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酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

インサイトは安いだけが売り? (その1)

日本の大衆メディアの多くは自動車オンチですから、インサイトの登録台数がいきなりプリウスを抜いたということで何やら騒がしくなっていました(例えばココとかココとか)。また、判で押したように「プリウスを抜いたその勝因はインサイトの低価格戦略にあり」としています。ま、インサイトが好評を博している主因がその安さであるのは確かだと思います。が、登録台数でプリウスを上回った一番の理由は全く別なところにあると考えるべきです。

そもそも、プリウスの購入を検討している人たちの殆どは今年1月のデトロイトショーで発表された新型を見ているに違いありません。また、当blogでも何度か触れてきましたように、トヨタは比較的早い段階からホンダの低価格路線に真っ向勝負する構えを示し、インサイトの発売前には新型プリウスも最廉価グレードを200万円程度まで値下げするというコメントを出していました(非公式な情報ならデトロイトショーでの発表直後くらいには流れていました)。

プリウスはモデル末期ながら昨年1年間(1~12月期)の車種別新車登録台数(軽自動車を除く)で5位にランクされましたが、新型が発表された直後から当然のように買い控えが始まったと見るべきでしょう。現行モデルの納車待ちをしていた人の中にはキャンセルし、新型の商談に切り替えた人もいたかも知れません。また、メーカーも新型への切り替えで現行の生産調整に入った可能性もあります。

具体的な推移を見てみますと、昨年12月(単月)では6,047台で3位までランキングを上げていたプリウスですが、1月には5,730台で5位に下げ、2月には4,524台で12位まで下げ、3月は期末ということもあって5,997台に増えていますが、ランキングは13位に下げ、4月には1,952台に落ち込んで21位に下げています(といいますか、新型の発売直前でそのテレビCMもガンガン流れていましたから、恐らく数ヶ月の納車待ちの間に契約をキャンセルせず、間もなく旧型になる2代目を律儀に買った人が2000人近くいたと見ることもできるでしょう)。

一方、2月に4,906台でいきなり10位にランクされたインサイトですが、本来台数が伸びるべき3月には何故か4,088台に減って21位にとどまりました。これは上記のように5,997台で13位だったプリウスを下回る結果です。そして、4月に入ると一気に10,481台を登録し、フィットをも抜き去って国内トップ(軽自動車を除く)に躍り出たという格好です。

これは、期末の追い込みを経てその反動で台数が落ち込む4月を睨み、3月の供給を意図的に絞って翌月に繰り越し、海外向けも絞って国内に振り向け、一気にトップをさらってメディアの注目を浴びることを狙ったホンダの策略だったような気がします。実際、3月のトップだったフィットは15,997台、2位だったヴィッツは12,854台でしたが、4月に入るとフィットは9,443台、ヴィッツは6,706台へ大きく落ち込んでいます。もちろん、こうした傾向は殆どの車種で見られるものです。

主要車種の登録台数推移
主要車種の登録台数
最近6ヶ月の主要車種の動きをピックアップし
エクセルでグラフに纏めてみました。
インサイト以外は全て3月に上昇し、
4月はその反動で下降しています。
こうしてみますと、インサイトの動きが
如何に不自然か解りますね。
(出典:社団法人日本自動車販売協会連合会)


4月に車種別登録台数でトップに立ったインサイトは、案の定メディアの話題をさらいました。が、これはホンダの策略にメディアがまんまと乗せられただけのような気がします。インサイトの供給能力はこれが発売されている日米欧トータルで年間20万台とされていますから、仮にその1/3を日本国内向けに確保しても月5,555台が限度です(当初の国内販売目標が月5,000台でしたから、このセンは当たらずとも遠からずでしょう)。

こうしてみますと、4月にいきなり1万台供給できたのは、やはり話題づくりのためではないかと疑われます。2月の発売からわずか2ヶ月で生産ラインを倍増させるなど、あのトヨタだって不可能でしょう。3月の国内供給と4月の海外供給を絞ったから可能だった1万台と見るべきで、インサイトがトップに君臨していられるのは4月だけの「1ヶ月天下」だと私は見ています。(あくまでも個人的な憶測です。)

さて、買い控えに回った人たちが待望している新型プリウスですが、その発売は来週月曜日(5月18日)になります。驚くべきことに受注台数が発売前日で8万台に達する見込みだそうです。インサイトは発売前の予約が約5000台でしたから、プリウスはその16倍に達するというわけですね。このことからもインサイトがプリウスを抜いたというのは一時的で表面的なことに過ぎず、プリウスの購入希望者が新型の発売待ちに回っていただけだったという現実が浮き彫りになります。

インサイトとは比べものにならない圧倒的な支持を受けている新型プリウスですが、その正式な受注開始は先月からだったようで、先月のトヨタの国内総受注台数約12万9000台の半数近くがプリウスだったとのことです。しかも、このプリウス1車種の国内受注台数だけで日産の国内総受注台数を上回ってしまったという恐るべき状況になっています。

ネックとなるのはやはり供給体制で、従来の20%増となる月産5万台に拡大されているそうですが、同時期に欧米での発売も予定されているだけに、日本国内の割り当て台数にも限度があります。また、発売になってディーラーに試乗車が置かれるようになれば、さらに受注が伸びてバックオーダーが拡大するのは必至でしょう。

インサイトの場合は発売後1ヶ月で3倍くらいにバックオーダーが膨れ上がりました。が、プリウスはハイブリッドカーの元祖として既に確固たる評価を得ていますから、インサイトに比べれば試乗なしに契約する不安は小さいでしょう。インサイトと単純に比較はできないかも知れません。

ただ、仮に受注台数が現在の数倍に跳ね上がったとしたら、生産ラインを倍増させるとか、よほどの増産体制に入らなければ、いきなり半年あるいはそれ以上の納車待ちを強いられることになるかも知れません。もしそうなれば、早く欲しいと思う向きにその筋の業者がプレミア付で販売するようになるでしょう。実際、2代目も当初半年待ちとなっていたとき、アメリカではそういう動きがありました。この8万台という凄い受注台数の中には、それを見越した業者の先物買いが入っているかも知れません。

新型プリウスの生産はとっくに始まっていますから、今年中の総生産台数は50万台に達する見込みだといいます。昨年(1~12月期)のカローラの生産台数が約53万6000台で、今年はこれより減少する可能性が低くないと見られます。ということは、いよいよプリウスがトヨタの最多生産車種に躍り出ることになるかも知れません。

また、上記のようにプリウスは現状でも月産5万台(年産60万台)体制となっており、インサイトの3倍に及ぶ供給力があります。4月のインサイトのように小細工(という確証はありませんが)をしなくても、昨年(1~12月期)174,910台(月平均約14,600台)登録したフィットと本気のトップ争い(軽自動車を除く)を展開することは充分に可能だと思います。

(つづく)
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