昨日の個人TTに関しては、近年トラックでTTの強化に力を入れてきたカデル・エヴァンス(サイレンス・ロット)が思ったほどふるわず、ステージ優勝をさらったシュテファン・シューマッハ(ゲロルシュタイナー)から遅れること2分5秒の7位に沈んだのが大きかったと思います。
サストレはこのところエヴァンスに2~3分の遅れをとるのが常でしたから、1分34秒のマージンでは逃げ切れないと思っていました。しかし、昨日は29秒しか差を縮めさせず、ステージ12位に踏みとどまったのも予想以上の出来でした。
第19ステージまで総合4位につけていたエヴァンスに対して1秒勝り、総合3位だったベルンハルト・コール(ゲロルシュタイナー)が昨日のTTの序盤、エヴァンスのタイムを上回っていたのはビックリしました。最終的にはエヴァンスに逆転を許しましたが、山岳賞の獲得と3位入賞を決定的にしたのは実に立派です。
そもそも、近年はツールで山岳賞選手のポディウムフィニッシュというのがありませんでした。10年以上遡れば、リシャール・ヴィランク、トニー・ロミンゲル、クラウディオ・キアプッチ、ベルナール・イノーなどが記録しています。ま、イノーなどは言わずもがなですが、ヴィランクにしてもロミンゲルにしてもキアプッチにしても、歴史に名を残す偉大なレーサーでしたから、これは凄いタレントが現れたのかも知れません。
ところで、フランス人最後のツール覇者は1985年のベルナール・イノーになります。この年、落車による鼻骨骨折などで苦境に立たされたイノーより、同じラ・ヴィ・クレールのグレッグ・レモンのほうが上位につけていました。が、チームオーナーのベルナール・タピはレモンに対して約3000万円の特別ボーナスと引き替えにチームオーダーでイノーに勝たせたと伝えられています。この年までイノーとローラン・フィニョンでフランス人5連覇という黄金時代でしたが、それ以降、フランス人は1度も総合優勝していないんですね。
その後、もっとも強かったのはアメリカで、レモンとアームストロングで10勝しています(レモンはチームオーダーで損をしましたし、初優勝のシーズンオフには猟銃の誤射事故に遭って全盛期の2年を棒に振っていますので、これらがなければもっと勝っていたかも知れません)。その次に多く勝っているのがスペインで、ペドロ・デルガド、インドゥライン、オスカル・ペレイロ、アルベルト・コンタドール、そしてサストレの5人で9勝になります。
それにしても、アームストロング引退後の混沌とした時代にスペイン人の3連覇というのは、それだけスペインの選手層の厚さを物語るものだと思います。(一方、イタリア人はジロで最近20年に13勝しているにも関わらず、ツールでは最近40年でマルコ・パンターニの1勝のみというのは、猛烈なジロ志向の強さを物語っていると思います。 )
今年の結果につながる一番の鍵となったのは、やはりラルプデュエズでの攻防で、CSCのチーム力の勝利だったと評すべきでしょう。1人の絶対的なエースを強力なアシスト陣で勝たせるというアームストロングらの必勝パターンより、今年のCSCのチーム戦略はずっと見応えがありました。個人的には大いに賞賛したいと思います。
あとは一昨年のようなレース後の大どんでん返しがないことを祈るばかりです。
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