(ツール・ド・フランスの主催者団体)も、何故かアンチドーピングコントロールに関しては協調的です。「アンチドーピング」という合い言葉はUCIとASOのように非常に仲が悪く、利害が噛み合わない両者を結束させる魔力を持っているのかも知れません。

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ドーピングと戦う「Sacred Union(聖なる連合)」で同意する代表者達
左からツール総合ディレクターのクリスティアン・プリュドム、
UCIのパット・マッケイド、AIGCPのパトリック・ルフェーブルです。
2007年のツール・ド・フランスを前に同大会ではドーピング検査を
抜き打ちで行うことでドーピングと戦うことが3者の間で合意されました。
この写真は会議を終え、それをメディアにアピールする
といった目的で交わされた握手でしょう。
が、2007年のツールは史上屈指のドーピングスキャンダルに
翻弄された大会となったのはご存じの通りです。


「天網恢恢疎にして漏らさず」などといいますが、ドーピングを巡って人が張る網は、その目が粗くても細かくても問題です。日本のプロ野球界のように抽選で検査が行われ、被験者が全選手の2割に満たないというのは粗すぎると思います。一方、ヨーロッパのサイクルロードレース界のように人権を侵害するような管理体制も正常とは思えません。網の目はどの程度の粗さなら丁度良いのでしょうか?

週末の情報番組などで訳知り顔のコメンテーターがドーピング問題について語るとき、よく引き合いに出されるのがソウルオリンピックで金メダルを剥奪されたベン・ジョンソンです。ま、それくらいしか彼らが思い浮かぶ事例がないのでしょうけど、ドーピングの起源がベン・ジョンソンだったわけじゃないのは言うまでもありません。

ドーピング行為それ自体は何千年も前からあり、紀元前3世紀には古代ギリシャの医師ガレンが選手に興奮剤を処方したという記録が残っているそうです。

記録に残っている最初の死亡例は1886年、ボルドー~パリ600km自転車レースでイギリスのリントンという選手がやはり興奮剤の過剰摂取で亡くなったそうです。一方、オリンピックでの死亡例は1960年のローマ大会が最初でした。これまた自転車競技なのですが、デンマークのジャンセンという選手がトレーナーから興奮剤のアンフェタミンを投与され、競技中に亡くなったそうです。

この事故がきっかけとなって1962年のIOC(国際オリンピック委員会)の総会でアンチドーピングの議決が採択され、1964年の東京大会から検査が導入されました。しかし、当初は科学的な対応の遅れが目立ち、かなりのザル状態が続いたようです。

1976年のモントリオール大会にはステロイドの検査も実施されるようになりましたが、まだ蛋白同化ステロイドの一種であるスタノゾールの検出技術は確立されていませんでした。このスタノゾールが検出できるようになり、オリンピックで初めて検査が行われたのが1988年のソウル大会です。つまり、ベン・ジョンソンの金メダルが剥奪されたのはスタノゾールの検出技術が確立されたからともいえます。

それ以前の選手に同様のドーピングがなかった保証などどこにもなく、こうしたイタチゴッコに終止符が打たれる見込みも恐らくないでしょう。ここ20年ほどでドーピングが蔓延するようになったというよりは、むしろ検査の技術が向上してこれまで見過ごされてきたドーピングを摘発できるようになっただけと見るべきかも知れません。が、その一方でもっと巧妙なドーピングが行われているとする噂も絶えません。

こう言っては身も蓋もないかも知れませんが、ドーピングはスポーツ界の陰で何千年も前から脈々と受け継がれてきた行為であって、「ドーピングは撲滅できる」とする理想は「この世から犯罪を撲滅できる」という幻想と大して変わらないかも知れません。

善良な市民であっても犯罪者予備軍と見なされ、常に監視を受けるような社会に私は住みたくありませんが、ヨーロッパのサイクルロードレース界でプロ生活を送っている選手達はそれに近い状況に置かれています。ペタッキのように些細なミスに起因しただけと思われるような違反でも所属チームを解雇されるといった状態に私たち一般市民も置かれるようになってしまったら、この世は失業者だらけになってしまうかも知れません。

もちろん、効果的な対策を模索する努力は続けていくべきです。が、いたずらに罰則や監視を強化するだけでは限界があるということもきちんと見据えなければならないでしょう。

(おしまい)
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人網汲汲密にしても漏らす (その1)

日本でも野球やサッカーなどのプロスポーツでアンチドーピングコントロールの在り方が話題に上るようになってきましたね。プロ野球では2人目の違反者が出たことから毎日新聞でも社説で取り上げられていました。

社説:球界薬物汚染 違反の摘発は「くじ頼み」か 

昨年度からドーピング(禁止薬物使用)検査を本格導入したプロ野球で、2人目の違反者が出た。日本プロ野球組織(NPB)は26日、巨人のルイス・ゴンザレス選手の尿から禁止薬物が検出されたとしてゴンザレス選手を1年間の公式戦出場停止処分にした。

 検出されたのは、いずれも興奮作用があるとして禁止薬物に指定されている3種類の薬物だった。これらは以前、大リーガーの間でまん延していると指摘された通称「グリーニー」と呼ばれる興奮剤を使用したときに特徴的に検出される薬物だという。

(中略)

 まず、検査の徹底だ。ゴンザレス選手はくじ引きの結果、他の3選手とともに検査対象になったという。くじからはずれていたら、今回の違反も発覚しなかったということだろう。

 昨年1年間、NPBが実施したドーピング検査の検体数は134。全プロ野球選手の2割にも満たない。1軍選手全員、あるいは一定額以上の年俸の選手は全員、検査を受けるように改めるべきだ。

 1検体当たり数万円の検査費用がかさみすぎるというのは資金の乏しいアマチュア競技ならいざ知らず、メジャースポーツのプロ野球では通用しない。プロ野球の「尊厳」を守るための必要な経費と考えれば高すぎることはあるまい。

(後略)

(C)毎日新聞 2008年5月28日


ま、大筋においては私もほぼ同意見です。現在の日本プロ野球界のアンチドーピングコントロールに対する取り組み方に関しては、この緩さが問題でしょう。しかしながら、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ということもあるのは事実で、アンチドーピングコントロールも行き過ぎるとスポーツの「尊厳」を守るという名目の上で選手達の「尊厳」を脅かす場合があります。

私の知る範囲では世界で最もドーピングに厳しいプロスポーツはヨーロッパのサイクルロードレースだと思います。彼らのアンチドーピングコントロールに対する姿勢は非常に厳格といえる一方、度を超していると思われる事例も少なからず見られます。

持病のぜんそくの症状緩和に使用が許可された気管支拡張薬の投薬量を誤っただけと見られるアレッサンドロ・ペタッキがスポーツ仲裁裁判所からこれをクロとされる逆転判定を受けたのは以前にもお伝えした通りです。過去に遡る変則的な1年間の出場停止処分で今年8月までレースに出場できなくなったペタッキは所属チームのミルラムから解雇されるという憂き目にあいました。彼に何の落ち度もなかったとはいえないでしょうから、ある程度の処分は仕方ないとも思えます。が、解雇にまで至ってしまうのは行き過ぎの感が否めません。

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チームから解雇されたペタッキ
ペタッキの所属チームであるミルラムは
5月16日に彼の解雇を発表しました。
この写真はAFPがそのニュースを伝える
ページから拝借したものですが、
昨年の公聴会を終えた後の様子だそうです。


もちろん、ペタッキのケースはほんの一例に過ぎません。現在のヨーロッパのサイクルロードレース界は私の目から見てエスカレートし過ぎていると思われる事例がいくつもあり、またそれが容認されている状態がそもそも異常だと思います。

例えば、今年の1月のハナシです。スペインはトスカーナ地方でキャンプ中だったランプレに対し、抜き打ちのドーピング検査が行われました。その検査官が彼らの宿舎に踏み込んだのは午後11時を過ぎた頃で、選手達は既に就寝中だったそうです。しかも、最後に検査を受けたマルツィオ・ブルセギンやパオロ・ティラロンゴらが検査を終えて自室へ戻ったのは日付が変わった午前3時半だったといいます。

こんな非常識な検査が強行される状態で選手達の尊厳が守られていると評することは不可能でしょう。他にもプライベートでの会食中だった席に乗り込まれたなど、選手の人格を無視した抜き打ち検査のハナシに事欠かないヨーロッパのサイクルロードレース界は集団ヒステリーに陥っているようにも見えます。

(つづく)

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ボールベアリング用ピンセット (その2)

私がカップ&コーンのハブベアリングをメンテナンスするとき、常々不便に感じていたことを一挙に解決してくれたこのピンセットは元々ビーズ細工に用いるために作られた専用のピンセットです。ドライバーなどの製品でもお馴染みの「アネックス」というブランド、兼古製作所がピンセットも多く手がけていることは知っていましたが、このような特殊用途のピンセットまでラインナップしているとは私も知りませんでした。

兼古製作所でこのピンセットを設計した人も、これを自転車のハブベアリングのメンテナンスに応用するなどといったことは全く考えていなかったでしょう。でも、自転車のハブベアリング専用に作られたのではないかと見まごうくらい、ピッタリとボールの丸みにフィットします。大き過ぎも小さ過ぎもしません。

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もちろん、扱いやすさも格段に違います。ハンドルを握り込むようなかたちになるプライヤーより、指先で摘むピンセットのほうが細かい作業で圧倒的に有利なのは言うまでもありません。力もいらず、確実にホールドしてくれますし、元々は樹脂製のビーズも傷つけないように扱うためのツールですから、硬い鋼球に傷を付ける心配は皆無です。

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私の知る範囲ではプロメカニックでもこういうアイテムを使っている人を見たことがありませんが、逆にこれほど便利なものがあることにみんな気づいていないのは勿体ないハナシだと思います。

以前にも、「タイラップ用ニッパー」のときに書きましたが、ある業界では当たり前のツールでも、別の業界では全く知られておらず、原始的な作業や粗雑な扱い方に甘んじているなんてことが時々あります。こうした業界の垣根みたいなものがあることを私は知っていますので、何か不便なことがあったら別の業界では上手いこと対処しているのではないか? と考えるようにしています。殊にいまはネットが発達していますから、かなりディープな情報も比較的簡単に見つけることができますし。

ちなみに、このピンセットへ行き当たった顛末はこうでした。

当初、私はボールベアリングを傷つけないようなロングノーズプライヤーはないかと物色していました。すると、樹脂をはめ込んだソフトチップのプライヤーというものがあることを知りました。私が見かけたのはワイヤークラフト用で、要するに針金細工で傷つけないようにそれを扱うためのプライヤーでした。

これはこれで悪くないと思ったのですが、そもそもは針金を摘んで曲げたり伸ばしたりするプライヤーですから、グリスまみれのボールベアリングを滑らせずに保持できるかは未知数でした。ですから、すぐには食指が動くこともなく、保留にしておいたんですね。

しかし、そのワイヤークラフトから分野的に近いビーズアクセサリーの分野に行き着きました。ワイヤークラフトもビーズを組み合わせることが珍しくないようですし、ビーズアクセサリーも芯にワイヤーを利用するケースが珍しくないようなんですね。ま、詳しく勉強したわけではありませんが、各々の間には明確な垣根がないような感じでした。

そうした絡みでこのピンセットと遭遇するに至ったわけです。が、これは殆ど偶然だったかも知れません。ただ、何か便利なアイテムはないだろうか? と探さなければ一生出会うことはなかったでしょうから、アクションを起こす大切さをこの一例でも再認識しました。

以前にもサスペンションポンプの空気圧計を流用した高圧用タイヤゲージやドリンクのパウダーを取り分けるためにシュガーポットを利用するなどの例をご紹介しましたが、こういう分野が違うものを引き合わせるような発見は、私にしてみればなかなか痛快だったりします。もちろん、こうした模索は不便を何とかしたいという欲求からスタートする故、不便が解消される気持ちよさも加わりますから、尚更でしょうね。

(おしまい)

テーマ:自転車 - ジャンル:趣味・実用

ボールベアリング用ピンセット (その1)

私は潔癖症とはむしろ対極に近い方面の人間です。当blogに載せる写真のバックを白抜きに加工してあることが多いのも、散らかった自室の惨状をネット上に流すのが憚られるからです。とはいえ、自転車に関してはそれなりに手入れをしています。初歩中の初歩であるチェーン周りなどはいうまでもありませんが、クリーニング&給脂の効果が解りづらいハブベアリングなども怠らないようにしています。

ハブベアリングのメンテナンスはどちらかというと不具合の予防の意味が強いかも知れません。マヴィックやボントレガーなどシールドベアリングになっているものは具合が悪くなったらベアリングを丸ごと交換すれば良いのですが、シマノやカンパニョーロなどのようにカップ&コーンでハブの構造にベアリングが作り込まれているものはそういうわけにもいきません。

このカップ&コーンでベアリング部の潤滑が損なわれたり、異物が侵入したりして傷をつけてしまうと厄介です。ボールだけが痛んだとか、リテーナーの交換が可能といった場合は被害も最小限にとどまるでしょうが、それができなければハブの交換、すなわちホイールの組み直しということになってしまうわけですね。

でも、個人的にはカップ&コーンのほうが好みです。シールドベアリングは基本的に分解不可で内部には「手出し無用」というものが殆どだと思いますが、カップ&コーンはグリスを変えてみたり玉当たりを調整してみたり、それなりにいじり甲斐があるからです。

私の場合、手持ちのホイールの半分くらいは自分で組んだ手組みホイールで、その殆どがシマノのハブです。価格が非常にこなれていますし、スモールパーツも容易に入手出来るということも大きいのですが、ベアリングがカップ&コーンだからというのも大きな理由のひとつです。

マヴィックの完組みも何セットか持っていますが、これらはシールドベアリングですから、いじり甲斐がありません。ただ、フリーホイールは簡単に分解することができるため、この部分についてのメンテナンスが容易なのは美点といえます。

逆に、最近のシマノはフリーホイールが殆ど分解不可になっているかと思います。なので、隙間からパーツクリーナーを吹き込んで、グリスと汚れを除去し、新しいグリスを隙間から押し込み、しばらく空転させて馴染ませるという方法をとらなければなりません。(注:このやり方はプロショップなどでも一般的かと思いますが、メーカーが保証しているわけではありませんので、あくまでも自己責任ということになります。)

個人的にはシマノのカップ&コーンベアリングにマヴィックの容易に分解できるフリーホイールが組み合わさってくれると最高なのですが、ま、これは無い物ねだりというものですね。

さて、前置きが非常に長くなりましたが、カップ&コーンベアリングのハブをクリーニング&給脂するに当たって、常々不便に感じていたのは、ベアリングのボールを取り出したり、それを戻したりするときです。ボールを取り出すときは下にトレイを置き、細めのマイナスドライバーなどでつついてトレイに落とすというのが一般的かもしれません。が、グリスまみれのそれはあちこちに引っかかって、なかなかスムーズにいかないことがあります。

ハブベアリングのボールは当然のことながらペダルのそれなどより大きく、その分だけ摘みやすいとえます。が、それでも直径6~7mm前後の小さな球体ですから、なかなか思い通りにはいきません。サイクルメンテナンスのDVDではトップ工業のニードルノーズベントプライヤー(たぶんNN-100BN)で摘んでセットしていましたが、個人的には精神衛生上あまり望ましくありません。

というのも、ボールベアリングはかなり硬い鋼球ですが(超高級品やアフターマーケット向けにサードパーティから出ているものにはセラミック製もありますが)、プライヤーで傷がつかないという保証はありません。また、摘む力が弱かったり、摘む位置が悪いと滑って思わぬ方向へ転がっていってしまう恐れもあります。これをソフトに摘んでも確実に保持できる便利な工具はないものかと長い間探していたんですね。そして、これに行き当たりました。

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ANEX No.151

(つづく)

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最強の携帯ポンプかも? (その2)

とあるネットの書き込みでその存在を知ったフルプラというメーカーのダイヤポンプ・ハンディタイプという携帯ポンプですが、その垢抜けない見た目や商品名とは裏腹に、予想を遙かに上回る性能を秘めていたことに私は驚愕しました。

まず、感心したのは体重をかけて加圧してもビクともしない剛性の高さでした。主要なパーツの殆どがプラスチック製なので、手にとった感触だけでは本当に10kgf/cm2など入るのか? と疑ってしまいそうですが、シャフトが太くて肉厚があり、非常にガッチリとできています。体重を乗せてシッカリ加圧してもビクともしないんですね。

ハンドルもシリンダの径とほぼ同じでL字に曲げてあるだけですから、剛性感も充分です。太さもありますから高圧になっても掌にかかる圧力がさほど集中しないため、あまり痛くなりません。また、重量を軽減するための肉抜きも力のかかり方がきちんと計算されており、位置的も適切だと思います。

こうしたハンドルが邪魔にならないようにヒンジを設けてストレートにしてやろうと考えるケースも非常に多いのですが、落ち着きが悪くなってしまったり、強度が損なわれたり、シリンダとのクリアランスが狭くて指を挟みそうになったり、却ってデメリットが目立つ場合もあります。フルプラはこうした余計な考えを捨ててシンプルに作ったのが正解だったと思います。

で、本当に10kgf/cm2まで入るのか? まずその点を確認してみましたが、嘘偽りはありませんでした。といいますか、プレスタ用アダプタはパッキンがあまり締らず、10kgf/cm2を超えるあたりでここから空気が漏れ、それ以上はなかなか入っていかないという状態でした。ま、この辺はバルブとの相性もあると思いますので、全てのケースに当てはまるとは限りませんけど。

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フルプラ・ダイヤポンプに付属するプレスタ用アダプタ
デフォルトのシュレーダー用ヘッドは口金が金属製ですが、
このアダプタはプラスチック製です。
ネジを締め込めばいくらかパッキンを圧縮しますが、
デフォルトのシュレーダー用ほどではありません。


私が試した条件では、このアダプタのせいで10kgf/cm2を超えたあたりで頭打ちという感じなんですね。でも、デフォルトのシュレーダー用ヘッドはガッチリくわえ込んでまだ余裕が感じられましたから、高圧に耐えるプレスタ用のアダプタを使えばよいのでは? と思いました。

panaracer_valve-adapter.jpg
パナレーサーの仏式バルブアダプタ

ということで、パナレーサーの仏→米アダプタを使ってみました。これは真ちゅう製で、プレスタのバルブキャップを取付けるねじ山へ装着するものですが、ちゃんとラバーパッキンが仕込まれています。これをキッチリねじ込んで、フルプラのデフォルトのヘッドを装着してみました。すると、びくともせずに入るのなんの、凄い実力を示してくれました。

ただ、ラバーホースを収納する機構がネックになってしまいました。この構造自体も上手くできてはいるのですが、さすがに13kgf/cm2前後でホースの根本あたりから少し漏れはじめ、私が試した範囲では13.5kgf/cm2に少し届かないくらいで頭打ちとなってしまいました(これも多少の個体差はあると思いますが)。

しかし、これは凄いことです。それなりにちゃんとしたフロアポンプでさえ到達できる製品が絞られていくこの領域に、フルプラのダイヤポンプは(アダプタの性能は別ですが、ポンプの性能としては)充分カバーできることが確認できたのですから。

MTBのエアサスに用いるサスペンションポンプでもこの領域の高圧はこなせますが、1回のポンピングで入っていく量が絶望的に少ないゆえ、実用的とはいえません。しかし、このフルプラのダイヤポンプは少ない量をチマチマと送っているわけではなく、このクラスの携帯ポンプとしては常識的なボリュームです。これはシリンダのボアとストロークの設定が適切で、また各部の気密性が非常に高く、高圧に耐えるようにできている故だと思います。

殆どの部品がプラスチック製とはいえ、かなりの肉厚になっているせいか、決して軽くはありません。が、重量は実測で237gでしたから、このクラスとしては標準的かと思います。

ま、私もそんなに沢山の携帯ポンプを試したわけではありませんが、それにしてもここまで高圧に耐えるものは他に出会ったことがありません。もしかしたら最強なのではないかとさえ思います。鉄道や航空機による移動でフロアポンプまでは持って行けない状況でも高圧までしっかり入れたいといったケースでは、強力な味方になってくれるかも知れません。

そうそう、肝心なことが最後になってしまいました。

メーカーが保証しているのは10kgf/cm2までですので、それ以上の加圧は自己責任ということになります。ここでご紹介したやり方を真似されてトラブルに至っても(株)フルプラはもちろん、私も補償できませんので、その点はご承知おき下さい。

(おしまい)

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最強の携帯ポンプかも? (その1)

以前、かなりのベテランとおぼしきローディな方がとある携帯ポンプを大絶賛している書き込みをネットで見かけました。しかし、聞いたこともないブランドで、その見た目といい、「ダイヤポンプ」という昭和チックなネーミングといい、同社の商品ラインナップといい、本格的なスポーツサイクルとはおよそ無縁な雰囲気でした。実際、私がよく利用するオンラインサイクルショップには同社の影も形もありませんでしたし。それは・・・

フルプラ

というメーカーで、主力商品はポンプ式のスプレーになるようです。事業内容を見ますと、園芸用品各種・家庭日用品各種などもありますので、やはりメインの販路はホームセンター系になるのだと思います。

件のポンプはOリングやブッシュ、ホースなどのゴム製部品を除いて殆ど全てエンジニアリングプラスチックで作られているそうなんですね。「フルプラ」という社名はそうしたところから「フル・プラスチック」を意味しているのかと思いました。が、社名の英文表記は「FULLPLA」ではなく「FURUPLA」となっており、代表者が古澤さんという方ですから、要するに「古澤プラスチック」をベタに略した社名なのでしょう。

こんな感じですから、正直なところ当初は半信半疑でした。が、色々スペックや構造などを確認してみますと、見た目の雰囲気とは裏腹に、かなり硬派な内容だと解りました。トピークのモーフシリーズのように地面に立ててフロアポンプの要領で加圧することもできる構造になっていて、「高圧10kgf/cm2までらくに加圧できる」と謳っているんですね。

furupla_no940.jpg
FURUPLA DIA PUMP No.940
写真に向かって左側がハンドル、右側がヘッドになりますが、
シリンダはハンドル側、ピストンはヘッド側につながる構造で、
一般的なポンプの逆になっています。


デフォルトはシュレーダー(米式)バルブ用なのですが、アダプターが4種類付属していて、プレスタ(仏式)にもウッズ(英式)にも、ボールの空気入れとしても使用でき、これらのアダプターはハンドルを回して外すと現れる空洞に格納しておくことも可能になっています。ま、私にはプレスタ用のアダプタだけで充分ですが。

デフォルトのシュレーダー用ヘッドはネジを回すとちゃんとブッシュが圧縮され、キッチリとバルブをくわえ込んで固定されます。このヘッドも口金こそ金属製ですが、他は全てエンプラ製ゆえ高級感などありません。ただ、コンパクトな割につくりは結構シッカリしています。

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デフォルトのポンプヘッドはエンプラ製のシュレーダー用で、
ここに各種アダプタを装着して対応する方式になっています。


この種のポンプはシリンダを固定し、ピストンを往復させるのが一般的かと思いますが、これは全く逆です。ピストンのシャフトが太いパイプ状になっていて、Oリングを2重にかませたピストンにその穴が貫通しています。ピストン+シャフトを固定し、シリンダを動かすことで圧縮された空気はピストン+シャフトの中の穴を通ってホースを経、ポンプヘッドに送られる方式です。

furupla_no940_piston.jpg
ピストンは2つのOリングが高圧になっても空気を漏らさず、
シッカリ圧縮してくれます。
また、ポンピングはこのピストン側ではなく、
シリンダ側を動かす構造で、いわば倒立式です。
圧縮された空気はピストンとシャフトを貫く
穴を通ってホースを経、ヘッドまで送られます。


ホースの取り回しはトピークのモーフシリーズをはじめとした一般的なタイプと少々異なります。一般的なものの多くはスイベルジョイントになっており、サスペンションポンプのようにシリンダに沿わせて格納する方式になりますが、フルプラのこれは200mm少々のホースを真っ直ぐシャフトの中へ押し込むカタチになります。

furupla_no940_hoos.jpg
開閉リングをOPENの位置に合わせると
ホースを押し込んだり引き出したりでき、
CLOSEの位置に合わせるとロックされます。
写真はCLOSEの位置です。


このホースの格納方式は見た目もすっきりしますし、ロック機構も上手くできていて、かなり節度のある良い動きをします。立てたとき地面に接する部分にはちゃんと滑り止めのゴムも張られていますし、足かけは金属(たぶんスチール)製の単純なものですが、畳めば邪魔にならず、展開すれば必要な機能はちゃんと果たしてくれます。また、ホースを引き出さずに普通のハンドポンプのように使うこともできます。

で、これを実際に使ってみますと、かなりの実力の持ち主であることが解りました。

(つづく)

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無事退院

5月10日に入院させたパソコン、ソニーのバイオが無事に直ってきました。消費税等を含むトータルで27,930円は安くありませんが、これまで電源の接触不良を気にしながら騙し騙し使ってきた煩わしさから解放されることを思えば納得できない金額でもありません。

ちょっとボラレたっぽいのはACアダプタで、これだけで12,800円(税別)もしました。見積段階の説明では規定電圧の16Vを若干下回っているので交換したほうが良いとのことだったんですが、修理に出す前に私もテスタでチェックしていて、ちゃんと16Vに達しているのは確認していたんですよね。

ただ、コネクタの部分がヘタリ気味だったり、何度か椅子のキャスターでケーブルを轢いてしまったり、色々ありました。なので、私が測ったときはたまたま規定電圧になっていただけで、不安定な状態だった可能性は否定できません。

本体のコネクタ周りの部品は830円(税別)でしたから、真っ当な価格だと思います。技術料13,000円(税別)も高くはないと思います。トラブルの原因としてグレーなACアダプタを除けば、税込14,500円少々ですから、覚悟していた程ではなかった印象です。メーカー純正の修理で、3ヶ月以内に同じトラブルが再発した際は無償での再修理となる保証も付いていますし、こんなものでしょう。

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以前、アメリカの某直販メーカーG社のノートパソコンで液晶のバックライトが点灯しなくなり、修理に出したことがありました。バックライトの修理だけという対応は不可で、液晶のアッセンブリー交換になるといわれたのも解せませんでしたが、その部品代が12万円というとんでもない額を吹っ掛けてこられたときは怒髪天を衝きました。

かれこれ10年くらい前の話ですから、当時はまだDSTN液晶も健在で、TFT液晶は現在ほど安くない時代でした。が、それでもそのノートより1クラス解像度が高い単体ディスプレイが7万円かそこらで売られていましたから、部品代だけでそれより5万円も高いというのは納得いかないと突っぱねました。

結局、1ヶ月近く粘り強く交渉を重ね、向こうが根負けしたのか、私の理詰めの指摘に反論できなくなってきたのか、いずれにしても部品代は取られずに工賃と送料と消費税、締めて3万円程で直してもらったことがありました。(が、数カ所に画素抜けのあるものを使われてしまいましたけどね。)

ま、アレに比べれば今回はトラブルの程度も大したことがなかった分だけスムーズに完了して良かったと思います。

そういえば、バイオの入院中に活躍してくれたもう1台のほう、デル・インスパイロンを買ったのは、それまで使っていたマシンが満身創痍となっての代替えでした。そのタイミングが前のクルマを買った直後だったんですよね。S2000が納車されてから約1週間後に絶不調に陥り、400万円近い買い物をした直後にまた何十万円もの買い物をするハメになりました。

今回も新車の購入と同時期にパソコンがトラブルを起こして大きな出費が重なる嫌な予感がしたのですが、大したことがなくて本当に良かったと思います。

行きつけのうどん屋

昨日、会社の同僚と行きつけのうどん屋で昼食をとっていたときのことでした。黒いTシャツを着た若いお兄さんがかなりの低姿勢でこう言ってきました。

「すみません、テレビ東京の『出没!アド街ック天国』という番組なんですが・・・」

このお兄さんは番組のアシスタントディレクターのようで、この店の取材をしているのだそうです。客で賑わう店内の様子を引きの画で撮るだけ、食事しているところをアップで狙うわけではないので、協力して頂けないかと、そういう了解をとりに来たわけですね。ま、誰も断っている人はいませんでしたから、私たちも気軽にOKしました。

数分後、カメラと三脚、照明機材に数名のスタッフが入ってきて、カメラを三脚に据え、照明に火を入れ、カメラと照明を軽くパンさせておしまいでした。カメラを回していた時間は正味1分かそこらだったと思いますし、実際に使われるとしても数秒でしょう。私が写っているのか解りませんし、写っていたとしてもこのカットがオンエアに載るのか解りませんけどね。

彼らが引き上げて行った後、私はふと思い出しました。先週、この店の定休日である火曜日に前を通りかかったとき、出入口の脇に照明機材やら何やらが置かれていたのを見て、テレビ番組か何かの取材か、あるいはドラマのロケでもやっているのかな? と思ったんですね。ただ、沢山のスタッフが走り回っていたり、野次馬が取り囲んでいたりといった状況ではなく、かなりひっそりとしていて印象も非常に薄かったので、すっかり忘れていました。

が、昨日の撮影でだいだいハナシがつながりました。恐らく、先週の定休日を使って実際にうどんを打ったり天ぷらを揚げたりといった厨房の様子や、出来上がったうどんをビシッと撮影していたのでしょう。客の入った店内の様子だけ別撮りで、それにたまたま私も居合わせることになったということですね。



この店は以前にも日本テレビ系の『どっちの料理ショー』に「おいしい応援団」のコーナーで出たことがあるそうですし、店主が渋谷の「長徳」という店(讃岐うどんを初めて東京に紹介した店だそうです)で板長をやっていたときも情報誌などのメディアには度々取り上げられていたようなんですね。

確かに、この店はなかなかのレベルだと思います。注文を受けてからうどんを茹でたり天ぷらを揚げたりしますから、混雑しいるときはかなり待たされますが、それだけの価値があるうどんを食べさせてくれるお店です。なので、私たちの行きつけになっているわけです。

関係ありませんが、このうどん屋の向かいにある焼きそば屋も『王様のブランチ』とか『ラジかるッ』とか結構メディアに露出している店なんですよね。ま、私はそれ程とも思いませんので、うどん屋が定休日で近所の中華屋や定食屋も満席だったりして、しょうがないから焼きそばにするか、といったノリでしか行きません。ま、その辺は好みの問題なのかも知れませんけど。

ということで、私が写るかも知れない『出没!アド街ック天国』のオンエアーは7月5日だそうです。

ハイテク水着は不公平? (その2)

競技者が用いる機材や身につけるもので成績が向上するのであれば、その改良が進められるのは自然な流れです。多くの場合は「競技者が少しでも有利になるように」といったレベルであったり、場合によっては単なる「プラセボ効果」に過ぎないこともあるでしょう。

しかし、競技によっては機材の性能差が成績に大きな影響を与えます。故に、そうした分野の競技では機材の性能を制限し、より公平な条件に揃えられるように事細かく競技規則が整えられているわけですね。

F1マシンに対して「速さのみを追求した理想のカタチ」という人もいますが、それは完全な誤解です。F1マシンのあのカタチにもっとも大きな影響を及ぼしているのは「理想」ではなく、「レギュレーション」です。車体の寸法や構造、使用できる素材に至るまで非常に細かい制限が山のようにあるF1マシンは、「レギュレーションが許す中で速さを追求したカタチ」に他なりません。各コンストラクターは定められたその中で如何に速いマシンを作るかを競っているわけです。

こうしたマシンの競い合いをもっとも重視しているのは、恐らくイタリアのティフォシ(熱狂的なファン)たちでしょう。彼らが望んでいるのはイタリア人ドライバーのヤルノ・トゥルーリがトヨタのマシンで活躍することではありません。フィンランド人ドライバーのキミ・ライコネンがフェラーリのマシンで活躍することこそ、彼らが望んでいることなのです。

「氷上のF1」とも呼ばれるボブスレーも、やはり似たような厳しいレギュレーションが設けられています。フレームの素材はスチールでなければならず、細部の寸法についても非常に細かい制限が設けられています。また、ランナー(氷を捉える刃)も1シーズン1パイロット当たり3組までしか使用が認められておらず、分光計などを用いてそれを厳しく検査するといった徹底ぶりです。

ハイテク水着の「レーザーレーサー」が不公平だ何だと大騒ぎされますが、もし競泳界に問題があるとしたら、こうした制限が全くといってよいほど確立されていないところかも知れません。

ただですね、今回の騒動も私はバカバカしいと思っているんですね。というのも、8年前にも非常によく似たことがあったのにメディアはすっかり忘れ去って、今回のハイテク水着で再び大騒ぎしているからです。この様を端から見ているとやはり失笑を禁じ得ませんね。

あれは2000年のシドニーオリンピックのときでした。スピード社とミズノが共同開発したハイテク水着「ファーストスキン」がやはり競泳界を席巻していたんですね。男子の金メダルのうち54%、女子の金メダルのうち61%、全メダリストの約70%がこれを着用していました。


ミズノ・スピードのファーストスキン
素材開発を担ったミズノはサメの皮膚をヒントにした
リブレット(溝)加工、うろこ状の撥水プリント加工を施し、
スピード社は全般的な理論設計と流体力学の検討などから
動的要素を考慮したカッティングを開発しました。
シドニーオリンピックでこの水着を着用した選手は
メダルを量産し、12の世界記録を生みました。


このファーストスキンを「サメ肌水着」と囃し立て、やはり大学の水泳部の選手に着せてタイムを計ってどれだけ短縮したみたいなデータを示すテレビの報道番組もありました。このときは日本水泳連盟とミズノが契約を交わしており、日本代表選手にこの水着が供給されていたことから、「日本のハイテク素材が選手を後押しし、メダルの期待も膨らむ」みたいな感じで極めて好意的に報じられていました。今般の騒動のように「不公平ではないか?」といった論調は一切なかったと私は記憶しています。

いま「スポーツは純粋に選手の能力が競われるべきで、それ以外の条件に差があるのは不公平ではないか?」的な論調が目立つのは、つまり日本水泳連盟がミズノ、デサント、アシックスの3社と供給契約を交わしており、現状では日本代表選手がレーザーレーサーを使えないという一点のみがその理由でしょう。

この契約が見直されず、レーザーレーサーに負けない水着の開発がオリンピックに間に合わない場合、日本にとって不利な状況になり得るという危機感が日本人に「不公平ではないか?」と思わせているわけです。逆に、ファーストスキンのときように日本代表選手にレーザーレーサーが供給される状況であれば、「メダルの期待も膨らむ」といった好意的な報道となって「不公平ではないか?」的な論調にはならなかったと思います。

たぶん、また何年かして好記録を連発するハイテク水着が出てきたとしても、そのときには「魔法の水着」と大騒ぎされたこのレーザーレーサーも「サメ肌水着」と騒がれたファーストスキン同様にすっかり忘れ去られていることでしょう。そして、そのハイテク水着が日本代表選手に供給されるか否かで日本のメディアが好意的に報じるか、ひがみっぽく報じるかも決まるのだと思います。

(おしまい)

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ハイテク水着は不公平? (その1)

イギリスのスピード社が開発した競泳水着「レーザーレーサー」が大衆メディアの間でも大きな話題になっていますね。中には大学の水泳部の選手に着せてタイムを計ってどれだけ短縮したみたいなデータを示すテレビの報道番組もありました。また、「スポーツは純粋に選手の能力が競われるべきで、それ以外の条件に差があるのは不公平ではないか?」といった論調と共に報じられるケースも多く見られますね。

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レーザーレーサーを着用するアラン・ベルナール
今年3月に開催されたヨーロッパ選手権で
フランスのアラン・ベルナールは
100m自由形の世界記録を2度更新、
50m自由形も世界新をマークし、
大会中3日連続で世界新を叩き出しました。
50mの世界記録はわずか4日でオーストラリアの
イーモン・サリバンに奪い返されましたが、
サリバンもレーザーレーサーを着用しています。


中には「ハイテクドーピングだ」などという過激な論調もありますが、そんなことをいったら機材スポーツの発展はあり得ませんね。我々自転車乗りも機材に頼る部分は大いにあります。だから私などもホイールやタイヤなどをはじめ、様々な部品を取っ替え引っ替えしているわけですね。

自転車競技もロードレースやトラックレースなどは近代オリンピックが始まった当初から正式種目になっていましたが、ハイテク機材の導入も古くから進められてきました。私が知る範囲では、目に見えて大きな変化が始まったのは1980年代だったと思います。

トラックレースなどではブルホーンハンドルや前後異径ホイールが採用されたいわゆるファニーバイクが用いられるようになったり、ディスクホイールが使用されるようになったり、殊に空気抵抗の低減を意識した進化はこの頃から大きな潮流に乗ったように思います。その後も構造や素材などの進化が常に続いているのはいうまでもありませんね。

ただ、自転車なども競技者の身体的な能力に左右される要素が非常に大きいので、機材の性能差が及ぼす影響も限定的です。同レベルの選手で競い合ったときに最後の一押しになるといった程度が殆どでしょう。レーザーレーサーもそうした次元のものだと思います。

一方では機材の性能がもっと大きく影響するスポーツがあります。モータースポーツなどはその最たるものですが、オリンピックにもそれに近い競技があります。私の想像がおよぶ範囲で、機材性能にもっとも左右されるオリンピックの競技はソリ競技になると思います。殊に「氷上のF1」ともいわれるボブスレーなどは機材性能が成績に大きく影響するようです。

ボブスレーもリュージュもスケルトンも、スタートダッシュでどれだけ加速できるかという要素はありますが、それ以降は如何に上手くソリをコントロールするかという部分以外、競技者の能力を発揮できる要素が殆どありません。せいぜい、リュージュやスケルトンなどで頭をあまり上げないようにして空気抵抗をできるだけ少なくするといった程度でしょう。

ボブスレーの場合は複合素材で作られたカウルが被されており、その空気力学的な設計次第で空気抵抗や安定性などもかなりの範囲で決まります。また、氷を捉えるランナーの性能も摩擦抵抗の少なさや舵の効き、安定性などに大きく影響するでしょう。

最初の加速以外は地球の引力に引かれて滑り降りていくだけで、そもそも動力のない乗り物です。なので、それをコントロールする能力以外に勝敗を決する要素はソリの性能がもっとも大きい部分になるでしょう。それ故、レースカーデザイナーの由良拓也氏はボブスレーを見て「デザイナー魂を刺激された」と語ったのだと思います。

(つづく)

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ようやく試走 (その2)

WH-7850-C24-TU(以下C24)のフロントハブはディープリムのWH-7850-C50-TU(以下C50)と共通とのことですが、リヤハブはC24のほうがフランジ幅が広くなっているので横剛性を重視していると情報誌などのレポートは専らそんな書きぶりになっています。

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WH-7801はフリー側がラジアル、反フリー側がタンジェントという
変則的なパターンでしたが、WH-7850は両側ともタンジェント組みになりました。
リヤのフランジ幅はC24のほうがC50より約6mm広くなっており、
またリムはセンターから反フリー側へ約3mmオフセットされています。


しかしながら、私の印象では横剛性にあまり大きな差を感じませんでした。確かにC24のワイドフランジのほうが横剛性を高めるのに有利ですし、オフセットリムでフリー側のプレース角も確保しようとしています。が、そもそもC24はC50よりスポークが長いですし、スポークテンションも私の実測ではC50のほうが10~20%くらい高くなっています。条件的にもC50のほうが劣っているとは思えません。

ブレーキ性能は両者とも全く変わらず、純正のシューでもそれなりに効きます。昔のシマノのカーボンリムはブレーキが効かないと言われていましたが、現在はその辺もちゃんと克服されていますね。ま、それでもアルミから初めて乗り換えた人は効かないと思うでしょうけど。

C50とC24のどちらにしようかと迷っている方も結構おられると思います。C24のほうがC50より200g以上軽いのですが、C50もクリンチャーでは定番の軽量ホイールだったマヴィックのキシリウムESと公称値で殆ど変わらない軽さです(ということは実測での比較ならさらに軽いでしょう)から、ヒルクライムにも充分に対応できるパフォーマンスはあると思います。一方、C24もリムハイトが24mmでそれなりに空力を考慮した形状になっていますから、高速巡航が苦手というほどでもありません。どちらかを選ぶとなれば、確かに迷うところでしょう。

当然のことですが、ゼロ発進から30km/h台までの加速でいえばC24のほうが明らかに有利です。でも、そこから先の加速が鈍いかというと、そんなことはありません。もちろん40km/hくらいからの伸びはC50のほうが勝ってきますし、その速度域の維持もC50のほうが有利だと思います。

オールラウンドで考えればC24のほうがバランス良く、ヒルクライムでは間違いなくC24のほうが有利です。まだちゃんとしたヒルクライムでC24を試したわけではありませんが、近場のちょっとした上り坂でもその軽さからくるメリットは十二分に確認できました。

高速域の性能が欲しいのであればC50のほうが良いのは確かですが、とりあえず1セットで色々こなしたいという方にはC24のほうがお勧めです。価格も3万円ほど安いですし。また、ディープリムの経験がない方は、強い横風の中で乗りにくいという宿命をC50もそのまま背負っている点について留意されたほうが良いかと思います。

さて、あとは他愛のない雑感になりますが、最近のシマノはスポークパターンもかつてのような個性がなくなってしまいました。元より雰囲気的にマヴィックのような派手さがなかっただけに、輪をかけて地味な印象になってきましたね。

辛うじてニップルに赤いアルマイトを施していますが、あまり目立ちませんし、走っているときには誰も気付かないでしょう。バブフランジを真っ赤にするとか、スポークを1本だけ丸々赤く染めてしまうとか(個人的な好き嫌いの問題は別ですが)、シマノのデザイナーからそういう発想が出てくることはないのでしょう。

化粧カーボンも施されていない真っ黒で素っ気ないリムはともかく、「DURA-ACE」のロゴをあしらった趣味の悪いデカールには少々萎えます。逆に飾らないプロの仕事道具的な雰囲気と好意的に理解(曲解?)すれば良いのかもしれませんが、デカールは元より飾り以外の何ものでもないのですから、もう少し格好良くデザインして欲しかったところです。

つくりは非常に丁寧で、価格を考えれば驚異的といえるレベルにあります。殊にリムのスポーク穴やバルブ穴にはキッチリ補強用のカーボンが積層されていて、切り口も樹脂で手当されているなど手抜かりがありません。フランスの某C社のようにドリリングされた穴の切り口がちょっとササクレ立っていても気にしないといったノリとは対照的です。こうした部分はタイヤを貼ってしまうと全く見えなくなりますが、逆に見えなくなる部分にも拘る姿勢は個人的に好感が持てます。

wh7850c50tu.jpg
これはC50のほうですが、C24も全く同じで、
全ての穴に細かい補強が施されています。


ヘタレの私にはC24もC50もかなりのオーバースペックですが、ド下手なオッサンほど良いゴルフクラブを欲しがるのと同じで、自分の能力の低さを機材で補おうという発想は誰にでもあると思います。ま、C24などは値上げされたとはいっても13万円台で入手可能ですから、このクラスのホイールとしては呆れるほどコストパフォーマンスが高いと思います。

(おしまい)

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ようやく試走 (その1)

例のエアカーに関して書いた「圧搾空気なんてこんなもの」のエントリで使った写真、コンプレッサーの大きさをお伝えするための比較として後ろに置いたCR1は既に今般購入したホイールとタイヤに替えていました。めざとい方はお気付きになっていたかも知れませんが、実は先々週の土曜日にはタイヤの装着を済ませていたんですね。

でも、いかんせん雨天が多かったですし、晴れ間とスケジュールとの折り合いも悪かったので、結局この土日に近場で少し走っただけです。ということで、シマノWH-7850-C24-TU+チューフォーS3ライト<215gのインプレッションはまだほんの触りだけといった感じになりますので、予めご了承下さい。

まず、タイヤのほうですが、空気圧の設定もまだ色々試せていません。推奨空気圧は8~15barとなっていますが、一般道であまり上げすぎると跳ねてしまいますし、コントロール性も乗り心地も悪くなりますので上限の15barを実用で入れることはないと思います。一方、下限は8barですから、中央値は11.5barくらいになりますね。

でも、私の体重(約60kg)では11barでもちょっと高めで、舗装が荒れたところではやはり跳ねがちです。ステアリングは基本的にクイックな部類になると思いますが、やはり11barあたりから上はやや落ちつきがなくなっていく印象です。まだどの辺を軸に使えば良いかは模索中ですが、下限の8barより少し上のあたりが私には丁度良さそうな印象です。

チューフォーは「チューブラーらしいしなやかさがない」「まるでクリンチャーのよう」という声もよく聞かれます。確かにケーシング一体のチューブというその構造のせいか、全般的にかなり剛性が高い印象です。が、チューブラーの乗り味ではないというほどのレベルでもないでしょう。私はクリンチャーもしばしば使いますが、やはりそれとは一線を画すしなやかさを感じます。

真円度の高さや剛性の高さ、トレッドのセンターがスリックになっているなどのことから想像して転がり抵抗の小ささも期待していました。が、期待が大きすぎたようで、それなりに転がる方だと思いますが、思ったほどでもありませんでした。もちろん、空気圧を上限あたりまで上げてやればまた印象も違うのでしょうけど、そこまで上げてしまうとスポイルされる部分も多々あるでしょうから、実用でそのあたりを用いることもないと思います。

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トレッドはセンターがスリック、
サイドがヤスリ目になっています。


ダウンヒルでコーナーを攻めたらどうかとか、そういうレベルのテストはまだです。が、そもそも私はかなりのビビリですので、この辺に関してはちゃんと攻められる人が参考になるようなレポートは書けないでしょう。ま、通常の範囲では全般的に剛性が高い割にちゃんとグリップしてくれる感じです。硬いケーシングに弾性率低めのコンパウンドといった感じでしょうか?

耐久性や耐パンク性なども当然いまの段階では評価不能です。が、この軽さですからあまり期待は出来ないでしょう。逆に、この軽さが加速や登坂に生きてくると思いますが、今回はホイールも私が経験してきた中で最軽量のものを初めて試していますので、両者を合わせた軽さしか評価できません。

一方、ホイールですが、この情報を目当てに当blogへおいでになった方も結構いらっしゃるようなんですね。でも、重量の実測値以外に役立ちそうな情報は書いていませんでしたので、少々恐縮しておりました。

前モデルのWH-7801カーボンも「シマノ版ハイペロン」と呼ばれるなど非常に評価が高かったと思います。スポークのプロフィールが若干変わるなどモデルチェンジに伴う細かい変更もそれなりにあったようですが、大きな変更点はハブニップルをやめたことと、リヤのスポークパターンが左右ともタンジェント組みになったこと、フリーボディを10s専用のアルミ製から8-9s兼用のチタン製に戻したくらいでしょうか。従前も完成度の高いホイールだっただけに、あまり変える部分がなかったということかも知れません。

ハブニップルをやめたことによって外周重量が重くなっているのではないかという疑問もありますが、それに対してシマノは「ワッシャーが不要なったので大差ない」といった旨の説明をしてるようです。しかし、それはハブニップルのメリットを根底から覆すようなもので、前モデルを買ったユーザーが欺かれていたことになるのではないか? という別の疑問も生じてきます。ま、個人的にはメンテナンス性の悪いハブニップルでなくなったのは歓迎したいところですが。

それはともかく、個人的な評価としましては、やはり非常に完成度が高いホイールだと思いました。ハブがアルミ、スポークもステンレスであまり追い込んだつくりではないため、飛び道具的な超軽量ホイールほど軽くはありませんが、一般的に見れば充分に軽く、トータルパフォーマンスを考えるとかなりのハイアベレージではないかと思います。

(つづく)

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チューブレスチューブラー

シマノの自転車パーツはやはり今月から値上げとなりましたが、駆け込みで購入したWH-7850-24C-TUも私が購入したショップで約8%、ほぼ1万円の値上げとなっていました。いつものパターンであればタイヤも同じタイミングで買うところですが、ホイールの購入を決めたのが急だったので全く吟味していなかったため、延び延びになっていたのはこれまでにもお伝えした通りです。

で、どれをチョイスしたかといいますと、チューブラー使いの方なら掲題でメーカーを特定できたかと思います。ホイールの軽さを生かすために比較的軽量なものということで、チューフォーのS3ライト<215gにしました。

tufo-s3lite_wh7850c24tu.jpg
バルブとロゴの位置を合わせるのは
「お約束」とされていますが、
チューフォーは90度ズレています。


このメーカーは東欧のチェコに本社を置いています。それが関係あるかどうかは解りませんが、極めて個性的なメーカーで、チューブラータイヤ専門なんですね。MTB用タイヤもチューブラーで専用ホイールと共に発売したり、クリンチャー用のリムに装着できるチューブラータイヤをいくつもラインナップさせたり、かなり奇特なことをやっています。また、このメーカーのタイヤはいずれもチューブがケーシングと一体化されている一種のチューブレス構造になっているのも非常に特徴的ですね。

クリンチャーと同じような構造のリムを用いる普通のチューブレスなら、裏から穴にパッチを当てて補修するなどの対応も可能です。が、この構造では裏側に手が入りませんから、そうした対応は物理的に不可能です。また、MTBでは自動車や自動二輪と同様にプラグを差し込む方法もありますが、薄くボリュームがないロード用タイヤではこの手も上手くいかないでしょう。

クリンチャーしか知らない方のために念のためご説明しておきますと、一般的なチューブラータイヤもパンク補修は簡単ではありません。チューブはケーシングに包まれるようなかたちで内側(リムに接着する側)で縫い合わせてあるんですね。属に「フンドシ」と呼ばれるリムフラップがその縫い目の上に貼ってありますので、これを剥がして縫い目を解いて、チューブを引っ張り出して、パッチを当てるなどの補修をして、チューブを戻して、縫合して、フンドシを接着し直して、リムに接着し直すという、大変な手間がかかります。

しかも、高性能なタイヤほどチューブやケーシングが薄く作られている傾向がありますから、チューブを引っ張り出したり戻したりといったことをやってしまうと、きちんと歪みなく元通りに収めるのが至難の業で、これには高度な職人技を要求されます。

ということで、練習用の安物はともかく、決戦用のそれは補修せずに捨ててしまうという人も少なくありません。私も性能を求めて導入したものを補修して性能を落とすというのは本末転倒だと思いますので、直さずに捨てる主義です。私は真性のエコロジストではないので、この主義は曲げられません。

さて、これまで私とはご縁がなかったチューフォーですが、S3ライト<215gという名の通り、メーカー公称値は215gになっています。こうした軽量モデルは重量のバラツキが大きい傾向がありますし、誇大広告になっていることも多いのですが、チューフォーも公称値に嘘がないとの評判に違わず、2本とも公称値の215gを若干下回っており、実測で205gと213gでした。

チューフォーは硬くて嵌めにくいという話もよく聞きます。が、WH-7850-24C-TUとの相性に関していえば全く以て「普通」で、緩くもなく殊更きつくもなく、丁度良い感じでした。かなり手こずるのではないかと覚悟していただけに、ちょっと肩すかしを食った感じでした。

で、これが非常に真円度が高く、ヴィットリアなどとは対照的です。また、捻れも皆無といってよく、リムにはめたところで殆ど芯が出ていて、修正する必要も全くといって良いほどありませんでした。コンチネンタルの上位グレードとかヴェロフレックスなどのような高級品ならこれくらいは当然ですが、この価格帯でこれだけ精度良くキレイに作ってあるのはなかなかのものだと思いましたね。

実走したインプレッションですが、ホイールもタイヤも私には初対面ですので、どちらの要素がどうかという点でややグレーな部分もありますが、どちらも妙に尖った部分がなく、良くも悪くも中庸な印象でした。

ちょっと前置きが長くなってしまいましたので、実走のレポートはエントリを改めます。

(つづく)

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省力化

私が子供の頃は「運動中に水を飲むな」と教えるアホ指導者も結構いましたが、発汗によって失われた水分の補給が重要なのはもはや常識ですね。それでも給水に失敗してパフォーマンスを落したり、脱水症でフラフラになったりする選手が結構います。

箱根駅伝などを見ていても、未だにそういう選手が時々いますね。箱根駅伝にでてくる大学の陸上部員となればかなりのレベルのハズなのに、何故か初歩的なミスを犯してしまうんですね。冬のレースだと思って給水を甘く見ているのか、舞台の大きさにビビって普段通りのことができなくなっているのか、その辺はよく解りませんが。

私は休日の早朝に近所をぐるっとロードバイクでひとっ走りしてくるのですが、同様にジョギングやウォーキングに出ている人も結構います。夏場などは早朝でも30℃前後というクソ暑い朝もありますが、そういう時でも水分を一切持たずに運動している人が非常に多いんですよね。

中にはいわゆるサウナスーツを着込んで、のぼせたように顔を真っ赤にしながら走っている人もいます。要するに、汗をかいた分だけ痩せられると思い込んでいるんでしょうけど、そういう人を見かけると「体をこわさないでね」と思います。ま、本人にしてみれば健康のためにやっているつもりなんでしょうけど。

確かに、ジョギングやウォーキングなどの場合、水分を携行するのは面倒だと思います。ちゃんと解っている人は公園のグラウンドなどを周回し、ベンチにドリンクを置いて何周かしたら飲むというようなかたちをとっているようですが、公道を走っている人は給水を考えていない人が非常に多いようです。

一方、我々自転車乗りはフレームにボトルケージを取付け、そこにドリンク類を入れたボトルを挿して走るというのは初歩中の初歩です。スポーツとして自転車に乗っていてボトル(ないしハイドレーションパックなど)を持たない人は逆にどうかしていると思われることでしょう。

私の場合、MTBに乗るときはキャメルバックのハイドレーションパックを使うこともありますが、あれは洗って干すのが少々面倒なので、大抵はボトルを使います。特に拘りはないのですが、ロードバイクにはエリートのパタオカーボンの74mmを付けていますので、ボトルもエリートのチンチオを使っています。

ドリンクは一般的なスポーツドリンクを使っています。以前はペットボトル入りのものを買っていたのですが、重くて嵩張って、まとめ買いも買い置きもしにくいので、現在はパウダータイプにしています。これも全く拘りがなく、近所のドラッグストアでついでに買ってくるので、そこで売っているものの中からチョイスする格好です。

最近はアクエリアスのアミノバイタルに固定した感じです。近所のドラッグストアに売っているパウダータイプはこれか普通のアクエリアスか、ポカリスエットくらいなのですが、1リットル用のパウダーがポカリスエットは74g、普通のアクエリアスは55g、アミノバイタルは22gと、濃縮度といいますか、分量の差が大きいんですね。

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一般的なスポーツドリンクは糖度が高く、2倍くらいに希釈した方がよいとされていますので、私も1リットル用で2リットル分作りますが、普段はボトル1本ないし2本しか作りませんので、計量スプーンで必要量をボトルへ取り分け、水を入れて溶解させています。

こうしたとき、パウダーの分量が多いものほど計量スプーンですくってボトルへ移す回数が多くなって面倒です。例えば、アミノバイタルなら3回で済むのですが、普通のアクエリアスだと7回半、ポカリスエットだと10回にもなってしまうんですね。早朝の寝ぼけた頭だと回数が多くなるほど数え間違いもあるでしょう。もちろん、まとめ買いや買い置きをするにも分量が少ない方が軽くて嵩張りませんので、より少ない分量のアミノバイタルが一番便利ということになってくるわけです。

そんなわけで、ここ2年くらいはアクエリアスのアミノバイタルを計量スプーンで取り分けていたのですが、それでも不便に感じることがありました。袋入りですので擦り切りで計るのは面倒ですし、回数も多くなります。山盛りのほうが簡単で回数も少なくてよいのですが、ボトルの口まで運ぶあいだにこぼしてしまうことが時々あります。特に早朝で寝ぼけているときなどは結構やってしまいます。何か良い方法はないものかとずっと考えていたんですね。

で、先日、クライアントのオフィスでコーヒーを出してもらったとき、シュガーポット見て「これだ!」と思いました。

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ご存じのように、口の尖ったほうを下にして傾けてやるだけで定量の砂糖が出てくるというやつですが、これならボトルの口からこぼすこともなく、スムーズに計量できます。写真のものはアミノバイタルのパウダーですと1回で約1g出てきますので、ボトル1本500mL分を作るのに5回傾ければ済むわけです。袋からソーッと計量スプーン山盛りのそれを3回運ぶより数倍速く、遥かに簡単に計量と取り分けが完了します。

ま、ちょっとしたことですが、早朝の寝ぼけまなこをこすりながらという時には、こうした省力化もそれなりに有効だと思います。

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そら怒るわな

イギリスからのニュースなのですが、ちょっと笑ってしまいました。ポール・マッカートニーがトヨタに対して激怒しているそうです。

Sir Paul McCartney 'furious' after his new eco-car is flown 7,000 miles from Japan

Sir Paul McCartney was today said to be furious after his new eco-friendly car was flown 7,000 miles from Japan.

The former Beatle ordered the £84,000 hybrid vehicle to be shipped to Britain but the delivery instead created a carbon footprint almost 100 times larger by arriving on a jet.

The Lexus LS600H produces just 219g in carbon emissions per kilometre.

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A car of similar size, such as an XJ Jaguar, has much higher emissions of 249g per kilometre and Sir Paul, 65, has applauded the manufacturer for its green commitment.

But his efforts to help save the environment were frustrated by the fact that the air journey created 38,050kg of carbon dioxide instead of the 297kg for the three-week voyage by boat.

According to environmental firm CO2balance.com, it was the equivalent of driving the car around the world six times.

(後略)

(C)Daily Mail 2008年5月13日


多分、トヨタはポール・マッカートニーからオーダーが入ったもんだから、メチャメチャ気合いを入れちゃったんでしょうなぁ。「ナイトを待たせたらアカン」とか思ったんでしょう。

それで通常の船便なら3週間かかるところをトヨタはジェット機で空輸してしまったと。輸送にかかるCO2排出量が297kgで済むところが38,050kgになってしまったと。折角CO2の排出量を減らすつもりでハイブリッドカーのレクサスLS600hを買ったのに、このクルマで地球6周するのに相当するくらいのCO2を日本からの輸送で余計に排出することになっちゃったと。CO2の温室効果が地球温暖化の原因だと考えている人なら、そら怒りますわな。

ま、この数字が合っているのか検算したわけではありませんし、そもそも私はCO2温暖化説に懐疑的な人間です。そうはいっても船便より航空便のほうが環境負荷が大きいのは間違いないと思いますし、エネルギー効率が悪いのも確かだと思いますので、やっぱり空輸する必要のないものを空輸するのは正しくない判断だと思いますね。

でも、レクサスLS600hの燃費は旧来の10・15モードで12.2km/L、新しい基準のJC08モードなら11.0km/Lですから、ハイブリッドではない普通のクラウン・ロイヤルサルーンと大差ありません。プリウスと比べたら1/3少々といったところでしかありません。これを「エコカー」と呼べるのか、かなり疑問ではありますけどね。(私はプリウスも生涯走行距離50,000km以下ならLCA的にエコカーと認めるつもりはありませんが。詳しくはこちら→「プリウスのジレンマ」)

所詮は2トン超の超重量級の車体を5リッターのV8エンジンと165kWの電気モーター、合計618馬力の動力源で走らせるクルマの環境負荷が小さかろうハズはありませんね。ま、ジャガーXJあたりに比べれば同じ量のガソリンで1.5倍くらい走りますけど。

それにしても、日本の大衆メディアも真性のクルマオンチですが、イギリスもそうなんですね。使われている写真に写っているのが件のLSではなく、GSだということには誰も気づかなかったみたいです。

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Lexus LS600hL

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只今実験中

性能向上が著しく、ここ何年かすっかりクリンチャーっ子になっていた私ですが、この半年あまりの間にカーボンリムのホイールを2セット買ったりして、またミヤタTTP-1という便利なアイテムでリムセメントとの格闘から解放されたこともあって、チューブラーの良さを再認識している今日このごろです。が、やはりまだあるネックの最たるものは、パンクしたらどうするかということです。

ま、常識的に考えればスペアを持つわけですが、クリンチャーはスペアチューブでも大して嵩張らず、サドルバッグの中にも容易に収まります。でも、チューブラーの場合はタイヤ丸ごとになりますから、サドルバッグの下にくくりつけるか、ボトルケージに突っ込むか、ジャージの後ろポケットに突っ込むか、いずれにしても邪魔くさかったりするわけです。

もちろん慣れの問題もありますから、もともとスペアのチューブラータイヤを持つのはこんなものだと割り切ってしまえばどうということもないでしょう。が、一度クリンチャーでチューブだけという身軽さを経験してしまうと、これがなかなか素直に割り切れなかったりするわけですね。

そんな折り、ワイズのサイトで『NOTUBEパンク防止剤をロードバイクで使う』という気になる情報を見つけました。

元々、この種のシーラントはMTBで普通のクリンチャータイヤをチューブレスとして用いたり、特に王滝のようなマラソン系イベントなどでパンク対策に(必ず効くとは限らないまでも)良く用いられるもので興味がありましたし、ロード用としても以前からチューフォーからも出ていたのは知っていたのですが、賛否両論で「どんなもんかいな?」と常々思っていました。

で、ワイズの記事を読むと大絶賛で、『Sealant(シーラント=パンク防止剤)ロードタイヤで使う』という特別ページまで開設し、具体的な使用法まで紹介されていました。私の中の物欲という悪魔は結構ミーハーなところもありまして、これを読んだところで強力に背中を押されてしまいました。

そこで早速これを入手してみました。使い古しのタイヤは処分してしまってありませんでしたので、要らないチューブで試してみようと思ったんですね。幸いなことにバルブコアが外せるシュワルベのチューブをサイズのオーダーミスで3本買ってしまって、一生使う予定がないアレがありますので、試してみることにしたんですね。

よく聞くハナシですが、開いた穴からシーラントが吹き出すというのは事実でした。迂闊にも自室内で無造作にやってしまったので、結構凄いことになりました。こんな実験をやってみたりその後かたづけに余計な手間を取られたり、昨日はそんな感じで終わってしまったので当blog始まって以来のお休みとさせて頂きました。

まだ虫ピンと画鋲で試しただけですので、もう少しやってみたいことがあります。さらに、ノーチューブではない別のシーラントもテスト中ですので、いずれ纏めてご報告しようと思います。

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ノーチューブ・タイヤシーラント付属の計量カップ
穴から吹き出したシーラントの飛沫を浴びてこうなりました。
勿論、これが置いてあった一帯はこんな感じでシーラントまみれです。
テストをするときは吹き出すシーラントを受けるバケツか何かを用意するか
汚しても良い場所を選びましょう。

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半減させても無駄

今日の毎日新聞の社説はまたぞろ地球温暖化問題に関する論評でしたね。規定の文字数を埋めるためかダラダラと書かれていますが、趣旨としては最後の3段落、とりわけこの論説委員が言いたいことは最後の1文に集約されているのでしょう。

社説:温暖化対策 「部門別」だけで乗り切れない

(前略)

 日本がセクター別アプローチを提案した背景には、エネルギー効率などを指標とすることで、省エネの進んだ日本が損をしないようにとの思惑がある。確かに、公平性を担保することは必要だ。

 しかし、先進国である日本は、自主的な積み上げだけでなく、気候変動の抑制に必要な削減量という観点から目標を決める必要がある。EUは20年に90年比で20%の削減という目標を掲げている。

 昨年のハイリゲンダム・サミットで、日本は世界の排出量を50年までに半減させることを提案した。洞爺湖サミットでは日本自身の覚悟を語るべきだ。

(C)毎日新聞 2008年5月12日


これまでも度々触れてきましたように人為的温暖化説は矛盾だらけですが、ハイリゲンダムサミットで唱えられた「全世界のCO2排出量を2050年までに半減」という目標もまた例外ではなく、科学的に考えてみれば大きな矛盾をはらんでいます。この機会にちょっと論じておきましょうか。

g8_summit_heiligendamm.jpg
G8 Summit Heiligendamm

何故、CO2排出量を半減させれば良いのか? それは以下のように説明されています。

現在、人類が排出しているCO2は炭素換算で毎年約63億トン、自然が吸収する量は毎年約31億トン、約32億トンが吸収されずに残り、それが大気中のCO2濃度を上昇させている。ゆえに、排出量を半減させれば吸収量とのバランスがとれて大気中のCO2濃度は変わらなくなる。

もう、メチャクチャですね。子供騙しもいいところです。

そもそも、大気中のCO2濃度が増え始めたのは産業革命以降だといわれていますね。産業革命期というのは18世紀中頃から19世紀中頃までをいいますが、そのど真ん中あたりの19世紀初頭に人類が排出していたCO2はどれくらいだったと思います?

現在の1/400にも満たないんですよ。

当時の日本はまだ江戸時代で鎖国中でした。産業革命による技術革新や文化を受け入れる状況にはなく、化石燃料なども全くといって良いほど使用されていませんでした。他の多くの国も大差なく、この頃から化石燃料を積極的に消費していたのは欧米先進国が殆どでした。しかも、そうした先進国にあっても大衆のエネルギー消費量は大したレベルにありませんでしたし、そもそも人口が現在とは比べものになりません。当時の世界人口は現在の1/8にも満たない、たったの8億人ほどだったんですね。CO2の排出量が桁違いに少なかったのも当然です。

要するに、CO2の排出量を現在の半分に減らしたところで、気候変動が始まった頃の200倍以上のCO2を排出し続けることになるわけです。それでバランスがとれるというのですから、実におかしな話ですね。

もちろん、過去には現在のCO2排出量約63億トン/年の半分くらいしか排出していなかった時期もありました。それがいつ頃だったかは下図を見れば一目瞭然ですね。

co2_emissions.gif

ご覧のように、CO2の排出量が現在の半分くらいだったのは1960年代中頃になります。

CO2の排出量を現在の半分まで削減すればバランスがとれてCO2濃度が変化しなくなるという理屈が正しければ、CO2の温室効果が原因となって地球が温暖化し始めたのは1960年代中頃以降でなければなりません。何故、産業革命の頃から温暖化が始まったんでしょうか?

逆に、1960年代中頃以前のCO2排出量は吸収量を下回っていることになりますから、収支のバランスがとれていない状態になりますね。ということは、1960年代中頃の水準で人類がCO2を排出していなければ、大気中のCO2濃度はどんどん減っていってしまうことになるハズです。CO2がなくなれば光合成もできなくなりますから植物は絶滅します。どのようにしてこの生態系は維持されてきたのでしょうか?

これは「CO2の排出量を現在の半分に削減すれば温暖化の進行を防げる」というのが嘘なのか、そもそも「人類が排出しているCO2で地球が温暖化している」というのが嘘なのか、両方とも嘘なのか、いずれかになるでしょう。

ちょっと考えればすぐに解る矛盾に気付かないというのは、つまり何も考えていないからなのか、恣意的に矛盾を黙殺しているのか、どちらかということでしょう。

こうした状態で日本政府は地球温暖化対策に毎年1兆円超の国家予算を投じているわけですが、何も考えていないアホに無駄遣いされているのか、あるいは奸智に長けた人間が利益を誘導しているのか、その両方か、いずれかになるのでしょう。

また、メディアもこの状態に対して何も文句を言わないわけですが、アホ揃いで誰も気付いていないのか、解っていながらこの脅威論を飯のタネに利用しようと思っているのか、その両方か、いずれかになるのでしょう。

ま、世の中そんなにアホだらけとも思えませんから、やっぱり騙されたフリをしながら都合の良いように地球温暖化問題を利用している人が沢山いるんでしょうなぁ。そういう人達から見れば、blogでストレートに疑問をぶつけている私などもアホに見えるのだと思います。

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圧搾空気なんてこんなもの

少しずつ減ってはいますが、まだエアカーがらみのアクセスが続いているようですね。

そもそも、圧搾空気のエネルギーで実用的な乗用車が成立すると思っている人は、エアツールなど実際に圧搾空気を使ってエアモーターを動かす道具に触れたことがないのでしょう。エアツールをちゃんと使ったことがある人なら、圧搾空気のエネルギー密度など大したものではないことや、損失もかなり大きいことなど、感覚的に理解できるでしょうし、どんなに効率アップしてもたかが知れていると解りそうなものです。

我が家には家庭用の100V電源で使えるエアコンプレッサーが2台あります。自転車いじり用に使っているもののほうが能力も高く、デフォルトの25リットルに同量のサブタンクを追加して8kgf/cm2のエアが50リットルまで蓄えられるようにしてあります。

air-compressor.jpg
ホームセンターで購入した安物なのでモーターの定格出力など
詳しいスペックは解りませんが、消費電力は1000Wとなっています。
言うまでもありませんが、本体は右、サブタンクが左です。
普段はもっとゴチャついたところに置いてあるのですが、
撮影用にいつもの場所へ引っ張り出しました。
(後ろにロードバイクを置いたのは大きさを比較するためです。)


サブタンクを加えた50リットルを満タン(8kgf/cm2)にするには5分ほどかかりますが、満タンの圧搾空気だけで(コンプレッサーを回さずに)どれだけの動力が取り出せると思います? 例えば・・・

air-ratchet-handle.jpg
(携帯電話を並べたのは大きさを比較するためです。)

これは無印のエアーラチェットで、差し込み角は3/8インチです。ご覧のようにかなりコンパクトなもので、この種のツールとしては常識的なインパクト機構を持たない単純なエアモーターですから、仮締め程度のトルクしかありません。要するに、人間の手で締めるほどの力も出ないツールなんですが、8kgf/cm2の圧搾空気50リットルでこれがどれだけ動くと思います?

無負荷でたったの2分半です。

それも普通ならコンプレッサーが再始動するくらいまで圧力が下がってから1分半近くはウダウダとやっているだけです。実用レベルで考えますと、せいぜい1分少々といったところでしょう。

一方、MDIのエアカーに積まれるタンクですが、公称値は最大300気圧となっています。かなりの超高圧ですが、こうしたスペックのタンク自体は製作可能でしょう。というのも、最近よく見かけるCNG(圧縮天然ガス)で走るバスなどの燃料タンクが約200気圧ですから。

isuzu_lr234j1.jpg
CNGバス
いすゞ自動車の路線用中型バスです。
屋根の上に巨大な出っ張りがありますが、
そこに200気圧の超高圧タンクが収まっています。


天然ガスをタンカーなどで運ぶ際には液化されていますが、それは冷却されているからです。天然ガスは常温で液化しませんから、これを燃料とする車両は200気圧くらいの超高圧タンクに充填して用います。こうした実績もありますから、300気圧くらいの車載タンクを作るのは不可能ではないでしょう。

が、CNGの超高圧タンクもMDIのエアカーのそれもアルミに炭素繊維を巻いて強化したものですから、猛烈に値が張ります。こんな高価なタンクを搭載した乗用車が50万円ほどで作れるというのは間違いなく大嘘です。

例えば路線バスの場合、通常のディーゼル車に対してCNG仕様になると車両価格が1000万円くらい割高になります。上の写真のバス(いすゞPA-LR234J1改)も標準価格で2700万円を超えます。タンクだけでも50万円以下で作るなど不可能でしょう。余談になりますが、私が使っている鉄を溶接しただけの25リットルの安物サブタンク(中国製)でも買えば1万円くらいします。

MDIのラインナップの中で最もタンク容量が大きいのはOneCATsのようで、1200リットルにもなるそうです。これもかなり嘘っぽいデータですね。他の車種も700リットルとか500リットルとか、凄い容量になっているようですが、上の写真にあるCNGバスの屋根の上の巨大なタンクでさえ容量は150×3=450リットルですから、それと同等から2.7倍近いタンクを乗用車に積むというのもかなりナンセンスなハナシです。

百万歩譲って、これらを全て無視したとしても、実用的な乗用車にはなり得ないでしょう。

300気圧で1200リットルのタンクにどれだけの空気が入るかといいますと、あのエアラチェットを正味1分少々しか動かせないタンクの871倍でしかありません。あの人間の力にも及ばないエアラチェットを正味14時間半ほどしか動かせない空気をどんなに効率よく使ったとしても、人間を乗せて100kmも200kmも走る自動車が成立するなどあり得ないでしょう。7km走ったというハナシもかなり疑わしいものです。

本気であんな夢のようなクルマが成り立つと思うのであれば、万年資金不足のMDIに是非とも投資してあげてください。



2008年6月5日追記

MDIのエアカーについてさらに矛盾点を纏めてみましたので、こちらも是非ご一読下さい。→「矛盾だらけのエアカー

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ついに入院

私がいま使用しているパソコンはソニーのバイオVGN-TX50B/Bとデル・インスパイロン8200です。他にももっと古いパソコンが4台ほどありますが、もう何年も電源を入れていません。メインはバイオで、当blogの執筆も殆どこれによります。

vgn-tx50b.jpg
SONY VAIO VGN-TX50B/B

イスパイロンのほうはテレビ番組(主にディスカバリーチャンネルヒストリーチャンネルナショナルジオグラフィックチャンネルなどのドキュメンタリー番組)を録画したり、それをDivXなどにエンコードしたり、私が持っているパソコンの中では最も高解像度のSXGA+(1400×1050ドット)モニタですので、フォトレタッチで画像をいじるときにもよく使います。

inspiron8200.jpg
DELL INSPIRON 8200
写真は発売前の広報用ですが、パームレストなどの色が
ブラックからシルバーへ変更になりました。


ただ、インスパイロンのほうは当時のハイエンド機とはいえ、いかんせん古いですから、光ディスクドライブやHDDなども外付けで強化していたり、ビデオキャプチャをつないでいたり、LANも有線だったり、要するに実質デスクトップパソコンになってしまっているんですね。会社でデスクについて一日中パソコン向かうことも少なくないので、自宅ではリラックスした格好でいたいですから、無線LANでどこでも使えるバイオばかりになってしまうわけです。

また、バイオのほうは長時間のバッテリー駆動が可能で、メーカー公称値は約6時間半、実際も5時間くらい楽々使えます(無線LANを使いっぱなしでも4時間以上はいけます)ので、出先で時間が空いたり、移動中などのちょっとした時間を使って原稿を書くということも可能です。一方のインスパイロンは大きくて重さもバイオの倍以上ありますし、色々つながっている配線を抜く気にもなりませんから、そういうわけにいきません。

で、バッテリーでの使用が多いバイオは頻繁な抜き差しが祟ってか、1年以上前からACアダプタを挿すコネクタがぐらつきはじめ、根っこの部分で接触が悪くなっていました。騙し騙し使っていたのですが、今朝ついにどうやってもAC電源が使えなくなり、バッテリーの充電もできなくなってしまったんですね。仕方ないので入院させることになりました。

ま、メールなども最近はオンラインメールサービスを軸にしていますし、主なデータはSDカードやLANでつないでいるHDDに保存していますので、パソコン本体に残っている使用頻度の高いデータはブックマークやIMEの登録単語くらいです。

なので、本気で困ることはあまりないのですが、それでも環境が色々違います。特に、バイオはRAMを2GBに強化してあるのですが、インスパイロンのほうは買ったときのままですから、1桁少ないんですね。こちらもRAMの容量を増やそうと思ったことはあったのですが、特殊な規格なので非常に割高になることからアホらしくなってやめました。

そんなわけですから、バックグラウンドで何かさせながらとなると非常にもたついて苛々することがありますし、番組を録画したりそのファイルをエンコードしながら原稿を書くというわけにもいきません。いまも仕方ないのでインスパイロンが置いてあるデスクにかじりついて書いているのですが、やはりいつもとは違うのでスムーズに筆(というよりキーボード)が進まない感じです。これで録画したい番組が集中したら、当blogの更新が滞るのは必至でしょう。

バイオの修理の見積もりは来週の木曜日くらいになりそうだとのことですので、順調にいっても2週間くらいはこの状態でしょうし、もしあまりにも費用がかかるようなら新しいマシンにしてしまったほうが良いと判断するかも知れません。そうなればそうなったで環境の整備にやはり時間がかかりそうです。

話は変わりますが、当blogのアクセスカウンターもこのところ不調でした。立ち上げた当初から二重カウントしない(同じIPアドレスからのアクセスは日付が変わるまで1回しかカウントしない)設定で正味の訪問者数をカウントするようにしてあったのですが、何故か5月2日から突然その機能がおかしくなっていたようです。

アクセス解析のほうにもカウンターがありまして、そちらは1日の訪問者数が50~70くらいで従前と大差ない数字が出ていました。(余談になりますが、昨日の訪問者数は約70だったんですが、そのうち約30が例のエアカーがらみのアクセスでした。本当にテレビの影響力はすさまじいものがあります。)

ところが、これまたどういうわけか今日になってカウンターが正常に動くようになったようで、治ったようなんですね。パソコンが壊れた日にblogのカウンターが治るというのも何だか皮肉な感じです。

さて、今日からいよいよジロ・デ・イタリアも始まって、今夜からJスポーツで生中継されますので、原稿執筆が手に付かなくなる恐れもあります。これまでにも何度か更新が滞るかも知れないというようなことを言いつつ、何だかんだ毎日更新してきましたが、今回は状況が悪すぎますので、本当に滞ると思います。

ご贔屓にして下さっている方も増えてきているのに恐縮ですが、何卒ご理解の程、よろしくお願いいたします。

急転直下

本当は5月7日のエントリで取り上げるつもりだったのですが、NHKの番組の影響が思いのほか大きく、例のエアカーがらみでのアクセスが放送当日と翌日(5月5~6日)だけで何十件もありましたので(今日だけでも述べ30件くらいのアクセスがありましたし)、そちらの話題を優先させることにしました。

ということで、もう皆さんもご存じかと思いますが、明日の5月10日から開幕するジロ・デ・イタリアにアスタナが出場することになりましたね。

私も5月4日にアスタナからプレスリリースが出たという情報は掴んでいたのですが、公式サイトの更新は3月下旬から滞っており、このときはまだ半信半疑でした。が、5月6日にはガゼッタ・デッロ・スポルト(ジロ・デ・イタリアの主催者RCSスポルトのメディアグループのスポーツ紙)のサイトでスタートリストを確認し、疑いようがなくなりました。

ただ、「ディフェンディング・チャンピオン不在のツール」でもお伝えしたように、アスタナを排除する旨を表明していたRCSスポルトをUCI(国際自転車競技連合)のパット・マッケイド会長が手厳しく批判するなど、政治的な確執が色々あったハズなんですね。なので、何故ここに至って急転直下の出場となったのかはよく解りません。別の政治的な思惑が働いたのか、大金が動いたのか、チームの嘆願が実ったのか、その全てか、はっきりしたことはなかなか表向きには伝わってこないでしょうけど。

いずれにしても現在もっとも充実した人材を抱えるアスタナですから、準備不足はあるにしても優勝に絡んでくるだけの実力は充分にあります。レースを面白くしてくれる存在になるのは間違いないでしょう。

contador_in_giro2008.jpg
空港でインタビューに応じるアルベルト・コンタドール
今年のジロはシチリアの州都パレルモからスタートです。
初日からいきなりチームTTとなるため、
アスタナチームのコンディションはいかばかりか
戦績が如実に物語ることになりそうですね。


アスタナはツール・ド・フランスの主催者であるASOの主催レースであるパリ~ニースから排除された件も以前お伝えしたとおりですが、状況が好転したような情報は伝わってこない以上、今年の彼らにとってジロは最高のステージになるでしょう。ということは、全力で勝ちに来るのも間違いないと思います。ブエルタ・ア・エスパーニャの出場も決まっていますが、間も開きますし、格も違いますし。


もう一つ、これも経過の情報が全くといって良いほど日本まで伝わってこなかったので急転直下という印象が否めないニュースですが、昨年のジロでマリア・チクラミーノ(ポイント賞)を獲得したアレッサンドロ・ペタッキのドーピング疑惑も判定が覆って、1年間の出場停止が決まったようですね。

petacchi_out.jpg
判定が覆され、出場停止処分が決まったペタッキ
これもガゼッタ紙の写真を拝借しましたが、
どのタイミングで撮影されたかは解りません。
ま、こういうニュースの素材として使われる写真は
こういう渋い表情が選ばれるのは万国共通でしょう。


以前「ジロはディフェンディングチャンピオン復帰」でも触れましたが、そもそも、この件は昨年のジロの第11ステージを制したペタッキがその直後の検査で気管支拡張薬のサブタモールが基準値を超えて検出されたということが問題になっていました。このことからCONI(イタリアオリンピック委員会)が1年間の出場停止を求めていましたが、FCI(イタリア自転車競技連盟)は故意のドーピングではないと判断し、お咎めなしということになったハズでした。

その後、ペタッキはブエルタにも出場して第11ステージと第12ステージで連勝したり、パリ~ツールを制するなど活躍を見せていました。が、彼の処分を求めていたCONIはFCIの判定を不服としてCAS(スポーツ仲裁裁判所)へ申し立てを行っていたということですね。

それにしても、CASの決定も何だか変な感じです。CONIの訴えを認めてペタッキを1年間の出場停止としていますが、昨年のジロ以降は疑惑の中にあって競技活動を2ヶ月ほど中止していた期間を考慮し、CASからペタッキに言い渡された実際の出場停止期間は昨年11月から今年8月までの10ヶ月間ということになりました。

実際にはこの期間にもペタッキはレースに出ていて、GPコスタ・デッリ・エトゥルスキ、ルタ・デル・ソル、バレンシア一周でステージ優勝していますが、その戦績は取り消され、昨年のジロのステージ優勝やマリア・チクラミーノも剥奪されます。しかし、何故か昨年10月までの活動期間中に得たブエルタでのステージ優勝やパリ~ツールの優勝は剥奪されないそうなんですね。私には意味がよく解りません。

もしかしたら、「たとえ過失であっても基準を上回る投薬は一切認めない」という意思を示しつつ、ある程度は情状も斟酌したということなのかも知れません。1年間の出場停止といっても、その期間は過去に遡ってスタートさせ、今般の判定からの実質的な出場停止期間は4ヶ月程度ということになっています。昨年のジロの後の活動中止期間も考慮されていますから、CONIの1年という求めを認めつつ、正味の処分期間は緩和された格好にも見えます。

ペタッキは持病の気管支炎が悪化して今年のジロには不参加を決めていましたが、これでツールへの出場も叶わなくなりました。このままいけば、本格的な復帰はブエルタあたりからという昨年と全く同じパターンになるでしょう。これが偶然なのか、彼をツールから排除したいという意志が2年連続で働いたのか、その辺はよく解りません。

ヨーロッパ人ならそれくらいのことはやりかねませんが、根拠もなくそういう色眼鏡で見るのもはしたないことですから、これくらいにしておきます。

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エアカーの実態 (その2)

MDIのエアカーは「圧搾空気で走る」と報道されていました。しかし、MDIの説明によりますと、圧搾空気の圧力だけなく、シリンダ内に取り込んだ空気をピストンで圧縮して生じる熱を利用する仕組みになるようです。一瞬「なるほど」と思ってしまいそうですが、よくよく考えてみますと、これはこれで大いに疑問です。疑問点は沢山ありますが、やはり一番は彼らが言うような原理が本当に成り立つものなのか? ということです。

結論から先に言ってしまいますと、圧搾空気の圧力を除いたエネルギーの動きを見た場合、こうした原理が成り立つのなら、このエンジンは「第一種永久機関」に相当すると思います。

このエンジンが出力として取り出す動力エネルギーは、筒内へ吹き込まれた圧搾空気が膨張するその圧力によります。その空気を膨張させる熱源はピストンによって圧縮された空気の熱です。そのピストンを動かす動力エネルギーは、筒内へ吹き込まれた圧搾空気が膨張する圧力です。その空気を膨張させる熱源は・・・ハナシが堂々巡りになってしまいましたね。

「熱源から熱エネルギーを取り出して動力に変換し、その動力によって生じた熱を熱源に回収する機関」これはまさに永久機関そのものです。第一種永久機関は「熱力学第一法則(エネルギー保存の法則)」に反することから実現不可能であることは理論的に証明されています。

では、MDIの空気エンジンが実際に動き、エアカーを走らせることができるのは何故でしょうか? それは要するに機関の外部から別のエネルギーが投入されているからです。

前回示したエコキュートは、気体(CO2)を圧縮して熱エネルギーを取り出しますが、その気体を圧縮するコンプレッサーを駆動するのは電気モーターです。つまり、電気エネルギーを投入して熱エネルギーを得ているわけですね。

ディーゼルエンジンの場合も、空気を圧縮した際に生じる熱を利用して燃料に着火していますが、その圧縮に必要な動力エネルギーは軽油などのディーゼル燃料を燃焼して得られる熱エネルギーが源になっています。

MDIの空気エンジンに外部から投入されるエネルギーは何でしょう? 考えられるのは圧搾空気の圧力のみですね。MDIの空気エンジンが動き、実際に自動車を走らせているそのエネルギーの源は、要するに圧搾空気の圧力ということになるでしょう。私が考えるMDIの空気エンジンの実態は以下の通りだと思います。

ただのレシプロ式エアモーターを複雑なカラクリで違うもののように見せかけているだけ

確証こそありませんが、間違っていたのは「圧搾空気で走る」とした報道ではなく、MDIの理論のほうではないかと私は思います。もし、実質的に圧搾空気の圧力だけで走っているのであれば、これはチョロQやゴム動力の模型飛行機と大差ありません。乗用車として如何に効率が悪く非現実的かは「圧搾空気で走るクルマ」でも述べたとおりです。

MDIは当初から最高速度100km/h前後、航続距離200kmくらいと吹聴してきました(その時々や車種によって多少数値が違っているようで、誤報かも知れませんが、航続距離800kmという情報もありました)。しかし、5年前に初公開された試作車は僅か7km少々しか走らなかったそうですし、このデータも彼らの口から伝えられたもので第三者による実測データではないようです。

そのときから効率を上げるよう改良すれば理論的に航続距離200kmくらいはいけると豪語していたようです。要するに、それくらい言っておかないと実用性がないとみなされ、出資を募ることは望めないのでしょう。

また、同社は試作車を初公開した5年前から、具体的な走行データは殆ど示さないまま、どこまでアテになるのか解らない理論値ばかりを前面に並べ立てて「来年には市販できる」と言い続けてきました。しかし、5年を経過した今に至っても「来年には市販できる」と同じセリフを繰り返しています。要するに、来年くらいと言っておいたほうが、出資を募りやすいのでしょう。

空気エンジンの発明者であるギー・ネグレなる人物は1991年にMDIを創業しました。恐らく、この会社は空気エンジンのアイデアを売りに投資家から出資を募り、その資本を試作機の開発や人件費などの支出で食いつぶしてきたというのが実態でしょう。少なくともこの17年間は売り物になる商品がないまま、つまり利益を上げることなく過ぎてきたようです。

guy_negre.jpg
空気エンジンとそれを発明したギー・ネグレ
この決めポーズからして如何にも胡散臭い雰囲気です。
(あくまでも個人的な感想です。)


現状では恐らく何の収益源も持っていないであろうMDIが会社として存続していられるのは、件の空気エンジンに対する「夢」に出資者がいるからで、インドのタタ・モーターズもそれに賭けたということでしょう。日米欧の主要自動車メーカーは見向きもしないベンチャー企業にタタは出資したわけですが、「成金の世間知らずが怪しげなビジネスに出資して騙された」というパターンになってしまうのか否か、暖かく見守っていきたいと思います。(タタには日本の銀行も出資していることですしね。)

それにしても、ドクター中松の「中松エンジン」もそうですが、この種の発明が次から次に出てくるのは何故なんでしょう? 永久機関が可能だと思っている人が後を絶たないからなのか、作動原理を理論的に精査すると永久機関になっているということに気付かない人が沢山いるからなのか、何なのかよく解りませんね。

(おしまい)



2008年5月11日追記

圧搾空気のエネルギーがどんなものか書いてみましたので、こちらも是非ご一読下さい。→「圧搾空気なんてこんなもの

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エアカーの実態 (その1)

一昨日のこどもの日にNHKで『ダヴィンチの夢~浜田未来科学研究所~』という子供も向けの科学番組を放送していました(過去にも何度か不定期で放送されている番組だそうです)。私もたまたまこの日の放送を見ていたのですが、当blogでも「圧搾空気で走るクルマ」と題したエントリで以前にご紹介したフランスのMDIエンタープライゼズ(以下MDI)を取り上げていました。

それにしても、こういうメディアのパブリシティ効果というのは凄いものですね。当blogのアクセス解析でログを確認してみましたところ、この番組の放送後から件のエントリへのアクセスが数十件あったようです。

それはともかく、この番組はわざわざフランスまで取材に行くという気合いの入りようで、お笑いコンビのペナルティに試作車を運転させていました。で、このとき、私は「アレ?」と思ったんですね。試作車に乗り込んだところで普通にエンジンをかけていたからです。私は「圧搾空気で走る」と聞いていましたから、これは全くの想定外でした。

普通、圧搾空気で走るといったら、圧搾空気の圧力で駆動するエアモーターなどを考えるでしょう。先のエントリもそうした仕組みを想定して書きました。しかし、停車中もエンジンを動かしていたんですね。こうした状態はどう考えても普通のエアモーターではあり得ないでしょう。

私も圧搾空気で駆動するエアツールをいくつか利用していますが、いずれも動力が必要なときにバルブを開いてエアモーターに圧搾空気を送るという仕組みになっています。止まっているときも機関を動かし続けるというのは非効率以外の何ものでもありません。ということは、「圧搾空気の圧力をそのまま利用するのではない、何か全く違う仕組みになっているのかも知れない」と思ったわけですね。

そこで、改めて調べ直してみましたら、何となく原理が解ってきました。詳しく具体的な内容が書かれているサイトには行き当たらなかったため、断片的な情報を拾い集めてつなぎ合わせた上で、私なりに整理してみました。なので、もしかしたら誤解も含まれているかも知れませんが、このエンジンの主たる原理は圧搾空気の圧力を利用するのではなく、空気を圧縮した際に生じる熱を利用しているようです。

例えば、最近よく耳にする「ヒートポンプ」も似たような原理を利用しています。有名なところでは電力会社などが推進している「エコキュート」がそうですね。これは電気モーターでコンプレッサーを駆動し、熱媒体であるCO2を圧縮します。気体が圧縮されると「ボイル=シャルルの法則」で温度が上がりますから、その熱を利用してお湯を沸かし、給湯するわけですね。

熱を奪われた圧縮CO2を大気圧まで減圧すると大気より温度が低くなりますから、それを大気にさらしてやれば大気温度くらいまで暖められます。それをまた圧縮して熱を取り出すという繰り返しになるわけですね。これは熱の移動する方向が逆になりますが、クーラーや冷蔵庫の原理と同じです。クーラーや冷蔵庫は圧縮して熱を持った冷媒を大気で冷やしてから減圧し、冷たくなったところを利用するわけです。

実は、ディーゼルエンジンも燃料の着火に同じ原理を応用しています。ご存じのように燃料混合ガスを吸気して放電で着火させるガソリンエンジンと違って、ディーゼルエンジンが筒内に吸気するのは空気だけです。この空気をピストンで圧縮し、温度を上げます。この高温状態の筒内に燃料を噴射して着火させ、膨張する燃焼ガスの圧力をピストンで受けて動力に変換しているわけですね。

moteur_type-41.jpg
MDIの空気エンジン type 41

MDIの空気エンジンもディーゼルエンジンと同様に筒内へ空気を取り込み、これをピストンで圧縮して高温になった筒内へ適切な量の圧搾空気吹き込みます。後から吹き込まれたその空気は高温状態の筒内で暖められて膨張し、圧縮行程より強い力でピストンを押し下げます。これを動力として取り出す仕組みになっているというのでしょう。

mdi_air-engine.gif
MDIの空気エンジンの概要図
水平対向ピストンであるのは解りますが、
シリンダの長さに対してクランク径が
2倍くらいありますから、この図のままでは
エンジンとして成立しません。
要するに、単なる概要図ということでしょう。


確かにこうした原理を聞くと一瞬「なるほど」と思いそうになります。が、よくよく考えてみますと、やはり様々な疑問が山積しています。

(つづく)

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チューブラータイヤの高圧エアを正確に測る方法 (その2)

スイベルジョイントのところでごく僅かながらエア漏れするようになって退役させたレンチフォースのサスペンションポンプを捨てずにとっておいた私はかなりみみっちい性格なのでしょう。本とか服なども10年くらい放置してあってもなかなか捨てられません。ま、以前にも高校時代に買ったサイコンをご紹介していますから、既にお気付きかとは思いますが。

さて、使わなくなったパーツ類やツールなどを葬ってある例の段ボール箱から件のサスペンションポンプを探り当てた私は、早速それを分解してみました。すると、思いっきり3/8インチの雄のテーパーネジだったんですね。つまり、パナレーサーのそれと全く同じ規格のネジだった訳です。何ということはありません。フィッティングもクソも、そのまま外して、そのままねじ込むだけピッタリ合います。

ということで、パナレーサーのゲージのネジ山に盛られている樹脂のシーラーをクラフトナイフである程度こそげ落としてやって、養生しながら大きめのモンキーレンチ二本でゲージ部分と口金部分を各々挟み、反時計回りに回して取り外しました。レンチフォースのサスポンプから外したゲージの雄ネジにシールテープを巻いて、パナレーサーのそれにネジ込めば一丁上がりです。

original_tire-gauge.jpg
自作の高圧対応タイヤゲージ
自作というのはかなり大袈裟なハナシで、
本当はレンチフォースのサスペンションポンプの空気圧計を外して
パナレーサーのタイヤゲージの空気圧計と入れ替えただけです。


いえ、本当は少しだけ手間取りました。テーパーネジですから、初めから上手く合うようにチューニングされていれば別ですが、普通にやると狙った位置に固定できるとは限りません。この場合も普通にねじ込んだだけでは文字盤の向きと口金の向きがあさっての方を向いて固定される状態でした。

それでは非常に使いづらいですし、見た目も不細工ですので、パナレーサーのそれと同じ位置関係になるよう、シールテープを巻く回数を変え、その厚さで調整しました。かなりてんこ盛りにしてようやく位置合わせできましたが、ご覧のように14barでキッチリホールドできていますので、エア漏れはありません。

ゲージの天地はパナレーサーと逆になりましたが、特に見づらいということもなく、使い勝手に関しては当然のことながらパナレーサーのそれと全く同じです。精度も12barまで段階的にチェックしてみましたが、パナレーサーのデジタルゲージと見比べて大差ありませんでしたから、実用上問題になるような誤差はないと考えて良いかと思います。

こんなに上手くいくとは思いませんでしたが、こういうアイデアを思いついて、実際にやってみて思惑通りにいくと、本当に気持ち良いものです。でも、こうしたツールの有難味が解る人もそんなに多くないのでしょうね。そもそも、チューブラータイヤのユーザー自体が多くありませんから、こうした不便を感じている人の絶対数が少ないでしょう。もし、こうした不便を感じている人がたくさんいれば、複数のメーカーから高圧に対応するタイヤゲージがいくつも発売されているでしょうし。

ま、世の中は広いですから、単に私が知らなかっただけで、既に同じようなことをやっていたり、別の方法で対応している人は他にもいるかも知れませんけどね。

(おしまい)

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チューブラータイヤの高圧エアを正確に測る方法 (その1)

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Panaracer BTG-F

スポーツサイクルに乗っていてこのエアゲージを見たことがない人は殆どいないと思えるほど大定番のパナレーサーBTGですから、もはや説明など不要ですね。私もいつから使い始めたか思い出せないほど大昔から愛用しています。パッキンのヘタリでエア漏れするようになるなど経年劣化で何代か買い換えを重ねてはいますが。

実は一度だけ同社のデジタル式(BTG-PDDL1)に浮気したこともあるのですが、結局シンプルで使いやすいコレに戻ってきました。私にとってはもっとも手に馴染んで使いやすい最高のタイヤゲージだと思います。

が、一つだけ大きな欠点があります。11kgf/cm2までしか測れないんですね。ちなみに、デジタル式のほうは12.4kgf/cm2までです。クリンチャータイヤならこれで充分に対応できるでしょうが、チューブラーではいま私が使っているもので最高が14barだったりします。なので、もっと高圧に対応できるものが欲しいと常々思いつつも、なかなかそういうゲージがないんですね。

私の知る範囲では唯一300psi(約21kgf/cm2)まで測れるトピークのシャトルゲージですが、かなり評判が悪いんですね。パナレーサーのそれはエアリリースのボタンを押せば普通にエアが抜けていくので、空気圧の調整も簡単ですが、トピークのコレはどうもバルブの構造が不適切らしく、押し足りなくても押し過ぎてもダメで、かなり微妙な押し加減を要求するナーバスなものなんだそうです。

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TOPEAK SHUTTLE GAUGE

また、MTBのエアサスのエアも測れるようになっているため、デフォルトがシュレーダー(米式)バルブになっていて、プレスタ(仏式)にはアダプタを使わなければならないそうです。しかも、それがパナレーサーのようなシリコンパッキンではなく、ネジ込み式になっているそうで、エア圧を測り終えて外すときに手早くネジを緩めないとエアが盛大に抜けていくそうなんですね。さらに、そのアダプタは何故かアルミ製で耐久性も難がありそうです。

で、結局のところ私は単体ゲージが及ばない領域ではフロアポンプのゲージを頼りに、あとはカンで調整していました。が、私は自転車いじり用にトルクレンチを3本揃えたり、スポークテンションメーターもメーカー違いで2つ持っていたりするくらいですから、基本的に自分のカンなどあまり信用していません。なので、こうした状況が実に歯痒かったんですね。

ある日、サスペンションポンプを手持ちぶさたに弄んでいたときにふと思いました。このゲージが使えないだろうか? と。そもそも、タイヤ用にしてもエアサス用にしても、この種の空気圧計は汎用品のOEMで文字盤のデザインを替えただけというケースが殆どでしょう。また、一般的なものはコネクタ類の規格がインチで1/4とか3/8とか1/2などに纏まっています。

サスペンションポンプに付いている20kgf/cm2くらいまであるゲージもタイヤゲージのそれも恐らくこうした規格に準じているだろうし、サイズが違ってもアダプタなどでフィッティングできるのではなかろうか? もしフィッティングが可能なら、高圧までちゃんと測れるタイヤゲージが作れるのではないか? と考えたわけです。

思うが早いか、Oリングがヘタってスイベルジョイントのところで若干のエア漏れがあって使わなくなっていたレンチフォースのサスペンションポンプを葬ってある段ボール箱(私が「自転車パーツの墓場」と呼んでいる例の箱)をひっくり返し、それを探し当てました。

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WRENCHFORCE FORK POMP
これまた定番のサスペンションポンプですが、
ホースの根本のスイベルジョイントのところから
ごく僅かながらエア漏れしているため、
正確なエア圧が測れないだろうと判断し、
退役させていました。
が、私のセコイ性分では捨てられず、
今回はそれが功を奏した感じです。


(つづく)

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他にもあった

昨日、有効長を可変できるクランクについて書きましたが、あの後も色々調べてみましたところ、ストロングライトのそれと同じような方式のものが他にもあったんですねぇ。

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KUOTA KU-CK01

クォータのインポーターであるインターマックスのサイトにはハンドルやステム、シートピラー、ボトルケージくらいでクランクはないようですが、本家のサイトにはありました。詳しいスペックとか機構の説明などはないようですが。

このクォータのクランクは数年前に刊行された本でも紹介されていましたので、だいぶ前からあったようです。もしかしたら、こうした方式は昔からあったのかも知れませんね。その辺はあまり詳しい情報に行き当たらなかったのでよく解りませんが。いずれにしても、私がサイクルモードのレポートで「アジャスタブルクランクなどというものは聞いたことがありません」などとほざいてしまったのも無知ゆえですね。

でも、ちょっとだけ言い訳をさせて頂くと、あのときシロモトの親爺さんは世界初だと豪語していましたし、シロモトのサイトにも「クランク長を変えてトレーニングができる世界初!画期的なシステムとなりました!」と書いてあります。もしかしたら、シロモトのそれは「定置トレーナーとして世界初」とか、「世界初のスライド式」とか、そういう意味だったんでしょうか? ま、シロモトのサイトにはそのような断り書きもありませんが。

クランク長も非常に奥が深いテーマですから、ついでに語るようなものではないかも知れませんが、一般的には身長の1/10くらいが適切とされています。この他にも床から大腿骨上端までの脚長を基準にする考え方や、大腿骨の長さを基準にする考え方など、色々ありますが。

身長基準でいきますと、私の場合は169.5cmですから、適切なクランク長は170mmということになります。一方、脚長基準でいきますと、いつもお世話になっている「自転車探検!」さんのクランク長計算器で算出したところ最適クランク長が169mmと出ましたので、やはり170mmが良いようです。が、こういう数値はあくまでも目安ですから、色々試したいところです。

前回も軽く触れましたとおり、私にとって標準と見られる170mmよりワンサイズ長い172.5mmは既に経験済みです。が、世間で言われているように登坂が楽になるということもありませんでした。

確かに同じ斜度で同じギヤ比ならクランクが長くなった分だけ軽くはなります。が、その分だけペダルが描く軌跡も長くなり、同じスピードでクランクを回していればケイデンスが落ちます。また、もっとも力がかけられる3時の位置は長くなった分だけ前方に遠くなりますから、使う筋肉も微妙に変わります。

ベストケイデンスは人によって異なるでしょうし、筋肉の使い方も個人差があるでしょう。ペダルの重さは選択するギヤ比でどうとでもなりますから、クランク長を伸ばせば登坂が楽になるというのは様々な要素を無視した机上論に過ぎないでしょう。ま、私がクランクをワンサイズ長いものに変えてみたのもそういう風説に乗せられたからですが、そんなに単純なハナシではないということを確認できただけでも良い勉強になったと思います。

こういうテストを色々やってみたいと思っても、クランクは比較的高価なパーツですし、安価なグレードでは刻みが2.5mm単位になっていなかったりします(特に170mm未満の小さいサイズは)。シマノの場合、167.5mmをラインナップしているのはトップグレードのデュラエースとXTRのみですし。ま、スギノあたりにもう少し安くてサイズの豊富なものもありますが、それでも私のような富裕層でない人間が気軽に何本も買って試せるようなパーツではありませんね。

決戦用はともかく、トレーニング用として色々試してみたい私としては、ストロングライトの方式でアジャスト幅5mm、2.5mm単位で3パターンでも良いので、手ごろな価格と適切なサイズで発売されたら即買いなんですけどね。私の場合は170mmを中心に±2.5mm、105かアルテグラ相当のグレードで丁度良い感じなんですけど。何処か出してくれないですかね?

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前言撤回

昨年末、サイクルモードのレポートで定置トレーナーのシロモトのバイクトレーニングマシンについて書きました。

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SHIROMOTO SUPER BIKE TRAINING MACHINE

このとき、「可変式ステムは色々商品化されていますが、アジャスタブルクランクなどというものは聞いたことがありません。といいますか、実車では危なくてどこもやりたがらないでしょう。」などと生意気なことをほざいてしまいました。

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シロモトのスライドクランク

が、シロモトの定置トレーナー用以外にもクランク長を可変できるクランクが実在することを最近になって知りました。フランスのストロングライトですから、かなりメジャーなブランドから発売されていたにも拘わらず、何故か気付きませんでした。

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STRONGLIGHT FISSION

ストロングライトのその機構は「ALS(Adjust Length System)」というそうで、シロモトとは構造が大きく異なります。ま、アジャスト幅もシロモトは150~185mmと35mmもあり、2.5mm刻みで15パターンあるのに対し、ストロングライトのALSは170~175mmの5mmで、やはり2.5mm刻みですから、3パターンしかありません。しかし、アジャスト方法はなかなか賢いやり方です。

ストロングライトのALSはクランクのペダル取付け部位に長円形の穴が開いており、そこにペダルを取付ける雌ネジが切られたインサート部品を装着します。そのインサート部品は、長円形の穴のセンターにネジ穴が設けられたものと、センターから2.5mmオフセットしたものの2つが付属しています。センターに来るものを装着するとクランク長は172.5mmとなり、オフセットしたものを上下入れ替えて170mmと175mmに対応します。と言葉で説明しても解りにくいでしょうから、下図をご参照下さい。

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で、賢いのはインサート部品の固定方法で、この部品はコンビーフの缶みたいに横から見ると台形になっているんですね。クランク裏側からインサートし、ペダルの取付け面側にステンレスのプレートを挟んでペダルを取付けるわけですが、そのペダルのネジ込みで固定されるかたちになります。もし、このインサート部品が外れるとしたら、それはペダルの取付けが緩んだときということになりますし、この構造なら若干の緩みでは大事に至ることもないでしょう。安全性という面でも非常に優れた方式だと思います。

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また、こうした方式なら、重量への影響もあまり大きくないでしょう。フィション・アクティブリンクの場合はBB込みで公称795gですから、カーボンクランクとしてはさほど軽くありませんが、充分に実戦でも通用するレベルかと思います。加えて、シロモトの方式は剛性面などで不利に見えますが、ストロングライトのALSはその点でもあまり問題にならないでしょう。

惜しいのは、アジャスト幅が僅か5mmしかないことと、170~175mm以外のラインナップがまだないことですね。私の場合、基本は170mmになります。172.5mmも試したことはありますが、これ以上は却って身体に合わなくなりそうな感じでしたから、むしろ下の167.5mmが欲しいところです。そうしたきめ細かいラインナップが展開されていくのか解りませんが、私にとってちょっと気になるアイテムが一つ増えました。

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やっぱりエセエコ

今日、たまたま八王子方面に所用があったので、帰りに首都高の代々木パーキングエリアに寄ってみました。駐車スペースはほぼ倍増となって41台駐車できるようになったそうですが、かなり混み合っていて、おおよそ9割は埋まっていたと思います。

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建物の外観はご覧のとおりで、丸ごとドトールコーヒーのフランチャイズ店みたいな雰囲気すら漂っています。が、実際は商品を受け渡すカウンターしかなく、席はレストランと共用になっています。そうした施設の殆ど全てが2階にあり、1階には建物の外に飲み物の自販機が何台か並んでいるだけでした。

で、例の風力と太陽光の「ハイブリッド発電設備」で携帯電話のバッテリーを充電する充電器は建物入口のすぐ脇にありました。

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しかし、これにすぐ気付く人は殆どいないでしょう。というのも、この向かいに渋滞情報などのインフォメーションモニタがドドーンと2台並んでおり、まずそちらに視線を奪われてしまいますから。

建物の外からは丁度ドトールコーヒーの看板の影あたりになりますので、この充電器があると知っていた(というより、この充電器を見に来たといったほうが良いかも知れません)私も最初は気づかずに素通りし、2階を見回ってもなかったので降りてきたら発見したという状況でした。大概の人はこの存在に気付かないか、気付いたとしても帰り際でしょう。

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4台の携帯電話を同時に充電でき、暗証番号でキーロックされるロッカーのようになっています。ゴルフ場などにある貴重品ボックスみたいな感じでしょうか。各々のボックスのところに青いランプが点灯していますが、要するに誰も使っていないということです。当然のように誰も見向きもしていませんでしたし。

この充電器やこれに電力を供給する「ハイブリッド発電設備」の資源調達、製作、設置、保守管理、役目を終えて廃棄されるまでを含めたライフサイクル全般に投入されるエネルギーがこれを利用することによって回収されるエネルギーを下回るなどということは、どう考えてもあり得ないと思います。以前「のび太のちり紙」と題したエントリでも書きましたが、節約だと思ってやったことが実は浪費だったという本末転倒の愚行としか思えません。

この充電器の発電設備はパーキングエリアの入口を入ったすぐの路肩にあるようです。そこでつくられた電気の殆どは、この虚しく青く光る「空き」を示すLEDを灯すために消費され続けるのでしょう。合掌。

そもそも、このパーキングエリアでエコロジーを謳うのなら、建物の構造自体が間違っています。冒頭の写真でも雰囲気は伝わると思いますが、この建物は結構な高さの2階建てになっているんですね。そして、エントランスには立派なエレベータが2台並んで待ち構えています。

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この写真のすぐ右が建物の出入り口で、この写真を撮った場所はインフォメーションモニタと携帯電話の充電器に挟まれる空間ですから、普通の人は大概モニタを左手に見ながら、真っ直ぐこのエレベータに乗り込んでいくんですね。階段もあるのですが、モニタの裏側にあって、見上げても踊り場しか見えず、2階までは遠そうだと思わせるようなレイアウトになっています。ですから、みんなこのエレベータに乗っていくんですね。2台もあるので殆ど待たずに乗れますし。

しかも、パーキングエリアでもっとも利用頻度が高い施設だと思われるトイレも2階にあります。ですから、用を足したいと思った人もみんなこのエレベータに乗って2階へ上がって行くわけです。私がいた間、延べ数十人の利用客が出入りしていましたが、階段を使ったのは私以外に一人もいませんでした。といいますか、このとき雨が降っていましたので、2階も人が通ったところは痕跡が残っていたのですが、階段に関しては私が昇降した痕跡しかありませんでした。

トイレに行くだけという人も含め、殆どの利用客がエレベータを利用する首都高代々木パーキングエリア。たぶん、日本でもっともアンチ・エコロジーなパーキングエリアじゃないかと思います。

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ここでもエセエコ

先週の土曜日に首都高の代々木パーキングエリアがリニューアルオープンしたそうです。

代々木PAリニューアルオープンのご案内

平成20年4月26日(土)午前10時に、高速4号新宿線(上り)代々木パーキングエリアをリニューアルオープンしました。
 パーキングエリアを施設を立体化することにより駐車台数を増やし、環境やユニバーサルデザインに配慮した施設を整備しました。
 また、気軽にちょっと立寄れるレストラン「よよぎの森」と「ドトールコーヒーショップ」をオープンしました。
皆様のお越しを心よりお待ちしております。

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ま、あそこは狭くてボロくてトイレも汚いパーキングエリアだったのでリニューアルさせるのは結構なことだと思います。が、やはりありがちな環境指向のアピールが鼻につきますね。もはやエコロジーを謳わないと社会に認めてもらえないという強迫観念みたいなものをみんなが背負い込んでいるような気がします。

でも、実際の内容を見てみますと、またしてもイメージ先行、実態の調査など一切なし、といった感じですね。リニューアルオープンに先立って首都高から出されたプレスリリースの一部を抜粋してみましょうか。

環境に配慮したエコPA

 代々木PAは、環境に配慮したエコPAを志向しています。
 太陽光発電の「ソーラーパネル」は、建物の電灯等電力を補い、風力、太陽光を利用する「ハイブリッド発電設備」は、無料の携帯電話充電サービスへ電力供給しています。
 駐車場に遮熱舗装を採用し、高速道路本線とPAを仕切る壁と屋上を緑化、建物の窓には低放射複層ガラスを使用しました。
 施設壁面への植栽ボックスの設置や高木植樹など、環境を配慮するとともに、明治神宮の森に隣接した緑の環境にマッチした空間づくりを目指しました。


そもそも、私は太陽光発電も掛け値なしで環境負荷低減につながっているのか疑問を感じています。最大の理由は昼間しか電力の供給ができないからです。もちろん、雨天や曇天でも発電効率は低下します。風力発電もそうですが、こうした不安定電源には必ずバックアップが必要になりますから、場合によっては設備の二重投資となり、本当に環境負荷を低減させているのか厳密なLCAを行わなければ結論は出せないでしょう。

ま、それは良いとしても、たかが携帯電話の充電ごときに風力と太陽光の「ハイブリッド発電設備」を設置するのは資源の浪費になっている疑いを強く感じます。レストランやドトールコーヒーもあるそうですから長居をする人もいるでしょうが、パーキングエリアで携帯電話の無料充電サービスを利用する人がどれだけいるのでしょうか?

この設備を導入するためのエネルギー投入量と、この設備のお陰で低減できるエネルギー消費量と、そのエネルギー収支が黒字になる見込みは本当にあるのか、きちんとアセスメントをやったというのなら是非ともそのデータを見せて頂きたいものです。

また、このパーキングエリアのレストランから出る廃食用油は、「軽油代替燃料に変換して首都高の維持車両などの燃料として使用する」ということになっているそうです。が、本当に環境保全を指向するのであれば、ゼロエミッションを目指すべきです。揚げ油は最小限で済むように工夫し、そうして何度か使用した油は炒め物に再利用して使い切るなど、廃油を出さないようにするというのがもっとも望まれる姿です。

廃食用油をそのままディーゼル燃料として使用すると、様々な問題につながる恐れがあります。燃料ポンプに不純物などが付着してトラブルの原因になったり、性状がエンジンの特性に合わず、排出ガスに含まれる汚染物質が増えるなどの懸念があるんですね。

このため、廃食用油をリサイクルしてディーゼル燃料とする場合、グリセリンを取り除くなどの化学処理を施し、FAME(脂肪酸メチルエステル)に変換して利用するのが一般的です。首都高の場合も「軽油代替燃料に変換して」と謳っていますから、同様の処理が施されるのは間違いないでしょう。

もちろん、こうした化学処理にはエネルギー投入が不可欠です。メタノールや触媒も必要になります。廃食用油由来のバイオディーゼル燃料はカーボンニュートラルだといわれることも多々ありますが、これも全くの幻想に他なりません。

また、下手にリサイクルなどすると食用油の無駄な消費を促す恐れがあります。現在は食用油の価格が高騰している分だけ浪費を抑えようという傾向はあるかも知れませんが、リサイクルは大量消費の免罪符になってしまう側面も併せ持っています。リサイクルをすれば「環境に良い」と思い込み、大量消費に罪悪感を感じさせなくなることが往々にしてあります。

本心から環境保護を考えるなら、「リサイクル(再資源化)」より「リユース(再使用)」、「リユース」より「リデュース(消費削減)」を優先させるべきです。上述のように、食用油は食用油として利用し切ってしまい、消費量の削減を優先させるのが理想的な状態であるということを知るべきです。


・・・などと偉そうなことをほざきましたが、実は首都高も私の勤める会社のクライアントでして、私たちの飯のタネだったりするのでした。

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まとめ

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