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酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

東京モーターショーは何処へ行くのか? (その4)

三菱i-MiEVのリチウムイオン電池は巻回形電極を用いるタイプですが、その両端に集電体と端子とを最短距離で接続した独自の構造を採用してコンパクト化に成功しています。一方、日産リーフに採用されたリチウムイオン電池で特徴的なのはシート状の電極を積層した薄型電池をラミネートフィルムで包むという構造になっているところです。

リーフのラミネート型リチウムイオン電池
リーフのラミネート型リチウムイオン電池
三菱はGSユアサとの合弁でリチウムエナジージャパンを立ち上げ、
i-MiEVに専用のリチウムイオン電池を供給していますが、
日産もNECとオートモーティブエナジーサプライを立ち上げ、
リーフに専用のリチウムイオン電池の供給体制を整えています。


こうしたラミネート型は三菱電線工業などにも類例がありますのでオートモーティブエナジーサプライの固有技術とはいえませんが、コチラのほうが巻回形電極より放熱特性に優れています。また、このラミネート型は薄いシート状であるゆえ、バッテリーモジュールの形状設計においてその自由度を高めることができると思われます。

こうした特徴はちょっとしたデッドスペースを有効活用できる可能性を広げるでしょう。電気自動車はまだまだエネルギー密度が小さいバッテリーのせいで全体的なパッケージングに大きな制約が生じてしまうものです(テスラ・ロードスターが2座なのも航続距離を伸ばすために大量のバッテリーを搭載したことが理由の一つでしょう)。バッテリーの搭載方法について自由度が高まれば、パッケージングの問題もある程度緩和できる可能性が広がります。

こうした点で、日産の(というより、オートモーティブエナジーサプライの)電池の構造には期待も感じられます。が、所詮はリチウムイオン電池で走る電気自動車に過ぎません。そのポテンシャルはガソリンエンジンやディーゼルエンジンの代替動力源として性能面では桁が一つ足りず、コスト面では桁が一つ多いというところでまだまだ現実性は低い状態が続いています。

それは三菱のi-MiEVなども全く同じで、以前詳しく述べたように5年や10年での普及などよほどのこと(例えば、とてつもなく莫迦げた予算をブン取って政策的に無理矢理普及させようとする狂信的な勢力が台頭してくるとか)がない限り無理でしょう。今回のモーターショーで実際に各メーカーの電気自動車やその関連技術を見てその印象はより強いものになりました。

また、これも以前に触れたことですが、ゴーン社長はこのリーフを発表したとき、どこの間抜けなシンクタンクがでっち上げた数字なのか知りませんが、2020年には世界の自動車需要の10%が電気自動車になるという、極めて無責任な数字を高々と掲げていました。加えて、彼はハイブリッド車の世界シェアが2%に満たないニッチなものゆえ現状では「量産車とはいえない」などと断じ、電気自動車は10%のシェアを獲得して量産車になれると豪語していました。

いくらハイブリッド車でトヨタやホンダに大きく遅れをとり、存在感を示せないまま10年余りを送ったとはいえ、日産のこの負け惜しみはあまりにも無様です。ここまで厚顔無恥な放言には呆れるというよりも、むしろ哀れを感じます。かつて私にとって日産はホンダと並んで好きなメーカーの代表格でしたから、こんな醜い姿など見たくはありませんでした。

ゴーン氏が日産の社長に就任してから良くなった部分は少なくありません。が、逆に悪くなった部分も沢山あります。最近の日産を見ていると、特に電気自動車のアピールの仕方を見ていると、その悪くなった部分が露骨に現れています。

これに比べれば、i-MiEVの発売に当たって「2010年代半ばまでに顧客の負担額が200万円を切るレベルを実現したい」とし、電気自動車が補助金と決別できる目処など立っていないということを暗に認めた益子社長のコメントの方が遙かに電気自動車の現実を表わし、その限界を認識している分だけずっと好感が持てます。

日産は12年前に世界で初めてリチウムイオン電池車を市販し、この分野で先鞭を付けたということを私はよく知っています。ですから、ここに来て三菱に話題をさらわれ、巻き返しに躍起になっているその気持ちもよく解ります。

が、それにしても2020年には総需要の10%などという莫迦げた大風呂敷やハイブリッド車を量産車と認めない滅茶苦茶な曲解は言語道断です。この東京モーターショーでも、LCAを完全に無視し、「ハイブリッド技術では(温室効果ガス排出の)完全な解決にならない」とスピーチするなど、彼の独善的で子供だましの屁理屈は目に余ります。ま、それを言ったらトヨタやホンダの燃料電池車市販宣言も五十歩百歩かも知れませんが。

モーターショーのような注目を浴びる場で代表者が軽々しく全く目処の立っていない事業予測を世界中のメディアに向けて発するのは控えるべきです。こうして次世代の動力源に期待を持たせておいて、結局目処が立たないことがハッキリしてきたら有耶無耶にするということを何度も重ねていけば、いずれそうした計画発表は眉唾で見られるようになります。それがアピールされる場でもあるモーターショーに対する期待感も損なわれていくことになるでしょう。

もちろん、非日常的な夢のコンセプトを示すこと自体は問題ありませんし、未来を見据えたビジョンを掲げるのはむしろ良いことだと思います。が、現実との境目はある程度解りやすくしておくべきでしょう。特に事業計画と理解されるような領域においてはもっと地に足をつけ、慎重に言葉を選ぶべきです。

(つづく)
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