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酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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的外れなエコキャンペーン

ご存じの通り、NHKが教育テレビの放送を長時間休止しました。地球温暖化対策としてCO2の排出削減がその目的だといいます。私はこれまで何度も述べてきたとおり人為的温暖化説には否定的ですが、化石燃料の消費削減については賛成の立場ですから、こうした取り組み自体を批判するつもりはありません。が、今般のNHKのキャンペーンは内容が極めてお粗末で、主旨を全うしているとはとても思えません。

そもそも、発電所の出力が調整されなければ、いくら使う側が消費を減らしても全くの無意味です。NHKが放送休止を行ったことで削減できた電力は全国で約1万7000kWhと試算されていますが、冬場の1日の総需要電力量は10億kWhくらいになるそうです。

総需要のわずか0.0017%程でしかない極微細な変動に対応できるほど細やかな出力調整が可能だとは思えません。NHKの今回の取り組みは約9.4tのCO2の排出を削減したと謳っていますが、実質的な効果はゼロだったといっても過言ではないでしょう。

もちろん、こうした「個々の努力の積み重ねが意味を持つ流れになる」という意見には全く異論ありません。が、せっかく行動でそれを示すというのなら、もっと現実を正しく理解して模範となるべきでした。今回のNHKの放送休止が模範的ではなかったと思うのは、そもそも休止した時間帯が的外れだったからです。

1日の電力需要の変化
電力需要が1年間でピークとなる夏場の資料はいくらでもあるのですが、
冬場については滅多に見かけないため、やや古い資料になります。


このグラフは1日の電力需要の推移を示すものですが、ご覧のように昼間の時間帯に電力需要が高まっていることがよく解ります。夏場は気温が最も高くなる14時前後にピークを迎えるのに対し、冬場は17時頃がピークになっています。その理由はよく解りませんが、恐らく日没による気温の低下と照明などによる電力需要が関係しているのではないかと思われます。

電源の組み合わせ

これは以前「発電所は急に止まれない」と題したエントリで用いたものの使い回しになりますが、ご覧のように出力調整が容易な発電所は電力需要に応じて出力を加減しています。オフピークの余剰電力については揚水式水力発電所で水をくみ上げ、エネルギーの貯蔵などにも用いられています。これも以前に述べたことですが、電力需要はできるだけ平準化してやることが効率の向上につながり、エネルギーの有効活用に結び付くわけで、

減らすことに意味があるのはピーク時の電力需要であって、オフピークではない

ということをきちんと理解すべきです。NHKはこうした事実を理解していないゆえ(本当は理解していながら素人を謀っただけかも知れませんが)、去る12月29日の放送時間を12:30~21:30の9時間としました。上掲の電力需要のグラフと照らして頂けば一目瞭然ですが、彼らは電力需要が高まっているピーク時はいつも通り放送して全く寄与せず、電力に余剰があるオフピークの時間帯を中心に放送を休止したわけです。

30分ごとの平均視聴率

上図は1日の平均視聴率の推移ですが、12時台前後を除いて昼間はテレビを見ている人が非常に少なくなっています。電力需要が高まっている14時から17時くらいにかけてテレビを見ている人は10人に1人もおらず、この時間帯にNHKを見ている人は殆どいないことが解ります。

ま、大抵の企業や学校などは休みに入っていますから、完全にこのグラフの通りとはいえないかも知れませんが、いずれにしてもこの時間帯の放送を必要としている人はそう多くないでしょう。にも関わらず、彼らはこの時間帯を通常通りとし、放送を休止しませんでした。

見ている人が少なく、なおかつ電力需要が高まっている時間帯こそ放送を休止すべきだということは、小学生でも充分に理解できるでしょう。もし、1日の放送時間を9時間と限定するのであれば、6時からの3時間、12時からの1時間、18時からの5時間としたほうが、電力需要のピークを避け、なおかつ視聴者の利便もあまり損なわずに済んだハズです。

こうしたインチキくさいエコキャンペーンはNHKに限ったことではありませんが、何故きちんとデータを付き合わせて実効性を確認しようとしないのでしょうか? エコキャンペーンというのは単なる建前で、何か別の目的でもあるのでしょうか?
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木を見て森を見ず

トヨタの強さはトヨタ本体だけでなく、そのグループ会社を含めた総合力にも裏打ちされていると思います。1990年代にGMから独立した部品メーカー、デルファイが2005年に負債総額2兆5000億円で経営破綻したのに対し、戦後数年でトヨタの電装部が分離独立したデンソーはいまや世界最大の自動車部品メーカーとなり、売上高4兆251億円、営業利益3486億円(いずれも2007年度連結)を誇ります。

また、戦時中の航空機増産計画を受け、トヨタ60%、川崎航空機(現在は川崎重工の一部門)40%の出資で創設された東海飛行機は戦後の民需転換でアイシン精機となり、トヨタグループの一員として自動車部品を軸足に今日へ至っています。

アイシンは事業規模が大きくなる度に分社化を進めるという面白い社風でやってきたため、現在ではグループ企業が150を超えているといいます。中でも成長著しいのがアイシンAWで、オートマチックトランスミッションの世界シェア1位、カーナビゲーションシステムの世界シェア2位を誇り、親会社であるアイシン精機に迫る事業規模まで拡大しています。両社を合わせると年商はデンソーのそれに匹敵するレベルになります。

もちろん、デンソーもアイシンも取引先はトヨタグループにとどまらず、内外の自動車メーカーに広く販路を確保しており、堅実なビジネスをやってきました。経営状態はデルファイと極めて対照的といえるでしょう。しかしながら、自動車業界を直撃した今般の不況は彼らのような優良部品メーカーの業績にも大きな影を落としました。

12月24日、デンソーは今年度連結(2008年4月~2009年3月)の業績予想を発表しましたが、売上高を3兆6500億円から3兆3000億円へ、営業利益を1780億円から380億円へ下方修正しました。アイシン精機も売上高2兆5200億円から2兆2000億円へ、営業損益を800億円の黒字から100億円の赤字へ下方修正しました。

グループの長であるトヨタのように今後もコロコロ変えないとは限りませんが、現状としてはこんなところなのでしょう。クルマが売れなくなったのに部品だけは堅調という状態はあり得ませんから、当然のことではありますけどね。

GMビル
ビッグ3関連のニュースが流れる際、
必ずといってよいほど映し出されるため、
GMビルの外観は日本でもお馴染みになりましたね。


日本の大衆メディアがアメリカのビッグ3の窮状を伝えるとき、バカの一つ覚えのように「燃費の悪いSUVなどに重きを置いてきたツケ」的な論調になりがちですが、実際にはもっと根深く、様々な要因が積み重なっています。

例えば、GMの場合も現状へ至った伏線は数多あります。大きな要因の一として9.11テロ直後の市場停滞とその際の対応も挙げておくべきでしょう。彼らはマーケットの動向を軽視して生産調整を行わず、膨大な在庫をかかえてしまうという失敗を犯しました。

このとき、彼らは販売店へインセンティブをバラ撒いて大幅な値引きによる乱売を行ったわけですが、収益の悪化はもちろん、中古車の値落ちも誘発させました。新車が安く叩き売られていれば 、当然のことながら下取り価格も値崩れし、GM車そのものの市場価値を損ないます。新車価格が多少高めでも下取りで値落ちしなければトータルではお得という経済観念がないほどアメリカ人も馬鹿ではないということです。

いま、世界中の自動車メーカーが市場縮小の動向を睨んで一気に減産へ突っ走っていますが、それはGMが喫したこの失敗劇を教訓にしているからではないかと私は見ています。いわゆる「派遣切り」問題で日本の大衆メディアは祭り状態ですが、彼らは市場縮小にも減産を行わなかったらどれだけのリスクを抱えるか、あまりリアルには認識していないのでしょう。

上述のように巨額の負債を抱えたデルファイの経営破綻は、要するにGMの体力では支えきれなかったからといっても過言ではありません。また、フィアットとの提携解消を巡る巨額の違約金(15億5000万ユーロ:当時のレートで約2100億円)なども弱り目に祟り目だったでしょう。退職年金や退職者への医療費負担など福利厚生の厚遇も年々ボディーブローのように効いて彼らの体力を奪っていったのでしょう。

ビッグ3がSUVを主軸のひとつとして注力してきたのは確かですが、彼らがそればかり作ってきたわけでないのは言うまでもありません。もちろん、ビッグ3がアメリカ国内市場だけでビジネスをやっているわけではないということも改めて述べる必要はないでしょう。

しかし、日本の大衆メディアは何でも単純に伝えることが「解りやすさ」と勘違いしているようですし、救いようのない自動車業界オンチ揃いです。こうした初歩中の初歩も失念し、子供並みの短絡思考で「燃費の悪いSUVでコケた」と結論を急ぎ、達観したつもりになっているわけですね。

バッド・タイミング

『Newsweek(日本版)』はいつも年末になると翌年の動向を特集するのですが、今年も最終となる今週号で「ISSUES 2009」という特集が組まれ、「09年の世界を動かす支配者と社会の変革者はこの面々だ」という記事で39名のキーパーソンが紹介されています。日本人で取り上げられたのは2名、白川方明(まさあき)氏と渡辺捷昭(かつあき)氏です。

白川氏については私も詳しく知りませんが、日銀の総裁です。この金融危機をどのように対処していくのか、その手腕が注目されるところなのでしょう。ベン・バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長、ジャン=クロード・トリシェECB(欧州中央銀行)総裁と同列で紹介されていました。

もう一人の渡辺氏は当blogでも何度か登場していますが、トヨタの現社長です。まずは渡辺氏について書かれている部分を一部抜粋してみます。

(前略)

もちろんトヨタも世界中の自動車メーカーと同じ嵐に耐えている。売り上げも落ちた。とくに目立つのがトヨタにとって最大の市場である北米市場だ。

 だから渡辺はボーナスを減らし、人員を削減し、支出を抑制。08年の業績予想を07年の3分の1の水準まで下方修正した。だがここにこそ、トヨタとビッグスリー(米自動車大手3社)の違いがある。

 業績の悪い年でさえトヨタは6000億円の営業利益を見込んでいる。莫大な赤字を垂れ流すビッグスリーが、CEO(最高経営責任者)をワシントンに送り込み、米政府に支援をせがんだのとは大違いだ。

(中略)

 ライバルが生き残りに苦しむなか、トヨタの「危機管理キャプテン」は、世界トップの座に躍り出る作戦を緻密に練っている。

(C)Newsweek(日本版) 2008年12月31日/2009年1月7日合併号


下方修正を受けても「6000億円の営業利益を見込んでいる」と書かれていますから、この号の入稿締切りは二度目の下方修正が発表された12月22日以前だったということですね。このとき2008年度連結でも1500億円の赤字となったことは当blog「赤字もジャストインタイム?」と題したエントリでも追記というかたちでフォローさせて頂きました。

同誌編集部にとって最悪だったのは、その二度目の下方修正発表に伴って、社長の人事についても言及されたことでした。渡辺氏に替わって現副社長の豊田章男氏が就任する方針で固まっており、渡辺氏は副会長就任の方向で調整されているとのことです。ちなみに、豊田一族が社長に就くのは1995年に退いた豊田達郎氏以来14年ぶりとなります。

渡辺捷昭
渡辺捷昭
『TIME』誌でも「最も影響力のある人物100人」として
2005年と2007年の2度にわたって選出されており、
アメリカのメディアには非常に高い評価を受けているようです。


この目まぐるしい情勢の変化には当blogも振り回されましたが、『Newsweek(日本版)』も同様ということですね。キーパーソンとして紹介した人物が、その号の発売を待たずに一線から退くことが決まってしまったのは何とも間が悪かったとしか言いようがありません。

Jingle Bells

掲題はクリスマスソングの定番として欠かせないものになっていますが、原題は『One Horse Open Sleigh』といって一頭立ての馬ゾリを描いたもので、本来は感謝祭に歌われるために作られた曲だそうです。要するに、作られた当初はクリスマスと何の関係もなかったんですね。

それはともかく、アメリカのネット広告代理店大手のAKQAが49台の電子レンジを使ってこんなプロモーションビデオを制作しました。



メロディーラインはかなりおぼつかない感じです(それだけにヤラセっぽくありません)が、1音鳴る度に庫内灯が1つずつ消えていく様は雰囲気があって良い感じですね。

俗説便乗商法

最近、エスエス製薬がこんなインチキCMを流しており、非常に気になっています。



このCMでは「老廃物=滞留便」と定義していますが、イメージ図を見ると俗に「宿便」と呼ばれるもののように描かれています。世間一般に「宿便」は「滞留便」と同義に扱われることが多いようですが、そもそも「宿便」などという医学用語は存在しません。

「滞留便」というのは「便秘によって長く腸にとどまっている便」をいいますが、世間一般に信じられている「宿便」は「腸壁の凹んだ部分などにこびり付いて長くとどまっている便」ということになっています。しかし、そのような状態は現実に確認されておらず、全くの迷信といってよいでしょう。

そもそも腸は蠕動運動をするため凹凸が移動します。つまり、常に凹んでいる部分などないわけです。また、腸も常に新陳代謝を繰り返していますから、腸壁を構成している細胞も数日で入れ替わり、古くなった細胞は剥がれ落ちて便と一緒に排出されます。要するに、土台が常に生まれ変わっている状態ですから、その上に便がこびり付いて長くとどまるということは正常な身体ではあり得ないわけですね。

しかし、このCMでは明らかに腸壁に小さな便が付着しており、それを薬の作用で排出させるとしか受け取れないようなイメージ構成になっています。

デトファイバーの効能イメージ

ちゃんとお通じはあっても「老廃物=滞留便」が腸壁にこびり付いて残っており、この薬はそれをキレイに排出することが出来ると謳っているようにしか見えません。ちなみに、製造元の製品概要で謳っている効能は以下の通りです。

■ 効能・効果

・便秘
・便秘にともなう次の症状の緩和:頭重、のぼせ、肌あれ、吹出物、食欲不振(食欲減退)、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔



要するに、単なる便秘薬ですね。

「デトックス」という健康法も科学的根拠がいい加減で似非科学に属するケースが多々見受けられます。エスエス製薬はその「デトックス」とイメージが重なる「デトファイバー」という商品名に「宿便」という俗説を絡めたイメージでCMを流していますが、実際には単なる便秘薬でしかないというわけです。

ま、本来の「滞留便」は便秘によるものですから、それに対する効能を謳うこと自体は全く問題ありません。が、このCMのイメージ図を見た限りでは普通の「便秘」ではなく、世間一般に誤解されている「宿便」のイメージそのものです。「イメージ」だから正確な表現は必要ないとでも言うのでしょうか?

こうした俗説に便乗し、テレビという極めて影響力の強いメディアで誤った認識を増長させるようなCMを全国に流し、商品PRに励んでいるわけです。このエスエス製薬には良識がないのかと疑いたくなります。

もっとも、トヨタもライフサイクルでの環境負荷を無視した「エコ替え」のCMを流していますし、カー用品店にも同様にインチキなケミカル類が溢れかえっていますし、電機メーカーも科学的に効果が確認されていないマイナスイオン関連の商品を大きく展開してきたこともありますし、挙げればキリがないのでこの辺にしておきますが、この種のハナシは決して珍しいことではありませんけどね。

撮っているのはコイツ

「プライバシーの侵害ではないか?」といった意見もあり、賛否両論渦巻いている「Google Street View」ですが、私の実家でもカーポートのところにいた母が写っていましたし、私が務めている会社でもサービススタッフが写っていました。確かに利便性の高いサービスではありますが、面識があれば人物が特定できてしまうレベルとなると、心情的に複雑なところもあります。

一応、人の顔は自動認識でボカシ加工されているそうです。が、日本版については自動車のナンバープレートが機械判読できるレベルだというレポートもあります。色々犯罪にも悪用できそうな要素はありますので、諸手を挙げて賛成とは言いづらいサービスですね。

ところで、この写真を撮影しているクルマはプリウスだということが知られています。そこで、「Googleイメージ検索」で調べてみましたら、その写真も簡単に見つけることができました。

Google Street View 撮影車1

ルーフキャリアの上にポールを立てその上に特殊なカメラを設置しているという格好になるようですね。ルーフキャリアを用いず、屋根に直接ポールを立ててしまうと、それも車両の一部と見なされます。すると、車両の全高が変わってしまうことになるため、改造申請が必要になります。車検証の型式に記載される際、オシリに「改」と付く格好になるわけですね。

キャリアを介して着脱可能な状態にしておけば積載物と見なされますから、その必要はなくなります。ま、現実問題として、役目を終えて下取りに出す(あるいはリースアップしてリプレースする)際にはこういう改造などしないほうが良いのは明白ですから、当然でしょう。

プリウスの全高は1490mmですから、カメラ部の地上高は写真から推測すると2500mmくらいになるものと思われます。中にはドア部に「Google」のステッカーが貼られているものも目撃されています。

Google Street View 撮影車2

いずれにしても、非常に目立ちますから一目でそれと解るでしょう。Google Street Viewに載りたくないという方は、このクルマが近づいてきたら身を潜めたほうが良いということですね。ちなみに、海外では車種もまちまちのようです。

Google Street View 撮影車3
Google Street View 撮影車4
Google Street View 撮影車5

カメラも色々バリエーションがあるようですが、ニュービートルに搭載されているものは下の写真のようなプラネタリウムの投影機みたいな感じです。

street_view_camera_head.jpg

車内には大きめの専用モニタが設置されているようですが、思ったよりシンプルで洗練されている印象です。

street_view_car-inside.jpg

前職で特殊車両を手がけてきた私の視点から見ても、このサイズのモニタを見やすく運転の支障にならない位置に設置するとなれば、ここ以外にはないと思います。が、助手席のエアバッグは運転席のそれよりずっとボリュームがありますから、この位置では作動時に吹っ飛ばされてしまう恐れがあります。

余談になりますが、DIYでPC用のモニタやノートPCをこんな感じに車載したり、ダッシュボード上に芳香剤やらドリンクホルダーといったカー用品を無造作に設置したり、人形やオブジェなど色々飾り付けをしている人も珍しくありません。中にはエアバッグが作動したときのことを考えると恐ろしくなるような状態になっているケースもあります。もし心当たりのある方は、早急に改善されたほうが良いでしょう。

上の写真の場合、素人の仕事でない限りは助手席のエアバッグを殺してあるハズですが、そこまで配慮されているかどうか見た目では解りません。もし、エアバッグを殺さないというのであれば、多少見づらくなるのも我慢してもっと低い位置に下げるか、小型モニタをインダッシュないしセンターコンソールの上にオンダッシュで搭載するしかないでしょう。

ま、全般的にはハードウェアも色々練られ、改良も重ねられている印象です。が、それを運用するシステムや社会的な理解はまだまだこれからといったところでしょうか。

赤字もジャストインタイム?

以前、「トヨタはこの不況を追い風にする」と題したエントリで日本の各自動車メーカーは大幅な下方修正で営業利益を大きく減じたものの、赤字には至っていないという旨をお伝えしました。が、その後トヨタは2度目の下方修正、ホンダも3度目の下方修正で下期(10-3月期)は赤字の見込み(通期ではいずれも黒字)となり、状況は大きく動いてきました。

アメリカの実質ゼロ金利政策を受けて円高が加速した分だけ、輸出産業の状況は一層悪化してきたようです。が、トヨタが下期赤字の見込みを伝えたタイミングはその前で、1ドル94円前後くらいのときでした。トヨタ1度目の下方修正はいまから1ヶ月半くらい前でしたから、既にボトムで94円台を記録しており、為替差損の読みが大幅に外れた故の大幅減益というストーリーは微妙な気がします。ま、外部の人間が色々想像しても解らないところは多々ありますけどね。

外為相場(米ドル-電信売-最近6ヶ月)
外為相場(電信売)米ドル最近6ヶ月の推移
トヨタが1度目の下方修正で営業利益を6000億円と
発表する前に1ドル94円台をつけており(青の矢印)、
その後に下期赤字見込みが発表された頃(赤の矢印)も
1ドル94円前後で推移しています。


こうした下方修正を重ねて一気に赤字へ転落というのは、いささか不自然な印象が拭えません。確かに、今般の金融危機による景気悪化は猛スピードで進行しましたが、その発端となったサブプライムローン問題が表面化したのは昨年の夏くらいでした。この頃から楽観論よりも悲観論のほうが強く、現在のような状況を予想していた専門家も少なくはなかったように思います。そうした中での利益予測だったわけですから。

もしかしたら、派遣工/期間工を大幅に削減したことで、「黒字なのに何故切る必要があるのか?」というメディアや世論の批判を毎日のように浴び続けている現状と無関係ではないのかも知れません(あくまでも個人的な憶測に過ぎませんが)。

私は専門家ではありませんからよく解りませんが、財務会計上の利益を小さくするという決算政策は違法にならない範囲でいくらでもやりようがあると思います。例えば、キヤノンは昨年の中間決算で減価償却費が約670億円増加することを見込んで利益予想を下方修正しましたが、これは有形固定資産の償却方法を見直したことによります。

本田技研埼玉製作所
本田技研工業埼玉製作所
上級車種(レジェンド、アコード、インスパイア、
エリシオン、ステップワゴン、オデッセイなど)と
四輪車用エンジンが生産されている埼玉工場では
今月末までに期間工270名の削減が決まっています。


いまや製造業において工程間の仕掛在庫を最少に抑えるマネジメントは常識です。トヨタの「カンバン方式」などはこうしたジャストインタイム生産システムの草分けとして世界的にもよく知られるものです。中には部品メーカーのラインオフからトヨタのアッセンブリーラインに乗るまで、輸送行程を含めて数時間というものもあるくらいです。

もちろん、こうしたジャストインタイムの管理方法は部品のみならず、人員配置においても通じるものがあります。かつては職業安定法により間接雇用が禁止されていましたが、「労働力需給の迅速、円滑かつ的確な結合を図る」という建前の上で労働者派遣法が制定され、組織的な労働力の「ジャストインタイム化」が法律の上で正式に認められました。いま問題になっている「派遣切り」のような労働力調整も人道的にはともかく、法的には何ら問題ないカタチで行われています。

黒字経営の超大手メーカーがマーケット縮小の動向を機敏に捉え、生産調整のため合法的に労働力を削減したところ、予想以上の反発をメディアからも世論からも浴びせかけられることになってしまい、大慌てで利益予想を大幅に下方修正し、意図的に赤字として火消しに躍起になっているのではないか? というストーリーも成り立つような気がします(その具体的な根拠はありませんから妄想というべきかも知れませんが)。

ま、これだけコロコロとハナシが変わっていくと何を信じればよいのか解らなくなってきます。そうした状況にあってアレコレ詮索するのも建設的なことではないでしょう。私の想像(妄想)もあまり本気で受け止めないほうが良いかも知れません。



12月22日追記

トヨタは通期でも1500億円の赤字見込みを発表しました。営業利益が赤字となるのはトヨタにとって創業以来初だそうです。それにしても、先が読めないのは解りますが、こうも小刻みに修正を重ねるのは混乱や不安を招くばかりでしょう。修正をするなとは言いませんが、ここまで右往左往するのは少々見苦しいものがあります。

やはり生産中止らしい

コニカミノルタの撤退でニコンとエプソンの2社だけになってしまったフィルムスキャナですが、どうやらエプソンも撤退しそうな感じです。ブローニーフィルムも使う私としては、30万円近いニコンの9000 EDはちょっと手が出せませんので、5万円前後だったエプソンのF-3200をボチボチ買っておこうかと思ったのは1年くらい前でした。とはいえ、すぐに必要というほどでもなかったこともあり、ズルズルと先延ばししていました。

F-3200.jpg
EPSON Colorio F-3200

現在所有しているフラットベッドスキャナにもオマケでフィルムスキャニング機能が付属していますが、やはり専用機には画質面でも使い勝手でも劣ります。最新のフラットベッドは解像度で圧倒的に上回るものもありますが、色や階調の再現性など総合的な画質で専用機に及ぶレベルには至っていない感じです。

私も仕事を含めればデジカメで撮るほうが遙かに多くなっている昨今ですが、フィルムカメラも手放す気は全くないので、このオマケのフィルムスキャニングでは物足りなく感じます。ということで、やはり買っておかねばと改めてF-3200の価格をチェックし始めたのが今年の秋でした。このとき、予兆はあったのですが、つい見落としてしまったんですね。

その予兆とはヨドバシ.comでした。それまでも何度かチェックしていたのですが、ある日その頁がなくなっていたんですね。でも、丁度その頃に同サイトのリニューアルがあったばかりでしたので、更新が遅れて漏れているだけではないかと思ってしまったわけです。

それからしばらくして価格.comで最安だった店も取扱い中止を表示するようになり、エプソンダイレクトでも「恐れ入りますが、該当する商品は現在取り扱っておりません。」と表示されるようになっていました。気づいたら価格.comの価格比較でも5万円を切っている店がなくなり、慌ててそのとき最安の53,550円をつけていた店に注文を入れました。

しかし、しばらく待たされた挙げ句、「誠に申し訳ありませんが、メーカー在庫が完売となってしまい、商品のご用意ができません。」とキャンセルを通達してきました。その間にも取扱店はどんどん減っていき、在庫ありを表示している店は56,700円でした。もちろん、迷っている暇はありませんので即行でオーダーし、何とかその店で確保できました。今日手元に届きましたが、まだ開梱すらしていません。

いま、価格.comでは最安が58,800円を表示していますから、それよりはマシですが、予兆に気付いてとっとと買っていれば7,000円は安く買えていたハズですから、これはちょっと失敗でしたね。

エプソンは後継機を発表することもなく、現行機のメーカー在庫を切らしたということは、要するにフィルムスキャナから撤退するということでしょう。残るはニコン1社のみとなってしまったわけですね。

何でも温暖化のせいにする人たち

いつものことですが、昨日(12月15日)放送の『報道ステーション』でまたぞろ適当な推論による地球温暖化問題の煽りをやっていましたね。北海道厚岸で34年ぶりとなるニシンの豊漁を伝えていましたが、例のごとく古舘キャスターは鮭の水揚げ減少と絡め、この異常は海水温の上昇が原因ではないかと単なる思い込みで何の根拠も明示しないまま、深刻な表情で語っていました。

私はここ10年くらい温暖化が進行していないことを知っていますから、それほど顕著な海水温の上昇はないだろうと思って調べてみました。すると、10分とかからずに函館海洋気象台のデータを見つけることができました(詳細はコチラ)。

釧路地方沿岸の海面水温の推移

これは厚岸のある釧路地方沿岸の海面水温の推移を示したグラフです。赤の実線が今年のデータで、点線で示された平年値というのは1985~2006年の平均になります。ご覧の通り、今年は9月が若干高めでしたが、殆ど平年並みで海水温に特段の異常がなかったのは明らかですね。もっとも、ニシンは回遊魚ですから、釧路地方沿岸のデータだけでは不充分かも知れません。

そこで、北海道で漁獲されるニシンが分布している北太平洋の海水温について調べなおしてみましたら、僅か数分で気象庁にあるデータを見つけました。

北西太平洋の海水温の推移

これは北西太平洋の海域別旬平均海面水温偏差の推移を示したものです(詳細はコチラ)。今年後半は高めのようですが、34年ぶりの異常をこのグラフから読み取ることは不可能でしょう。

ニシンの異常な豊漁の原因が何なのかハッキリとは解りませんが、独立行政法人水産総合研究センターは20年くらい前から続けている放流事業の効果が現れてきたものだと考えているようです。2003年から放流するニシンに標識を付けているそうですから、追跡調査でいくらか具体的なデータが出てくるようになるでしょう。

いずれにしても、『報道ステーション』が伝えていた「海水温の上昇」という推論が完全に根拠を逸しているのは間違いありません。私のような素人がほんの何分かで見つけられるような海水温のデータを彼らは一切確認せず、「人為的な気候変動で海水温が上昇し、様々な異常を引き起こしている」というストーリーに沿ったニュース原稿を書いてそのまま垂れ流したということです。

ま、これは『報道ステーション』に限ったことではなく、日本の大衆メディアには非常によくあるハナシです。問題はこういうバイアスがかかったインチキ報道を疑うことなく、真実だと受け止めてしまう人が(政治家や官僚たちを含めて)圧倒的多数というところにあるのかも知れません。

本当は怖い風力発電

風力発電を「美しく優雅」という人たちもいますが、そういう主観は別にして、様々なトラブルで周囲に危険を及ぼすこともあるという事実は知っておいたほうが良いかも知れませんね。

有名どころでは風力発電先進国のデンマークで撮影されたこの決定的瞬間です。



それを伝えるニュース映像も投稿されています。



こうしたタービンブレードは、もちろん制御されています。ブレードの仰角を油圧装置などで変化させ、揚力の発生を変える「ピッチ制御」、ブレードの形状を工夫することで風の強さに応じて相対流入角が変化するようにし、失速状態を作り出すことで回転を制限する「ストール制御」などです。

この衝撃映像の風力発電施設はマネジメントのミスなのか、設計や製造上のミスなのかよく解りません。が、所詮は人間のやっていることですから、こういう事故もあるということですね。

ここまで激しいものでなくても、煙や火を噴いている映像もYouTubeには幾つも投稿されています。







日本でも強風や落雷による破損は幾つも例があるのですが、風力発電は「未来志向の自然エネルギー利用」というストーリーを一所懸命描き続けている日本の大衆メディアはそういう事故をあまり報じないんですね。原発ならちょっとした異常でも大きく報じるのと極めて対照的です。

台風による宮古島風力発電の被害1
台風による宮古島風力発電の被害2
台風による宮古島風力発電の被害3
台風による宮古島風力発電の被害4

これらの写真は2003年に撮影された宮古島の施設です。30年ぶりくらいの記録的な台風でことごとく破壊された風力発電設備は、1,2,6号機がドイツのエネルコン製(ピッチ制御)で、3~5号機がデンマークのミーコン製(ストール制御)です。外観上は大きな被害のないものもありましたが、1,3,5号機はタワーが倒壊、3,5号機についてはそれに伴って周辺の道路を封鎖するという甚大な被害を被りました。詳しくは『宮古島の風力発電設備被害の調査結果について』(←リンク先はPDFです)をご参照下さい。

また、イギリスでは風力発電設備が正常に稼働していても、周囲が危険にさらされているという報道がありました。

風車より落下した氷塊とその危険にさらされる人たち

この人たちが手に持っているのは氷の塊ですが、彼らのバックにかすんで見える風力発電設備のタービンブレードなどが凍り付き、それが降ってきたということだそうです。タワーの高さは80m、氷塊は長さ30cmを超えるものもあるそうですから、直撃を食らえばただでは済まないでしょう。

日本では野鳥の保護を訴える人たちがバードストライクの被害を訴えたり、低周波や電磁波などの悪影響を懸念する声もありますが、ここでご紹介したように人間にとっても直接的な危険があるということは広く一般に知られていないように思います。

風力発電が「環境に優しいエネルギー」と世間一般に認識され、その不安定さなどの問題点を深く考えもせずに「温暖化防止のためにも推進すべし」と煽るメディアの姿勢に、私は少なからぬ疑問を感じます。が、それを別にしてもこうした危険性は全く顧みられることなく、良いイメージばかりが一方的に伝えられているのは、やはり偏向報道といわざるを得ないでしょう。

利用しない人間が計画するとこうなる

以前、「地獄のソウルは天国に生まれ変わる」と題したエントリでソウル市が大規模な自転車専用道の導入を計画している旨をお伝えしました。このとき私は

日本は「とりあえず自転車が走れる専用レーンをつくればいいんだろ」的な発想で、事故が多発している現状に対する批判をかわすためとも受け取れるような次元の低い計画も見られます


とカタチばかりの自転車専用道について指摘しましたが、近く富山市で運用が開始される自転車専用道もまさにその類の等閑なもののようです。

富山市の自転車専用道

これは国土交通省と警察庁が全国98箇所に指定したモデル地区の1つで、JR富山駅南口周辺に2箇所設けられるとのことです。上の写真のそれは早ければ今月から利用が始まる富山市東田地方から北新町交差点を結ぶ南北約450mの区間だそうです。

まず気になるのは片側3車線の車道を2車線に減らし、一番外側の車線をそのまま自転車専用道にしただけという点です。車道の1車線そのままということで幅員が2.8mとなっているのは良いのですが、ガードレールやポールなど物理的に仕切るものが何もなく、単にペイントで「自転車専用」と表示され、標識が立てられるだけです。

しばらく利用させてみて評判が悪かったらすぐに元へ戻せるようにと考えているわけでもないでしょうが、コレではあまりにも手抜きが過ぎるでしょう。こんな状態では不埒な輩に表示や標識を無視され、違法駐車されて切れ切れになってしまいそうな気がします。あるいは、渋滞しているときなどにモーターサイクルが走り抜けて行ったり、右折待ちで停車している車両などを避けるためにはみ出して来るクルマも出てきそうな気がします。

また、この自転車専用道は両側の車線に設けられているそうですが、各々双方向での通行を可能にしたという点も問題です。歩道を自由に走っていた自転車に一方通行を求めても徹底されないとでも判断したのでしょうか?

しかし、自転車はそもそも軽車両ですから、左側通行が大原則です。これは歩道を歩行者と全く同じように走行しても何らお咎めなしということを長年続けてきた弊害といえるのかも知れません。が、これを契機に利用者を再教育する(例えば、しばらく警官を立たせて指導するとか)くらいの覚悟で道交法の原則に立ち返らせるべきでしょう。

450mという僅かな距離(20km/hでも1分20秒ほどで終わってしまう距離)がどこまで延長されるのか解りませんが、現状ではこの中途半端な距離も「カタチだけ」という印象を強く感じます。こうした道路行政について私は

縄張りも色々ありますから、一筋縄ではいかないのかもしれません


と、一定の理解は示したつもりですが、この富山市のケースは国土交通省と富山県と富山市と富山県警で計画が進められてきたそうですから、弁護の余地はなさそうです。「船頭多くして船山に上る」という状態に陥ってしまったのでしょうか? それとも、本気でやる気のない人間が何人集まってもロクな仕事をしないというパターンにハマってしまったのでしょうか?

「モデル」というからには「手本」となるようなプロジェクトでなければなりません。税金を投入するのであれば「テスト」でも低レベルなことをやられては困ります。が、この富山市のように利用者の方向をマトモに向かず、こうした自転車専用道を一生利用することのないエライ人たちが他人事のように計画しているのではないかと疑いたくなるパターンが非常に多い現状には悲観的にならざるを得ません。日本の自転車専用道の未来にソウル市ほどの光明は差していないようです。

プロドライブならジェンソンのシートは琢磨のもの?

ご存じのように今期限りでホンダの第3期F1活動終了が決まり、チームの売却が進められることになりました。この件について、トロロッソの共同オーナーの座から退いたばかりのゲルハルト・ベルガー氏はF1チームの運営によほど懲りたのか、こんなコメントを出しています。

「今の時代、スポンサー探しがどれだけ困難か、よくわかっている。なのにチームを丸ごと買えだって? 勘弁してくれよ。」

一方、1991年からジョーダン・グランプリを率いて4勝を挙げ、2005年を以てミッドランドグループへチームを売却したエディー・ジョーダン氏はこんなコメントを出しています。

「ホンダはすぐに買い手がつくと信じている。非常に素晴らしい最高のチームだ。充実した基盤がありながら、それを安値で払い下げるのであれば、大きなアドバンテージになると思う。」

ホンダはチームの存続を最優先に考えており、売却額については全く拘っていないということを公式に述べています。そのせいか、20件を超えるオファーが舞い込んでいるといいますから、ジョーダン氏の言う通り売却そのものは苦労なく進めることができるでしょう。むしろ、高額を提示されてもすぐにポシャる恐れがあるような相手ではなく、堅実なチーム運営プランを提示した相手を選ぶかも知れません。

で、その売り先ですが、地元イギリスで「最有力」と報じられているのはプロドライブです。当blogでもエイプリルフールにバカバカしい作り話を書きましたが、2年前にF1参戦権を獲得したものの頓挫してしまった彼らは、実力的にも充分にその資格があるように思います。

そもそも、代表のデイビッド・リチャーズ氏はホンダワークスとなる前のB.A.R時代にこのチームを指揮した人物でもあります。また、彼はクウェートの投資会社インベストメント・ダール社、エイディーム・インベストメント社、アメリカの投資家ジョン・シンダース氏らを中心とした投資グループと共にアストンマーティンを共同経営しており、潤沢な資本を持つ中東の投資会社とも太いパイプを持っています。

デイビッド・リチャーズ
David Richards

現在、リチャーズ氏の元には複数の企業などからホンダのF1チームを買収したら運営を任せたいというオファーが入っているとされています。あくまでも噂ですが、UAEのコンソーシアム社、ドバイ・インベストメント・キャピタル社などです。これに加えてイギリスF3選手権で佐藤琢磨選手をチャンピオンにしたカーリン・モータースポーツを主宰するトレバー・カーリン氏からも提携の申し入れがあったらしいという噂もあります。

ま、リチャーズ氏自身は「前向きに考えている」としながらも、ホンダ・レーシングの充実した設備が逆に「F1がコスト削減をしている時代にしては必要以上の諸経費がかかる」として早急な判断は下さない旨を公言していますので、本人の意思もまだ固まっていないようですけどね。

リチャーズ氏を核としたチーム運営体制でホンダのF1チームが買収されることになるのか、その行方は当事者たちもまだ解らないでしょう。が、こうしたシナリオが最も現実的なのは誰もが認めるところだと思います。イギリスのメディアが「最有力」と報じているのもそれゆえでしょう。

逆に、こうしたシナリオを望んでいないのは、ホンダがB.A.Rを買収した時期にリチャーズ氏と衝突したジェンソン・バトン選手くらいかも知れません。もし、カーリン氏が関与するようなら、佐藤琢磨選手の起用というハナシが出てくる可能性もあり得る気がします(その前にトロロッソと契約を結ぶことがあれば別ですが)。

私は中学生くらいからファンをやってきましたから、ホンダの3度目の撤退は残念でなりません。が、既に決まってしまったことを長々と引きずっても仕方ありませんので、このストーブリーグを楽しむことにしました。

やはり口先だけ

NIKKEI NETのコラム『NETアイ プロの視点』に《「温暖化ガスの2050年半減」の根拠》という興味深い記事がありました。一部を抜粋してみます。

(前略)

「半減目標」に技術的裏付け無し

 山口光恒・東京大学教授は、半減の可能性よりも不可能性を指摘した論文を「国際問題」6月号に書いている。

(中略)

 温暖化ガス削減政策をリードするEUなどでは「先進国は1990年比で排出量80%減にする」といった勇ましい目標が出ている。だが、今は予想できないような画期的なイノベーションが起こらなければ、太陽光発電や風力発電、CCS(炭素隔離・貯留)など既知の技術だけでは、経済・生活水準を大幅に下げることなしに80%も削減するのはきわめて困難だ。

 たとえできたとしても、途上国が2000年比6%減を約束することは考えられない。中国だけで2000年から2004年までの4年間に排出量が6割も増えているからだ。途上国では人口が増えているので、1人当たりでは6%減よりもっと減らさなければならない。実質的に無理だろう。途上国が貧困を脱し、豊かさを求めるのも当然の要求だ。

 山口教授は以上を前提に、欧米の政府高官や学者に「半減が可能と思うか」と質問したところ、「どこからも実現可能という有効な反論はなかった」と記し、「EUの半減目標はトップダウンの政治的目標で、技術やコストの裏付けをもたない」と結論付けている。

 もとより高い目標を掲げ、それに向かって努力することは大切だ。突然、画期的な省エネ技術や温暖化ガス吸収技術が実現することも考えられる。だが、目標設定の基本は技術やコストについて緻密な分析を伴ったものでなければならない。「そのうち何とかなるだろう」では困るのだ。大向こう受けを狙った、聞こえのいいスローガンもいただけない。

(後略)

(C)NIKKEI NET 2008年12月8日


ま、これは初めから解っていたことで、EUのとんでもない削減目標にEU内部でも反発が起きているのは当blogでも触れたとおりです。が、これまで各紙の社説などを見ていても、「EUは80%削減を掲げているのに、日本は大きく後れを取っている」といった論調に終始していました。EUの削減目標について本当に実現可能なのか口先だけなのかと考えることもなくただ鵜呑みにし、崇拝してきたわけです。

また、先日も取り上げましたが、日経新聞は12月2日の社説

オバマ次期政権は排出量取引導入でもEUに歩み寄っており、日本が腰の引けた交渉姿勢を早く改めなければ、国際的に孤立しかねない。


などと煽っていました。が、このコラムでは以下のように述べられています。

孤立を恐れず、合理的な説明と建設的な実行を続けることが、長期的に世界の賛同者を増やす道につながる


私が日経新聞の社主なら、口先だけのいい加減な社説を書いている能なし論説委員など即刻クビにして、電子版で遙かにマトモなコラムを書いている流通経済部の編集委員を論説委員に抜擢し、社説の主筆を委ねるようにするでしょう。

やはり「プリウスもどき」で行くらしい

以前、「プライドを挫く仕事」と題したエントリで取り上げたホンダのハイブリッド専用車インサイトの新型ですが、あのときはまだコンセプトモデルでした。今般のデトロイトショーで量産モデルが発表されましたが、やはりスタイリングに目立った変更はなかったようですね。

インサイト量産モデル(北米仕様)
2代目インサイト量産モデル(北米仕様)
バンパーやスカートまわり、灯火類の意匠が
コンセプトモデルとは微妙に異なるようです。
もっとも、この辺は各国の保安基準などによって
通常でも異なっているケースが多い部分ですから、
やはり実質的な手直しはなかった印象です。


余談になりますが、とあるネットアンケートでは、新型インサイトのスタイリングについて「Man, that's fresh!」が46%だったのに対し、「It's the next-gen Prius!」が53%と、インサイト・コンセプトのスタイリングを過半数の人が「次世代のプリウス」と評価しています。(恐らく、「新鮮」と答えた人たちは、グリルやライトなどのデザインだけで多くを印象付けられ、マイナーチェンジなどの小細工にも敏感に反応してしまうのでしょう。)

それはともかく、新型インサイトの外寸は現行のプリウスより一回り小さくなるようですし、エンジンも1300ccだそうですからプリウスより1クラス下(もっとも、プリウスの1500ccエンジンはミラーサイクルですから、実質的な排気量はもっと小さく、単純比較はできませんけど)、価格も1万9000ドル程度に抑えられるとの情報もあり、プリウスよりやや下のレンジを狙っているような印象です。(プリウスより若干チープならば、総合的な性能がその分だけ劣っていても言い訳が立つと読むのは穿ち過ぎでしょうか?)

ハイブリッドで先行するトヨタも専用車であるプリウス以外は大したレベルになく、他社が既存車ベースでこれに対抗するのは不可能に近いと思います。ヒュンダイも来夏にはエントラをベースとし、リチウムポリマー電池を採用したハイブリッド車を発売するそうですが、これなどもプリウスとマトモに比較できるレベルには達していないようです。

ちなみに、ハイブリッド仕様のエントラは通常(ガソリンエンジンのみ)のそれに対して50%程度燃費が向上しているそうです。が、通常のエントラの燃費は11.6~12.2km/L(日本仕様の場合)という低水準です。これをハイブリッド化して50%向上させたとしても単純計算で17.4~18.3km/Lですから、カローラ・アクシオの17.2~18.2km/Lと良い勝負です(いずれの燃費データも10・15モードです)。

初代インサイトは国内の月販目標わずか300台と、ホンダ自身が全く売る気のなかった実験的なクルマでした(実際のところ、国内の月販はたったの5台程度で、スーパーカー並の稀少車に終わりました)。が、2代目は「2009年春より日米欧で発売し年間20万台を販売する計画」だそうです。昨年のプリウスの生産台数が28万台だったことを考えますと、ホンダも今回はかなり本気のようです。

シビック・ハイブリッドで実用車としての経験を重ねてきたホンダが本気で売ろうとしているハイブリッド専用車、新型インサイトの実力は如何ばかりでしょう? 少なくとも、見た目はプリウスとソックリなのに性能は及ばないというのでは恥をかくだけですから、それなりのレベルに達しているのだろうと思います。

とはいえ、現行のプリウスもモデル末期で、来年くらいにはフルモデルチェンジという噂が絶えません。その折には以前から渡辺社長自ら公言してきたように家庭用電源で充電可能なプラグインが採用される可能性も低くはないでしょう。

また、10・15モード燃費で40km/Lくらいになるとの情報もあります(現行モデルの実走行でもそれくらい叩き出すツワモノがいますから、不可能ではないような気がします)。いまのプリウスに追いついたとしても、すぐに水を開けられてしまうかも知れません。

ハイブリッド車の仕組みについてアウトラインを聞いただけなら比較的簡単な技術のような気もしますが、現実的なメリットにつながるレベルまで技術力を磨いていくのはそう簡単なことではなさそうです。既存車への後付けやそれに近いハイブリッド車は沢山ありますが、プリウスのように専用車として圧倒的な燃費性能と不足ないユーティリティを両立し、ビジネス的にも成功を収めたライバルはこれまで存在しなかったという事実がその難しさを物語っていると思います。

1兆円近い技術開発費を毎年投入し続けているトヨタにこの分野で勝るのは、極めて困難なことなのかも知れません。果たして、新型インサイトはプリウスにとって「初めてのライバル」となれるでしょうか?

日本の乗用車保有台数は減っていない

私も細かいところは未確認で書いてしまうこともありますが、そこは完全非営利、個人が趣味で運営しているblogですから、大目に見て頂きたいところです。が、大手新聞社はその影響力が極めて大きいですから、いい加減な記事を書くことは許されないでしょう。以前、「ハブボルト折損は不可避なのか?」と題したエントリでも取り上げたように、中日新聞が社説で金属疲労について頓珍漢なことを書いていましたが、今日もまた思い込みで適当なことを書いています。

米自動車救済 ビッグ3を他山の石に

 米ビッグスリーが米議会に経営再建計画を提出した。再建の成否は米国内の雇用や世界経済にも影響を及ぼす。日本も少子化などで自動車社会が縮み始めている。他山の石とすべきものがある。

(中略)

 ビッグスリーの衰退は人ごとではない。日本も十一月の新車販売台数が前年同月に比べ27%落ち込み、三十九年ぶりの低水準は米国と変わらない。保有台数の減少は金融危機が深刻化する以前からの現象だ。少子高齢化に加え、若者の車離れも進んでいる。

(後略)

(C)中日新聞 2008年12月4日


トヨタのお膝元ということもあるのか、中日新聞は社説で自動車絡みのネタを扱うことが比較的多いように思いますが、今回もまたデータを確認せず、「保有台数の減少は金融危機が深刻化する以前からの現象だ」などと誤ったことを書いています。

確かに、新車の販売台数は減少を続けていますが、日本国内で乗用車の保有台数が減少に転じたことは未だかつて一度もありません。

日本の乗用車保有台数

これは日本自動車工業会が集計した日本国内の乗用車の保有台数(毎年3月時点、軽自動車を含む)のデータを元に、私がエクセルでグラフにしたものです。ご覧のように保有台数は四半世紀前のほぼ2倍に達し、現在でも微増を続けています。(ちなみに、自動車工業会のデータベースから保有台数のデータを引き出してこのグラフにするまで30分とかかりませんでした。私のような素人でも朝飯前の確認を怠って大手新聞社が適当な社説を書いているのですから、心底情けなくなります。)

新車の販売台数が減少している最大の原因は代替えサイクルが長くなったことです。若者のクルマ離れもありますが、逆に高齢者の保有率は着実に伸びているんですね。ま、これは至極当然のことで、私が生まれた頃にマイカーブームが起こり、その世代の人たちが高齢者になってきたからです。

私の親の世代より上の人たちはクルマを持たないことが多く、これまで高齢者の保有率もあまり伸びていきませんでした。しかし、私の親の世代はクルマを持つことが一種のステイタスになっていましたから、この世代から一気に保有率が上がっていったわけです。私の父は古希を過ぎていますが、いまでも元気に千葉や茨城のゴルフ場まで走っています。昔の高齢者にこういうライフスタイルの人は稀だったと思いますが、いまでは珍しくも何ともないでしょう。

もちろん、日本国内の保有台数はいずれ減少に転じるでしょう。現在は若者の保有率低下が高齢者の保有率増加で相殺されている状況ですから、そう遠くない時期に減少局面に入っていくものと想像されます。しかし、中日新聞が書いているような「保有台数の減少は金融危機が深刻化する以前からの現象」などとという事実はありません。

日本のマーケットは(他の先進国のマーケットも)既に飽和状態で、いずれ縮小に転じるでしょう。が、そもそも都市部では公共交通機関が非常に発達している日本にあって国民2人に1台近い割合で保有している現状のほうが異常で、不適正なマーケット規模といえるのかも知れません。

また、日本国内だけで商売をしている自動車メーカーは1社もありません。途上国はこれから本格的に需要が拡大していくものと見られ、日本のメーカーも当然のことながらそのマーケットを攻略しようとするでしょう。

世界全体を見渡してみれば、まだまだマーケットは拡大を続けていくでしょうから、その点について悲観するような状況ではありません。日本国内の販売台数が減少している状況だけを見て嘆くのは全く以て無意味なことで、徒に大衆の不安を煽る愚行です。

昨日のエントリでも書きましたが、大衆メディアの「煽り癖」は相変わらずです。単なる思い込みで事実関係を確認せず、徒に何でも煽りたがる彼らの野次馬体質につける薬はないものでしょうか?

トヨタはこの不況を追い風にする

景気の落ち込みが連日伝えられていますが、殊に自動車産業はアメリカの自動車ローンの審査基準が厳しさを増して販売面に大きな影を落とし、日本のメーカーでも派遣社員の契約打ち切りが(いつものように感情論に左右されながら)大きく取り上げられています。

レクサスの製造ライン(トヨタ自動車田原工場)
減産が決まったレクサスの製造ライン

トヨタに関していえば、管理職がボーナス1割カットとなったり、レクサスなどを生産している田原工場が昼夜二交代制から昼だけとして大幅減産に転じるなど、細かい情報も毎日のように報じられています。それ自体は決して悪いことではありませんが、針小棒大に報じて騒ぎを大きくし、悪循環に陥る状況をつくってしまったとしたら、それは許し難いことです。

少々脱線しますが、日本の大衆メディアの脳天気ぶりはいつもこうした不況局面で再確認できます。彼らは目先の販売部数や視聴率が欲しいのか知りませんが、センセーショナルに、あるいはセンチメンタルに騒ぎ立てては大衆の気を引こうとします。今回も解雇された派遣工/期間工たちを追いかけ回してはその声を拾い、哀れな境遇を憂う感情論に傾倒しがちです。

が、不況による先行きの不安を徒に煽ると、消費者の財布のヒモは益々固くなり、個人消費の落ち込みに拍車をかけかねません。すると、企業も広告費を削減する傾向が強まっていきますから、その広告収入によって経営が成り立っている彼らの多くも痛い目を見ることになるわけです。自分たちの「煽り」が巡り巡って自身の首を絞める格好になりかねないという実情を彼らはあまり自覚していないのかも知れません。

ま、それはともかく、トヨタはこれまで今期の収益予想を1兆6700億円としていましたが、今般の不況を受けて約7割下方修正し、6000億円としました。1兆円を超える減益見込みは確かにショッキングですが、日本国内に営業利益6000億円超の企業など好調だった昨期でもたったの7社しかありませんでした。アメリカのビッグ3が軒並み経営破綻の危機に直面している現状にあって、同じ業界で6000億円の収益を確保できる見込みのトヨタはやはり凄まじい実力です。

もちろん、トヨタだけではありません。3月末の営業利益予想は、ホンダが5500億円、日産2700億円、スズキ1000億円、ダイハツ560億円、マツダ500億円、三菱自動車254億円、富士重工184億円といった具合に、全社減益となりつつも、赤字転落を見込んでいるところはありません。 大衆メディアのそれを見ていますと、日本の自動車メーカーも総崩れしそうな勢いで報じられています。が、そこまで悲観的な状況ではなく、アメリカとは極めて対照的といっても過言ではないでしょう。

(追記:その後トヨタは2度目の下方修正、ホンダは3度目の下方修正で2008年度連結で赤字転落の見込みを発表しました。が、自力での復興が極めて難しいGMやクライスラーと比較するようなレベルではありません。)

いまアメリカのビッグ3は経営の立て直しに公的資金の注入を待っている状況です。真っ先に数字をまとめたフォードが政府に求めている「つなぎ融資」は約90億ドルに達しますが、それが実現するかどうかは予断を許しません。一方のトヨタは3ヶ月以内に現金化できる流動資本を少なくとも6兆円持っているといわれています。これはフォードが待っている融資額の7倍を超えます。

トヨタの渡辺社長は今般の不況を受けながら、「あらゆる費用を減らしても、技術開発費だけは絶対に減らさない」と明言しています。トヨタはこれまでも年間1兆円内外の技術開発費を投じてきましたが、大きく減益となりそうな現状でもその収益を維持できれば、現在の投資額を向こう15年は維持できる計算になります。これは世界中の自動車メーカーにとって大変な脅威といえるでしょう。

いま、地球上にトヨタほどの体力を温存している自動車メーカーは他にありません。彼らもマーケットの波には翻弄されるでしょうが、この苦しい時期にあっても莫大な開発費の投入を続け、他社が体力を消耗している間にアドバンテージを一気に広げてしまおうと強かに未来を見据えているように思います。

自動車業界の技術開発も「日進月歩」ではなく、「秒進分歩」ともいうべきスピードで進んでいます。ひとたび遅れをとると、その挽回には大変な労力と資本を奪われます。殊に、今日は従来のガソリンやディーゼルから次世代エネルギーへのパラダイムシフトを無視するわけにいかない時代です。

こうした修羅場にあって国から融資を受けつつ経営再建に尽力するメーカーと、その何倍もの流動資本をキープしながら新技術の開発部門は自分たちの仕事に没頭できるメーカーと、既に埋めがたい大きな差がついてしまったかも知れません。

トヨタが世界の自動車産業を支配する圧倒的な王者になったとして、それが自動車の未来にとって良いことかどうかは別問題ですが。

孤立しているのは日本のメディアのほう

昨日(12月1日)からポーランドで気候変動枠組条約のCOP14(第14回締約国会議)が始まったのを受け、数紙が社説で注文を付けています。

日本経済新聞「温暖化防止会議、様子見でなく前進を
毎日新聞「温暖化会議 最終交渉に向け論議深めよ
中日新聞「温暖化対策会議 転換の兆しが見える

論調としては相変わらずで、EUは進んでいるという妄想、及び腰の日本に対する批判、途上国を如何に合意へ導くかという課題の再確認、といったところが大筋になっています。今回はこれにアメリカの新政権に対する期待感が加わったくらいで、従来の主張を単になぞっているだけといった印象です。

いつも滑稽に思うのは、京都議定書からの離脱を宣言したのがブッシュ大統領だったことから、日本の大衆メディアはブッシュ政権の主導によって京都議定書を離脱し、温暖化問題を棚上げにしてきたと思い込んでいるところです。現実はこうした認識と全く違うんですね。

COP3(京都会議)の前段にアメリカ上院で審議された「バード=ヘーゲル決議」は京都議定書に途上国の削減義務が課せられなかったとき、アメリカもこれを批准しないというものでした。この議案は全会一致で採択されたんですね(議会で全会一致ということは、即ち議会制民主主義の上において国民の総意ということです)。このため、COP3に臨んだアメリカの代表団は是が非でも途上国に削減義務を課さなければならず、それが出来なかった瞬間にアメリカの離脱も自動的に決定という状況だったわけです。

このとき(1997年)の米大統領はジョージ・ブッシュではなく、ビル・クリントンでした。クリントン政権がCOP3に送り込んだ代表団を指揮していたのは副大統領のアル・ゴアでした。結局、彼らは途上国に削減義務を課すことができず、このときアメリカの離脱が決定したのです。翌年の大統領選でブッシュが当選し、上院で可決されたバード=ヘーゲル決議に従って、彼は粛々とその旨を宣言したに過ぎません。

つまり、途上国に削減義務が課せられるか、バード=ヘーゲル決議が撤回されない限り、アメリカが京都議定書に戻ってくることは絶対にあり得ません。これは大統領が誰かということとは全く別問題なんですね。ここのところを日本のメディアはいつも履き違えているわけです。

ところで、私が非常に気になったのは日経のこのくだりです。

オバマ次期政権は排出量取引導入でもEUに歩み寄っており、日本が腰の引けた交渉姿勢を早く改めなければ、国際的に孤立しかねない。


海面上昇も止まった?」と題したエントリで頂いたコメントにもありますように、ここに来てEUも足並みは乱れています。また、オーストラリアは排出権取引を一時停止する旨を伝えています。こうした世界の動きを知りもせず、日本が孤立するなどと煽っているわけです。

このように現実を無視している彼らこそ、世界の動きから孤立していると言わざるを得ないでしょう。

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まとめ

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