酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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ドライブレコーダー (その1)

前職に比べればかなり減りましたが、仕事でクルマを運転する機会が多い私は何度か事故に遭っています。もっとも間抜けなパターンだったのは、信号待ちで停車中に前のクルマが突然バックし、自らカマを掘られに来た事故でしょうか。突然バックランプが点灯したのでまさかと思いながらもクラクションを鳴らしましたが、そのまま突っ込んできたんですね。

曰く、「信号で止まった後、この交差点で左折しなければならないことに気づいて左車線に行こうと思った」ということですが、後方確認を怠り、ボリューム全開でガンガンに音楽を流していてクラクションは聞こえなかったそうです。まだ20歳くらいで免許とりたてのチャラけた男でしたが。

ま、でも、このケースでは向こうの保険でカバーできたので良かったのですが、当て逃げする不埒な輩もいます。私の場合、いずれも確認をせずに車線変更してきたクルマで、私のほうも減速するなり進路を変えるなりして避けようとしましたから軽い接触で済みましたが、それで2回ほど逃げられてしまいました。そのうち一人はこちらを向いたとき口の動きからして間違いなく「あ、やべぇ」と言ってました。

破損状況が一番酷く、修理費用がかかったのは出会い頭の事故でした。片側1車線の直線でしたが、反対車線は渋滞で停止しているクルマでブラインドになっていました。その隙間から突然、軽自動車が飛び出してきたんですね。交差点でも何でもない場所でしたが、やはり相手方が安全確認を怠っていたのが原因でした。

事故状況

現場は相手方が勤めている会社の目の前で、その駐車場から公道に出た直後の事故でした。私(上図の赤で示したクルマ)は100m足らず手前の交差点で左折し、まだ加速中でしたから、さほどスピードは出ていませんでした。が、せいぜい5mくらいしか余裕のないところで死角から軽自動車(上図の黒で示したクルマ)に飛び出して来られましたから、キミ・ライコネンセバスチャン・ローブでも避けることは不可能だったでしょう。

彼女が飛び出す直前、渋滞中の車線にいたクルマ(彼女から見て右手に停まっていた、上図の黄色で示したクルマだと思います)がクラクションを鳴らしていました。要するに、このタイミングで出て行ったら危険だということを彼女に知らせていたわけですが、彼女はそれを「早く行け」という意味に勘違いしたそうです。

普通、ブラインドになっていたら鼻先を少しずつ出していくようにしてソロソロと進入するものですが、彼女はクラクションを鳴らされて急かされているものと勘違いし、いきなりドーンと飛び出してきました。それほど幅員のない道でしたから左右に逃げ場もありません。私に出来ることといえば、ブレーキペダルがへし折れそうになるくらい思いっきり踏み込むだけで、後は運を天に任せるしかなかったというわけです。

結局、保険会社同士の話し合いで過失割合は9対1ということになったようです。業界的には止まっているところへ突っ込まない限り10対0になることは殆どないのかも知れませんが、あのタイミングで飛び出して来られたらどんな人でも避けられない状況だったと断言できます。私としてみれば納得のいくハナシではありません。ま、会社のクルマなので私個人の金銭的な被害は一切なく、私も相手方もケガはなく、単なる物損事故で処理されたのは不幸中の幸いでしたが。

実は、私の妹も似たような状況の事故に遭っているのですが、相手がクルマではなく、自転車に乗ったタチの悪い男子高校生だったので、もっと面倒なことになったそうです。また、そのとき担当した警察官が非常に横柄な人だったらしく、かなり悔しい思いをして、それ以来クルマの運転が出来なくなってしまったといいます。

こうした経験や伝聞を通じて、事故状況を客観的に確認できるドライブレコーダーはいざというときに大いに役立ってくれるだろうと感じていました。そこで今回の買い替えで導入しようと思ったわけですね(以前に乗っていたクルマにはあまり余計な物を付けたくなかったので二の足を踏んでいたのですが)。

自動車のフロントガラスに余計なものを取り付けると車検に通らなくなりますが、ドライブレコーダーはその目的からして車検対応となっています。が、原則としてルームミラーの影に隠れるよう設置しなければならず、運転席に座った状態で見えてはいけないものです。なので、デザイン云々はあまり関係ないのですが、フロントガラス越しに外からは見えるものですし、やはりスマートであるに越したことはありません。

ドライブレコーダーは大きく分けてカメラ一体式と、カメラが別体となっているセパレート式になります。セパレート式のほうが取り付けに手間はかかりますが、フロントガラス部に取り付けるのはカメラだけになりますから、こちらのほうがやはりスマートといえるでしょう。

ということで、私は富士通テンのイクリプスDREC2000というモデルをチョイスしました。

DREC2000.jpg
ECLIPSE DREC2000

(つづく)
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環境問題はいつも霧の中

今年の2月、ヴァージン・アトランティック航空がボーイング747-400をバイオ混成燃料で飛ばしたというニュースが流れました。今年の3月にはアメリカ空軍ダイエス基地所属のB1-B爆撃機も同様に超音速飛行実験に成功したそうです。航空関連でもこの手のトピックが珍しくなくなってきましたね。

バイオ混成燃料で超音速飛行に成功したB1-B
今年3月、混合比率50:50のバイオ混成燃料を用い
ニューメキシコ州にあるホワイトサンズ・ミサイル実験場上空で
このB1-B爆撃機は超音速飛行に成功したそうです。


しかしながら、以前にも取り上げたとおり、バイオ燃料に対する悪影響も多く語られていますし、却って逆効果だとするレポートもよく見かけます。

例えば、イギリス保守系シンクタンクのポリシー・エクスチェンジが一昨日、『The Root of the Matter (問題の本質)』という政策提言白書を発表しました。イギリス政府は年間1100億円におよぶ研究費をバイオ燃料開発のために投じていますが、彼らはそれを中止するよう求めています。

問題の本質
The Root of the Matter

ま、具体的な内容はこれまでにも散々指摘されてきたことの繰り返しといった印象で、主にバイオ燃料の生産拡大によって農地確保のために熱帯雨林が伐採される傾向が強まるとするものですけどね。

一方、昨年の9月にはドイツの大気化学者、パウル・クルッツェンが化学誌『ケミストリー・ワールド』にバイオ燃料の利用促進は地球温暖化抑制には逆効果になる場合もあるとするレポートを寄せています。

パウル・クルッツェン
Paul Jozef Crutzen

彼はこのレポートの中でバイオ燃料を使用すると亜酸化窒素(N2O)の排出量が化石燃料の約2倍となることを突き止めたとしています。亜酸化窒素は非常に強力な温室効果ガスで、GWP(地球温暖化係数:CO2を1としたとき、何倍の温室効果があるかという係数)は310とされており、この排出量の状況によっては却って地球温暖化を促進する可能性があるとしています。

もっとも、このクルッツェンという人物はオゾンホールの研究で1995年にノーベル化学賞を受賞しています。以前、オゾンホールの問題も矛盾だらけで恣意的に歪められている可能性を当blogでも論じました(詳しくはこちら→「フロンはオゾン層を破壊できるのか?」)。なので、個人的には何処まで彼の研究を信じて良いのやら微妙なところではあります。

殊に、現在の彼は大気の上層に硫黄を散布し、太陽光を遮ることで人為的に気候を制御する地球工学的手法を提唱しています。ですから、こうした研究が注目されるよう(そして、その研究予算を獲得しやすいよう)、彼にとって都合の良いデータを示しているだけかも知れません。

こうした問題は得てして特定の人たちに都合の良いツールとして利用されがちですから、真実がどうなっているのかは実に混沌としています。が、最近は日本の脳天気なメディアもバイオ燃料の弊害について、ある程度は認識するようになってきました。なので、バイオ燃料を巡る問題はあまり悲観しなくてもよいのかも知れません。

ただ、彼らは飽きたら忘れ去ってしまうという悪癖を持っています。あれだけ大騒ぎしたオゾンホールやダイオキシン、環境ホルモンなどのように地球温暖化問題も忘れてしまう可能性がないとは言い切れません。

少々ハナシは横道に逸れますが、いま太陽活動は不活発な状態で、黒点の数も著しく減少しています。そうした状況から地球の平均気温は下降局面にさしかかっているとする専門家(例えば、地球物理学者の赤祖父俊一氏など)もいます。

今日の太陽
今日(2008年8月28日)の太陽
ご覧の通り、黒点がありません。

WMO(世界気象機関)は今月20日に「2008年上半期は、少なくとも過去5年間で、最も気温が低かった」と発表しました。「通年でも近年では最も気温の低い年になる見通し」だといいます。もっとも、彼らはその要因をラニーニャの影響によるものとしていますけどね。

ま、短期的なトレンドで長期的な気候変動を語るのはナンセンスだということは重々承知していますので、今年の気温についてこれ以上深く論じません。が、1998年くらいをピークに最近10年の地球の平均気温はほぼ横ばいかやや下降気味に推移しているようですから、仮にこのまま気温の下降が続いていったとしたら、温室効果ガスがどうのこうのとゴタクを並べたところでさすがに大衆もついて来なくなるでしょう。

もし、そうなったときはメディアもお得意の「手のひら返し」で地球温暖化問題からは潮が引くように撤退すると思います。そして、何か別の新たな環境問題に鞍替えし、地球温暖化問題について論じてきたことはすっかり忘れ去ってしまうのでしょう。

こうした霧の中でつぎ込まれている莫大な国家予算(日本の場合は地球温暖化対策に毎年1兆円超)が実は無意味なものだったとしても、メディア自身が扇動してきたその過去に触れるようなことはしないでしょう。真実もまた霧の中に置き去りにされるということですね。

巧妙な値上げ戦略

私は機械メーカーに勤めていることもあって、原材料価格の高騰は非常に身近な問題です。以前にもシマノの値上げについて取り上げた折に触れましたが、私が勤める会社では毎年5%ほど製品価格を値上げさせてもらってます。そういう意味ではずっと価格を据え置いてきた自動車業界に対して「よく頑張るよなぁ」と感心していました。が、ついに今秋より値上げが敢行されることになりました。モデルチェンジを伴わない値上げは実に34年ぶりのことだそうです。

こうした値上げは最大手が動かなければ業界全体として動きにくいものです。ガソリンの卸売価格も最大手の新日本石油が価格改定を行って他社もそれに追随するというパターンが常ですし。そういう意味で、今回業界最大手のトヨタが値上げを伝えるニュースリリースを出したのは、他社とって朗報となるハズでした。が、やはりトヨタですから、単純な値上げはしませんでしたね。他社にとってはむしろ有り難くない戦略に出たという印象です。

当初は比較的車格の高い乗用車について幅広く値上げするプランもあったようですが、最終的にはニュースリリースにあるとおり、商用車とハイブリッド車などの一部に限定される格好となりました。商用車については既に大型および中型のトラックやバスが7月くらいから値上げされていました。なので、小型トラックや商用ワゴン車などにもそれが波及するのは至って自然な流れで、マーケットの理解も得やすいでしょう。

また、商用車というのは法人所有で業務に必要不可欠な耐久消費財としての需要が中心になりますから、個人所有が大きな割合を占める乗用車よりマーケットが安定しています。(ウチの会社もそうしたマーケットのさらにニッチなところで商売させて頂いているので、毎年5%の値上げも許容されるわけですね。)

ハイブリッド車に関してはシビックを除いて殆どライバルが存在しません。しかも、プリウスなどはモデル末期にも関わらず、昨今のガソリン価格高騰で売り上げをかなり伸ばしているといいます。私のプリウスも3ヶ月待たされて今年の6月に納車しましたが、その納車の際に「この3ヶ月の間に需要がさらに伸びていますので、納期もさらに延びている状況です」との旨、ディーラーの営業マンが言っていました。要するに、黙っていても売れるクルマは値上げもしやすいということですね。

もちろん、これらは理由付けもしやすいでしょう。トヨタのニュースリリースにも「今回、鉄鋼やレアメタルの使用量が多い商用車およびハイブリッド車について、価格改定を行う事とした。」と書かれているように、鉄をたくさん使うトラックなどの商用車と電気モーターの制御システムなどにレアメタルをたくさん使うハイブリッド車が対象となったというのは、値上げの「建前」として非常に解りやすいものです。

また、ハイブリッド車は原価に対して売価がかなり安く抑えられており、利益率が非常に低い車種だということは業界内でよく知られるところです。なので、値上げもやむなしという理解も得やすいでしょう。

実際のところ、トヨタは乗用車の値上げをハイブリッドに限定してマーケットの様子を伺おうと目論んでいるのかも知れません。小型乗用車などライバルが多い激戦区のマーケットでは販社がシェアを落とさないよう値引き合戦を展開してしまうケースが多々あります。となれば、メーカー希望小売価格と販社への仕切価格の値上げが売価にそのまま反映されず、マーケット全体に及ぼす需要変化を読みづらくなる恐れもあります。

しかし、上述のようにハイブリッド車はライバルが非常に少なく、指名買いの需要が比較的多いマーケットゆえ、価格改定の影響を観察しやすいといえるでしょう。トヨタは世界で最も体力のある自動車メーカーですから、こうして動向を見極めながら次の一手を考える余裕もあるのでしょう。

これは他社にとって非常に辛い状況といえます。鉄鋼大手と鋼材価格の値上げについて交渉が重ねられてきましたが、自動車メーカーとの取引価格については今年の5月に約30%の値上げで妥結したと伝えられていました。本来であれば全車種をそれなりに値上げしたいところでしょう。

商用車についてはすかさず日産も値上げを発表しましたが、乗用車についてはアテが外れた格好になったと思います。しかも、国内の乗用車マーケットはかなり冷え込んでいますから、値上げをすればさらに水を差すことになるでしょう。ホンダもいまのところは新型車投入やモデルチェンジを伴わない価格改定は行う予定がないとしていますので、各社の業績悪化は必至といったところでしょう。

toyota_prius.jpg
現在、プリウスのメーカー希望小売価格は
2,268,000~3,255,000円(税込)となっていますから、
今般の価格改定で68,000~97,650円の値上げとなります。


ま、私個人としては値上げされる前に値上げ対象車種を買ったということで、少し得した気分です。私が購入したプリウスS"10th Anniversary edition"の希望小売価格は2,730,000円(税込)なので、来月から81,900円も高くなります。クルマは元々の単価が高いですから数%の値上げでも結構な額になりますね。

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研究の意義はいずこ?

昨日、TBSの『夢の扉~NEXT DOOR~』という番組で「水素を利用したエコカーを作り燃料不足を解消したい」という内容のドキュメンタリーが放送されていました。公式サイトで紹介されている概要は番組のナレーションと異なっていますが、「大量のCO2排出によって引き起こされた地球温暖化」といった言い回しは番組内でもなされていました。

いつ、誰によって「CO2温暖化説」が事実であると証明されたのでしょうか?

以前は「大量のCO2排出によって引き起こされたと言われている地球温暖化」といった感じで、断定的な表現は避けられていました。しかし、最近は単なる仮説に過ぎない(しかも疑問点が山のように指摘されている)CO2温暖化説があたかも事実であるかのように断定された言い回しで扱われています。これは彼らが根拠など全く頓着していない証左といえるでしょう。ま、この番組に限ったハナシではありませんけどね。

さて、件の番組ですが、概要についてはリンク先をご参照頂くとして、非常に気になった点がありました。水素生成菌というバクテリアを使って糖から水素を生成させ、燃料電池車を走らせるということですが、そのプロセスに関する説明がかなり乱暴だったんですね。糖というのは炭素と水素と酸素の化合物ですから、そこから水素を取り出せば炭素と酸素が残ります。これがどうなるのかということが全く触れられていませんでした。

実際にはこのプロセスでCO2やメタン(CH4)が発生するようですが、これらは言うまでもなく温室効果ガスですから、のっけに「大量のCO2排出によって引き起こされた地球温暖化」としておきながら無視するのはいかがなものかと思います。私は温室効果ガスが地球温暖化の原因だとは考えませんが、温室効果ガスによって地球温暖化が進行していると信じている人たちとって、これは看過できない問題でしょう。

植物由来の原料から副産物としてCO2が生成されてしまうことについては、元々大気中にあったそれが光合成を経て固定されたものだから差し引きゼロの「カーボンニュートラル」だと認識されるでしょう。が、これは以前バイオエタノールについてお話ししたことと全く同じです。原料となる植物を生産したり輸送したり加工する段階において実際には化石燃料が投入されますから、それらとの差し引きでどれだけ黒字になっているかが問われなければなりません。

さらに問題なのはメタンのほうで、そのGWP(地球温暖化係数:CO2を1としたとき、何倍の温室効果があるかという係数)は21となっています(23となっているものもありますが、つまり算出基準が完璧でないということでしょう)。要するに、自動車の燃料として供給できるほど大量の水素をバクテリアに生成させるとなれば、CO2の21倍もの温室効果をもたらすとされるメタンも大量に発生させてしまうことになりかねないわけです。

ま、メタンは水素よりずっと比重が大きい気体なので、プラント内であれば取り分けて有効利用することも可能でしょうから、大きな問題にはならないかも知れません。が、この番組で紹介された玉川大学の小原教授は水素の生成槽も車載式にしたいと語っていましたから、これは少々面倒なことになりそうな気がします。

水素生成菌によって水素を発生させるプラントを車載し、同時にメタンが生成されれば取り分けて燃やすなどの処置が必要になるでしょう。ただ燃やして捨てるのは勿体ないので、ボンベなどに回収するか補助動力や空調などの熱源として利用したほうが良いかも知れません。が、そうなればどんどん余計な補器類が増えていきます。

そもそも、自動車を安定して走行させるには、エネルギーも安定して供給しなければなりません。となれば、水素を蓄えるためのコンプレッサーとボンベを装備したり、大容量のバッテリーを装備する必要に迫られるでしょう。ただでさえ猛烈に高価な燃料電池を搭載した上にこうした付属の装置を設けるとなると、どれだけコストがかかるのか想像も付きません。また、人が乗ったり荷物を積んだりするのに充分なスペースが確保できるのかも怪しくなってきます。

加えて、バクテリアは言うまでもなく生き物ですから、周囲の温度による影響も軽視できないハズです。真夏の炎天下に停めた自動車の中がどのような温度になるかを考えれば、これは絶望的かも知れません。まさか、バクテリアを死なせないために駐車中も絶えずエアコンをかけっぱなしにするというわけにもいかないでしょう。

さらに、乗用車などは特にそうですが、冷蔵庫のように絶えず運用されるものではありません。何日もあるいは何週間も利用しないときは休眠させ、無駄な糖を消費させて無駄な水素を発生させることなく保守し、常に必要なときに必要なだけ都合良くバクテリアを働かせるようなマネジメントが可能だとは到底思えません。

バイオ水素カー
この写真は小屋の中で作ったバイオ水素をボンベに詰めて
普通に燃料電池車を走らせているだけです。


それはともかく、バクテリアの働きで生成させるという点ではバイオエタノールも全く同様です。しかも、その元となる物質も基本的には同じ「糖」になります。バイオエタノールの生産拡大によって食糧供給に悪影響が生じ、農地の拡大から自然林の減少も懸念されているのはご存じの通りですが、バイオ水素も現状では全く同じ問題を繰り越すことになるわけですね。しかも、燃料電池は普及価格帯までコストダウンできる目処が全く立っていないのが現状です。

ならば、同じ原料を用いるバイオエタノールの開発に資本を集中させ、食糧供給に悪影響を及ぼさず、化石燃料の投入も最小限で済むような体制を確立させる研究に注力したほうがずっと有効でしょう。バイオエタノールよりバイオ水素のほうがエネルギー効率が圧倒的に優れているというのならハナシは別かも知れませんが、そうした点についても番組は完全に無視していました。

もちろん、「すぐに役立たない研究は無駄だ」などと言うつもりは毛頭ありません。が、メディアは地球温暖化問題について常々「待ったなしの危機的状況」などと扇動しているのですから、そうした姿勢とこのような番組の姿勢は全く符合しません。そこが個人的には非常に気に入らないわけです。

ほぼ全ての大衆メディアはCO2温暖化説を支持し、一刻の猶予もないとしています。そうした立場でこのような番組を製作するのであれば、いかにも回りくどく、早い段階での実用化など見込めそうもないバイオ水素に拘る必要があるのか、それでコスト的に普及の目処が全く立たっていない燃料電池車を走らせる研究の意義は何処にあるのか、その点を追求する内容にしなければならなかったハズです。

大衆メディアが伝えるエコロジー関連の情報はこのように極めて偏っています。地球温暖化による影響は悪いことしか伝えず、その対策技術とされるものは夢や希望みたいな部分を含めて良いイメージのことばかり伝えています。何故、全体を見渡して中立な立場をとろうとしないのでしょうか?

ワイドレンジトルクレンチ

近年のスポーツバイクに用いられるパーツの多くはアルミで出来ています。また、チタンやカーボンなどもかなり一般的になってきましたね。フルカーボンフレームも高嶺の花ではなくなり、ロードバイクにおいてはカーボンフォークなどもはや常識です。ボルト類やスプリング類、ボールベアリングなどは今でも鉄やステンレスが主流ですが、はやり一部の高級品にはチタンボルトやセラミックベアリングなどが奢られるようになりました。

これだけ素材が多様化しますとピンキリになりますが、性能を追い込んだ高価なパーツは破壊限界が低い場合も少なくありません。使用上は充分な強度を持つよう設計されていても、組み付け時にはデリケートな扱いを求められるケースが多々あります。例えば、私がロードバイクで使用しているシートポスト、リッチーのWCSカーボンにはボルト締め付けトルクが「Max16Nm」と刻印されていたりします。同様に、ステムのハンドルバークランプ部にも「Max5Nm」という刻印があったりするわけです。

トルク指定の例
締め付ける相手がカーボン(CFRP)ですから、
過剰なトルクがかかれば破損の恐れもあります。


常識的に考えて、これは充分な安全率を見込んだ数値でしょう。多少の超過では大きな問題にはならないはずですが、もしこれを超過して破損に至ったとしても、メーカーは責任を取ってくれません。PL法の関係も少なからずあるでしょうが、多くの場合はインストールマニュアルに指定トルクが記載されています。

こうした傾向は自動車やモーターサイクルなどもかなり以前から常識でした。ですから、サンデーメカニックがトルクレンチの1本や2本持っていてもあまり自慢にはならない時代になってきたように思います。

私の場合はプリセット式のトルクレンチを4本ほど持っています。1本は自動車用で、スパークプラグからホイールナットの締め付けまで1本で賄えるものです。しかしながら、この1本では上述のような低いトルク指定のある自転車のアッセンブルには対応できない場合も多いため、自転車用に買い求めた最初の1本はそれを補うものでした。

東日MTQL40N

東日のMTQL40Nという、モータースポーツ用と称する製品なのですが、5~40Nmというワイドレンジになります。40NmもあればスプロケットやMTBのディスクブレーキを装着するときにも対応できますし、5Nmなら上述のようなハンドルバーのクランプといった比較的低トルクでの締め付けにも対応しますから、自転車の場合はこれ1本あればかなりの範囲をカバーできるわけですね。

ラチェットヘッドの差し込み角は3/8インチで、ヘッドの幅が26mmほどしかないかなり小振りなものですから、小回りが利いて使いやすいといえます。もっとも、自転車の場合は自動車やモーターサイクルのように周囲が立て込んでいてわずかな隙間を縫って目当てのボルトにアクセスしなければならないといったことはあまりありませんけど。

使い方はプリセット式トルクレンチとしてごく普通です。小窓の目盛りは5Nm単位ですから、ハンドルの末端のダイヤルにある副尺と併せてトルクをプリセットします。副尺は0.5Nm単位、1回転で5Nmですから、特に慣れを必要とするような使いにくさはありません。

MTQL40N(ハンドル部)

全般的なつくりは特に可もなく不可もない感じで、スナップオンなどのように仕上げのキレイな工具を求める向きには物足りない部類になるでしょう。コーケンとかKTC(ネプロスじゃない普及モデル)などをガシガシ使い倒すような人向けといった感じでしょうか。

個人的に気に入らないのはケースが「大は小を兼ねる」式で、もう2サイズ大きいモデルと兼用になっているところでしょうか。こういうケースも量産には金型を作らなければならず、そのコストが莫迦にならないこともよく解っていますので、あまり大きな声で文句は言えませんが。

MTQL40N(ケース)
MTQLシリーズは他に70N(10~70Nm)と140N(20~140Nm)がありますが、
ケースは全て兼用になっていて、この40Nの1.6倍も長い140Nとも
同じものになるため、収納時には非常にかさばります。


それにしても、トルクレンチは本当に安くなりました。私がクルマいじりを始めた頃はノーブランドの安物はともかく、マトモなトルクレンチがほしいと思ったら3~4万円くらいは覚悟しなければなりませんでした。このMTQL40Nは希望小売価格が19,320円(税込)、実売価格で15,000円程度といったところです。

これくらい安くなってくると、ちょっと背伸びをして海外の超一流ブランド品にしようかという気にもなりますが、私の場合はそれほど使用頻度が高いわけでもないので、これくらいが丁度良い感じです。もし、海外ブランドのトルクレンチが安く買えるとしても、ちゃんと校正できなければ片手落ちになりますので、その点も重要なチェックポイントですね。そういう意味でも国産の定番である東日なら非常に安心感があります。

形骸化の達人

私は業務で役人との接触が度々ありますので、彼らの狡猾さをよく知っています。いえ、大半の方は真摯にお仕事をなさっていますから、狡猾な役人というのは一握りになるのだと思います。が、官製談合を仕切ったりするのは、その一握りの狡猾な役人の中でもとりわけ悪質な人たちだったりするのでしょう。ま、幸運にも私はそうした役人に出くわしたことがありませんけど。

メディアは複雑怪奇な競争入札の仕組みをよく理解していませんから、煙に巻かれていたとしてもなかなか気づくことはないでしょう。今日の朝日新聞の社説を見てもそんな印象が拭えませんでした。

談合を防ぐ―入札改革をさらに進めよ

(前略)

 福島県では事件後、新知事の下で官製も含めた談合を全面的になくそうと、入札制度を改革した。

 目玉は、従来の「指名競争入札」を全面的に「一般競争入札」に変えたことだ。入札に参加させる業者を行政機関が指名することが談合の温床になっていた。だれでも自由に参加できる「一般」になれば、行政が落札業者をあらかじめ決めておくことも、業者間で談合することも難しくなる。

 その結果、何が起きたか。予定価格に対する落札率が93%から85%に下がった。本来の競争が行われ、業者の取り分が減ったからだ。それだけ余分な税金を使わずに済んだことになる。

 こうした入札改革の動きは、和歌山、宮崎両県を含めて全国に広がりつつある。全国知事会が調べたところ、1千万円以上の工事について入札方法をすべて「一般」に切り替えた道府県は22になった。それに伴って落札率も下がり始めた。

 すべての都道府県で、同様の入札見直しを急いでもらいたい。

(後略)

(C)朝日新聞 2008年8月20日


まず、「一般競争入札」が本当に「だれでも自由に参加できる」と思い込んでいる時点で、この社説を書いた論説委員は実態を知らないと断言できます。

現実には「何処の馬の骨とも知れない業者に任せ、粗悪な仕事をされては困る」という理由の下、一般競争入札であっても入札に参加する資格があるか否かが問われるケースは少なくありません。具体的には複雑な技術審査資料や過去の取引実績を証明する書類などを提出させられ、一定の基準に達していない業者は弾かれてしまいます。

もちろん、参加資格がないと判定された場合、ほぼ例外なく説明を求める権利が認められています。が、そこは小難しい制度をつくるプロ達ですから、細かい条件を設けて何だかんだと難癖を付け、コントロールしてしまうことは充分に可能でしょう。

殊にこれまで「指名競争入札」で参加できなかった業者などは入札そのものの煩雑な手続きがよく解らないケースも多いでしょうから、手玉に取るのは簡単かも知れません。そもそも、過去の実績を求めるパターンなどは、新規参入を排除するにはうってつけの条件となります。

また、官製談合をやっていたようなところなら、故意に落札率をコントロールすることも難しくはないでしょう。例えば、予定価格5000万円の案件が4750万円で落札され、落札率95%で疑いの目が向けられていたとします。そこで、仕様書を見直して書きぶりを大きく変更し、従来の案件との違いを解りにくくしてしまいます。その上で、予定価格を5600万円と従来より高く設定すれば、同じ4750万円で落札させても落札率を約85%に抑えることができます。

発注者である行政機関が予定価格を設定するためにコストを積算するにしても、限度というものがあります。なので、結局は業者から参考見積を取って、それをベースに予定価格を決定する格好になるわけですね。担当の役人と業者が「つうかあ」の仲であれば、「これじゃあ落札率が高くなるから、見積金額をもう少し高めに出してよ」の一言で懇意の数社から高めの見積を取り、予定価格を引き上げる工作が出来てしまうケースもあり得るでしょう。

一般競争入札の体は成していても参加条件を厳しく縛り、言うことを聞きそうにない業者を排除、同時に落札率も下げる工作を行えば、そこしか見ない部外者達に「指名から一般に切り替えて落札率が下がり、改革に成功した」と思い込ませることができるわけです。

もっとも、最近は(財)経済調査会などの第三者機関に調査を依頼し、広範囲な市場価格を把握しようとする動きもあります。私の会社にもそういう調査依頼票が送られて来ることが増えましたから、本気で透明化を進めようとしている政府機関や自治体なども増えているのでしょう。が、そういう真面目なところは従前から官製談合などやっていなかったと思います。

あるいは、メディアや市民オンブズマンなど目が厳しくなっていることを懸念して、偶然高い落札率が続いてしまっても疑いの目で見られないよう、自衛のために調査依頼をかけ、公正さのアピールに努めているといったケースもあるかも知れません。もっとも、そうしたことのために余計なコストが裂かれるのも微妙な感じはありますが。

私は土建業界の人間ではないので公共工事などの分野はよく知りませんが、これまでバラマキで利権に浴してきた役人達が本気で心を入れ替えない限り、入札の形態が変わったとしても中身まで変っている保証はないと思います。より巧妙な仕掛けで表向きには改善されたように見せかけ、実は同じことが繰り返されているかも知れません。

少なくとも、一般競争入札が増えたとか、落札率が下がったとか、そんな表面的な部分しか見ないで論評しているようでは、いつまで経っても実態を知ることなどできないでしょう。日本が「官僚国家」「役人天国」といわれるのは、法令や制度を形骸化させる達人が少なからず存在するからでしょう。その辺の認識が少々甘すぎるように思います。

色々取付け

このお盆休みは特に遠出もせず、自転車いじりとクルマいじりに勤しんでいました。ま、自転車のほうはいつもの日常的なメンテナンスをいつもより少し丁寧にやったという程度ですけど。一方、クルマのほうはインパネ周りやAピラーの内張り、コンソールボックスなどを取り外し、カーペットをめくったりして、色々ゴチャゴチャやりました。

プリウス_インパネ取り外した図
とりあえずインパネ周りを外した状態です。
この後もっと凄い状態になりましたが、
作業に集中して写真を撮る余裕はありませんでした。


何をゴチャゴチャやっていたかといいますと、ドライブレコーダーとナビのジャンパーとワンセグチューナーの取付けです。本命はドライブレコーダーで、他はついでになりますが、ドライブレコーダーに関してはエントリを改めて詳しく書こうと思います。

で、ナビのジャンパーですが、メーカーが安全性を考慮して設定している仕組みをキャンセルするアイテムなど最初は不要だと思っていました。しかしながら、色々使っているうちに必要性を感じるようになったんですね。

私のプリウスは「S」の「10th Anniversary edition」ですので、メーカー純正のHDDナビが標準で付いてきます。それを走行中に操作できないのは別に構わないのですが、一つだけ大きな不満がありました。CDからリッピングしてMP3だか何かに圧縮してHDDにその音楽ファイルを保存しておける機能はいまや当たり前になっていますが、そのプレイリストも走行中に操作できなくなってしまうんですね。

一般道を走っているときなら信号で止まっている間に選曲すれば良いので、さほど不便は感じません。が、高速道路を走っているときはそういう訳にもいきません。聴きたいアルバムを選び直すためだけにわざわざパーキングエリアに入ったり路肩に止めたりするのも何ですし、かといって、それに行き当たるまで1曲ずつスキップボタンを押し続けるのも辛いものがありますし、却って危険な気もします。

ま、走行中にモニタを見て選択操作を行うことはあまり良くないかも知れませんが、CDやMDを差し替えるような大きなアクションを伴う状態を考えれば遙かにマシでしょう。そもそも、走行中にモニタを見るのが危険なら、ナビという商品は成り立たなくなりますし(私の場合、オプションのビーコンユニットも付けていますので、細かい渋滞情報などもバンバン表示されますし)。

そもそも、純正ナビのデフォルトでも地図の縮尺など一部の操作は走行中でも受け付けるようになっていますので、どこまでが安全な操作で、どこからが危険な操作になるのか、その明確な線引きはメーカーサイドでも出来ていないでしょう。いささか言い訳じみてしまいましたが、こうした理由でジャンパーを導入することにしたわけです。

トムス_tv-naviジャンパー

この種の商品は色々ありますが、無難なところでトヨタのオフィシャルチューニングパーツメーカーであるトムスのそれをチョイスしました。リンク先にもありますが、トヨタの販売店では取り扱っていないということで、私はネット通販で入手しました。

インパネ周りを引っぺがして、モニタ裏のコネクタを抜いて差し替え、助手席下にあるナビユニット本体まで付属のハーネスを取り回してやはりコネクタを差し替え、切替スイッチを適当な場所に貼り付ければ一丁上がりです。とはいえ、私の場合は同時に取付けた他の配線と一緒に助手席側のカーペット(フロアマットではなく、床の内張りのほう)をまくり上げてその下を通しましたので、その分だけ手間もかかりましたが。

このジャンパーはスイッチを1度押すとそこに内蔵された緑色のLEDが点灯し、走行中のテレビ視聴が可能になりますが、ナビの操作はできません。もう1度スイッチを押すとLEDが点滅状態になり、ナビの操作はできるようになりますが、テレビの視聴が出来なくなります。また、キー(プリウスの場合はパワースイッチ)オフでリセットされますので、再始動させてもジャンパーが働いていない状態に戻ってしまいます。つまり、再びスイッチを押さないと走行中のテレビ視聴やナビ操作ができなくなる仕組みです。

一つだけ難点がありまして、このジャンパーを作動させている間だけ平均燃費を示す棒グラフが伸びなくなります。初めは速度信号をゼロとして送っていることが何らかのカタチで影響しているのかと思いましたが、瞬間燃費は問題なく表示されていますので、どういう理由でエラーが生じているのか私にはよく解りません。ま、私の場合は基本的に高速道路走行中に選曲したいという目的で導入しましたので、それ以外に使用するケースは殆どありませんから、特に大きな問題ともいえませんが。

さらについでで何となく付けてみたワンセグチューナーですが、「車載ワンセグチューナー」でググって最初にヒットした『車載用ワンセグチューナー比較』というサイトで絶賛していたフォブSDOT110というやつを導入してみました。

ま、所詮はワンセグですから、解像度が低いですし、フレームレートも15コマ/秒で動きがカクカクしますし(最近は擬似的に30コマ/秒に変換する機能が搭載されたチューナーもあるそうですが、私が購入した安物にそうした機能はありません)、全般的な画質は電波状態が良い時のアナログよりかなり劣ります。

ただ、ノイズやゴーストの類で画像が乱れることもなく、ザーザーと耳障りな雑音もなく、受信レベルが低下しても画面が停止して無音になるだけですから、そのほうが良いという人も少なくないでしょう。私の場合はジャンパーを入れたので運転中にもテレビを見ることができるようになりましたが、そうした使い方は控えるようにしています。なので、雑音が抑えられたという点にメリットを感じます。

ラジオは地デジの本放送がスタートしてもアナログ放送が終了するわけではありませんから、テレビのようにデジタルチューナーの需要はあまり生じないかも知れません。が、こうしたテレビのワンセグチューナーの印象からしてラジオの車載用デジタルチューナーが発売されたら、試しに導入してみたくなるかも知れませんね。

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電動シフト今昔物語 (その4)

私が小学生の頃、男子小中学生向けの自転車はリトラクタブルヘッドライトなどをはじめとして、スーパーカーをモチーフとしたデコレーションがどんどんエスカレートしていました。そんな中で丸石自転車はフェラーリやランボルギーニのシフトゲート彷彿とさせるHパターンのシフター「スーパーカーシフト」を搭載してきました。

丸石スーパーカーシフト
私が小学校高学年の頃、実際にコレに乗っている友人が数人いましたが、
シフトノブは簡単に外せるネジ込み式だったので、みんな盗まれていました。
こうした自転車はもちろん高価でしたから、買ってもらえなかった子がひがんで
犯行に及んでいたのかも知れません。


この自転車が電動シフトだったのは、ひとえにシフトレバーを「スーパーカーみたいにする」というのが目的でした。そのためだけにレバースイッチとバッテリーパックを備え、リヤディレイラーに仕込まれたアクチュエーターでそれを駆動していた訳ですね。

私の場合、あのスーパーカーブームに引きずられた男子小中学生向け自転車の恐竜時代は途中まで凄いと思っていたクチですが、後半はさすがに度が過ぎていると思うようになっていました。丸石のスーパーカーシフトが出てきた頃には私もかなり白けていましたから、個人的に特別な思い入れはありません。

余談になりますが、あの男子小中学生向け自転車の恐竜時代には過剰な装飾ゆえ鈍重になっていく一方でした。が、その反動からか、次に来たブームはブリヂストンのロードマンやミヤタのカリフォルニアロード、丸石のエンペラーといったランドナーの入門モデルといった感じのツーリング系でした。

この頃、中学生になっていた私は何故かよく覚えていませんが、このブームに乗ることもなく、クロモリフレーム(この頃はまだアルミも珍しい時代でしたが)の入門用ロードレーサーを手に入れ、現在へ至る第一歩を踏み出しました。それから7~8年くらいして大学時代の私は全て自力でコンポを入れ替えました。現在のアルテグラに相当する600シリーズで、インデックスシステム「SIS」を初めて採用したモデルになります。

思えば、シマノがSISを投入したとき、ベテランサイクリスト達からは「子供のオモチャ」と揶揄されました。ロードマンなどのシフターにはSISのような位置決め機構が導入されていましたから、ベテランたちは硬派であるべきロードレーサーにこうした初心者にも扱いやすい機構が導入されるのは好ましくないと思っていたのかも知れません。

当初のSISはレバーの付け根にダイヤルが仕込まれ、SISのクリックストップをキャンセルする機構も備わっていました。こうした機構はワイヤーが緩んだりしてクリック位置が微妙にズレるなど、トラブル時の緊急避難的な処置として設けられたのかも知れません。が、一方ではインデックスシステムを好まない硬派なサイクリストにも選択の余地を残すといった「ビジネス上の都合」も関係していたのではないかと想像されます。

こうして振り返ってみますと、男子小中学生向け自転車の恐竜時代が終息した1980年代前半くらいに電動デュラが発売されていたら、やはり「子供のオモチャ」という誹りは避けられなかったでしょう。が、あの恐竜時代は30年近くも前のハナシです。私達の上の世代の人は恐らく丸石のスーパーカーシフトなど覚えていないでしょうし、私達より下の世代はあのようなブームがあったことすら知らないでしょう。

若い人や、今世紀に入ってからロードバイクに乗るようになった人たちは、マヴィックのメカトロニックについてあまりご存じないと思います。ま、かく言う私もショップで実物を何度か眺めたことがあるくらいで、それ以上の情報は専門誌や人づてだったり、テレビ(当時はF1ブームで調子に乗ったフジテレビが二匹目のドジョウを狙ってツール・ド・フランスを中継していました)を通して見た程度でしかありませんから、偉そうなことをいえる立場でもないのですけど。

電動デュラは本格的なレース器材の新機軸として期待されています。が、目的やその完成度はともかく、電動メカそのものの存在は決して新しいわけではないということですね。それだけに商業的なリスクもあると思います。ま、シマノはネクサーブで経験を重ねてきた実績もありますから、マヴィックのような自滅はないと思いますが。

一方のカンパもEPS(エレクトリック・パワー・システム)という名の電動メカをテスト中です。同社開発部門のディレクターによれば、「製品に近い段階まで来ている」そうです。シマノのように商品としての実績はないカンパですが、電動デュラがある程度のマーケットを獲得していったら、そう時期をおかずに追随するのは間違いないと思います。(どれだけ高価になるか空恐ろしい感じですが。)

カンパEPS
シフターはシマノと同じく手動式とほぼ同じ形状になるようですが、
ディレイラーのアクチュエーターはパンタグラフ内の空間を生かし、
非常にスマートにまとまっています。
この辺はやはり実にカンパらしい(というよりイタリア人らしい)発想で、
デザインや雰囲気にも心を砕いているところが憎いですね。


今秋のサイクルモードに電動デュラが参考出品されるのは間違いないと思いますが、それに対する来場者のリアクションに興味があるのはシマノだけではないでしょう。私も万難を排して見に行かねばと思う今日この頃です。

(おしまい)

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電動シフト今昔物語 (その3)

マヴィックの電動シフトについて「厳密には電制シフトというべき」とする人もいます。シマノにしてもカンパにしても、アクチュエーターがパンタグラフを直接動かしているのに対し、マヴィックのそれはパンタグラフが動くきっかけを作るだけで、パンタグラフそのものを動かす力はチェーンの駆動力を利用するというのがその理由です。

ま、それはともかく、マヴィックのメカトロニックのシフトスイッチを模倣したプロトタイプの電動デュラは、何故スイッチの向きを90度変える必要があったかといえば、それはブラケットの上に手を置いているときも下ハンを握っているときも一つのスイッチで対応しようとしたからでしょう。

電動デュラ(プロトタイプ)シフトスイッチ
電動デュラのプロトタイプはブラケットの上からも
下ハンからも指を伸ばして操作できるよう、
シーソースイッチを横からクリックする方式が試されていました。


一方、メカトロニックはブレーキレバー裏のスイッチを下ハン専用とし、これとは別にブラケット先端にもスイッチを設け、親指で(あるいは人差し指と親指で挟んで手首のスナップで)操作するようになっていました。もっとも、この尖った形状が危険ということで、UCIからNGを食らってしまいましたが。

メカトロニック02

さらに、メカトロニックはサイコンにもスイッチを設け、ヒルクライムなどで上ハンを握った状態でも親指を伸ばすだけでシフト可能という電動シフト最大のメリットを遺憾なく引き出すアイデアが凝らされていました。

メカトロニック03

ただし、フロントの変速は手動のままで、微妙な位置に設けられたレバーで操作する方式になっていましたけどね。

メカトロニック04

マヴィックの電動シフトが成功を収められなかった理由は、ひとえに信頼性の低さにあったと見て間違いないでしょう。メカトロニックの前身であるザップシステムはユニットとそこへつながるハーネスとの隙間から水が滲入する問題があったようで、雨中ではことごとく作動不良に陥ったといわれています。その反省からメカトロニックはワイヤレスとしてユニットの水密性を高めたものの、今度は電波障害で作動不良が発生しやすかったといいます。

また、リヤディレイラーの張り出しも非常に大きく、右側に転倒するとかなりの確率でユニットを破損してしまったようです。加えて、この巨大なメカが通り道をふさいでしまったため、一度シャフトを引き抜かないとホイールの着脱ができなかったようです。

メカトロニック05

マヴィックがコンポメーカーとしての大復活を期したメカトロニックは前世紀末に市販へこぎ着けたものの、結果を見ればあだ花に終わってしまいました。このチャレンジは結果を急ぎ過ぎたのかも知れません。が、コンポメーカーとして踏みとどまるために彼らに残された時間を思えば、これは致し方なかったのかも知れません。

(つづく)

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電動シフト今昔物語 (その2)

2年前にゲロルシュタイナーやスキルシマノでテストされていたプロトタイプの電動デュラも基本構成は市販モデルと大差ない印象です。ただ、見た目についてはCNC切削の一品モノといった感じで、商品としての付加価値を高めるようなデザイン性は完全に無視されていました。

電動デュラ(プロトタイプ)RD

リヤディレイラーもパンタグラフは78デュラの流用っぽい感じですが、全般的にプロトタイプ然とした無骨なつくりで、このときは市販を予感させない佇まいでした。が、中身はそれほど大きく変わってはいないと思います。一方、市販モデルとプロトタイプとで最も異なっているのはコントロールレバーでしょう。

電動デュラ(プロトタイプ)インジケーター

以前にも触れましたが、ブラケット上端に液晶の表示部を持ち、バッテリー残量とギヤポジションを示すインジケーターが仕込まれていました。こんな位置に表示されても見難く、デザイン的にも無様で、一目で電動シフトだということを周囲にアピールできる以外、良いことなど何もないと思います。

電動デュラ(プロトタイプ)シフター

また、写真のプロトタイプの場合、シフト操作の方法が市販モデルとは全く異なっていました。市販モデルは従来のSTIレバーと全く同じ感覚でブレーキレバー横のスイッチを押せば右手側はリヤのシフトダウン、左手側はフロントのシフトアップとなり、サブレバーのスイッチはその逆の動きになります。が、このプロトタイプはレバー内側に付いた小さなスイッチを指先でクリックする方式でした。

スイッチが大きくなるほどアクションも大きくなりますから、指先だけのほうが楽に操作できます。が、TTなどのようにポジションが殆ど決まっていればともかく、そうでない場合はスイッチが小さくなるほどそこへアクセスする動作が大きくなり、またとっさの動きで操作ミスを犯しやすくなります。また、全力でもがくなどダイナミックに身体を動かしているときに小さなスイッチに指を伸ばすという小さなアクションではあまりしっくり来ないような気もします。

ま、こうした操作系は色々な方法が試されてきたのでしょうが、最終的には「慣れ」の問題も小さくはなかったように思います。従来のSTIと同じであれば意識しなくても身体が自然に動くという人のほうが圧倒的に多いでしょう。

また、市場性を考えた場合、慣れを無視して理想を追うのは案外リスキーなものです。例えば、パソコンのキーボードなども「QWERTY」が人間工学的にベストとはいえないということで、これに替る提案は色々ありました。しかしながら、タイプライター時代からのディファクトスタンダードを突き崩すことはできずに現在へ至っています。

操作系がSTIのまま継承されたということは、STIがすっかり王道になったという自信の表れかも知れません。が、そもそも上の写真のプロトタイプはマヴィックのメカトロニックの影響を大きく受けたものといって差し支えないでしょう。

現在、ホイールメーカーとして活路を見いだしているマヴィックはキャリパーブレーキなどのパーツも細々と生産を続けていますが、昔はその名を轟かせるコンポメーカーでした。しかし、カンパやシマノ、サンツアーなどに圧されまくってジリ貧状態へ陥っていきました。スキー関連で有名なサロモンに買収されようとしていたその頃、彼らは乾坤一擲の画期的なコンポを発表しました。

それが電動メカの「ザップシステム」で、それをワイヤレス化するなどさらなる進化を遂げた「メカトロニック」でした。

メカトロニック01

電動デュラのプロトタイプとスイッチレバーの向きは90度異なりますが、考え方はほぼ同じと見て良いでしょう。シマノがマヴィックに対するオマージュとしてあのようなスイッチにしたというより、単なるパクリと考えるべきですね。シマノは1990年代に現れたこの電動メカに少なからぬ衝撃を受けていたゆえ、非常によく似た操作系を試したということなのでしょう。

(つづく)

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電動シフト今昔物語 (その1)

シマノもカンパも電動シフトのテストはかなり以前から重ねられていましたから、グランツールでも決して珍しい光景ではなくなっていました。なので、今年のツールでも電動デュラがテストされていたのはいつものことだと思っていました。が、発売予定は来春とのことですから、最終仕様でのチェックという格好だったのかも知れません。8月2日の正式発表を目にするまでそんな段階にあるとは夢にも思っていなかったというのが正直なところですが。

電動デュラ-シフトスイッチ

電動シフト最大の強みはシフターを容易に複数設置できることで、ポジションの維持とシフト操作の関係を柔軟なものにする効果は非常に大きいと思います。ま、従来の手動式でもシフターを複数設置するためのアイテムはありましたが、操作感が悪化したり、トラブルのタネが増えるといった懸念が生じたり、一方のシフターのワイヤーを全てリリースしておかなければもう一方で変速できる範囲が限られてしまったり、色々問題がありました。

電動デュラ-ハーネス

ハーネスの取り回しが全くこなれていませんが、殊にTT向けとして複数シフターは需要も見込めるでしょうから、改善されていくでしょう。この分野ではブレーキレバーもハンドルメーカー各社オリジナルが当たり前になっていますから、スイッチとハーネスを初めから内蔵したモデルが発売されるようになるかも知れません。

電動デュラ-RD

この写真を初めて見たときはパンタグラフを79デュラから流用しているのかと思いましたが、今になってよく見ますと、アクチュエーターなどが内蔵されている部分もそれに合わせた意匠で作り込まれていました。結局、表面処理や塗装などを省略しただけで、市販モデル(現段階で厳密には「市販予定モデル」ですが、以下も「市販モデル」と表記します)と殆ど変わらないものなのでしょう。

電動デュラ-FD

写真で見る限り、フロントは市販モデルと全く区別がつきません。やはりアクチュエーターなどが収まっていると思われる黒い(恐らく樹脂製の)ケースなどをよく見ますと、量産用の金型で製作された雰囲気を感じます。

電動デュラ-バッテリー

バッテリーも取付方法が乱暴な感じですが、もの自体は市販モデルと変わらないようです。

以上の写真は全てゲロルシュタイナーのセバスティアン・ラングが今年のツールで使用していたTTバイクになります。これを見たとき、プロトタイプにしては造形的に細部までシッカリ作り込まれているので、市販が近いのかもしれないと思いました。が、同時にハーネスの取り回しやバッテリーの搭載方法などが洗練されていない印象も強く、まさかこんなに早く実現の運びになるとは思いませんでした。

2年前にやはりゲロルシュタイナーでテストされていたプロトタイプと大きく異なるのは、デュアルコントロールレバーとバッテリーの搭載方法でしょう。

sm-bt79.jpg

市販モデルのバッテリーは専用のステーが付属していてボトルケージを取付けるダボに装着する(常識的に考えてボトルケージの下に共締めする)格好になるのだと思います。

電動デュラ(プロトタイプ)バッテリー

しかし、プロトタイプではフロントディレイラーのパンタグラフやアクチュエーターなどに沿わせるような格好で搭載されていました。このほうが見た目にはスッキリして良いと思いますが、フレームとの相性が問題になりそうな雰囲気もあります。最終的にこの方式が採用されなかった理由はよく解りませんけど。

(つづく)

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実績重視の結末

ご存じの通り、女子柔道48kg級で谷亮子は銅メダルに沈みました。

五輪三連覇を逃した谷亮子

過去の実績重視で代表を選ぶ選考基準は見直されるべきかも知れません。今年の4月、オリンピックの代表選考会を兼ねた全日本選抜体重別選手権で谷は山岸絵美に敗れ、準優勝に終わっています。昨年は世界選手権7連覇を飾った谷ですが、やはり全日本選抜体重別選手権では福見友子に敗れ、今回と同様に実績重視で代表に選ばれていました。

確かに、谷以外の選手は海外での実績が今ひとつといった状況です。殊にポイント重視の試合運びが常識となっているヨーロッパの選手を相手に競り勝つスキルという点で、谷はいまでも日本最高の実力を持っているといえるでしょう。ただ、あれだけの実力者である彼女も、海外デビュー当初から順調に勝てたわけではありません。

谷はまだ中学生だったとき、福岡国際で当時の世界チャンピオンだったイギリスのカレン・ブリッグスを破るという、センセーショナルな国際戦デビューを果たしました。あの鮮烈な「内股すかし」は、その晩のNHK『サンデースポーツ』にゲスト出演していた当時の九重親方(元横綱・北の富士)も大絶賛していたのを私はよく覚えています。

当時から立ち技の体さばきは絶品だった彼女ですが、あの頃は寝技が大の苦手で、外国人の変則的な組み手にもかなり苦戦していた印象です。

1991年に初めて世界選手権に出場したときは銅メダル、翌年のバルセロナでオリンピックデビューとなったときはフランスのセシル・ノバックに敗れて銀メダルに終わりました。このときはまだ高校生でしたから、年齢の割にはよく頑張ったといったところかも知れません。

1996年のアトランタオリンピックのとき、彼女は世界選手権2連覇という実績を重ねていました。が、全くのノーマークだった北朝鮮のケー・スンヒに敗れ、やはり銀メダルに止まりました。道着の襟をわざと逆に合わせるという、相手の奇策に足をすくわれるような格好だったのかも知れません。

この頃、「実力は世界一でもオリンピックには勝てない」と囁かれた彼女でしたが、いまの彼女は全日本選抜体重別選手権で2年続けて優勝を逃している以上、実力日本一とするのも微妙なところです。

一方、他の選手が谷を破っても日本代表に選んでもらえないとなれば、彼女たちの競技に対するモチベーションを低下させてしまう恐れがあります。また、彼女たちに海外での経験を積ませるチャンスを奪ってしまうのも、将来を見据えた場合に決して望ましいことではありません。

谷は次のロンドンオリンピックでは36歳になっています(彼女の誕生日は9月ですから37歳直前といったほうが良いかも知れません)から、年齢的にはかなり厳しいと考えるべきでしょう。ただ、世界選手権は今年から毎年開催となりますから、連覇を続けるチャンスもあるでしょう。

もし、今年の全日本選抜体重別選手権で谷を破った山岸絵美をこの北京オリンピックの日本代表に選んでいたら金メダルを獲得していたでしょうか? 個人的にはかなり微妙なところだったと思います。しかし、下駄を履かせた谷が金メダルを逃した以上、やはり不透明な選考基準を続けるべきではないと思います。

この銅メダルに無念を感じているのは、谷本人より山岸のほうかも知れません。

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嫌中知事、北京をゆく

例の「三国人発言」など、中国を始めとしてアジア諸国に対する誹謗中傷発言で話題に事欠かない彼ですが、2016年のオリンピック誘致だけのために北京へ出かけましたね。当初、北京オリンピックについて

ヒトラーの非常に政治的なベルリンオリンピックに、ある意味似ているような気がする。


と吐いていた彼がどの面を下げて行くのかと思いましたが、ま、いつもの厚顔でしたね。

ishihara_goes_to_beijing.jpg
羽田からANAの臨時チャーター機を飛ばすとなれば、
もの凄くカネがかかると思うのですが、やはり公費でしょう。
どれだけの費用がかかったのか、きちんと公表してほしいものです。


彼には選民思想の気があるのか、差別的な発言を繰り返しているせいで親日派の中国人にもかなり嫌われているそうですし、他のアジア諸国の人達にも良く思われていないようです。また、彼は2004年に

フランス語は数を勘定できない言葉だから国際語として失格しているのも、むべなるかなという気がする。


と発言したことで訴訟を起こされ、現在も係争中ですね。この発言はもちろん海外でも報じられており、フランスのル・モンド紙に「侮蔑と中傷をもってフランス語を遇す」と評されています。そんなこんなでフランス語圏の人たちからも彼は大変な反感を抱かれているようです。

ちなみに、近代オリンピックを創設したのがフランス人のピエール・ド・クーベルタン男爵だったことから、オリンピックの公用語はフランス語になっています。今年の2月6~9日にパリで開催された国際言語見本市「エキスポラング」ではその点をアピールするキャンペーンが展開されました。現在のIOC会長ジャック・ロゲ氏はベルギー人ですが、フランス語の話者ですから、やはりオリンピックの公用語としてフランス語を用いています。

彼は日本の政治家として最も外国人の評判が悪い一人ですし、オリンピックの公用語であるフランス語を侮辱した人物でもあります。本気でオリンピックを誘致したいと考えているのなら、彼を先頭に立たせるのは間違いだということに早く気づいたほうが良いと思うんですけどねぇ。

ま、個人的には誘致に関してあまり興味がないので、どうでも良いことですけど。

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言ったもの勝ち?

先般東京都の「ディーゼル車NO作戦」について、6回におよぶ連載の中でかなり際どい情報も示しつつ、批判を展開させて頂きましたました。が、東京都としては条例を施行して都内の道路を利用する人達に負担を強いている以上、無意味なことではなかったということにしたいのでしょう。

SPM濃度調査:07年度都内、全地点で基準達成 ディーゼル車規制の効果か /東京

 自動車の排ガスなどから大気中に浮遊する微粒子(SPM)の濃度が07年度、都内計80カ所の測定地点すべてで環境基準を下回ったことが都などの測定で分かった。全測定地点での基準達成は2年ぶり。光化学スモッグを引き起こす光化学オキシダントは基準を達成できなかったものの、光化学スモッグによる被害者は8年ぶりにゼロだった。

 都環境局によると、測定は都と八王子市が住宅地46カ所と幹線道路沿い34カ所で実施した。SPMは平均濃度でも住宅地で1立方メートル当たり0・025ミリグラム、道路沿いで同0・030ミリグラムとなり、いずれも環境基準の0・10ミリグラムを下回った。ディーゼル車規制の効果とみられるという。

 一方、環境基準が厳しく設定されている光化学オキシダントは19年連続で全地点未達成となった。最高濃度は0・193ppmと8年ぶりに0・2ppmを下回ったものの、平均濃度は上昇傾向。酸性雨の原因物質の一つとされる二酸化窒素の平均濃度も低下傾向にあるものの、その幅は小さかった。

 都大気保全課は「引き続き原因物質の削減に取り組んでいく」とコメントしている。【須山勉】

(C)毎日新聞(地方版) 2008年8月5日


まず、誤解を招きそうな書きぶりになっていますので指摘しておきますが、光化学スモッグなどの原因になると考えられている窒素酸化物に対して、東京都はディーゼル車の排出ガスに何の規制も設けていません。彼らが規制しているのは粒子状物質だけです。つまり、「光化学スモッグによる被害者は8年ぶりにゼロだった。」という点は東京都のディーゼル車規制による手柄ではありません。

さて、以前にも触れましたが、国の排ガス基準は段階的にどんどん厳しくなっています。ここ15年の間に4回も規制が強化されていますから、3~4年で新たなステージに上っている状態です。殊に、メーカーはその間に技術開発を済ませ、量産体制を整え、新型への切り替えのタイミングをはかり、在庫を残さないよう管理し、販売体制を整えるなど、大変な負担を強いられています。

一方、何度も述べていますが、東京都は初度登録から7年を超えて使用する場合に限って粒子状物質を削減するよう規制しているだけです(厳密にいえば、国の排ガス規制で最新より二つ以上前の車両を7年超で使用する場合に適用されますが、最近は国の規制が3~4年で切り替わっていますから、7年も経てば大抵は最新より二つ以上前の規制に該当します)。東京都はこのように古い車両に対してのみ規制を実施しただけですから、彼らの政策が浮遊微粒子の大気濃度を削減する実効性があったのか疑問が残ります。

また、昨今の燃料コスト高騰の影響で道路の混雑が緩和される傾向も見られます。首都高も中央環状が新宿線まで延長され、それに絡む道路の渋滞はかなり緩和されているハズです。もっとも、例のタンクローリーの火災でエライことになってしまいましたが。

このように、大気中の浮遊微粒子が減少する要因はいくつも考えられます。個人的には国の排ガス規制のほうが遙かに強力な効果をもたらしていると思われますが、仮に国の規制や交通量などの変化がなかった場合でも、東京都のディーゼル車規制が数値に表れるほど浮遊微粒子の大気濃度を減少させていたと言えるのでしょうか?

ちなみに、東京都環境局は浮遊微粒子の大気濃度の推移を集計したデータを示しています。

東京のSPM大気濃度推移

これを見る限り東京都のディーゼル車規制が功を奏していると読み取ることは不可能だと思うのですが、彼らが主観を排除して科学的に評価できているのか甚だ疑問です。例えば、東京都のような独自のディーゼル車規制がない他の大都市圏と比較して顕著な差が見られるとか、そうした具体的な根拠となるデータがなければ説得力のかけらもありません。

逆に、そうしたデータもないまま、単なる思い込みで「ディーゼル車規制の効果とみられる」というのでは、手柄の横取りといいますか、言ったもの勝ちといいますか、いずれにしても非常に不誠実な態度になると思います。少なくとも、石原知事はあのとき「国は怠慢」と言い放っていたのですから、国の手柄を横取りするようなことは断じて許されません。

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電動デュラ発売決定! (その2)

こうした新製品でまず気になるのは価格と重量ですが、シマノの公式サイトでは特に触れられていないようです。ただ、海外の情報サイトではスクープしているところもありまして、cyclingnews.comの記事によりますと、以下のようになっています。

デュアルコントロールレバー(ST-7970) : 255g/pair £349.99/pair
リヤディレイラー(RD-7970) : 225g £349.99
フロントディレイラー(FD-7970) : 124g £249.99
バッテリー(SM-BT79) : 68g £49.99
バッテリーチャージャー : £49.99
ケーブルセット : £99.99

※信頼できる情報かどうかは各自でご判断下さい。

イギリスポンドは円に対して昨年くらいがピークでしたが、このところ下げていて今日のレートで1ポンド=212円くらいです。単純計算でいきますと、デュアルコントロールレバーとリヤディレイラーが各々74,200円、フロントディレイラーが53,000円、バッテリーおよびチャージャーが各々10,600円、ケーブルセットが21,100円となります。

上記の合計は243,700円になりますが、先般ご紹介した79デュラの価格情報とcyclingnews.comのそれを比較しますと、クランクセットやスプロケットの価格が26~28%くらい割高になっていますので、上記一揃えの日本国内価格は18万円程度になるかも知れません(もちろん、単純計算による推測に過ぎませんが)。

また、シフトやバッテリーのインジケーターはフライトデッキ(SC-7900)に集約されるとのことです。ま、個人的にはそのほうが合理的で正しい判断だと思いますが、電動デュラを導入するならそれも必須になるでしょう。定価20万円前後は覚悟しなければならないという感じでしょうか。

電動デュラ(プロトタイプ)コントロールレバー
電動デュラのプロトタイプ
2年前にゲロルシュタイナーでテストされていたときは
ご覧のようにブラケット上端に液晶インジケーターが備わり、
ギヤの段数とバッテリーの残量が表示されていました。
この見た目のキワモノっぽさでは一般向けの商品として
なかなか成立しにくいでしょう。


ST-7900フライトデッキ表示部アップ
SC-7900 フライトデッキ
ギヤのインジケーターは言わずもがなですが、
左上にバッテリーの残量を示すインジケーターもあります。
これはフライトデッキ本体のバッテリー残量かと思っていましたが、
どうやら電動デュラに対応するものだったということですね。
ま、誰がどう考えても情報表示はこちらに集約したほうが
遙かに見やすくて合理的だと思います。


従来のデュラエースの価格設定から考えますと、非常に割高感があります。が、上記で推測したとおり電動メカ一揃え18万円程度だとして、これに駆動系と制動系を加えても、スーパーレコードの38万円超に比べればまだまだ割安で良心的な価格設定といえるでしょう。重量はかなり差がありますが。

で、その重量ですが、cyclingnews.comの記事が信頼できるものとして、7900系デュラエースと比較してみましょう。

まず、シフトケーブルを巻き上げる機械構造がなくなり、単なる電気スイッチに置き換わったデュアルコントロールレバーは、ST-7900比で123.5gも軽くなっています。一方、アクチュエーターを内蔵するディレイラーはフロントがFD-7900比で57g、リヤもRD-7900比で59g重くなり、さらにバッテリーで68g追加となります。

ケーブルの取り回しはフレームなどの条件によって変わりますし、電動デュラのケーブル重量は解りませんので不問としますと、7970系3点+バッテリーのトータルは7900系3点より60.5g増にとどまるものです。これは7800系3点との比較で1.5g減となりますので、非常に立派な仕上がりになっていると思います。


シマノがコンフォート向けのコンポーネンツ、ネクサーブでオートマチックの電動シフトを発売していたのはもちろん知っていましたが、電動デュラに用いられた「Di2」という名称も既にネクサーブで使われていたことは今回初めて知りました。いずれにしても、シマノにとって電動シフトシステムの商品化はこれが初めてではありません。

また、以前からゲロルシュタイナーやスキルシマノといったプロチームでも盛んにテストされてきましたので、過酷なステージレースの実戦にも耐えてきたわけですね。今年のツールでも一部で(特にTTで)テストされていました。それゆえ、信頼性や耐久性、全般的な完成度は最初からかなりのハイレベルで出てくるのではないかと予想されます。

個人的にはこれまで断片的に伝えられてきた電動デュラが、こうもアッサリと市販される運びとなったことに驚かずにはいられません。スケジュールが順調にいけば、来春発売となるそうですから、今秋のサイクルモードに出品されるのは間違いないでしょう。来夏のボーナスで導入というパターンになる人も少なくないと思います。私もそのパターンにハマってしまうのか否か? サイクルモードでの印象で決まってしまいそうな予感です。

(おしまい)

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電動デュラ発売決定! (その1)

連載というのは善し悪しで、ひとつのネタで引っ張れる利点がある一方、間に脈絡のないエントリを挟みにくいという欠点があります。カンパニョーロが11s化したニューモデルを発表したときもそうでしたが、今回も6回にわたる連載の最中となってしまった都合で、私達サイクリストにとってのビッグニュースを取り上げるのが遅くなってしまいました。

電動デュラ
DURA-ACE 7970 series

皆さんもご存じのとおり先週の土曜日に7970系デュラエースDi2(以下、電動デュラ)を来春発売する旨、シマノから正式にパブリシティされました。シマノの公式サイトは日本語のほうが情報が遅かったり詳細が伝えられなかったりして、ロード系に関してはヨーロッパのほうがずっとアテになるというのがいつものパターンでした。

が、今回は珍しくヨーロッパのサイトにある「News & Info」ではまだ伝えられていないうちに日本語サイトでは「新製品情報」として伝えられました。(デュラエースの公式サイトは更新されてちゃんと電動デュラも案内されていますが。)

思えば、シマノは2ヶ月前に79デュラを発表するも、目立ったところではデュアルコントロールレバーのシフトケーブルをハンドルバーに沿わせる内蔵式に変更したところくらいで、あとは地味にブレーキレバーやリヤディレイラーのプーリープレートをカーボン化したり、さらに地味に変速系(主にフロント)を改良したり、大して万人ウケしないトピックにとどまっていました。

直後にカンパの11s化が発表され、一気に話題をさらわれたような格好になりましたが、ここに来て電動化というビッグニュースでやり返す展開になりました。シマノがカンパの動きも読みながらこうした展開を初めから狙っていたとしたら凄いことですが、そうでなくても稀に見る新機軸の応酬になりましたね。


さて、件の電動デュラですが、既にあちこちで伝えられているのでご存じの方も多いかと思いますが、コンポーネンツ全般は79デュラと共用になります。つまり、制動系や駆動系は79デュラと同じで、デュアルコントロールレバーと前後のディレイラー、それらを駆動するバッテリーとその充電器、ワイヤーハーネスなどが電動デュラ専用となります。詳しくは互換チャートを参照して頂いたほうが解りやすいでしょう。

電動デュラ互換チャート(リヤ)
電動デュラ互換チャート(フロント)
電動デュラ互換チャート(ブレーキ)
縮小して見づらくなっていますので
PDFの公式チャート(0.5MB)もご参照下さい。


電動変速は7970系となり、原則として駆動系および制動系は手動変速の7900系互換となります。唯一、電動は11-28Tのカセットに対応していませんが、これはパンタグラフのスラント角に関係するのかも知れません。アクチュエーターの絡みで制約があったのでしょうか?

余談になりますが、やはり例のFC-7800Cがチャートに載っています。が、どういう訳か7800系互換ではなく、7900系のライン上にあります。FC-7900よりたったの16gしか軽くないコレを本気で発売する気なのでしょうか? それとも構造やカーボンファイバーのグレードを見直すなどしてより軽量化するつもりなのでしょうか?

ま、いずれにしても7900系互換としたこの期に及んで「FC-7800C」と呼称すればユーザーの混乱を招くのは必至ですが、そうしたところに意識が及ばないあたりは実にシマノらしいところです。

(つづく)

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東京都の「ディーゼル車NO作戦」とは何だったのか? (その6)

東京都は「ディーゼル車NO作戦」というラディカルなアドバルーンをぶち上げ、当初は「都内に入ってくる全てのディーゼル車にDPF(粒子状物質現象装置)を装着させる」としていました。その拠り所はあの段階で実質的に××セラ研以外ありませんでしたが、他系列の車両ではメーカー保証が受けられなくなるという状況が確認されました。私はその結果を受けたものだと認識していますが、東京都の条例は以下のように大幅な下方修正を余儀なくされました。

・国の最新の排ガス基準適合車および、その一つ前の排ガス基準適合車には規制なし
・国の最新より二つ以上前の排ガス基準適合車で初度登録より7年を超えて使用する場合は東京都知事の指定するDPFを装着すること

これが、最終的に東京都の決した条例の主な部分です。あの大きなアドバルーンもここまで萎んでしまい、国の基準にほんのりと産毛を生やした程度といったところでしょう。殆ど骨抜きになってしまったこの条例に、どこまでの実効性があるのかは全くの謎です。

東京都は当初、公害防止条例の策定に自動車メーカーやユーザー達の意向など聞く機会を設けることはありませんでした。が、後に公聴会などを開いてメーカーやトラック協会などに対しても積極的に意見を聞くようになったという話を聞きました。そのタイミングは例の指名競争入札の後くらいだったように記憶しています。

また、前々回でも述べましたが、某メーカーのエンジンR&D部の方が「実用に耐えるDPFを平成元年規制車に装着しても、結局は何も装着しない最新型エンジンのほうがPM(粒子状物質)の排出量はずっと少なくなっているんです。しかも、NOx(窒素酸化物)の排出量も遙かに少なくなっていますし。」といっていた同種の意見を東京都もどこかの段階で聞き、それを真摯に受け止めたようです。彼らは2003年の1月には「ディーゼル車買い換えのための新たな融資制度」を導入しました。

こうした後の軌道修正も含めて評価するなら、東京都の取り組みの全てが出鱈目だったと言うことはできないでしょう。DPF導入の助成金制度も車両買い替えのための融資制度もそれなりに意味はあったと思います。また、不正軽油を使用する業者などの摘発を積極的に行っていったことも評価すべきでしょう。

余談になりますが、不正軽油というのは軽油に灯油や重油を混合させたものや、灯油と重油を混合したものに濃硫酸や苛性ソーダなどで処理した変造ディーゼル燃料です。これは排出ガスにも問題があるのですが、軽油取引税を脱税する行為にもあたります。不正軽油の使用は大気汚染物質を増やすばかりでなく、行政からすれば税収を損なうものでもありますから、これを取り締まるのは一石二鳥といえるでしょう。実際、東京都主税局は不正軽油Gメンを組織し、違反事業者などを摘発したといいます。

それはともかく、当初現実問題を全く無視してスタートした東京都の環境対策は、最終的に基準が大きく引き下げらました。それならば、入念な下準備を行って最初から現実をきちんと見据えておくべきでした。一般の方はご存じないかも知れませんが、多くの関係者を振り回した東京都の「ディーゼル車NO作戦」は2000年末に終了しています。このキャンペーンは僅か1年4ヶ月で終わっていたのです。このとき彼らも方向性の誤りを正さなければならないと気付いたからでしょう。

つまり、1999年8月、石原知事がペットボトルに詰めた粒子状物質を報道カメラの前でぶちまけたパフォーマンスは全くの勇み足だったということです。東京都環境保全局(現在は旧清掃局と統合して環境局となっています)の職員は恐らく最初の1年くらいの間に猛勉強したのだと思います。が、見切り発車が過ぎました。もう少し我慢し、メーカーや主要な関係者からも意見を仰いでから動き始めれば、こうしたバカバカしい混乱は生じなかったハズなのです。

ま、世間一般には大衆メディアというフィルターを通して伝わって行きましたから、混乱があったことなど全くといってよいほど知られていないでしょう。が、私は当時もろにインサイダーでしたから、死ぬほど振り回され、石原慎太郎を呪い殺してやりたいと思ったほどです。

東京都の「ディーゼル車NO作戦」が何だったのか、元インサイダーである私の個人的な感想としましては、勉強不足の「勇み足キャンペーン」だったと評するほかにありません。

東京都があのキャンペーンを始めた最初の1年くらい、彼らは現状や実効性を深く考えずに「ディーゼル車を排除すればよい」とか「DPFを付けさせればそれでよい」といった短絡思考に陥っていました。それでも途中から間違いに気づいて1年4ヶ月で終了させただけマトモだったと言えるかも知れません。

しかし、現在でも多くの環境対策で同様の短絡思考による「勇み足キャンペーン」が繰り広げられています(先般、当blogでも「発電所は急に止まれない」と題したエントリで取り上げたコンビニの深夜営業を規制しようとする風潮もその一例になるかと思います)。こうしたケースはいずれも認識不足、研究不足、イメージ先行の精神主義によるものです。同じようなことを何度も繰り返さないよう、少しは進歩して欲しいものです。

(おしまい)

東京都の「ディーゼル車NO作戦」とは何だったのか? (その5)

一時、東京都はすべてのディーゼル車にDPF(粒子状物質減少装置)の装着を義務づけようとしていました。が、これは決して安価なものではありません。業界から離れて久しいので現在の相場は把握していませんが、私が関係していた頃は部品代だけで100万円前後になる装置でした。ものにもよりますが、大型車などは取付け工賃を含めて百数十万円もかかったんですね(もちろん、排気量が大きくなるほど装置も大きくしなければなりませんから、車格によって相応の価格差はありますけど)。

これが台湾のように車両の運行を止めている期間の補償も含めて行政の全額負担ならハナシは別ですが、自腹でこれだけの費用を投じた車両を1年や2年で代替えするわけにもいきません。百数十万円を投じて装置を取付け、その費用の償却を毎年数十万円と見たら5年くらいは延命させなければなりません。

これでは徒に古い車両を増やすことになり、排ガスのキレイな新型車への代替えを遅らせ、結果的に大気汚染抑制には逆効果ではないかという意見も多く聞かれました。もちろん、トータルでの環境負荷を考えると代替えサイクルを伸ばすべきか否かは非常に難しい要素を含みます。例の「エコ替え」のような部分評価では全く無意味で、厳密なLCAを行わなければ正しい評価できないでしょう。

ただし、トラック業界には10年で100万kmを走る車両もゴロゴロありますし、十何年も酷使されるケースは決して珍しいハナシではありません。生涯走行距離が自家用乗用車の10倍など当たり前で、使用年数も1.5倍~2倍くらいになる業界ですから、適切なタイミングでの代替えが有効になるとする考え方もあながち間違いとはいえないでしょう。

また、古いディーゼル車の使用を制限する「自動車NOx・PM法」という国の法律もあります。基準をクリアしていない車両は特定の年数を過ぎたら対策区域内に使用の本拠を置くことができなくなりますから、従来から代替えの目処の一つになっていました。しかし、そのタイミングは東京都の条例が定める猶予期間と一致していませんから、過剰にユーザーを圧迫する条例ではないかとする反発も根強くあります。

兎にも角にも、東京都が推進した公害防止条例は、ひとえに「目に見える」排ガス成分であるPM(粒子状物質)を減らすことのみに集中し、「目に見えない」NOx(窒素酸化物)その他の物質には何の網も張らなかったのは事実です。

これでは片手落ちとしか評しようがない排ガス規制になりますが、そうしたことを指摘していたメディアは皆無でした。要するに、規制の中身など知らない、勉強する気もない、そういうメディアが石原都政を持ち上げて、世論もそれを支持するというバカげた状況を創っていたということです。

あれから約2年後の2001年4月、東京都は30年ぶりに全面改正した東京都公害防止条例を施行しました。同年7月には「東京都粒子状物質減少装置指定要綱」に基づいてDPFの指定申請の受け付けが始まり、11月には東京都指定粒子状物質減少装置装着車のステッカー貼付式がとり行われました。

しかし、あのとき他社系メーカーの車両にも適応できると豪語し、多くの関係者を振り回した××セラ研は東京都へDPFの指定申請を行っていませんでした。

東京都が条例案として「全車にDPF装着義務付け」を表明していたその拠り所になっていたのは、あの時点で××セラ研の「全車対応可能」というハナシだけでした。が、例の指名競争入札で全社辞退し、メーカーの保証が受けられなくなる非現実的なものだということが明らかになりました。そのことが直接関係していたかどうかは解りませんが、いずれにしても、東京都が方針転換を迫られたのは事実です。

ま、東京都環境科学研究所との絡みで××セラ研が表立ってしまって、彼らはスケープゴートにされてしまったという可能性もありますが、いずれにしても当初あれだけ突っ走っていた××セラ研が結果的にドロップアウトしてしまったのは、相応の「何か」があったのは間違いないでしょう。

その後、個人的に調べてみましたが、やはり××セラ研は例の一件の後、事実上撤退していたようです。東京都環境科学研究所との共同プロジェクトがあった手前、あからさまな撤退はできなかった様子で、しばらくは市場にとどまる素振りだけは示していました。

しかしながら、小型車用400万円、中型車用500万円、大型車用600万円という、およそ現実的ではない価格を設定し、あえて誰からも相手にされない状況をつくっていたようです。そして、ひっそりとフェードアウトし、2001年の条例改正の頃には既に忘れ去られた存在になっていったわけですね。

彼らが東京都を振り回した故に撤退するハメになったのか、むしろ振り回されたのは彼らのほうだったのか、その真相は闇の中です。

(つづく)

東京都の「ディーゼル車NO作戦」とは何だったのか? (その4)

以前にもMDIのエアカーについて述べたとき触れましたが、トヨタは毎年9000億円を超える開発費を環境対策技術や将来へ向けての技術開発に投じているそうです。一方、東京都の条例が策定される際にトラックメーカーは散々翻弄されましたが、彼らも排ガス対策技術のためだけに毎年100億円を超える予算を注ぎ込み、年々厳しくなる国の規制強化のスケジュールに間に合わせるべく、血の滲むような努力を重ねていました。

あまり詳しいことは書けませんが、私は某トラックメーカーのエンジンR&D部の方と懇意にさせて頂いていた関係で、研究施設を見学させて頂いたことがあります。当時の担当部長の特別な計らいで通常は社員でも部外者立入厳禁のベンチテストルームまで見せて頂きました。様々な手立てを用いて研究されているそのレベルの高さに私は心底驚愕するとともに、あの石原知事でもこれを見れば「怠慢」などと口が裂けても言えないだろうと思いました。

ディーゼル車の排ガス規制やその対応に関して、国も自動車メーカーも、惰眠をむさぼっていた人間などいなかったでしょう。もしかしたら、竹下内閣時代に運輸大臣を務めていながら、こうした経緯を知らなかった彼だけが惰眠をむさぼっていたのかも知れません。また、大衆メディアの排出ガス規制に関する認識もズブのド素人そのもので、東京都のぶち上げた子供だましのアドバルーンにまんまと乗せられたという格好だったのでしょう。

ここで少し解説しておきますと、ディーゼルエンジンで問題となる主な排出ガスの成分は以下の4つになります。

(1) 窒素酸化物(以下NOx)
(2) 硫黄酸化物(以下SOx)
(3) 粒子状物質(以下PM)
(4) 炭化水素(以下HC)

SOxに関しては前々回でも触れましたように、燃料の精製段階で脱硫処理してやれば、その分だけ抑制することができます。HCというのは未燃焼の燃料です。また、このほかにも極々わずかに一酸化炭素も出ますが、ガソリンエンジンほどではありません(もし、一酸化炭素中毒で自殺したいと思われる方はディーゼルエンジンではまず無理だと思いますので、ガソリンエンジン車の使用をお勧めします)。

上記のうち、前二者と後二者では素性が異なります。前者は燃焼温度が高く、完全燃焼しやすい状態になるほど多く排出されます。一方、後者は不完全燃焼の状態で生じるもので、燃焼温度が低いほど条件は悪くなるわけです。

特に問題になるのは光化学スモッグや酸性雨などの原因になるとされるNOxと、気管支疾患の原因と考えられているPMですが、これらは要するに二律背反の関係になります。NOxを減らそうと思って燃焼温度を下げれば、不完全燃焼となって燃えかすのススなどを主体とするPMが増え、PMを減らそうと思って燃焼温度を上げれば、大気中の窒素と酸素が筒内で反応し、NOxが生成されてしまいます。つまり、両方を同時に減らすのは非常に難しいことなのです。

ですから、国土交通省は自動車メーカーに対して排出量削減技術の進捗具合を打診しながら、実現可能なスケジュールで段階的に排ガス規制を実施し、初回にも触れたとおり、昭和54年、昭和58年、平成元年、平成6年、平成10-11年、平成14年、平成17年と、小刻みに規制値が引き上げられていったのです。

これに対して、2000年2月の時点で東京都が検討していた具体的な規制の内容は以下の2点になります。

・DPF(粒子状物質減少装置)を装着していないディーゼル車は、都内(島しょを除く東京都全域)を運行することができない。
・都内登録のディーゼル車は、DPFを装着しなければならない。

つまり、東京都が規制したのは(3)のPMだけです。全体のバランスなどは無視してこれだけを減らせと言ってきたに過ぎません。

もちろん、日本の自動車メーカー本体でも後付けのDPFは開発されていました。しかし、ヒーター式は電力供給のためにオルタネーターの容量アップなども必要な場合があったり、ヒーターの寿命も考慮する必要があったり、色々な課題が山積していました。一方、酸化触媒を用いる方式は機械的な構造がシンプルなもので済みますが、能力や燃料の適合性などにネックがあった時代でしたから、そのあたりも整理しながら開発を進めていかなければならない状況だったわけです。

東京都の条例案の検討が始まった当初は自動車メーカーに何の断りもなく進められていましたから、東京都の関係者はこうした状況もあまりよく理解していなかったでしょう。彼らはこうした流れの一切を考慮せず、上述のように「とにかくDPFを装着させればそれでいい」という、非常に偏った短絡思考の条例案をぶち上げました。丁度その頃、私は某メーカーの方と一緒に仕事をしていましたが、彼はこう言っていました。

「石原さんは全てのディーゼル車にDPFを付けろと言ってますけど、例えば平成元年規制車にDPFを付けても、何も付けない平成10年規制車のほうが排ガスはずっとキレイなんですよ。平成元年規制車は最新のものよりPMの量が一桁多いですから、フィルターの目をあまり細かくすることが出来ないんですね。実用に耐えるDPFを平成元年規制車に装着しても、結局は何も装着しない最新型エンジンのほうがPMの排出量はずっと少なくなっているんです。しかも、NOxの排出量も遙かに少なくなっていますし。」

このとき、東京都は全てのディーゼル車にDPFを装着せるとしながら、それによって具体的にPMの排出量をどのレベルまで低減させればよいのかという、具体的な数値については一切示していませんでした。このことも「とにかくDPFを装着させればそれでいい」という、素人考え丸出しの単純な方針であったことを裏付けるものです。

(つづく)

東京都の「ディーゼル車NO作戦」とは何だったのか? (その3)

東京都が「ディーゼル車NO作戦」を発表したとき、「石原知事に入れ知恵したのは××セラミックス研究所(某自動車メーカー××社の100%子会社、以下××セラ研)だったのではないか?」という噂も流れていました。が、これはデマだったと思います。というのも、石原都政がスタートする以前の1998年には東京都環境科学研究所がレトロフィット(後付け)DPF(粒子状物質減少装置)の共同開発者を公募し、それに手を挙げて共同プロジェクトに参画したのが××セラ研だったからです。

恐らく、石原知事は就任後様々な報告書などに目を通す中で、解りやすく大衆ウケするこのプロジェクトに目を止めたのではないかと思います(あくまでも個人的な憶測です)。学識経験者など現場を知らずに机上論をこねるプロたちを絡めて「ディーゼル車NO作戦」を展開させたのではないかと、要するに彼がよくやる「単なる思いつき」なのだろうと、私はそんな風に想像していました。(同様に深く考えずに始めた銀行が火の車になり、莫大な税金が投入された愚は皆さんもよくご存じの通りですね。)

東京都環境科学研究所との共同プロジェクトに参画した××セラ研のDPFはセラミック製のフィルターを2セット用意し、片側のフィルターが目詰まりしたらもう一方へ切り替え、休ませている間にフィルターに仕込まれた電気ヒーターで粒子状物質を焼いてしまうという方式でした。

もちろん、東京都の保有車両へ装着して試験が行われていたDPFは××セラ研だけではありませんでした。他にも××セラ研と同様に2セットのヒーター内蔵フィルターを交互に使う方式を提案していたメーカーはありましたが、この方式では××セラ研のものが一番優れていました。というのも、彼らのDPFは非常にコンパクトで、後付けの改造が比較的容易だったからです。

他社の場合、フィルター2コを横に並べていましたので、スペースの確保が難しいケースが多々ありました。しかし、××セラ研のものはフィルターを前後に配置していたため、スペース効率が非常に優れていました。こうしたフィルターは消音効果もありますので、マフラーとの差し替えになるのですが、デフォルトのマフラーと比べてもあまり大きくならない××セラ研のDPFは、それゆえ改造が容易だったわけです。


××セラ研のDPF
エキゾーストマニホールドとつながるパイプはタイコの中央へつながり、
そこにある切替弁で写真手前と奥、前後に2つ並べられた
セラミックフィルターのいずれかに排ガスを通す格好になります。
他社はこのフィルターを横に並べていましたので、
デフォルトのマフラーとの単純な差し替えが非常に困難でした。


××セラ研のDPFは東京都交通局のバスや東京都清掃局(当時)のゴミ収集車にも試験装着されるなど、状況としては他社より完全に頭一つリードしているような格好でした。が、実際に現場の意見を聞いてみますと、作動不良による目詰まりもあったようですし、「装置の中に電気を通すため、高圧洗浄機の水を直接かけるなといわれているので、洗車しにくくてかなわない」と、評価はあまり芳しいものではない印象でした。

また、この方式を信用していなかった東京消防庁は緊急出動時にエンコされては人命に関わるので、万一目詰まりを起こしても対処できるよう、バイパスを設ける必要があると判断していました。

とはいえ、国内メーカーとしては草分け的な存在だった彼らは、ディーゼル車NO作戦の展開からかなり強気のアピールを始めたようでした。あの時点で××セラ研は他系列メーカーでも殆どの車両に装着できると豪語していましたし。(ちゃんとテストしていたのかどうかは謎ですが。)

あの段階ではまだ試験販売という状況だったと思いますが、車載状態で再生可能なDPFの市販を開始していたのは××セラ研が実質的に唯一という状況だったと思います。そうした状況にあって東京都は都内を走る全てのディーゼル車にDPFの装着を義務づける条例を策定しようと動いていましたから、彼らとの密接な関係が疑われたのは無理もないことだったと思います。

しかし、東京都は建設局の車両購入案件で××セラ研の系列販社だけを指名から外しました。その一方で、彼らが配布した仕様書には「DPFを取付けること」と明記されており、担当職員が「DPFのアテがない方は、こちらに資料をご用意していますので、申しつけて下さい」といって××セラ研を紹介していました。こうした状況から、

「××セラ研がどこのメーカーにも対応できると豪語していることを東京都は確かめるため、わざと系列販社を呼ばなかったのではないか?」

といった噂が流れました。で、結局のところ前回、前々回でも触れましたように、この案件は不調となりました。それは××セラ研が対応可能と言い張っても、当の自動車メーカーが保証できないと判断したからです。要するに、テストもしたことのない社外品を排気管に装着し、エンジンに不具合が生じたとしても、自動車メーカー側では責任を負えないというわけです。このため、各社とも入札の際に「辞退」の札を投じたのです。

(つづく)

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まとめ

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