酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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リンクザバディはロケフリを超えるか?(その2)

ツインバードのリンクザバディはソニーのロケーションフリー(以下、ロケフリ)のようにネット接続やPCでの利用を想定しておらず、このシステムだけで完結する非常にシンプルなものです。商品の成り立ちはごく普通の家電と変わらない印象で、あまりキワモノっぽい雰囲気は感じません(個人的な感想です)。

送信機には3系統のAV入力があり、そこにチューナーやプレイヤーの類を接続、受信機を内蔵した液晶モニタとは変調方式IEEE802.11a/g/b準拠、搬送周波数帯5GHz(11a)/2.4GHz(11g.b)で繋がります。もちろん、PSPをロケフリに繋ぐときのような初期設定の類も不要です(無線LANやBluetooth、あるいは電子レンジと電波が干渉しているときなど、条件に応じて通信チャンネルを変更することもできます)。

モニタ上部に設けられたキーは入力切替や音量調整、画質調整など簡単な操作しかできませんが、リモコンを使えばそのシグナルが送信機側に送られ、接続されているAV機器を遠隔操作することも可能です。しかも、付属のリモコンは学習機能を備えていますので、殆どのメーカーのリモコンに対応し、かなり込み入った操作もできるようになっています。

リンクザバディ(システム概要)

ただ、このリモコンのシグナルがリンクザバディの送受信機を経て接続されたAV機器に届き、そのリアクションを受けた映像が再びリンクザバディの送受信機を経て液晶モニタに反映されるまで相応のタイムラグがあります。特に問題となるのは早送りや早戻しなどを止めるときで、勘で早めに止めない限り絶対にタイミングが合いません。全般的にも慣れが必要で、せっかちな人は少しイラッと来るかも知れません。もっとも、これはロケフリも全く同じで、こうした方式ではこのタイムラグを少し短めにすることは可能でも、なくすことは不可能でしょう。

防水が売りのザバディシリーズですから、このリンクザバディももちろん防水仕様(JISの旧防水保護等級7防浸形相当)で、リモコンも同様に防水となっています。ロケフリのようにビニール製の防水ケースに入れる必要がないため、その分だけ画面も見やすく、操作性が犠牲になることもなく、音がこもったりもせず、非常にスマートで良い感じです。

液晶パネルは7インチの横長で、比較的安価なカーナビや液晶モニタ付ポータブルDVDプレイヤーなどにも使われているようなレディメイドのパネルになるのだと思います。解像度は480×234ドットですから、PSPと横は同じで縦が若干劣りますが、画面サイズは面積比で2.5倍以上になりますから、少し離れたところに置いても私の視力なら字幕が読みにくいというほどではありません。

個人的にはもう少し価格が上がっても、もうワンランク高解像度であって欲しかったところです。とはいえ、送信機にフルセグチューナーを繋げばワンセグのポータブルテレビとは全く比較にならないクォリティになります。動きが速い映像などでは若干のブロックノイズも出るようですが、この価格帯の商品に求められる性能としては充分に許容範囲といえるレベルかと思います。

映像入力はS端子と、RCA端子が備わる普通のアナログ入力になりますが、この画質なら当然のチョイスでしょう。モニタ側にはヘッドフォン端子のほかに4極ミニジャックになりますが、AV出力も備わっています。テレビモニタなどにつないでビデオトランスミッターとして使用することもできるというわけですね。

最大のネックは電波の到達距離が短いところでしょう。「通信距離の目安は、見通しの良いところで約30mです。」となっていますから、一般的な無線LANと比べてもかなり短めかと思います(ウチで使っている無線LANと比べると1/10くらいでしょうか)。送信機が置いてある部屋からバスルームまで5mくらいしか離れていないのですが、その間に2枚の壁(鉄筋コンクリート製)で隔てられているという建物の構造上の問題も加わっているのか、置く位置を吟味しないと電波が途切れがちになってしまいます。

具体的には、ウチのバスルームはガラスの引き戸になっているのですが、そのアルミ製の桟と同じ高さに置くと電波が遮蔽されてしまうようで、かなり切れ切れになり、場合によっては受信不能になることもあります。これを避けた高さに置けば電波強度を示すインジケーター(携帯電話のそれと同じアンテナマークに3本線)で中強度が示され、特に問題なく使えるようになります。

この辺は電波の出力を上げるなど改善を求めたいところですが、モニタ側からもシグナルを送信していますから、到達距離を伸ばすために出力を上げればバッテリによる駆動時間が短くなってしまうのかも知れません。この辺は色々なバランスの問題もあって難しいところなのでしょう。細かい部分については他にもいくつか気になるところはありますが、35,800円という価格を思えば、これはむしろ賞賛に値する内容だと思います。

ところで、ソニーのロケフリは一昨年の12月にハイビジョン対応のLF-W1HDが発売されました。が、このモデルに関してはネット接続ができないなど、機能が大幅に絞られています。

LF-W1HD.jpg
LF-W1HD

ハイビジョン対応ではありますが、音声はアナログ入力しかできないなど消化不良の感も否めません。また、入力が1系統しかないため、複数のAV機器を切り替えて利用することもできないようです。専用のポータブルモニタなども用意されておらず、PCやPSPなどとの接続も想定されていません。

受信機の増設にも対応していないようですから、例えばリビングルームにあるブルーレイレコーダーをベッドルームのテレビでも使えるようにするといった感じで、送受信機1セット以上の用途拡張は考慮されていないのでしょう。要するに、これまでのようなロケフリのコンセプトとは根本的な考え方が異なり、分野としては同じくソニーから発売されている「ルームリンク」と同列になるのかも知れません。

この割り切り方は、システムそのものの概念が解りにくかったり、セットアップが面倒だったりすると、その分だけマーケットも限られていくということを学習した結果なのかも知れません。が、接続機器を遠隔操作できる高品位ビデオトランスミッターともいうべき商品に「ロケーションフリー」という名はそぐわないような気もします。

せめて、専用のハイビジョン対応ポータブルモニタをラインナップさせるべきでしょう。いまこの原稿を執筆しているVAIO type Tは11.1インチで1366×768ドットの(フルではありませんが)HDパネルで、サイズ的にもかなり手頃な感じです。このパネルを使って受信機一体の防水モニタを作って送受信可能な範囲ならどこでもハイビジョン映像が楽しめるといったシステムにして欲しいところです。

こうしてみますと、ツインバードのリンクザバディはモニタの解像度や電波の到達距離にやや不満はあるものの、リーズナブルな価格、シンプルで扱いやすい構成、全般的なバランスは非常によくできており、私の個人的なニーズにはソニーのロケフリより纏まりが良いという点で勝っているように思います(あくまでも個人的な感想です)。

ロケフリのアイデア自体は非常に優れていると思いますが、商品企画がマーケットニーズを読みきれていないようで、アイデアを生かしきれていない印象です。ま、ソニーは得てして技術屋主導で自己満足に終わってしまうような失敗を過去に何度も繰り返してきたメーカーですが、そういう社風がいまでも息づいているということなのかもしれません。

もしかしたら、ソニーに纏まりの良いロケフリを期待するより、ツインバードにハイクォリティなリンクザバディの上位機種を望んだほうが私の理想に近いものが得られるかも知れません。

(おしまい)
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リンクザバディはロケフリを超えるか?(その1)

2000年にソニーが「エアボード」という名でテレビの新たな視聴形態を提案したシステムは、後に「ロケーションフリー」(略称:ロケフリ)となってラインナップが拡充されていきました。テレビなどの映像と音声をリアルタイムでMPEG-2ないしMPEG-4に変換し、無線LANで飛ばしたり、ネットに繋がる環境ならどこでも(海外からでも)視聴が可能になるというシステムは、なかなか画期的なアイデアだと思います。

ロケフリ(システム概要)

例えば、一般的なポータブルテレビでは電波状態によって画質があまり芳しくなかったりします(私の家は周囲の建物の影響か特に電波状態が悪いらしく、アナログ/デジタルを問わず窓際でもかなりノイジーで見る気が失せるほどです)。また、ポータブルテレビは地上波放送くらいしか見られないでしょう。もう少し用途が広いものとしては、せいぜいワンセグチューナー内蔵のポータブルDVDプレイヤーといったところでしょうか?

ロケフリは屋外のアンテナと繋がったチューナーによる安定した映像を送受信できますし、BSやCS、あるいはケーブルテレビ、HDDに録りためたビデオなども、それらの機器と繋ぐことで送受信可能となります。無線LANやインターネットを経由して据え置きしてあるこれらの汎用映像機器を遠隔操作し、その映像と音声をIPパケットとして送受信できますから、無線LANのエリア内やネットに繋がる環境ならどこでも視聴可能になるわけですね。場所を選ばずに様々な映像コンテンツを楽しみたいという向きにこのレベルで応えるシステムはこれまでなかったと思います。

しかし、私の周囲でこのシステムを知っている人は非常に少なく、世間一般にも広く知られているとは言い難い状況でしょう。応用範囲が広いシステムで従来の概念に当てはまらない商品ゆえ、この種のガジェットを好む人以外には解りにくく取っつきにくいのかも知れません。

また、過去にはこのロケフリを利用して海外から日本のテレビ番組を視聴できるようなサービスを行っている業者を相手取って、NHKと民放キー局が訴訟を起こしたということもありました。結果は原告全面敗訴となったそうです。

とはいえ、訴訟を起こしたくらいですから、彼等にしてみればこのロケフリというシステムは「自分たちの知的所有権の侵害を幇助するもの」といった認識があっても不思議ではありません。その存在を広く認知させたくないといった意向からテレビ局は(テレビ局と提携関係にある他のメディアなども?)これを積極的に取り上げないようにしているのかも知れません(あくまでも個人的な想像です)。

ま、現実的には普通の家電製品として気軽に導入しにくいところもネックになっているのかも知れません。私の個人的なニーズとしましては、ネット経由での利用はそれほど魅力を感じませんが、湯船につかりながらゆっくり映画でも見るとか、スカパー!チューナーから離れたところにあるローラー台を漕ぎながらツール・ド・フランスの生中継を見られるなら非常に便利だと思います。が、ベースステーションに専用液晶モニタとそれ用のお風呂ジャケットの3点で12万円超ですから、ちょっと手が出せませんでした。

廉価版でも出さないかと模様眺めに回っているうちに、この専用モニタもお風呂ジャケットも生産終了となってしまったようです。売れない商品をラインナップしておくのはやはり厳しいのでしょう。この不況でソニーも14年ぶりの赤字となり、業績を大きく落としていますから、このロケフリそのものを諦めてしまわないか心配すべきかも知れません。

専用モニタがなくなった現在、最も気兼ねなく使いやすいロケフリ用ポータブルモニタはPSPになるかと思います。サードパーティ製とはいえ専用の防水ケースなども発売されていますから、バスルームでの利用も懸念はないでしょう。が、私はPSPを持っていませんので、ロケフリのベースステーションとPSP本体を合計すると4~5万円くらいになるでしょうか。

ロケフリ専用モニタに比べればずっとリーズナブルですが、接続機器の遠隔操作などはリモコン画面を呼び出して十字キーなどで操作する方式になり、使い勝手はあまり良くないようです。また、画面サイズも手に持って見るか、それに相当するくらいの近距離に置ける適当な場所があればともかく、離して置くとなればかなり小さく感じます。

もちろん、ノートPCを無線LANで繋いでやる方法もあります。が、バスルームでの使用はかなり厳しいでしょう。ローラー台を漕ぐときも汗まみれになっていますから、滴った汗がマシンに悪さをしないか心配で、精神衛生上はなるべく直接触れたくない感じです。

そうこうして二の足を踏んでいたある日、ツインバードから似たようなシステムのワイヤレスモニタ、リンクザバディVW-J707Sという商品が発売されていることを知りました。価格はヨドバシ.comで6万円弱(ポイントバックは10%ですから、正味は54,000円くらい)と、ロケフリ+PSPより高価なので微妙に思いました。が、Amazonでは36,800円と、ロケフリ+PSPより遙かに安いということで、試しに買ってみることにしました。

リンクザバディ
TWINBIRD LINK ZABADY W-J707S

(つづく)

ついに生産終了

私も11ヶ月ほど前まで乗っていたホンダS2000がついに今年6月末を以て生産終了となるそうです。

リアルオープンスポーツカーS2000の生産を終了

Hondaは、リアルオープンスポーツカーとして好評を博してきた「S2000」の生産を、2009年6月末をもって終了する。

 S2000は、1999年に世界トップレベルの高出力4気筒自然吸気エンジンを搭載、50:50の理想的な車体前後重量配分を実現し「走る楽しさ」「操る喜び」を具現化したFRのリアルオープンスポーツカーとして発売された。また、運動性能だけでなく、当時の排出ガス規制値を50パーセント以上下回る排出ガスレベルや、新開発オープンボディ骨格構造を採用、クローズドボディ同等以上のボディ剛性を実現し、環境への配慮と世界最高水準の衝突安全性も兼ね備えていた。その後、VGS(車速応動可変ギアレシオステアリング)の追加、タイヤサイズの変更、排気量アップなど運動性能を向上させるなど、進化を続けてきた。その結果、約9年間で国内累計2万台、全世界累計11万台※以上販売した。
※ 2008年12月末現在

honda_s2000.jpg

(後略)

(C)本田技研工業株式会社 2009年2月27日


9年間で全世界累計11万台という生産台数は現代の量産車としてみれば決して大きな数字ではありません。一般的な乗用車と比較してもあまり意味はないかもしれませんが、日本で一番売れている小型乗用車のフィットなら日本国内市場だけで7ヶ月分の販売台数がそれくらいになります。

いずれにしても、単一車種にプラットフォーム、エンジン、トランスミッション、その他諸々、殆どのコンポーネンツが専用開発され、他への転用はなされず、それをマーケット規模が極めて小さいスポーツカーだけで成り立たせてきたのですから、これまでよく投げ出さなかったと感心すべきかも知れません。

数年前まで30年近く放送されていた某関東ローカル局の新車情報番組でパーソナリティを務めていた某自動車評論家のM本氏はこのS2000を単純に「2000ccの国産車」という括りで捉え、「高すぎる」と評していましたが、私の意見は全く逆です。

現行フェアレディのようにプラットフォームもパワートレーンもスカイラインやエルグランドなどと共用し、その開発コストを分散して償却できるやり方と違って、S2000はあの少ない生産台数で償却していかなければなりません。そうした成り立ちを勘案すればかなり割安なクルマだと見ることもできるでしょう。

例えば、開発費を200億円と仮定し、それを11万台で償却するとしたら、1台当たり18万円以上を価格に上乗せしなければ赤字になります。が、200万台で償却できるなら、1台当たり1万円で済むわけですね。

もちろん、大量生産には部品の金型代などをはじめとして、スケールメリットでコストダウンが可能な要素が山ほどあります。生産台数が少ないほど様々なポイントでコスト面の不利を抱え込むことになりますから、M本氏が「2000ccの国産車」と単純に括って高いと評したのは思慮が浅すぎるように思います。

それはともかく、これまでもS2000の生産が継続されてきた状況は非常に厳しかったと想像されます。今般、その終了が決定した背景にはやはりアメリカ市場での落ち込みが大きく関わっていると見るべきでしょう。累計11万台のうち過半数の6万5000台がアメリカで売れたそうですが、2008年の販売台数は2538台まで落ち込み、前年比41%減となってしまったそうです。全体の6割を売っていたマーケットが4割ダウンということは、それだけで1/4のマーケットを失ったということですから、これはさすがに厳しいでしょう(他でも落ちているでしょうし)。

私のS2000に対する個人的な思い入れなどについてはこれを手放したときに書いたエントリをご参照頂きたいと思いますが、この生産終了の報は「ついに来たか」というのが率直な感想です。私はこの発売当初からコンポーネンツを共有してスケールメリットを得られるような車種が他に発売されないなら、「フルモデルチェンジなしで細く長く作っていかなければ成り立たないだろう」と思っていました。約9年間に11万台で果たして開発コストや生産ラインの整備コストなどを償却し、黒字に乗せることができたのでしょうか?

このS2000の後継については白紙のようですし、NSXの後継も開発が中止されたと伝え聞いています。が、ホンダの四輪車はFRスポーツカーが原点ですから、タイプRなどのホットモデルだけになってしまうのも心情的には寂しいものがあります。

ホンダは軽自動車でオープントップのFFスポーツカーを出すのではないかという噂もありますが、できることならスズキのカプチーノのようにFRで出てきて欲しいところです。スタイリングも往年の「S」を現代的にアレンジして「S660」といったカタチで発売されたなら、かなりマニア受けするように思います。維持費の安い軽自動車なら、セカンドカーとしても維持しやすいでしょうし。景気が回復して余裕ができた暁には、是非とも検討して欲しいところです。

都合よく規範を使い分ける人々

オバマ政権が新設したエネルギー・気候変動政策調整官というポストに就いたキャロル・ブラウナー氏はクリントン政権で環境保護局長を務めており、同政権の副大統領だったアル・ゴア氏の熱烈なシンパだと伝え聞いています。オバマ政権は地球温暖化防止に積極的な政策を進めていくといわれていますが、こうした人事面を見ても間違いないでしょう。

キャロル・ブラウナー
Carol Browner

以前も述べましたが、日本の大衆メディアの殆どは「アメリカが京都議定書から離脱したのはブッシュ政権の主導によるもの」と誤解しており、ブッシュ前大統領を地球温暖化問題における最悪のヒールとして扱ってきました。そのブッシュ氏が退き、これまでの大統領戦を通じてアイドル的に美化されてきたオバマ氏が積極策を展開していくとなれば、「Change」が始まったと熱狂するのも無理からぬことかも知れません。

今日の読売新聞の社説「温暖化対策 経済危機克服の手段となるか」でも

オバマ新大統領が掲げる「グリーン・ニューディール」は、温暖化対策に新たな視点を示した


という崇拝ぶりです。また、今日は日本経済新聞も社説で温暖化問題を取り上げていますが、やはりオバマ政権の政策方針を好意的に捉えているようです。

排出削減目標、内向き議論の危うさ


 温暖化ガスの排出削減義務を定めた京都議定書の第一約束期間は、2012年で終わる。その次、ポスト京都の枠組みは、今年の年末にコペンハーゲンで開く国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP15)で決まる。難航が予想される国際交渉の焦点は20年までの国別排出削減目標、いわゆる中期目標である。日本でもようやくその検討が始まったが、内向きな議論が目に付き、強い既視感と危機感を覚える。

(中略)

 地球の温度上昇を何度以内に抑えるかで、IPCCは厳しい順にカテゴリー1から6まで六つのシナリオを提示している。1は産業革命からの気温上昇がセ氏2.0から2.4度で、6だと最大6.1度上昇する。欧州は1を採用している。オバマ新大統領の就任前の演説では、米国は20年までは次に厳しい2のシナリオに沿って削減し、50年までには1のシナリオに復帰するよう削減ペースを上げるという計画だ。

 削減計画の目標に、絶対的な正義や正解があるわけではない。ただ、科学的な根拠と、国際社会を納得させる合理性と説得性は不可欠だ。昨年来、国際交渉の場では国別総量目標にはふさわしくないと何回も明確に否定された、セクターごとの削減可能量の積み上げが、いまだに日本の選択肢として検討対象になっているのは、不可解というしかない。

(後略)

(C)日本経済新聞 2009年1月26日


IPCCのシナリオとそれに基づくコンピュータシミュレーションは精度が全く保証されていない単なる推測でしかありませんが、それを神託のように盲信しているのは相変わらずですね。「科学的な根拠と、国際社会を納得させる合理性と説得性は不可欠だ」といっている割に、IPCCが採用した予測通りに現実が推移してきたのか否か、日経の論説委員は科学的に確認していないようです。

気候変動の予測と実測の比較

これは以前にも用いたグラフですが、IPCCの第四次評価報告書で採用された予測は2000年以降の8年間で平均気温が約0.15℃上昇することなっています。しかしながら、実際にはその通りになっていません。

この種のコンピュータシミュレーションは最初のステップの誤差が極めて僅かだったとしても、ステップを重ねていく毎に誤差が雪だるま式に膨れ上がっていくものです。誤差の原因が端数をどこで切るかといった単純な問題でないなら、いくら世界屈指の高速コンピュータを駆使しても克服できるものではありません。上図のように最初の8年くらいでこれだけ大きな誤差があって、50年先、100年先の予測が信頼できると思い込むのは、もはや「宗教」であって「科学」ではないでしょう。

そもそも、京都議定書で日本に課せられた「1990年を基準として-6%」という温室効果ガスの削減義務に科学的な根拠などありません。「科学的な根拠と、国際社会を納得させる合理性と説得性は不可欠だ」というのであれば、科学的根拠のない削減義務を課した京都議定書を守るいわれもないでしょう。

また、オバマ政権が掲げる「グリーン・ニューディール」は風力発電や太陽光発電を大々的に開発していく旨を謳っています。が、こうした不安定な電力を大規模に取り入れるとなれば、その変動損失を吸収するのに技術的な限界も生じてくるでしょう。それをどう克服していくのか私は大いに疑問を感じています。

しかし、オバマ政権の方針を崇拝する彼等はこうした問題点を全く指摘していませんし、それ以前にこうした問題点があること自体をきちんと認識しているようにも見えません。それでいて「科学的な根拠と、国際社会を納得させる合理性と説得性は不可欠だ」というのは二重規範以外の何ものでもないでしょう。

このように地球温暖化防止を叫ぶメディアの多くは、論旨に応じて複数の規範を都合よく使い分けます。こうした矛盾を気にしないということは、要するに物事を真剣に考えていないということです。

乗用車メーカーはつらいよ

昨日、ホンダが軽自動車ザッツの不具合で国土交通省に改善対策の届け出をしました。

ホンダ、16万台回収し無償修理 鍵構造に不具合

 ホンダは22日、軽乗用車「ザッツ」16万8594台(02年1月~07年6月製造)を回収して無償で修理する改善対策を国土交通省に届け出た。安全上、本来はギアを「P」(パーキング)にしないと鍵が抜けない構造だが、ギアをP以外の状態にしたままエンジンを切る動作を繰り返すと電気回路に不具合が生まれ、Pにしなくても鍵が抜けてしまう恐れがあることがわかったためという。

 23日以降、利用者と連絡をとり、関連部品を改良品に交換する。この不具合では、横浜市の女性(69)が昨年9月、バックをする際に使う「R」(リバース)にギアを入れた状態で鍵を抜いて降車したところ、車が動き出した。止めようとした女性は車の下敷きになり、大けがをした。

(C)asahi.com 2009年1月22日


三菱ふそうのクレーム隠しの一件を見ていても、メディアが自動車のリコール制度を正しく理解しているとは思えませんので、一般の方も「改善対策」についてはあまりよくご存じではないかと思います。いずれ三菱ふそうの一件についても詳しく書こうと思っていますので、自動車のリコール制度についてもそのときに詳しく書こうと思います。ここでは概要だけザックリとご説明しておきましょう。

「改善対策」というのは不具合の改修のため自動車メーカーが国土交通省に届け出る制度という点では「リコール」と同じなのですが、根本的に異なる部分があります。リコールと改善対策とは「道路運送車両の保安基準」を満たさなくなる恐れがあるかないかという点が異なるんですね。つまり、「リコール」は公道を走行できる(車検に合格する)条件を満たさなくなる恐れのある不具合が対象となり、「改善対策」は公道を走行できる条件を満たしているものの、安全上もしくは環境保全上の理由で改善すべき不具合が対象になります。

そもそも「Pレンジ以外でキーが抜けてはいけない」という条件は道路運送車両の保安基準はもちろん、その他の法令でも義務づけられているわけではありません。あくまでも自動車メーカーが自主的に設けている安全基準によるものなんですね。なので、このホンダの不具合は「リコール」ではなく「改善対策」となるわけです。

このような不具合の届け出は日常茶飯事で、毎回取り上げていたらblogのネタに困らないでしょうが、すぐに飽きられてしまうでしょう。今回に限ってわざわざ取り上げたのは何故かといいますと、先日「消防車は如何にして事故を起こしたか?」と題したエントリで取り上げた三島市の消防車暴走事故とメディアの扱いが大きく異なっているからです。

三島市の消防車暴走事故は、それを報じた朝日と産経で状況が全く異なっていますので、どちらが真実なのか判断しかねます。が、仮に朝日の報道が正しかったとしたら、Rレンジのままポンプの操作を行った消防官のミスが事故の直接的な原因と見て間違いないでしょう。

一方、今回のホンダの改善対策にかかる事故例として示された横浜市の女性のケースも、Pレンジに入れず、充分にパーキングブレーキを効かせていなかった(パーキングブレーキをかけ忘れていた?)ことが事故の直接的な原因と見られます。

三島市の消防車暴走事故はPTOインターロックという極めて初歩的な安全装置が装備されていなかった(あるいは装備されていたのに正しく作動しなかった?)ことが事故の構成要因の一つであるにも拘わらず、その点についてメディアからは一切指摘されませんでした。

一方、横浜市の軽自動車暴走事故もキーインターロックが正常に作動しなかったことが事故の構成要因の一つといえます。メディアにもその点がクローズアップされていますが、個人的にはインターロックの設計ミスというのも酷な気がします。

そもそも、この不具合は「Pレンジ以外でイグニションのオフを繰り返す」という普通ではあり得ない操作を繰り返すことによって、インターロックの電気回路が損傷してしまったことが原因となっています。駐車してエンジンを停止する際にはPレンジに入れるという常識的な操作を行っていれば、このような不具合には至らなかったわけです。

恐らく、この横浜市の女性は普段からPレンジ以外でイグニションをオフにするという常識的とはいえない操作を繰り返していたのでしょう。そして傾斜があるにも拘わらずパーキングブレーキをシッカリかけないという初歩的なミスを重ね、動き出したクルマを止めようとして立ちふさがって轢かれたという状況だったのでしょう。私の個人的な感想としましては、ホンダの過失はゼロに等しいと言っても良いくらい極めて軽微なものだったと思います。

以前、「人間の愚かさは底なしですから、何をしでかすか予測するにも限度があるでしょう。」と書きましたが、このキーインターロックを設計したホンダの担当者もまさかPレンジ以外でイグニッションをオフにするような常識的とはいえない操作が繰り返されるとは思っていなかったでしょうし、そうした状況を想定したテストは行われなかったのでしょう。

実際、この改善対策対象車においてPレンジ以外でキーが抜けしまったのはこの横浜市の例を含めて2件のみ(事故に至ったのは横浜市の1件のみ)とのことです。17万台近く生産されたうち2件ということは、8万何千人に1人しかいない「常識的なクルマの扱い方ができない人」が引き起こしたトラブルという見方もできるでしょう。

私の視点では三島市の消防車暴走事故も横浜市の軽自動車暴走事故も基本的に同類と考えます。が、状況を勘案すれば、後者のほうが「作った側」の落ち度はずっと小さかったように感じます。しかし、メディアによる両者の扱われかたは全く逆といっても過言ではないでしょう。この改善対策の件についてはNHKのニュースでも報じられていましたが、上述してきたような事柄をきちんと理解していなければ、事故の原因はクルマの欠陥によると印象づけられてしまいかねない内容でした。

特に酷いのは時事通信社で、とんでもなく乱暴な端折りかたをしており、事実の歪曲といえるレベルの滅茶苦茶な記事になっています。

ホンダ「ザッツ」に改善対策=16万台、駐車中動きだす事故も

 ホンダは22日、軽乗用車「ザッツ」に、駐車ブレーキをかけ忘れたまま駐車した場合、車が動きだす恐れがあるとして、国土交通省にリコール(回収・無償修理)に準じた改善対策を届け出た。対象は2002年1月から07年6月までに製造された16万8594台。

(C)時事通信ドットコム 2009年1月22日


こうしたゴミのような記事を書く程度の低いメディアに騒がれる乗用車メーカーはつくづく気の毒に思います。

徹底抗戦(その2)

先般のデトロイトショーで発表された新型インサイトの燃費は、アメリカの規準で41mi/gal(1ガロン当たり41マイル)とされています。この数字だけを見れば現行プリウスの46mi/galにやや劣る程度ということになりますが、ホンダの公称値は実燃費との差が極めて大きいという悪評が高く、私も実際の性能差はもっと大きいのではないかと推測しています。

例えば、中古車買い取り業者のガリバーが運営するCORISMというサイトの企画で現行プリウスとシビックハイブリッドを同条件でテストしています。これによれば、10・15モード燃費で33.0km/Lの現行プリウス(G)が27.8km/Lをマークしたのに対し、シビックハイブリッド(MXB)は31.0km/Lの公称値に対して18.3km/Lという惨憺たる結果でした。このテストでプリウスは公称値と実燃費の差が16%程度でしかなかったのに対し、シビックハイブリッドは40%を超える差が出てしまったわけですね。

また、従来の10・15モードより実走に近いとされるJC08モード燃費では、現行プリウスが29.6km/Lと10%程度しかダウンしていないのに対し、シビックハイブリッドは25.8km/Lと17%近くダウンしている点も気になるところです。

フィットもクラストップレベルの実燃費を誇りますが、10・15モード燃費で24.0km/L(1.3Gの場合)という恐るべき数字をカタログに載せているばっかりに損をしている感じですし、アンチホンダにとって絶好の突っ込みどころになっているようです。「ホンダは実燃費より燃費測定で有利なセッティングにしているのではないか?」などと噂されてしまうのも仕方ないところでしょうか。

こうしたことを考え合わせますと、新型インサイトも実燃費はあまり期待できないように思います。が、予定されている低い価格設定には非常に大きな訴求力があります。前回も触れたように、200万円以下となればカローラの上位モデルともろに競合しますから、プリウスとの比較はあまり重要ではなくなり、カローラより実燃費でずっと優れていながら同価格帯となる点に着目する必要が生じてきます。トヨタもこうした観点からかなりの危機感を抱いているのでしょう。

トヨタ、「プリウス」新旧モデル併売 現行型、200万円程度に

 トヨタ自動車は5月に全面改良するハイブリッド車「プリウス」について、新型と現行モデル車を併売する。新型プリウスはエンジンを大型化することなどから、現行より価格が高くなる見通し。2月にはホンダがハイブリッド車「インサイト」を200万円を切る価格で発売する予定で、トヨタは現行モデルを200万円前後で販売して対抗する。トヨタが同一車種の新旧モデルを併売するのは初めて。

 新型プリウスはエンジン排気量を1500ccから1800ccに拡大し、燃費性能も約1割改善。ガソリン1リットル当たりの走行距離は36―40キロメートルに達する見通し。機能向上に伴い販売価格は200万円台半ばまで上昇するとみられる。現行モデルを取り扱う「トヨタ」店と「トヨペット」店に加え、量販車種を扱う「カローラ」店と「ネッツ」店でも販売する。

(C)NIKKEI NET 2009年1月19日


現行プリウスの最廉価グレードはS“スタンダードパッケージ”(以下、スタンダードパッケージ)といいますが、昨秋の値上げ前は215万円でした。現在はそれが233万円ほどになっていますが、これを新型インサイトに対抗し得る200万円前後に値下げするというわけですね。もちろん、そのまま30万円も値下げすれば、高い値段で買わされたユーザーに対して申し開きができませんから、装備をある程度簡略化することになるようですが。

プリウスSスタンダードパッケージ
PRIUS S“STANDARD package”

余談になりますが、スタンダードパッケージは普通の「S」グレードとの価格差が52,500円しかなく、外観上の違いもホイールキャップが付かないくらいです(プリウスは全車アルミホイールですが、空力特性を向上させるため15インチホイールについてはスタンダードパッケージ以外リム付近に整流効果を狙ったリング状のキャップが付きます)。主要装備もリヤワイパーの間欠動作がない、ラゲッジルームにトノカバーが付かないといった些細な差しかありません。

スタンダードパッケージ最大のネックはメーカーオプションのナビが付けられない点でしょう。プリウスはホーンパッド脇のスイッチでエアコンやオーディオなどの基本的な操作が可能ですが、細かい操作はタッチパネル式の液晶モニタを用います。そのため、一般的なクルマのように2DINサイズのナビを装着するスペースが設けられておらず、ディーラーオプションのナビは設定されていません。もし後付けしたいとなれば、ポータブルナビなどをオンダッシュで装着するか、1DINのスペースが設けられている小物入れを取り外して改造し、インダッシュモニタ式のそれを導入するしかないでしょう。

もっとも、新型が発売されれば当然のことながら上位モデルは新型へ移行し、継続生産される現行モデルは廉価版にオンリーになるでしょう。上位モデルとの価格差を埋め合わせるために標準装備やオプション設定で差別化し、「ナビを付けたければもっと上のグレードにしなさい」といった誘導を行う必要もなくなるハズです。

ハナシを戻しましょうか。新型インサイトは現行プリウスにも劣る燃費性能とプリウスほど作り込まれていない簡略なハイブリッドシステム、プリウスもどきなスタイリングなどクルマおたく的な観点ではあまり高い評価を受けないかも知れません。高校生くらいまでは熱狂的なホンダファンで大のアンチトヨタだった私としても、初代に比べれば遙かにマシと思いますが、ハイブリッド専用車としてのポテンシャルはまだまだプリウスの敵ではないと感じます。

しかしながら、新型インサイトはプリウスとの直接対決を避け、カローラの上位モデルに競合する価格帯に抑えるという、ビジネス的な戦略でかなり上手いところを突いてきたように思います。また、どんなに燃費が良くても高くて買えなければ意味がない、価格を安く抑えて普及を促し、グロスでガソリンの消費を抑えていくのも意味があるとするホンダの言い分も正論です。

トヨタが新型プリウスを発売しても現行モデルを存続させ、その廉価版を併売していくという前代未聞の対抗策でホンダの低価格路線を露骨に潰しに来たということは、それだけホンダの戦略はトヨタを焦らせ、本気にさせたということでしょう。

もしかすると、新型プリウス最大のライバルは現行プリウスだったということになるかも知れません。現行プリウスを廉売して大して利益を上げられず、新型プリウスの販売にも影響して開発費などの償却に時間がかかり、表向きにはホンダとの戦いに勝利したように見えても実際は痛み分けだったということもあり得るかも知れません。

ま、トヨタのことですからそう遠くない将来、プリウスよりワンランク下のハイブリッド専用車を開発してインサイト対策にぶつけてくるかも知れませんけどね。実際、ハイブリッドシステムの小型軽量化とコストダウンを本格的に推し進め、廉価モデルの開発を急がなければならないという方針は既に昨年のパリショーでも公言していましたし。公言したということは、それよりもっと早い段階で社内的な指示が出ているのは違いないでしょう。

プリウスvsインサイトのバトルは、クルマの性能差に見るべきところはなさそうですが、ビジネス面での争いは両者ともかなりの本気モードに突入しているようですから、なかなか面白い展開になってきたように思います。

(おしまい)

徹底抗戦(その1)

間もなく発売になるホンダのハイブリッド専用車インサイトは販売価格を200万円以下(190万円程度という情報もあり)に設定されるようです。ホンダは昨年の暮れくらいからスヌーピーのキャラクターと土屋アンナのナレーションで「環境テーマ広告」と称するシリーズCMを展開しており、今月からは「ハイブリッドカーって高い?」篇で誰でも手が届くようなハイブリッドカーを発売していくといった主旨のアナウンスをしてきました。

「ハイブリッドカーって高い?」篇

単純にハイブリッドカーとしての性能を見比べた場合、最重要項目となる燃費について新型プリウスと新型インサイトとの間には明らかな差があります。アウトラインの伝聞で断定的なことは言えませんが、メーカー公称値で現行プリウスに若干劣る程度の新型インサイトも実燃費では依然として大きな差があるような気がします。というのも、私が特に気になっていたモーターの出力が新型インサイトでも強化されなかったようなんですね。

ホンダがこれまで手掛けてきたハイブリッドカーは、初代インサイトもシビックハイブリッドもエンジンが主役でした。モーターの出力は初代インサイトが10kW(13.6PS)、シビックハイブリッドも15kW(20PS)と非常に低く、ハイブリッドシステムの構成も含めてあくまでもエンジンのアシストとして利用するだけでした(低速巡航時などごく限られた条件は除きます)。

50kW(68PS)という強力なモーターを搭載している現行プリウスはモーターのみでの発進も可能なため、渋滞などでも燃費が落ち込みにくいのですが、発進時もエンジンを稼働させなければならないホンダのハイブリッドシステムはこうした状況で大きく劣っていたんですね。全般的に見ても、モーターの出力が大きいプリウスのほうがエンジンとの出力特性の違いを補完し合える要素が大きく、走行条件による最適化が高次元で行われているようです。

新型インサイトのハイブリッドシステムは初代インサイトやシビックハイブリッドの延長にあるため、モーターの出力はやはり小さく(13PSとの情報もあり)依然としてパワーアシストに徹しているようです。プリウスのようにモーターのみで発進したり出力特性を補完し合って高次元の最適化を期すという考え方を追求しているわけではないようなんですね。

ホンダのハイブリッドシステムは低出力のモーターと容量の小さいバッテリーで済むため、シンプルで軽く仕上がっていると言われます。が、プリウスはモーターのみでの発進が可能で、リバースする際もモーターを逆回転させるだけですから、エンジンの次に重い部品であるトランスミッションが必要なく、決して重くなっていないんですね。実際、シビックハイブリッドの車両重量が1,260~1,290kgであるのに対して、現行プリウスは1,260~1,280kgと全くの同レベルです。

しかし、ビジネスという側面から見れば、性能の良いクルマを作ったほうが勝ちではなく、売れるクルマを作ったほうが勝ちということになります。しかも、新型インサイトの低価格で初めてハイブリッドカーを体験するという人たちはプリウスの実力を体験していません。

新型インサイトは現行プリウスより30万円以上、新型プリウスとは50万円くらいの価格差が付くかも知れないと見られています。カタログ上の燃費が多少劣っていても(実燃費の差が大きかったとしても、すぐに知れ渡るとは限りませんから)、これだけの価格差があれば販売台数やマーケットシェアといった販売成績でプリウスをトップの座から引きずり下ろすことも不可能ではないかも知れません。

また、この筋のメディアの中には「新型インサイトはカローラのマーケットを喰うのではないか?」といった見方をしているところもあるようです。実際、カローラ・アクシオの主力である1.5リッターはともかく、上位の1.8リッターモデルは195.5万円からになりますので、200万円以下なら完全に競合します。

ま、供給能力を考えると「カローラ喰い」というところまで至るかどうか微妙ではありますけどね。新型インサイトの年産予定台数は日米欧向けトータルで20万台だそうですから、日本国内だけで14万台以上売っているカローラ(フィールダー、ルミオンを含む)のマーケットを呑み込むことは物理的に不可能です。現行プリウスだってそう簡単に増産できなかったゆえ、私も昨年の3月から5月末までほぼ3ヶ月待たされましたし、現在も納期がかかる状況はあまり変わっていないようですから。

とはいえ、トヨタにしてみれば軽自動車を除く車種別新車販売台数トップの座を守り続けてきたカローラがフィットに抜かれて苦虫を噛み潰しているような状況です。その上、カローラのマーケットまで(たとえ一部でも)喰われるようなことがあれば、看過できない脅威となるでしょう。

私は当初プリウスもどきなスタイリングと期待ほどではなかった燃費性能で新型インサイトをかなり甘く見ていました。が、なかなかどうして、ビジネス的には面白いところを攻めているように思えてきました。トヨタもかなりの危機感を抱いているらしく、前代未聞の対抗策で徹底抗戦に出るようです。

(つづく)

主力車種の海外流出第一号

日産も今般の景気後退を受けて大幅な減産方針を進め、全国で2000人、神奈川県の追浜工場でも数百人の人員を削減することになっているそうです。このことについてメディアには批判的に報じられました。

派遣切り:日産、三菱ふそうでも迫る解雇 /神奈川

 いすゞの見直し対象からも外れた「派遣社員」。日産自動車と三菱ふそうトラック・バスでも、同じように失業の危機にさらされている人たちがいる。【吉田勝、笈田直樹】

 ◇「理不尽」「不公平だ」 「派遣会社がケアを」--追浜工場

 全国の派遣社員2000人全員を来年3月までに削減する日産自動車。横須賀市の追浜工場では、数百人規模の人減らしが進む。

 派遣社員の男性(26)は今月16日「1カ月後に解雇」と通告された。地元の高知県で自動車用品店に勤めていたが、「給料がいい」と聞き京都の派遣会社に登録。1年2カ月間、追浜工場でエンジンの組み立て作業などを担当してきた。

 派遣切りを職場で耳にしたのは先月末。「私の契約は3カ月更新で、先月末になければ大丈夫かなと思っていたが……。理不尽だ。給料とは別に4万2000円を支給すると言われたが、何の足しにもならない」と憤る。退職後は実家に戻り、失業保険で暮らすほかはないという。

(後略)

(C)毎日新聞(地方版) 2008年12月25日


「切られた側」の言い分しか取り上げず、「切った側」の言い分を完全に無視しているこの記事は、「両論併記」というジャーナリズムの原則を全うしていません。暗に派遣切り批判を展開するもので、記者が感情を発散させただけに過ぎず、公平中立な報道姿勢とは対極にあります。このように生産調整に伴う人員調整で批判的な報道が繰り返されると、メーカーはイメージダウンにつながります。表立っては口が裂けても言わないでしょうが、本音ではかなり迷惑に感じていることでしょう。

そのせいと短絡することはできませんが、この追浜工場の主要車種であるマーチの生産拠点が2010年に予定されているフルモデルチェンジに伴って、タイのサイアムモーターズ・アンド・ニッサンへ移されることになりました。

日産 追浜工場での生産中止 「マーチ」タイから逆輸入

 日産自動車が、小型車「マーチ」を2010年に全面改良する際、生産を追浜工場(神奈川県横須賀市)からタイの工場へ移管し、日本に逆輸入して販売することが16日、明らかになった。日産は09年3月期連結営業損益が赤字に転落する見通しで、為替の円高傾向が続いている中でコスト削減を狙う。

(中略)

 新型マーチは、フランス自動車大手ルノーと共同開発する車台を使い、タイの工場で製造。日本のほか、東南アジアでも販売する予定。追浜工場では代わりに、10年に発売する電気自動車などを製造する見通し。

 日産は、欧州で販売する小型車「マイクラ」も英国の工場での生産を10年に終え、インドの新工場へ移すことを既に決めている。

(C)FujiSankei Business i 2009年1月17日


マーチはモデル末期ということもあって近年は大きくシェアを失っていますが、それでも昨年1~12月実績で4万7000台近く、軽自動車を除いた車種別新車販売台数では18位にランクされています。トップ10に1車種のみ、20位以内に5車種しかランクインしていない日産にとって、マーチは屋台骨を支える主力の一台であることに違いありません。そのマーチの代わりに生産されるのは新発売される電気自動車とのことですから、規模が桁違いに小さくなるのは必至です。

以前ご紹介したとおり、ホンダのフィットアリアは既にタイ製を逆輸入してきました。が、これは現地や東南アジア地域でシティという名で売られているモデルを日本市場にも投入した、いわば隙間狙いの車種です。マーチのような日本国内向け主力車種の生産拠点が海外へ全面的に移されるというケースは過去に例がないでしょう。

ま、イギリスのサンダーランド工場で行ってきたヨーロッパ向けのマーチ(現地名:マイクラ)の生産もインドに新設される工場へ移すということですし、日産はこの生産拠点の変更を「為替の円高傾向が続いている中でコスト削減を狙う」と説明しているようですから、単純に派遣切りバッシング対策と見るのは乱暴すぎるかも知れません。

しかし、コスト面だけを考えるなら、円高でなくてもタイで生産したほうが有利であることに違いありません。タイへの移転で約30%のコストダウンになると試算されているそうですが、円に対するバーツの下げ幅は20%程度でしかありません。従来の為替レートでも充分に安く生産できたということですね。また、このバーツ安は昨今の政情不安を受けたものですから、政情が安定すれば従来の水準まで戻す可能性も低くないでしょう。

純粋に利益だけを追求するのであれば、これまでも日本国内での生産に拘る必要はなかったハズです。あくまでも個人的な憶測に過ぎませんが、海外へ生産拠点を移すメリットとして雇用調整が容易で需要の高下に対応しやすいという点が今般の騒動で再認識されているに違いないと思いますし、この決定に至った要因の一つを構成しているような気がします。

高級車などは「Made in Japan」も付加価値の一つとなるため、日本国内での生産は続くでしょう。が、生産台数が多く、ギリギリのコスト管理が要求される大衆車は今後どんどん中国やインドやタイなどへ生産拠点が移されていくことになるでしょう。メーカーサイドは明言を避けてあまり表沙汰にはならないかも知れませんが、舛添厚労相や野党やメディアや世論などによる派遣切りバッシングは、生産拠点の海外流出を加速させる要因として影響していくように感じます。

そもそも、この派遣切り問題で叩かれたメーカーは日本国内に生産拠点を維持し、その分だけ雇用を創出してきた企業ばかりです。任天堂のように自社工場を持たず、全て外注として雇用創出には直接的に貢献してこなかったいわゆる「ファブレス企業」がこのようなバッシングを受けることはありませんでしたし、今後もないでしょう。

これを不条理と言わずして何と表現すれば良いのか解りませんが、このような状況は派遣切りバッシングを展開してきた彼らが世の中の仕組みを理解していないゆえに生じているのです。

ヤフオクにアクシウムがあふれかえる?

当blogでは1月12日のエントリで批判したマヴィックR-SYSのリコールの件ですが、日本でも1月16日付で使用中止と回収・対策品への交換を説明する正式コメントがリリースされました。

【MAVICからの重要なお知らせ】
※このお知らせは、Mavic R-SYS前輪使用者を対象にしたものです。
2009年1月16日

顧客安全対策の一環の下、Mavicは本日、安全予防措置としてR-SYS前輪を自主的にリコールすることを発表いたします。

MavicはR-SYS前輪のチューブ式炭素スポークが、ある特殊な状況下で破損する可能性があると判断しました。これにより、使用者がバランスを失い転倒し、けがをする可能性があります。

Mavic R-SYS前輪の全てのモデルがリコールの対象になります。(R-SYS・R-SYS test・R-SYS Premium・R-SYSフロントスポークセット) これらの商品を別々にあるいは自転車のパーツとして購入した場合も全てが対象になります。ただちに使用を中止して下さい。

ご使用のお客様はただちにR-SYS前輪をMavicの正規取扱店に返却して下さい。その代品として、新しくグレードアップされたR-SYS 前輪が無料で提供されます。 代品の手配は2009年3月31日より、順次開始を予定しております。 またお客様が最終的な交換車輪を入手されるまでの間、 引き続き自転車を使用していただく為に、 Aksium車輪一セットをご用意致します。尚、最終的に交換車輪をお受けになった後もAskium車輪を返却する必要はございません。

リコールに関してのさらなるご質問があります場合は、Mavic正規取扱店にお問い合わせいただくか、以下のマヴィック・ヘルプライン国際フリーダイヤルにお問い合わせ下さい。またはマヴィック・ホームページをご覧下さい。www.mavic.com

国際フリーダイヤル 800 234 788 75

(日本時間9:00-17:00 ※土・日・祝を除く)
(※ご契約されている携帯・固定電話会社によりかけ方が異なります。つながらない場合がございましたら恐れ入りますが、ご契約先の電話会社にお問い合わせください。) 

Mavicはこのリコールによって生じたご迷惑に対し、深くお詫びを申し上げたいと思います。何卒ご理解の程、よろしくお願い致します。そして、これからも世界市場で更にグレードアップされた最高級の車輪を供給できるよう努力して参ります。


対策品の供給は3月末以降ということでやや時間がかかり過ぎるような気もしますが、私も製造業に従事する者として事情はよく解ります。問題となっているスポークのスペックを見直すにも、テストを含めると時間が必要ですし、それを生産ラインに乗せるのもいくらかのリードタイムが必要になりますから。

リコールについてはこの辺の理解を得るのが難しいところなんですね。発表が早過ぎて対策品の供給が遅くなれば「対応が遅い」と批判されがちですし、逆に対策品の供給体制が整うまで発表を遅らせて事故などが発生しても困ります。今回のケースは事故の恐れがある以上、使用中止を優先させるのは当然のことで、対策まで多少時間がかかっても仕方ないところだと思います。

マヴィックは対策品の供給開始まで最短でも2ヶ月半となるその間、代用としてアクシウムを無償提供するとのことですから、最善を尽くしていると評価すべきでしょう。ま、このR-SYSほどの高価なホイールを使っている人たちなら既に何セットか持っていて代用品の供給が必要ないという人も沢山いるでしょうが、メーカーの対応としては妥当なセンでしょうか。

これだけの対応ができるのですから、返す返すも最初の一報のまずさを残念に思います。日本でも第一報からきちんと日本語で不具合について説明し、使用中止を呼びかけるべきでした。ま、こういうことは頻繁にあることではありませんから、アメア・スポーツ・ジャパンも要領を得ていなかっただけだったのかも知れませんが、今後のためにもよい教訓として欲しいところです。今回の正式発表も恐らく本家からのリリースを和訳したものでしょうが、あまりキレイな訳になっていないところも課題とすべきでしょう。

ところで、代用として無償提供されるアクシウムはR-SYSの対策品が供給された後も返却の必要なしということですから、実質的にプレゼントということになるわけですね。上述の通りこのクラスのユーザーならアクシウムのようなベーシックグレードのホイールなどいらないという人も少なくないでしょう。もしかしたら、新品未使用のアクシウムがヤフオクあたりにあふれかえるかも知れません。

アクシウムもオープンプライスですが、実勢価格で3万円前後くらいといったところでしょうか。R-SYSユーザーがどれくらいいて、そのうち何割くらいの人が代用として配布されるアクシウムをヤフオクなどに流すか想像も付きませんが、供給過剰なら価格下落は当然の市場原理です。普段使いやトレーニング用にベーシックグレードで1セット欲しいといった向きには狙い目になるかも知れませんね。

前例あり

ソニーから発売されたVAIO type Pは封筒サイズの「ポケットスタイルPC 」ということでパンツのバックポケットに突っ込み、そのサイズをアピールするプロモーションが展開されています。が、アチコチから「強引だ」と失笑を買っていますね。

typePのプロモーション
SONY VAIO type P のプロモーション
写真を見た限りポケットに収っているのは全体の1/3くらいでしょうか。
このPCを購入してこのように持ち歩く人は殆どいないでしょう。
やらされているモデルさんの本音もちょっと聞いてみたいところです。


私も「またアホなことを」と思いましたが、よくよく思い返してみますと前例があるんですよね。

日本初のトランジスタラジオTR-55の発売から2年後の1957年、ソニーはTR-63という当時としては画期的な小型ラジオを発売しました。彼らはそのコンパクトさを強調するため、「ポケットに入る」という意味で「ポケッタブル」というキャッチフレーズを編み出しました。(余談になりますが、このソニーが創作した「ポケッタブル」という造語はやがて英語の辞書にも載るようになり、世界的に通用するそうです。)

しかし、その外寸112mm×71mm×32mmは既成のワイシャツの胸ポケットに収らず、せっかくのキャッチフレーズが生かせないという事態になってしまったんですね。そこで当時の専務だった盛田昭夫氏がちょっとした小細工を考え出しました。「ワイシャツのポケットを少しばかり大きくすれば、何の問題もない」ということで、TR-63が丁度収るくらいに胸ポケットを大きくした特製ワイシャツを仕立てて営業マンに着用させ、販売店への売り込みを展開したそうです。巧妙といえば巧妙ですが、詐欺的といえば詐欺的なハナシではあります。

TR-63.jpg
SONY TR-63
当時のサラリーマンの平均月収に匹敵する13,800円という価格ながら、
大好評を博したこのラジオはソニーの本格的な海外進出の足がかりとなり、
その人気から一時は日航機をチャーターして大量に空輸されたといいます。
ちなみに、この翌年の1958年に東京通信工業はソニーへ社名変更しました。
このバタ臭いイメージから「東通工は外資に乗っ取られた」と勘違いされた
というようなことを盛田昭夫氏の著書で読んだ記憶があります。


ポケットに収めることでコンパクトさをアピールし、それが少々強引でも気にしないというプロモーションは既に前例があり、いまに始まったハナシではないということですね。

こうなったら「次は何を無理矢理ポケットに突っ込んで来るのか?」「ポケッタブルという言葉の生みの親であるソニーはどこまで暴走するのか?」というSony Styleを皆が楽しみにするような方向で展開していくのも面白いかも知れません。

新型プリウス発表!

既に昨年の10月くらいにはネットに資料が流出して「PRIUSCHAT.COM」などでスクープされ、一部で話題になっていましたね。

流出していた新型プリウスの資料
昨年10月くらいに流出した新型プリウスの資料

昨年1月に当blogで取り上げたアレは完全にガセでしたが、「PRIUSCHAT.COM」などでスクープされた画像は本物だったということが今般のデトロイトショーでの正式発表で証明されたわけですね。

新型プリウス(前)
新型プリウス(後)
今般のデトロイトショーで正式発表された新型プリウスの外観

ライトやバンパー周りなどの意匠を改め、全体的にエッジを立ててシャープな印象にしたという以外は完全にキープコンセプトで、リヤビューもあまり変わらない感じです。ま、全体的なフォルムはホンダも新型インサイトでマネこいてきたくらいですから、このスタイリングは崩せないのでしょう。

一方、インテリアは大きく変わりました。

現行プリウスの内装
新型プリウスの内装

上が現行、下が新型ですが、最も目を引くのはインパネ中央からセンターコンソールをかなり高い位置で連続させ、そこにシフトレバーを配置するというデザインを採用したところでしょうか。この「囲まれている感」が窮屈と感じるか否かは実際に乗ってみないと解らないでしょう。個人的な主観で言わせて頂けば、スポーツカーならこうした空間設計も悪くないと思いますが、プリウスのようなキャラクターにはあまり似合わないような気もします。

これまでダッシュボードから一段高く設けられていた液晶モニタが普通のクルマでもありがちな位置に引き下げられたのはタッチパネルの操作性なども考慮されたからだと思います。が、実際には走行中頻繁に触れる部分でもありませんから、視線をあまり落とさなくて済む現行のほうが視認性に優れるという点でメリットがあるように思います。また、新型は特徴的なセンターコンソールデザインとの兼ね合いからか、画面がかなり上向きになっていますが、外光が強いところなどでは映り込みが気になりそうな感じもします。

現行のセンターメーターには速度計と距離計と燃料計しかなく、燃費データエネルギーモニタなどの情報は液晶モニタでの表示となっています。ナビゲーションを使って地図表示にしているときなど、これらの情報を確認するには一々画面を切り替えなければならないという不便があるんですね。ま、ステアリングのところにあるスイッチで切り替わるのでその操作自体はさほど煩わしいものでもありませんけど。

新型プリウスのセンターメーター

新型ではセンターメーター右寄り(右ハンドルでは恐らく左寄りになると思いますが)にそうした情報を表示する格好になるのだと思います。上の写真では明らかにプリウスの外観が示されていますが、エンジンとモーターの作動状況やバッテリーの充電状況などを示すエネルギーモニタになっているように見えます。ナビを使っているときも燃費を気にしながら走りたいという向き(私もその一人ですが)にとってこの改良は非常に好ましい部分になると思います。

エンジンはこれまでの1.5Lから1.8Lにアップ、モーターの出力も増強され、全般的にパワーアップが図られたそうです。現行では2Lクラスと謳われてきましたが、新型では2.4Lクラスと謳われています。もっとも、私の場合は燃費重視で走ることが多く、アクセルを踏み込んでパワー不足を感じるような走り方は基本的にしませんので、この点は個人的にあまり魅力を感じません。なお、かねてから家庭用電源で充電できるプラグインの試作車もお披露目されてきましたが、新型プリウスにそれを導入するようなアナウンスはまだないようです。

灯火類がLED化されたほか、ルーフにソーラーパネルを設置してベンチレーションに利用するといったギミックが(こちらは標準装備になるとも思えませんが)設けられたり、色々あるようですが、肝心の燃費は現行の約10%アップと謳われています。現行のSグレードの10・15モード燃費が35.5km/Lですから、38.6km/Lくらいになるでしょうか。噂された40km/Lには若干及ばなかったものの、なかなかの数字だと思います。

実質的な燃費は走り方や様々な条件にもよりますが、私の場合はおおよそ26km/L前後くらいです。巡航速度でアクセルを戻し気味にして惰性やモーターのみの走行を多用するとか、早めのブレーキングで回生ブレーキを有効に利用するとか、少し意識して走ればエネルギーモニタをチェックしなくても26km/Lくらいはさほど苦になりません。(冬場はこの限りではありませんが、その理由についてはまたの機会に。)

この26km/Lから10%アップというと単純計算で28km/L台後半くらいになります。が、このレベルを狙うとなれば、私の技量や普段の走行条件ではエネルギーモニタを頻繁にチェックしながらミリ単位の微妙なアクセルワークを駆使、それなりの本気モードで走らなければ難しいレベルになります。ですから、この10%アップというのが実質的な燃費にちゃんと反映されるのであれば、価値のある進歩になると思います。

ちなみに、新型インサイトの燃費はアメリカの燃費基準(日本より遙かにシビアです)で41mi/gal(1ガロン当たり41マイル)と発表されました。新型プリウスの50mi/galの敵ではなく、現行プリウスの46mi/galと比べても見劣りし、初代プリウスを辛うじて上回ったというレベルでしょうか。

ま、初代インサイトはオールアルミボディに2座という非常に特殊な条件でこのレベルだったことを思えばホンダの開発陣もちゃんと仕事をしてきたと認めるべきでしょう。ただ、ホンダは初代インサイトもそうでしたが、フィットなどでもカタログ値と実燃費の差が非常に大きいという悪評がありますので、実燃費で本当にこのレベルに達しているのか微妙な部分もあります。

いずれにしても、以前、「プリウスより若干チープならば、総合的な性能がその分だけ劣っていても言い訳が立つと読むのは穿ち過ぎでしょうか?」と書きましたが、図星だったようです。

現行プリウスはモデル末期にも拘わらず販売台数が伸び続けているそうで、他が落ち込んでいることと相まって新車販売台数ランキング(軽自動車を除く)で5位にまで上がってきているそうです。今回の発表で買い控えが始まるとは思いますが、いまでも納車に数ヶ月かかる状況が続いているようです。

新型プリウスの発売は5月くらいになるようですが、デリバリーが始まっても膨大なバックオーダーを抱えるのは間違いないでしょう。現行もモデルチェンジ当初は半年待ちくらいになったと聞いていますが、当時よりさらに潜在的なニーズが高まっている状況ですから、新型はさらに待たされるかも知れません。

プリウスは従来のヒエラルキーに属さないクルマですが、動力性能などの面で車格が上がったという考え方もできますから、値上げにつながる可能性も充分にあるでしょう。人によってはあえてモデルチェンジを待たず、現行モデルを買ってしまうという選択もアリかもしれませんね。

正規代理店の資格なし

既にご存じの方も少なくないと思いますが、マヴィックが「第三世代ホイール」と称し、鳴り物入りで発売したR-SYSの前輪に強度不足があったそうで、リコールとなるようです。

既に本家では注意を喚起し、使用中止を求める広報を行い、回収を始めるようです。が、日本代理店のアメア・スポーツ・ジャパン(株)マヴィック事業部は以下のような告知を行っているのみです。

MAVIC SAFETY NOTICE
This notice is addressed to users of R-SYS front wheels.


下記の内容につきましては、現在、経済産業省関係当局に対して申請中でございます。当局からの最終確認を受理次第、詳しい内容を皆様にお知らせいたします。

アメア スポーツ ジャパン(株)
マヴィック事業部

Annecy, January 5th 2009.

As part of its ongoing commitment to customer safety and satisfaction, Mavic has announced a voluntary recall of its R-SYS front wheels as a precautionary safety measure.

Mavic has identified that the carbon tubular spokes of the R-SYS front wheel may break during use in certain circumstances and causing the rider to lose control and possibly fall, potentially sustaining injury.

All models of Mavic R-SYS front wheels are concerned (R-SYS, R-SYS test, R-SYS Premium), whether purchased separately or as part of a bicycle. The wheels must no longer be used.


まず、ユーザーに危険が及びかねない問題が生じていると解った時点で万一のことを考えなければなりません。良識のある企業であれば「当局からの最終確認を受理次第、詳しい内容を皆様にお知らせいたします。」と告げる以前に使用中止を求めるものです。

例えば、シマノも昨年発売したWH-7850-C24-CLおよびWH-7850-C50-CLにリムの内面形状が悪く早期にパンクする可能性が高いという不具合がありました。彼らは当然のように「直ちにご使用を中止し、ご購入された販売店または下記フリーダイヤルまでご連絡ください。」と告知しています。

また、非常に気に入らないのは「下記の内容につきましては」と示しておきながら、肝心の「下記」を本家で告知されている英文そのまま和訳もせずに転載しているという手抜きです。これでは日本語しか読めないユーザーには何が起こっているのかさっぱり理解できません。

最低でも事の次第が明瞭に解るよう、速やかに和訳を載せておかなければならないハズですが、本家での発表から1週間を経過してこの状態です。アメア・スポーツ・ジャパンのユーザーを舐めきった態度は言語道断です。

そもそも、日本代理店というからには日本のユーザーに対して不足ないサービスを行う責務があるハズです。が、それを全うできないというのであれば、マージンが乗せられた割高な正規輸入品をわざわざ買う意味が薄れます。

ネット通販で個人輸入も決して難しくない時代となりましたが、それでもあえて割高な正規輸入品が求められているのは、ワランティやそのインフォメーションがしっかりしているハズだという安心感が買われている側面も忘れてはいけません。


MAVIC R-SYS

私がいま務めている会社は基本的に特殊機械を独自に開発し、製作するメーカーです。が、取扱い製品の中にはアメリカからキットフォームというかたちで輸入したものを組み立てて販売するいわゆるノックダウン輸入を行っているものもあります。キットフォームの仕入れ原価に対して売価はかなり高く、そのマージンをユーザーに知られたら「ボリ過ぎ」と思われてしまうかも知れません。

しかし、それもこれも保証やアフターサービス体制の確保、故障した場合にそなえて部品も在庫しておくなど、様々なコストを計上した上できちんと利益が出せるようにすれば必然的にこうなるというものなんですね。作りっぱなし・売りっぱなしでOK、ノークレーム・ノーリターンで良いというのであれば工業製品の値段はもっともっと安くすることができます。

ま、私はR-SYSのユーザーではありませんが、マヴィックのコンプリートホイールはロード用もMTB用も何セットか持っていますし、自分で手組みしたホイールの多くにマヴィックのリムを使ってきました。いずれも正規輸入品ですが、彼らのこうした態度を見ていると少々腹立たしくなります。

私がネット通販で購入したM760系XTのフロントハブもクイックシャフトがリコール対象になっていましたが、シマノは回収・交換を徹底していました。私が利用したオンラインショップの対応も良かったのか、こちらから何もアクションを起こさなかったのに対策品が送られてきました。

また、シマノは日本政府が定めた基準を満たしていながら、自社基準に合致しなかったという理由でサイクリンググローブを自主回収しています。いずれの不具合もシマノの公式サイトで自転車部門のホームにある「カスタマーサポートからのお知らせ」で解りやすく案内されています。

パナソニックなどは例の石油ストーブのリコールのため、トップページをその告知専用として、ここを通ってからホームへ行くようにサイトが作られています。が、マヴィックのこの件はロードないしトライアスロンの頁から「news」を開かない限り人目に触れません。

アメア・スポーツ・ジャパンは彼らの爪の垢でも煎じて飲むべきです。


1月18日追記

このリコールについて1月16日付で日本国内の正式な対応が発表されました。
【MAVICからの重要なお知らせ】

この対応についての私の評価はコチラです。

寒いニュースは伝わらない Part 2

東京は寒い週末になっていますが、今冬の寒さは世界的な傾向のようです。

アメリカでも各地で近年にない寒さが記録されているようですが、ウィスコンシン州のグリーンベイでは116cmの積雪を記録し、およそ120年ぶりの大豪雪になるそうです。

ヨーロッパでは1月6~7日にかけて大寒波に見舞われ、特に今冬は厳しい寒さが続いていたポーランドでは-25℃を記録、内務省の発表によれば少なくとも10人が凍死(昨秋からの累計では76人が凍死)しているそうす。

フランスでは季候の良いリゾート地として知られるコートダジュールでも希な降雪のため鉄道が運休、マルセイユではすべてのバスが運休となり、高速道路も閉鎖されたそうです。スペインでも空港が閉鎖され、オランダでは氷によって運河の航行が不可能になり、13年ぶりに砕氷船が出動するなど、各地の交通機関が雪氷によって大きな影響を受けているようです。

また、ベルギーの新聞にはこんな風刺漫画が載ったそうです。

アル・ゴア著『不都合な真実』を燃やして暖をとる人

ま、こうした局地的/短期的な現象を幾つ並べても、人為的温暖化論者たちには地球的/長期的な傾向を表わすものではないといった感じで「馬の耳に念仏」なのでしょう。それならば、ちょっと最高気温を更新したとか、ある生物の生息が確認されていた北限がいくらか北上したとか、些細なことで地球温暖化による現象だと大騒ぎするメディアの暴走も制するべきです。

元に戻せば良いというものではない

舛添厚労相の(個人的な)意向である「製造業への派遣禁止」に民主・社民など野党4党も続き、中日新聞も社説でそれに同調しているのは前回お伝えした通りです。しかしながら、彼らはこうした安直な規制強化の弊害をきちんと考えているようには思えません。そんな彼らとは対照的に、日経新聞の社説は冷静に現実を見据えているといえるでしょう。

雇用激震に備え短期・中長期の対策急げ

(前略)

 年明け後、舛添要一厚生労働相が将来は製造業への派遣を制限する考えを表明した。民主党など野党4党も製造業派遣の規制を盛り込んだ法改正案を今国会に出すという。

 製造業への労働者の派遣事業が解禁された2004年以降、各地の製造現場では直接雇用の期間工などを派遣に置き換える動きが広がった。舛添氏の考え方、野党の案ともに細部は不明だが、04年以前の状態に戻すことを狙っているようだ。

 この規制強化は労働市場を不安定にする副作用がある。工場側にとって派遣社員は直接雇用の期間工を雇うのに比べ社会保険手続きなどを派遣会社に任せられる利点がある。働く側からみると派遣制度がないのと比べ雇われやすい。また、すぐに仕事に就けるなどの理由で自ら派遣での就労を希望する人も増えている。そうしたことを考えると多様な雇用形態を残しておくのが望ましい。

 日雇い派遣を原則禁止するために政府が国会に出し継続審議になった法改正案も問題が多い。派遣失業者にとって、今のようなときこそ1日単位で仕事を見付けられる日雇い派遣はありがたいものではないか。

 規制強化に走るのは賢いやり方ではない。国が真っ先に取り組むべきなのは、財政資金や雇用保険に積み立てたお金をうまく使い、緊急避難的に仕事を提供したり失業者が次の職場を遅滞なく見付けられるよう職業訓練をしたりすることだ。

(後略)

(C)日本経済新聞 2009年1月8日


当blogではこれまで「硬直した雇用環境は長期的に見れば国内の雇用を海外へ流出させる恐れがある」という面を強調してきましたが、日経新聞が「労働市場を不安定にする副作用がある」と述べているように短期的なマイナス要因も十二分に考えられます。

また、「派遣失業者にとって、今のようなときこそ1日単位で仕事を見付けられる日雇い派遣はありがたいものではないか」という意見も正論です。こうした短期的な雇用形態でなければなかなか職にありつけない人も少なくないのですから、これを「使い捨て」と表現し、嫌悪する風潮は当事者たちの苦悩をリアルに理解できていないゆえでしょう。

一方、今日の朝日新聞の社説「派遣切り拡大の衝撃―雇用を立て直す契機に」もこの件について述べています。製造業への派遣禁止に関する是非については直接言及していないものの

安全網からこぼれる人をなくすには、まず非正社員を原則としてすべて雇用保険に入れることだ。立場が不安定な非正社員を支えられる仕組みでなければ意味がない。


と述べ、非正規雇用の健全な在り方を提言しています。個人的な印象として、製造業への派遣禁止を唱える風潮に乗るところまでは至っていないだけ朝日新聞にしては上出来だと思います。

そもそも、製造業への派遣が解禁された労派法改正まで国会で議論が紛糾したという印象はありませんでした。そこでこの経緯を改めて調べなおしてみましたが、やはり与党が法案を提出した当初こそ野党からクレームが付いたものの、最終的には自民・民主・公明・自由・社民の共同修正案が提出され、共産党もこれを支持して全会一致という極めて穏やかな採決となっていました。

この決議は2003年5月のことですが、現在のような状況に至ることを当時の国会議員たちは読み切れなかったということですね。それで慌てて元通りにすれば文句はないだろうとでも言うのでしょうか?

この改正法の施行は2004年3月からですが、その後5年弱のあいだ国内にどれだけの雇用が創出され、海外への流出がどの程度抑制されたのかという点もきちんと調査し、評価しておくべきでしょう。大抵の物事には二面性あるいは多面性がありますから、良い面とそうでない面があり、それらをどう評価するかが意思決定において極めて重要なポイントになります。

朝日新聞の社説にも当時は失業率が戦後最悪の状況にあったことが法改正の契機になったという経緯が書かれています。つまり、これを元に戻せば失業率も再び戦後最悪の状況に戻りかねないわけです。ならば、感情論など排除し、こうした点を熟慮しなければなりません。

いま舛添厚労相や野党4党が唱えているような規制強化を敢行し、しばらくして景気が持ち直しても雇用の海外流出が続いて失業率上昇に歯止めがかからなくなっているといった状態は予見し得ることです。そこでまた慌てて規制緩和に転じるなどと日和見な政策転換を繰り返すような馬鹿げた状態になることだけは避けなければなりません。

木を見て森を見ず Part 2

昨日のエントリで製造業に対する派遣禁止の法改正は国内産業の空洞化が進む恐れがあるなど少なからぬ弊害もあることを述べました。そうした観点から短絡的な法規制は避けるべきだと私は考えています。しかし、中日新聞は私の見解と全く逆の社説を書いています。

製造業派遣 禁止に踏み切る時だ

 “使い捨て労働”と批判が強い労働者派遣制度で、製造業への派遣を禁止すべきだとの声が強まっている。最近の派遣切りは常軌を逸している。政府は禁止に向けた法改正に取り組むべきだ。

(中略)

 解雇する側とされる側のギャップは大きい。雇用・福祉の安全網の再構築と中長期的に非正規労働者を減らす課題は残ったままだ。

 自動車や電機産業などでの最近の派遣社員や期間従業員の解雇ラッシュは目に余るものがある。経費節減や役員報酬カットなど自助努力もしない段階から派遣切りでは、国民の理解は得られまい。

(後略)

(C)中日新聞 2009年1月7日


この論説委員は「経費節減や役員報酬カットなど自助努力もしない」などと言い放っていますが、私が知る限り日本の製造業ほど経費節減に弛まぬ努力を積み重ね、ギリギリのコスト管理と高い品質の維持を両立してきた業界はそう多くなく、自動車メーカーに関していえば世界的に見ても極めて高いレベルの仕事をしてきたと思います。

例えば、世界的な鋼材価格の高騰を受けて昨年の5月にトヨタと新日鐵の間で自動車用鋼板の価格交渉が行われ、約30%の値上げで合意に至りました。他社もそれに倣ってほぼ同じ水準の値上げが実施され、大きなコスト負担を抱え込む状況になっていたんですね。しかし、彼らは何とかそのコストを吸収し、乗用車に関してはプリウスなど一部の例外を除いてモデルチェンジを伴わない値上げは行わずに乗り切ってきました。

また、トヨタの場合は8700人程の管理職について今冬の賞与を10%カットしていますし、平成21年3月期の役員賞与についてはゼロにすることが検討されています。これで自助努力をしていないというのは単なる言いがかりでしかありません。

「禁止すれば海外移転が進み失業者は増える」という 経済同友会の指摘を紹介してはいますが、反論も提案もなく、この極めて重要な課題はスルーしています。もし、製造業が雇用調整の容易な海外へ移転を進め日本国内の雇用が損なわれていったら、そのことについてまた製造業を批判するつもりなのかも知れません。が、それは厳しい国際競争のなかで勝ち残るために奮闘している人たちの努力を顧みない非常に無責任な態度になると思います。

中長期的に非正規労働者を減らすべきとする考え方には私も賛成ですが、「最近の派遣切りは常軌を逸している」「最近の派遣社員や期間従業員の解雇ラッシュは目に余るものがある」としながら、これらの問題とは関係なく既に職を失っている250万人以上の人たちについて何も語らないのは「木を見て森を見ず」と言わざるを得ませんし、いささか偽善めいているようにも感じます。

ところで、新聞配達員は全国に約43万人いるそうですが、そのうち何割くらいが正規雇用なのでしょう?

安易な労派法改正には弊害もある

いわゆる「派遣切り」で路頭に迷っている人たちをクローズアップし、徒に感情論で煽るメディアの報道姿勢には疑問を覚えます。確かに彼らを救済せよという主張は理解できますが、来春までに8万5000人に達すると見込まれている派遣切りによる失業者ばかりを毎日のように大きく取り上げるのはバランスを欠いていると言わざるを得ません。現在、日本の完全失業者数は250万人を超えており、問題にされている8万5000人はそのわずか3%少々でしかないのですから。

NHKのニュースなどを見ていても、自動車メーカーのアッセンブリーラインから外された派遣工を追いかけ回しては悲惨な生活状況を大きく伝えています。その一方で熟練工を育てるために様々な工夫をして人材を確保したままこの荒波を乗り越えようとしている中小企業を熱心に取材しては対比しています。派遣切りを敢行した大企業は悪であり、人材育成に力を抜かない中小企業は善であるとでも言いたげな構成は稚拙に過ぎる劇場型報道と感じます。

こうしたメディアや世論の感情論に乗せられてしまった舛添厚労相は製造業に関して派遣の禁止も口にするようになってしまいました。

厚労相、派遣法改正案の修正検討 製造業派遣の禁止も

 舛添厚生労働相は5日の閣議後の記者会見で、すでに国会に提出している労働者派遣法改正案の修正に前向きな考えを明らかにした。さらに「個人的には」と断ったうえで、「製造業まで派遣労働を適用するのはいかがなものか。そのことも含めて検討しないといけない」と述べ、製造業派遣を禁止したい意向も明らかにした。

 政府は昨秋の臨時国会に日雇い派遣の原則禁止を柱とした労働者派遣法の改正案を提出し、継続審議となっている。しかし、派遣労働者の約7割を占める登録型派遣の規制を見送ったことで労働者側から「不十分」との批判が相次いでいた。「派遣切り」が社会問題化し、さらなる規制強化に踏み込まざるをえなくなった形だ。

(後略)

(C)asahi.com 2009年1月5日


マスマーケットでビジネスを展開している製造業にとって、売れる商品を売れるタイミングで市場へ投入するというマネジメントはいまや常識です。そのためのフレキシブルな生産調整も極めて重要な課題になっているのはいまさら言うまでもないでしょう。しかし、原材料や部品の調達を管理するだけで効率的な生産調整はできません。

やはり人件費は大きな負担となりますから、人員に余剰があればそれも速やかに調整したいと考えるのは企業として当然のことです。厳しいコスト管理を重ねても大きなコスト負担となる人件費の調整が柔軟に行えないというのでは、企業にとってリスクとなり、工場を構える条件として一つの大きな足かせになり得るわけですね。

日本は部品調達にかかる環境がよいとか、人種や言語や宗教や文化の違いなどによる管理の難しさが殆どないとか、政情が安定しているとか、生産拠点の近くに巨大なマーケットがあるとか、物流環境が極めて良好であるといったメリットもあります。

が、その一方で土地や人件費やエネルギーコストなどの高さは世界屈指というデメリットもあります。それ加えて柔軟な労働力調整ができないとなれば、マイナスの要素は一層大きくなり、日本国内に生産拠点を維持する必然性が失われていくでしょう。

例えば、ホンダはフィットの生産ラインを三重県の鈴鹿工場に置いていますが、その派生セダンであるフィットアリアはタイのアユタヤ工場で生産し、日本へ輸入しています。ま、タイの場合は昨今の政情不安で日本企業の期待を裏切るような状況になっていますが、それはそれとして、もはや自動車も途上国での生産に大きな懸念はありません。

いま、大手メーカーなどから職を解かれ困窮している人たちは、労働者派遣法(以下、労派法)などによって労働力の需給関係が柔軟な状態になっていたからこそ、これまで職に就くことができていたという側面もあったと思います。しかし、大衆メディアはそうした側面を一切無視して「切られた」という部分ばかりを執拗に報じている印象です。

もし、こうしたメディアや世論の批判の的となることに嫌気がさし、舛添氏の言うような規制が安直に実施されれば、もっと柔軟な労働力調整が可能な海外へ工場を移転され、日本の国内産業は空洞化を一気に加速させかねません。派遣労働者たちが派遣されてきた職場そのものが日本国内から消失してゆき、現在よりもっと厳しい状況へ陥る可能性も否定できないでしょう。

もちろん、現状のままで良いとは思いません。契約期間を前倒しして解雇するのであれば、事前通告から一定期間(例えば3ヶ月以上とか)の就業を保証させたり、当初の契約期間満了まで支払われるはずだった賃金の何割かは補償されるようにしたり、寮を提供している場合はその在留についても一定期間保証させるなど、人道に反する一方的な切り捨てが横行しないよう、ある程度の規制強化は必要だと思います。

しかしながら、様々な情勢を熟慮せず、拙速に労派法改正を押し進め、単純な規制強化で製造業への派遣禁止などという結論に至ることは避けるべきだと私は思います。

消防車は如何にして事故を起こしたか?

ローカルなニュースだったので気付きませんでしたが、静岡県三島市でこんな事故があったそうです。

消防車バックし車や住宅に衝突

 29日午前11時35分ごろ、三島市中島で、資材置き場の火災の消火活動をしようとした三島消防署の消防車が急に後退し、停車していた乗用車と住宅に衝突した。家の中には女性(44)ら2人がいたが、けが人はなかった。
 三島署によると、同消防署の男性消防司令補(53)が運転席から降車し、消火活動の準備をしていたところ、消防車が後退したという。同消防署によると、消防車のサイドブレーキはかかっていたが、シフトレバーがバックに入っており、水圧を上げようとエンジンと連動しているポンプの回転を上げたら車が後退したという。

(C)asahi.com 2008年12月30日


マニュアル(以下MT)車でこうした状況はまずあり得ませんから、事故を起こした消防車はオートマチック(以下AT)車に間違いないでしょう。この事故の直接的な責任はもちろん運転していた53歳の司令補にありますが、この状況が確かなら消防車を作った側にも問題がないとは言えないと思います。

「作った側」というのはベース車両を作っているトラックメーカーやそれを消防車に仕立てる架装メーカーではなく、これらのメーカーに製作仕様を指示した三島市消防本部の器材担当と見るべきです。いずれにしても、こういう暴走事故が起こらないような安全設計を施しておくべきでした。

私は前職で特殊車両のプロデュースを8年近くやっており、何度も経験していますが、消防車や空港用特殊車両などは複合的な安全設計を施してきました。特に空港では車両同士の事故はともかく、相手が飛行機の場合は大事に(下手をすれば新聞沙汰に)なり、補償金額も桁違いになりますので、安全機構は消防車以上に入念なものを導入するのが普通です。

私は東京消防庁の車両にも関わりましたし、国内大手の航空会社やそのグループ会社の車両にも関わりましたが、私がそれらでやってきた仕事の殆どはこの種の事故を想定し、未然に防ぐ安全機構を施してきました。その具体的な部分をお話しする前に、まずは基礎となるポイントをザッとご説明しておきます。

asahi.comの記者は「エンジンと連動しているポンプ」と書いていますが、消防車のポンプに限らず、ダンプカーやクレーン車、ミキサー車なども架装された機械や機構を動かすために車両のエンジンから動力を取り出しています。これをPTO(Power Take Off)といいますが、用途に応じて動力を取り出す場所がトランスミッションだったり、フライホイールだったりします。消防ポンプ車の場合はエンジンの出力を100%取り出すためにフルパワーPTOという方式を用います(詳しくはコチラをご参照下さい)。

ミキサー車の場合、積載した生コンクリートが固まらないようにアジテーターを回し続ける必要がありますから、フライホイールから動力を取り出して走行中も作動できるようにします。が、消防車、殊にポンプ車の場合は原則として停車した状態で運用しますから、走行状態でPTOが作動しないようにするのが普通です。この場合、電気的な「インターロック機構」を設けるわけですね。

一般の方にとっても身近なインターロックはMT車の「クラッチ・インターロック」でしょう。MT車は駐車時にギヤをローないしリバースに入れておくのが定石ですが、ニュートラルに戻すのを忘れてスターターを回し、暴走させてしまう事故が増えたそうです。この対策としてクラッチペダルを踏み込んでおかないとスターターが回らないという安全機構が今日の乗用車では当たり前になったわけですね。

余談になりますが、私が運転免許を取得したときは踏切などでエンコしてエンジンがかからなくなったとき、ギヤをローないしリバースに入れてスターターを回せば少しの距離なら走れるから緊急避難のために覚えておくようにと習いました。それも今は昔というわけですね。

ハナシを戻しまして、消防車などのPTOインターロックはユーザーの要望によって作動条件が微妙に異なりますが、例えばパーキングブレーキを引くのはもちろん、ATのセレクターレバーがNレンジないしPレンジに入っていなければPTOも入らないといったパターンが多いと思います。空港用車両の場合、このとき誤ってセレクターを動かしてインターロックが作動し、PTOが不意にOFFとなって作業に支障を来さないよう、セレクターレバーの動きを固定する機械的なインターロックも併用する場合があります。

いずれにしても、NレンジやPレンジ以外ではPTOが入らないという、ごく初歩的なインターロックを設けていればasahi.comで報じられたような暴走事故は防ぐことができたハズなんですね。この程度のインターロックなら比較的簡単な電気配線で済むものですから、コスト的にも大したことはありません。東京消防庁などでは至極常識的な装備で例外なく導入されていますが、こうしたインターロックを何故設けていなかったのでしょうか?

今回の事故は初めからRレンジに入っていたのか、あるいは背負った空気呼吸器のエアボンベか何かをぶつけてセレクターレバーのロックボタンを押し、その拍子にレバーも動かしてしまったのか(ま、そう簡単に起こることではありませんが)、詳しい状況について記事を読んだ限りでは全く解りません。が、現場では突発的に何が起こるか解らないということを想定して製作仕様を決定するべきで、その辺の認識の甘さを感じます。

また余談になって恐縮ですが、こうしたインターロック機構を逆手にとって、わざと間違った使い方をする馬鹿者もたまにいますので、仕様設計については難しい部分もあります。例えば、パーキングブレーキをPTOスイッチ代わりに使う(つまり、普段からPTOスイッチをONにしておき、Nレンジに入れてパーキングブレーキを引けば同時にPTOもONになるといった使い方をする)横着者も出てきたりするんですね。

そういう横着者に限って上物のスイッチを切り忘れ、信号待ちか何かで停車してNレンジに入れてパーキングブレーキを引いた途端にPTOが入り、上物の機械を暴走させて事故を起こしたりします。人間の愚かさは底なしですから、何をしでかすか予測するにも限度があるでしょう。

こうしたケースを防ぐためにはPTOスイッチも電子式として、一度PTOがOFFになったら再びPTOスイッチをONにする操作をしない限りPTOが入らないようにするとか、PTOスイッチを操作してOFFにしないままPTOが入る条件から外れる状態になったら警報ブザーを鳴らすとか、さらに複雑なインターロックが必要になったりします。ま、人間に合わせて機械を設計するといっても、故意に間違った使い方をする人間にも対応しようと思うと安全機構も果てしなくなりかねないわけですね。


ところで、ここまでasahi.comの記事が正しいことを前提に書いてきましたが、産経で報じられている事故状況は全く異なっています。

火災現場で消防車が物損事故 静岡

 29日午前11時40分ごろ、三島市中島の倉庫資材置き場で発生した火災の消火に出動した三島消防署員(53)が現場到着直後、消防車のハンドル操作操作を誤り、近くに止めてあった乗用車と家屋の壁に衝突した。けが人はなく、消火活動に影響もなかった。

 三島署の調べでは、消防車は停車の際、近所に住む大工の男性(50)宅に止めてあった乗用車の前方バンパーに衝突、止まりきれずに家屋の壁にぶつかった。衝突で消防車の後方ステップ部が破損した。

(C)MSN産経ニュース 2008年12月30日


ローカルニュースとはいえ、ここまで状況が乖離しているのは尋常じゃありません。どちらが誤報なのか、どちらも誤報なのかは解りませんが、どんな取材をしたらこういうことになってしまうのでしょう? この三島市の消防車は如何にして事故を起こしたのか、謎は深まるばかりです。

今年も妄想癖は止まらない

新年を迎えて各紙とも社説で今年の動向はどうか、日本の進むべき道はどうあるべきかといったことを論じています。環境問題、とりわけ地球温暖化問題についての論述も相変わらずで、ヨーロッパを模範とし、それに追随すべしといった論調が支配的です。例えば、今日の朝日新聞の社説もステレオタイプのヨーロッパ崇拝に傾倒しています。

温暖化防止―「緑の日本」担える政治を

 地球温暖化の防止に向けた節目の年が明けた。

 温室効果ガスをどう削減していくのか。京都議定書に続く新たな国際的枠組みが年末に決まる。不況の暗雲が世界を覆っているが、それでも脱温暖化への歩みを後退させてはならない。

 一筋の光はある。太陽光や風力のように二酸化炭素(CO2)を出さない再生可能エネルギーの利用を広げ、それを新たな成長の糧にする「グリーン経済」への転換である。

 エコ住宅を普及させたり、太陽光発電の施設を増やしたりすれば、CO2を減らしつつ新たな雇用をつくることができる。温暖化防止と景気回復を同時にねらう発想だ。

 世界は動いている。ドイツやスペインなど欧州の国々は、社会や産業のグリーン化を進めてきた。米国のオバマ次期大統領も、グリーン・ニューディール政策で内需の拡大をめざす。

 さて日本はどうか。残念だが、政府の及び腰の対応に不安が膨らむ。

 たとえば、今月下旬にも誕生する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)への参加問題がある。

 昨年10月、太陽光や風力の利用を広げようと、英仏独伊やインド、韓国、オーストラリアなど51カ国が設立協定を結んだ。だが、日本は米ロなどとともに参加を表明していない。

 日本が使う1次エネルギーのうち、再生可能エネルギーは2%だけだ。これを増やすには、太陽光発電などの電気を電力会社が高く買い取るといった思い切った施策が必要だが、経産省や電力業界は消極的だ。IRENA不参加の背景にそんなことがある。

 ほかにも、CO2の国内排出量取引は、産業界の一部に配慮して強制力のない中途半端なものになった。温室効果ガス削減の2020年ごろの中期目標では、欧州が意欲的な数字を出しているのに日本はまだだ。

(後略)

(C)朝日新聞 2009年1月4日


太陽光や風力といった不安定電源が「新たな成長の糧」となる「一筋の光」としているところで宗教的といわざるを得ません。こうした大衆メディアの盲目的な自然エネルギー信仰はちょっとやそっとのことで治らないのでしょう。

また、「温室効果ガス削減の2020年ごろの中期目標では、欧州が意欲的な数字を出している」と書かれていますが、これは以前「やはり口先だけ」と題したエントリでも述べたとおり、技術的な裏付けなどなく、単なる政治的パフォーマンスに過ぎません。そんないい加減な連中の尻馬に乗ろうとするほうが馬鹿げていると考えるべきでしょう。

さらに、「ドイツやスペインなど欧州の国々は、社会や産業のグリーン化を進めてきた。」とも書いています。が、それは恐らくスペインが風力発電を、ドイツはそれに加えて太陽光発電を積極的に展開してきたというイメージで語っているのでしょう。しかし、現実はそれほどでもありません。

独西米のCO2排出量の推移(1997-2005)

上図は京都議定書が策定された気候変動枠組条約のCOP3(第3回締約国会議)が開催された1997年を基準とし、それ以降のCO2排出量の推移を示したものです。日本のメディアが環境保護先進国と崇拝しているドイツと、京都議定書から離脱したことを理由にヒール扱いしてきたアメリカは大差ない横ばい状態にあることが解ります。スペインに至ってはどこをどう見習うべきなのか全く理解しようのない増加を続けています。

結局のところ、日本のメディアは今年も環境問題をイメージだけで捉え、現実がどうなっているのか確認することなく、妄想で宗教的な持論を展開し、大衆をミスリードし続けるのでしょう。

謹賀新年

明けましておめでとうございます。

旧年中はご愛顧を賜り、ユニークアクセス(同じIPアドレスからのアクセスは1日1回しかカウントされないもので、正味の訪問者数に近い値が得られるカウンター)で3万を超えるアクセスを頂きました。

思えば昨年の正月、折りたたみ自転車のBD-1を20インチホイールに改造するつもりで予定を入れていなかったものの、パーツが揃わなかったために着手できず、単なる暇つぶしで始めたblogでした。特にコンセプトもなく、他愛のない趣味のハナシやメディア批判などゴチャ混ぜに好き勝手に書き散らしてきました。が、FC2のアクセス解析によればリピーター率は50%近く、思った以上にご贔屓にして頂き、有り難く思っています。

特に注目を浴びたいという思惑もありませんでしたので、積極的なPRをしてきませんでした。最初の1ヶ月はユニークアクセスで300少々でしたが、先月は4000を超えました。あまり多くなってくると下手なことが書けなくなり、プレッシャーにもなりますが、ま、個人が余暇を利用して書いているblogということをご理解頂いた上でお付き合い願いたいと思います。

2008年12月のアクセス状況
2008年12月のアクセス
※右のアクセスカウンターとは若干誤差があります。

当初はアフィリエイトで小遣い稼ぎでもしようかと思ったりしましたが、何度か「個人が非営利で運営している」というようなことを書いてしまった手前、いまのところそれも控えています。

私が趣味の軸足としている自転車関係の記事を多く書いてきましたし、実際にアクセス解析を見ますとそちら方面のキーワード検索でおいでになった方が圧倒していますので、全般的には自転車関係の趣味のblogとなるのかも知れません。が、私自身あまりきちんとコンセプトを絞り込んでいませんので、最近は自動車や環境問題関係の記事が多くなってきた感じです。ま、今後もこんな調子で展開していくと思います。

最初の半年くらいはほぼ毎日更新していましたが、最近はサボることが多くなり、例年になく忙しかった12月は17回と、かなり頻度が落ちました。ま、暖めていたネタも減ってきましたし、時間的な余裕があっても更新頻度を上げられる自信はありませんが。


当blogのタイトルを『酒と蘊蓄の日々』としていますが、その由来は初回のエントリでも書きました通り、ジャズのスタンダードナンバー『酒と薔薇の日々』をもじったものです。ま、暇つぶしで始めたこともあって考えるのが面倒臭く、かつて友人相手に配信していた零細なメールマガジンで用いていたものを使い回しただけですので、あまり深い意味はありません。毎回必ず蘊蓄が出てくる訳でもありませんし。

以前、シマノのカプレオというコンポーネンツについて論評したとき、「マニアの薀蓄と謳うからには・・・」と掘り下げの甘さを(管理者のみ閲覧可能なように気を遣って頂きながら)ご指摘頂いたこともありましたが、期待にお応えできない場合があります。

キューピー3分クッキング』の放送時間が10分となり、実際に3分で作れる料理も少なくなっているのに、あのタイトルを降ろさない(降ろせない)制作サイドの気持ちが痛いほど解る今日この頃だったりします。

年頭からダラダラと他愛もないことを書いてしまいましたが、本年も変わらぬご愛顧を賜りたくお願い申し上げます。

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まとめ

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