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酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

プレミアムブランドは一日にしてならず (その2)

いつだったか、経済評論家を気取った人が「日本ではレクサスも上手くいっていないのに、ホンダが日本でアキュラを展開しても玉砕するだけだ。日本でインフィニティやろうとしない日産は賢明だよ。」というようなことを得々と語っていました。

ま、確かに現在の日産は大衆車の売れ筋も充分に確保できていないくらいですから、日本でインフィニティを展開するのはかなり難しいでしょう。アキュラも当初は今年からということになっていましたが、何だかんだで2年延期となり、そしている間にまた景気が下降し、タイミングとしてはレクサスのときより厳しくなっているかも知れません。

とはいえ、ホンダはトヨタよりも早くプレミアムブランドを北米市場で展開したパイオニアですし、現在もそのブランド価値を高めようとする努力は惜しんでいません。彼らは、昨年カリフォルニア州トーランスに1500万ドルを投じてアキュラ・デザインスタジオを設けているんですね。要するに、アキュラブランド専門のデザインスタジオをわざわざ作って、さらにテコ入れを図ろうとしているわけです。

アキュラデザインスタジオ(外観)
アキュラ・デザインスタジオ

この他にもホンダはアドバンスドデザインスタジオを新設しています。市販には直接結びつけないコンセプトカー専門、つまり将来を見据えたデザインコンセプトだけを研究するための拠点ということです。

いまは人の褌で相撲を取るような情けないデザインも繰り出して来るホンダですが、デザイン部門の強化には大いに期待したいところです。実を結ぶのは何年も先のことになるのだと思いますが、こういうことは焦ったところで付け焼き刃になるのがオチでしょうから、長い目で見守るべきですね。

こうしてみますと、トヨタもホンダもプレミアムブランドの醸成には近道をしようとせず、地道に王道を歩んでいるように思います。3年やそこらの売上やシェアなどのデータしか見ないで評価するような人たちはこうした長期的なビジョンはどうでも良いのかも知れませんけどね。

私はただの一素人ですが、日本国内でのレクサスブランドの扱いについてトヨタに注文を付けさせて頂くとしたら、まだまだ「差別化が甘い」というところでしょうか。

トヨタのグローバルサイトのトップページにある「自動車事業」の項には「TOYOTA」「LEXUS」「HINO」「DAIHATSU」と並んでおり、公式サイトもトヨタブランドレクサスブランドを明確に分けています。が、ブランドイメージの広報手段として定石中の定石であるモータースポーツ、殊に日本の国内イベントでは最高の集客力を誇るスーパーGTで各々のブランドをごちゃ混ぜにしているのは頂けません。

スーパーGTの公式サイトにあるチームインフォメーションをご覧頂けば一目瞭然ですが、GT500クラスでレクサスSC430を走らせている全チームに「トヨタ」を冠しているのは、プレミアムブランドとして「トヨタ」とは別に「レクサス」を設けた意味を失わせるものです。

ECLIPSE ADVAN SC430
ECLIPSE ADVAN SC430 (TOYOTA TEAM TSUCHIYA)
ま、元々は日本国内でトヨタ・ソアラとして売られていたクルマですが、
レクサスは鼻先のエンブレムくらいで、トヨタのロゴのほうが目立ち、
トヨタを冠したチーム名で車名にもレクサスが出てこないというのでは
ブランドを分けた意味がないでしょう。


一方、狡猾なイギリス人に騙されたフォルクスワーゲン(以下VW)はロールス・ロイスを買収したつもりが、「ロールス・ロイス」の商標権は僅か90億円少々でBMWに切り売りされ、ロールス・ロイス社とその古い生産設備と改革意識の低い従業員と「ベントレー」の商標権に1000億円近くもの巨費を支払うハメになってしまいました。

しかし、泣き寝入りしても仕方のない彼らは、ベントレーがもっとも輝かしかった時代のイメージを蘇らせるべく、アウディR8で実績を重ねていたル・マン24時間耐久レースにベントレーを復活させました。

Bentley_Speed8.jpg
BENTLEY EXP SPEED 8
73年ぶりにル・マン優勝を飾ったベントレーですが、
エンジンもシャシーもアウディとは異なるものが与えられ、
もちろん、VWの名称はどこにも出てきません。
(ちなみに、このイラストは私の手描きです。)


ベントレーEXPスピード8はクローズドボディのGTPクラスですから、オープントップのLMPクラスになるアウディR8とは元々異なるシャシーが与えられていました。また、参戦初年こそ同じエンジンでしたが、翌年からはそれも独自のものに改められました。しかし、こうした努力はあまり知られることもなく、熱心なファン以外にはアウディR8にクローズドボディのカウルを被せただけと認識されているのは何とも気の毒なハナシです。

VWのような徹底した取り組みでも充分な理解を得られるとは限らないわけですね。トヨタがそこまで見越しているとは考えられませんが(いえ、彼らなら人を見透かしてそれくらい平気だったりしますが)、いずれにしてもスーパーGTでのブランド混用は無神経過ぎるでしょう。

レクサスをプレミアムブランドとして際立たせたいのなら、トヨタブランドとイメージが重ならないよう、明確な棲み分けをさらに進めていくべきです。クラウンのように位置づけが難しい車種を展開していなかった北米市場では、そうした問題もなく比較的スムーズに運んだかも知れません。が、日本国内においてはヒエラルキーの頂点にクラウンを君臨させてきた歴史もありますから、両ブランドの差別化に当たって、その扱いは非常に難しいものがあると思います。

先代「ZERO CROWN」へのモデルチェンジでは、ユーザーの若返りを狙ってスポーティな雰囲気も漂わせました。が、レクサスブランドのことを考えれば、これは失策だったかも知れません。クラウンに関しては上位車種を次第に抑え、全般的な車格を徐々に下げていくなどして、そのユーザーをレクサスに取り込んでいくようなマーケティングを本気で検討しなければならない段階に来ていると思います。

もっとも、私たちより上の世代には「いつかはクラウン」のコピーもまだ生々しい記憶です。なので、クラウンの車格を見直すこともまた「一日にしてならず」なのでしょう。

(おしまい)
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