FC2ブログ

酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

地獄のソウルは天国へ生まれ変わる

日本でも長きにわたってサイクリストの受難が続いています。自動車の普及が進んでいった1960~70年代、それに伴って自転車との接触事故が増加していきました。そうした状況を受けて自転車専用道の整備を前提とし、緊急避難的な措置として自転車が歩道を走行できるように道交法が改められたのは1978年のことでした。この姑息な法改悪は、しかし前提条件がほぼ完全に棚上げされたまま時間だけ流れ、30年が過ぎ去ってしまいました。

お陰で、「軽車両である自転車は本来車道を走行しなければならない」という原則を殆どの人が忘れ去ってしまいました。また、運転免許を取得した瞬間に全ての記憶がリセットされた阿呆ドライバーは自転車が車道を走っていることが許せず、クラクションを鳴らしたり幅寄せしたり、時には罵声を浴びせるなど、傍若無人に振舞うという体たらくです。

こうして歩道に押し上げられた自転車ですが、走りながら携帯電話を操作する大莫迦者が増加していることなども手伝って、歩行者を死傷させる事故が増えてきました。そうした状況から批判の声が上がるようになり、国土交通省や自治体などもようやく重い腰を上げはじめました。現在はモデル地域を設定して自転車専用レーンなどを設置し、その様子を伺っているような状況かと思います。

もっとも、そうした計画を進めているのは普段から自転車を利用していない人たちなのでしょう。歩道を分割したり、車道をわずかに削って最小限の幅員しか確保していないためにゆっくり走っている人がいたらたちまち渋滞してしまったり、狭い幅員でも無理矢理対面通行にしたり、非常に走りにくいケースも少なくないようです。結局、利用者のことを真剣に考えるつもりはないのかも知れません。

一方、韓国は日本にも劣るサイクリスト地獄だといいます。中央日報の記事「乗れば悪口を言われる自転車…道路の構造が問題」によりますと、自転車を通勤手段にしている人の割合は日本の14%、オランダの27%に対し、韓国はわずか1.2%、ソウル市内に限っては0.8%に過ぎないそうです。ステイタスなどの問題もあるようですが、もっとも大きい理由は道路事情の悪さにあるようです。それゆえ、安全面の懸念から自転車通学を禁止している学校も少なくないそうです。

そうした韓国にあって、ソウル市が全域に大規模な自転車専用道を整備するというニュースが入ってきました。

ソウル全域に自転車道、2012年までに2百キロ

【ソウル21日聯合】ソウル市は21日、自転車で都心に通勤できるよう道路の1車線を減らし、2012年までに207キロメートルの自転車専用道路を造成することを骨子とした自転車利用活性化総合計画を発表した。

 ソウル市は同事業により、現在1.2%にすぎない自転車輸送分担率を2012年に4.4%、2020年には10.0%まで引き上げることができると予測している。また、自転車利用の活性化は原油高の克服に加え大気質の改善、乗用車の利用抑制による渋滞の解消、駐車問題の解決、健康増進による社会的費用の減少と「一石五鳥」の効果を上げ、年間5745億ウォン(約44億円)に相当する便益が得られるものと見込んでいる。

 総合計画によると、まず清渓~千戸軸や市庁~始興軸など都心に進入する4つの軸(70キロメートル)と、東西・南北地域をつなぐ13の軸(137キロメートル)に自転車専用道路が造成される。あわせて、漢江の自転車専用道路の幅を4メートル以上確保することで高速走行を続けられるようにする。特に漢江と都心の自転車専用道路の連結に向け、2012年まで漢江にかかる橋の19カ所に自転車用エレベーター設置することにした。また、清渓川と大学路、古宮とオフィスが密集する都心地域にも自転車専用道路循環網7キロメートルが構築されるほか、都心地域での公共レンタル自転車の導入も検討されている。

 自転車の通行量が多い蘆原圏域、松坡圏域、汝矣島圏域などには自転車を便利で安全に利用できるよう、2012年までに自転車用信号など多様な便宜施設を整えた自転車親和タウン12カ所を造成する。蚕室駅や新道林駅など自転車駐輪需要が300台を超える地下鉄16駅には、ロッカーとシャワー室を備えた自転車専用駐輪ビルを建てる。

 ソウル市は先月初め、自転車政策を体系的に推進するための専門担当部署「自転車交通推進班」を広域自治体で初めて新設した。呉世勲(オ・セフン)市長は「21世紀の都市はエネルギー・環境問題に適切に対応しなければ成長を期待できない。今回の事業を通じ自転車を生活の中の交通手段として定着させ、ソウルを環境にやさしい都市に発展させたい」と話している。

(C)聯合ニュース 2008年10月21日


ソウル市の計画で優秀なのは、「自転車専用道路の幅を4メートル以上確保することで高速走行を続けられるようにする」とか、「自転車駐輪需要が300台を超える地下鉄16駅には、ロッカーとシャワー室を備えた自転車専用駐輪ビルを建てる」といった具合に、サイクリストが何を求めているのかきちんと把握しているところです。

日本は「とりあえず自転車が走れる専用レーンをつくればいいんだろ」的な発想で、事故が多発している現状に対する批判をかわすためとも受け取れるような次元の低い計画も見られますが、ソウル市の計画は入念なリサーチが行われ、その結果を踏まえて検討が重ねられたのだと思います。環境対策としても重要な位置づけとし、専門部署も新設されたとのことですから、「本気度」が日本とは全く違うように見えます。

東京都は破綻が確実な銀行に400億円もの追加出資をしたり、三宅島で危険なレースを企画することはあっても、こうした取り組みは全く考えていないのでしょう。石頭知事もとい、石原知事は環境対策として実施したところで何の効果もないであろうコンビニの深夜営業規制を検討しているようですが、ソウル市のように建設的な取り組みには興味がないようです。

もっとも、日本の道路行政は国と自治体の縄張りも色々ありますから、一筋縄ではいかないのかもしれませんけどね。
スポンサーサイト



テーマ:自転車 - ジャンル:趣味・実用