酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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環境相にはもう少し専門知識のある人間を (その2)

小沢環境相が発表したCO2排出削減のロードマップは軽薄なエコブームの範疇を越えるものではなく、現実を直視できていないという点で問題だらけです。「新車のうちハイブリッドカーを約50%、電気自動車を約7%に」という目標も何十年か先を見据えれば可能かも知れませんが、10年以内ということであれば荒唐無稽といわざるを得ないでしょう。

殊に、電気自動車の7%は昨今のブームにただ乗せられているだけといった印象で、技術的な限界もビジネス面の課題も推進派の楽観論を丸呑みにしている状態といって良いでしょう。逆に、10年くらい前にブームとなり、現在ではすっかり冷めてしまった燃料電池車については触れられていません。

近年ではダイハツが開発した包水ヒドラジンを燃料とするものや、産業技術総合研究所と日本学術振興会の共同開発によるリチウム空気電池を応用した金属リチウム燃料電池など新基軸となりそうな新型燃料電池がいくつか誕生していますから、普及はともかく市販レベルを目指すなどの可能性を触れておいても良さそうなものです。が、大衆メディアが話題にしないとその存在すら気付けないのかも知れません。こうしたところを見てもブームに踊らされている素人臭さを感じてしまいます。

なお、電気自動車の普及が困難であることは当blogでも何度か詳しく検討してきたとおりですので、ここでは繰り返しません。過去の記事をご参照頂きたいと思います。(関連記事:『電気自動車は遠い過去のクルマであり遠い未来のクルマである』『電気自動車の充電スタンドは商売にならない』『インフラは後から付いてくる場合とそうでない場合がある』)

電気自動車の7%に比べればハイブリッド車は採算性も商品力も格段に向上してきましたし、技術的難易度はかなり下がってきたと思われる分だけ可能性もあります。元祖であるトヨタとそれに続くホンダだけでなく、2000年にティーノで限定100台という実験的な市場参入を経験しただけの日産も年内にフーガのハイブリッド仕様を投入し、本格参入が予定されています。が、それでも今後10年で50%はまず無理と見て間違いないでしょう。

このフーガに搭載されるハイブリッドシステムは、比較的シンプルなパラレル式のそれを組込んだFR車用トランスミッションを採用したもので、トランスミッションメーカーのジャトコが供給します。同様に、オートマチックトランスミッションでは世界最大手のアイシンAWも4WD用、FR用、FF用を開発しています

近年、トランスミッションを内製している自動車メーカーは少なくなり、こうしたトランスミッションメーカーから供給されるケースが非常に多くなりました。そのトランスミッションメーカーがハイブリッドシステムを搭載したそれの開発を進めていますから、ハイブリッド車の開発にかかる自動車メーカーの負担は以前と比べものにならないくらい軽減されていると見て良いでしょう。

特に、アイシンのFF用2モーターシステムはホンダがインサイトやシビックハイブリッドで採用している単純なパラレル式よりも高度なもので、小型車用として大いに期待できるシステムだと思います。が、ネックはやはりコスト面ですね。

一般にハイブリッド車はそのシステムを搭載するために工場原価で少なくとも数十万円の追加コストがかかるといわれています。何百万円もする高級車ならそれを付加価値として吸収するのも難しくないでしょう。日産がフーガで参入してくるのもそうしたコスト面のハードルが低くなると考えているからだと思います。が、新車の50%をハイブリッド車にするという目標を達成するには、どうあがいても安価な大衆車にそれを普及させなければ不可能です。

ご紹介しましたように、既にトランスミッションメーカーがハイブリッドシステムを組込んだそれを供給できるようになってきた現在、大概の自動車メーカーは市販レベルのハイブリッド車を作ること自体に大きな技術的障害はないでしょう。それでも多くのメーカーが積極的でないのは、やはり追加コストがビジネス上の問題になっているからだと考えるのが妥当です。

特に大衆車の場合、ただでさえ激しい競争を勝ち抜くためにかなりのレベルでコストダウンを競っています。そうした中で数十万円のコスト増を抱え込むのはマーケットの理解が不可欠です。原価で数十万円ということは、利益率を下げない限り販売価格はさらに高くなります。仮に販売価格で30万円割高になるとしたら、それを全体の50%のユーザーに納得してもらうには明確なコストメリットを示す必要があるでしょう。

30万円もあれば、現在の相場でレギュラーガソリンを2,500Lくらい買うことができます。仮に平均燃費15km/Lでこれを消費すれば、37,500kmも走れてしまう計算になります。ハイブリッド車にして燃費消費を半分に抑えることができたとしても、元を取るのに75,000kmも走らなければなりません。もし、ローンでクルマを買うとしたら、当然のことながら車両本体の差額分30万円にも金利がかかってくるわけですから、元を取れるのがさらに先のハナシになってしまいます。

もちろん、以前のようにガソリンの価格が高止まれば状況は好転するでしょう。逆に、安い状況が続いてしまうとさらに元を取りにくくなります。この辺は相場の変動というリスクがかかってくるわけですね。前述したLED電球のように寿命の長さだけでも確実に元が取れるという製品でさえイニシャルコストの高さは障壁になっています。ランニングコストの安さよりイニシャルコストの安さのほうがユーザーを取り込みやすいという現実は幾つものビジネスモデルが示しています。

例えば、総務省がインセンティブを規制する以前は携帯電話が1円でバラ撒かれたりしました。家庭用プリンタの交換インクや家庭用ゲーム機のソフトが割高だったりするのも、イニシャルコストを抑えてユーザーを取り込もうとする典型的なビジネスモデルによります。ハイブリッド車はその逆を行くうえ、かなりの距離を走る人以外、確実なコストメリットを見出せるようなレベルにないのが現状です。

ハイブリッド車に関しては12年以上に渡って世界の先頭を走り続けてきたトヨタでさえ、海外を含めると全体の5.2%程でしかありません。2番手のホンダに至っては先日お伝えしましたように、インサイトの国内販売台数も急落して先行きが懸念される状況です。高級車などコスト増の吸収が比較的容易なマーケットならばともかく、大衆車にはコストの壁が立ちはだかっているという実態を失念してはいけません。

また、ハイブリッド車を50%、電気自動車を7%としたら、そのどちらにも競争力がないメーカーは残りの43%で勝ち残らなければならないという過酷な状況に追い込まれてしまうでしょう。もしそんなことになれば、日本国内市場から逃げ出し、海外に活路を見出さなければならないメーカーも出てくるかも知れません。

そもそも、ハイブリッド車に固執する意味が私には理解できません。例えば、レクサスLS600hというハイブリッド車の10-15モード燃費は12.2km/Lですが、1000ccのガソリンエンジンだけで走るヴィッツは22.5km/Lですから、45%以上もCO2排出量が少ないといえます。生産時にかかるCO2排出量がどれくらい違うのか明確な資料がありませんから何ともいえませんが、こちらもかなり大きな差があるのは間違いありません。

大衆車の多くは元々燃費が良く、生産時にかかるエネルギー投入量も少ないのですから、LCAで見た場合、ハイブリッド車とそうでないクルマとで生涯のCO2排出量に劇的な差が生じるようにも思えません。とはいえ、そうした部分は明確な資料もありませんので、何とも言い難いところです。国策としてハイブリッド車の普及を目指すというのなら、少なくともその実効性をキチンと調査し、こうした疑問が挿まれないようにしておくべきでしょう。

こうした部分以外を考えても、ハイブリッド車の普及率を上げていくべきなのか疑問は残ります。例えば、ハイブリッド車の走行用電池は車両の寿命に合わせてマネジメントされているといいますが、保証期限は設定されていますから、それを過ぎて不具合が生じれば有償交換ということになります。2代目プリウスの場合、10万kmか5年のうち早いほうが保証期限となっており、有償交換となると部品代と工賃の合計が14万円ほどになるといいます。

ハイブリッド車が増えればこうしたリスクも多くの人が背負うことになるわけですが、当然のことながら新車より中古車のほうがそのリスクは高くなるわけで、経済的弱者にしわ寄せが行ってしまうことになりかねません。ま、それでクルマ離れが進めば保有台数の減少に繋がり、効果的なCO2排出量の削減になるかも知れません。が、それこそ格差の拡大であって、民主党の掲げるイデオロギーに反します。

闇雲にハイブリッド車を増やすより、燃費の悪いクルマに高い租税を課し、逆に燃費の良いクルマの租税を軽減し、ハイブリッド車であるか否かを問わず、より燃費の良いクルマを選ぶよう促すほうが遙かに現実的ですし、メーカーに対する負担も軽く、あまり距離は乗らないからハイブリッド車である必要がないという人たちも巻き込まずに済むでしょう。

マツダのようにハイブリッドではなく、アイドリングストップや従来技術を洗練させることで更なる燃費向上を目指すのもLCAを考慮すれば一方策として正しいといえるでしょう。が、それを43%の中に押し込めてしまうのは大いに問題です。また、ハイブリッド車のほうがより多くの資源を必要としますから、運用時のCO2排出量が少ないという一部分だけに気をとられるのも稚拙といわざるを得ません。

(つづく)
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環境相にはもう少し専門知識のある人間を (その1)

これまでも政治家や官僚たちが掲げてきた温室効果ガスの削減政策は現実を正しく理解しているといえないものが殆どでした。当blogでも民主党の政策を批判しましたが、それは彼らの認識がとんでもない素人レベルだからです。(関連記事:『絵に描いた餅』)

先週、小沢鋭仁環境相(民主党・東京大学法学部卒)が国内の温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減とした例の政策の実現に向けたロードマップの試案を発表しました。が、やはりとんでもない素人考え丸出しです。まずはそのロードマップを確認しておきましょうか。

行程表(試案)の主な対策 (2020年時点)

・太陽光発電を4世帯のうち最大1世帯に普及
・太陽熱温水器などの高効率給湯器を住宅の最大8割に普及
・新車のうちハイブリッドカーを約50%、電気自動車を約7%に
・新車の平均燃費を2割向上(2005年比)
・大型の風力発電設備を最大1万基導入
・原子力発電所を9基新設し、設備利用率を80%に


このうち実現の可能性があると思われるのは「新車の平均燃費を2割向上(2005年比)」くらいでしょうか。評判の悪いトヨタの「エコ替え」のサイトからリンクされている「あなたのクルマと燃費比較」で確認してみても、同一車種・同程度の排気量で比較しますと、この15年間で20~30%くらい燃費を向上させています。

また、昨年の東京モーターショーをレポートした際に触れたマツダ清(きよら)というコンセプトカーに見られるような技術の導入でまだ伸びしろもあるでしょう。(関連記事:『東京モーターショーは何処へ行くのか (その7)』)

しかし、これ以外はやはり「絵に描いた餅」そのものといった感じです。

日本の世帯数は現在4900万程度だそうですから、太陽光発電を4世帯に1世帯普及させるとしたら、1225万世帯にそれを設置させるということになります。現在はまだ約52万世帯でしかありませんから、これから1173万世帯分拡大しなければなりません。が、仮に10年でソーラーセルの価格が劇的に安くなったとしても、これだけの普及率は明らかなコストメリットが示されなければ不可能でしょう。

実際、LED電球などもライフサイクルで考えればかなりのコストメリットがありますし、絶対的な単価もさほど高いとはいえませんが、白熱電球に比べれば何倍にもなる価格を敬遠する人が少なくありません。シャープあたりが一段と安い製品を発売して俄に市場が活気づいてきましたが、本格的な普及はまだこれからといった状況です。

現在、住宅向けの太陽光発電に支給されている政府の補助金は公称最大出力1kWにつき7万円です。これをそのまま継続し、一般的な住宅向け太陽光発電機の出力を4kWとすると、28万円を1173万世帯に支給することになりますから、3兆2844億円が必要になります。その財源はどのように捻出するのでしょう?

税金からというのであれば、これを導入できない世帯が損をするだけで、国民全般にコストメリットが生まれたことにはならないでしょう。余剰電力の買い取りを電力会社に義務づけても、電気料金の値上げに繋がるのは必至ですから、やはり導入できない世帯が損をするだけでしょう。こうして高コストの電源を大量に抱え込めば、そのしわ寄せはこうした高価なシステムを導入できない経済的弱者に集中してしまいます。これは民主党が掲げてきた「格差是正」というイデオロギーにも反するものです。

太陽熱温水器は太陽光発電に比べると遙かに安価で、近年は使い勝手も格段に良くなっていますから、それなりに期待はできるでしょう。が、原理的に太陽光発電ほど改良の余地もなく、既に安価であるということは、これ以上のコストダウンが容易ではないということになるでしょう。現在の普及率は10%そこそこだといいますから、やはり補助金などで初期投資の金額を抑えてやらなければ、80%までの道のりは険しいでしょう。

また、地域にもよると思いますが、冬場は使えないというケースもあるといいます。北国や豪雪地帯では難しいでしょうし、東京などの大都市圏でも雪が積もってしまったら利用できなくなりますから、従来のガスなどによる給湯器もなくすことはできないでしょう。そうした二重投資を多くの国民が易々と受け容れてくれるでしょうか? ちなみに毎冬の平均で見ますと、日本の国土の約6割で積雪を記録するそうです。

総務省の統計では、2008年現在太陽光発電の普及率は住宅全体で1.1%、賃貸住宅に限れば0.1%という極めて低い値になります。太陽光発電の25%も太陽熱温水器などの80%も、この高い普及率を目指すとなれば、賃貸住宅や集合住宅のように個人の判断だけで導入を進めにくい環境を何とかして克服していく必要があります。これは技術的なハナシではないだけに相当やっかいな足枷になるでしょう。僅か10年というリードタイムでクリアになるとはとても思えません。

(つづく)

ビジネス的にはインサイトのほうがヤバイかも? (その2)

私は試したことがありませんが、インサイトは足が硬い分だけワインディングロードを駆け抜けたときの乗り味がよいという評価をよく耳にします。そういう部分でインサイトを選んだという人もいるでしょうし、それはそれで悪くないチョイスだと思います。大人しく走ればプリウスほどではないにしても、普通のクルマよりかなり燃費が良いのも確かですから。しかし、そういうスポーツ走行重視の需要は全体から見れば決して多くはないでしょう。

コストと利便性のバランスでは多くの人にとってフィットのほうが優れていると映るでしょう。それは販売台数にも如実に表れています。プリウスと比較しても、リコールされたブレーキシステムの問題を別にすれば、全般的なハイブリッド車としての充実度で見ても、単純に車格で考えても、明らかな差がありながら、装備を考慮すれば実質的にプリウスのほうが割安です。以前、インサイトはバックオーダーを捌いたら台数が落ち込むのではないかと予想したのは、こうした中身を検討すれば当然のことと思ったゆえです。

その落ち込みが始まるのは昨年9月くらいではないかと私は予測しましたが、これは見事にハズレました。ま、元にした受注状況の情報がかなり断片的で不確実なものでしたから、これは当然の結果でしょう。不明な点は想像で補っていたゆえ私自身「予想(というより妄想?)」と書いたほど自信がありませんでしたから、ま、こんなものかと思っていました。ところが、どういうわけか先月に限ってはインサイトの登録台数が激減してしまいました。

主要車種の販売台数推移(09.2-10.01)
主要車種の販売台数推移

インサイトの国内販売状況はこれまで毎月1万台前後で推移しており、プリウスほどではないものの、ホンダの当初計画の2倍という非常に良好な台数を継続してきました。昨年2月発売ということで1ヶ月少々ハンデはありますが、昨年(1~12月)の販売台数も93,283台で国内車種別5位(軽自動車を除く)にランクされるなど、大健闘といったところでした。が、ご覧のように何故か急降下です。

これがプリウスのようなリコール騒動があったとか、エコカー補助金の適用期限となっている3月を過ぎ、4月の販売実績が落ち込んでしまったというのなら解らなくもありません。が、そのような要因が全く見当たらない中で先月の登録台数は3,430台となり、これまでの約1/3に落ち込んでしまいました。この1月に関しては軽自動車を除く車種別でも23位にとどまり、トップ20から陥落するという有様です。

販社は年度末に追い込みをかけますから、その前はやや台数が抑え気味になる傾向があります。特に2月は日数も少ないですし、追い込みの前月ですから、台数が鈍る傾向があります。年末年始の休みが入る12~1月もやや低めになる傾向がありますが、それにしても他車と見比べてここまで激しい落ち込みは少々異様な感じです。もちろん、単月の落ち込みだけで結論づけるのは拙速すぎますが。

ただ、これまで毎月1万台前後で推移してきたことのほうが私にとっては予想外の状態でした。もしかしたら、受注残などの読みが甘かったゆえにタイミングが私の予想より4ヶ月遅れただけかも知れません。日本の乗用車マーケットは意外に懐が深く、内容を詳しく検討せず直感的にクルマを選んでいる人も少なくないようですが、そうして目新しいものに飛びつく人の波が一段落したのかも知れません。

一方、日本より保守的で拘りが強い傾向にあるヨーロッパはもちろん、アメリカでもインサイトは玉砕状態です。ホンダは日米欧の三大マーケットにインサイトを投入し、年間20万台を販売する計画でした。その内訳はアメリカ10万台、日本6万台、ヨーロッパ4万台だったといいます。が、昨年12月末までの売上は、3月末に発売されたアメリカが20,572台、4月発売のヨーロッパも15,932台ですから、目標に対して各々27.4%、53.1%というペースになります。

昨年12月末の時点で2代目インサイトは累計129,789台売れていたわけですが、実に7割以上が日本での売上で、海外は大不振という状況です。昨年12月末現在の日本での目標達成率は169.6%という好調ぶりで絶大な牽引役となってきました。が、欧米では上記の通りですから、世界トータルの目標達成率は81.1%で、あまり芳しい状況ではありません。

そうした中、先月の日本国内も当初の月販目標5,000台に対して3,430台、達成率68.6%に落ちてしまいました。今後もこのペースが続いてしまったら、ホンダにとってはかなり厳しいことになってくるでしょう。年販20万台の目標達成はまず不可能で、14.5万台そこそこに終わるかも知れません。日本も今後の月販が3,500台前後で推移するとしたら、2年目は世界トータルで9万台程度、初年度の目標に対する達成率は45%程度に落ち込んでしまうかも知れません。

これまでは懐が深い日本のマーケットに救われてきた状態でしたが、もし日本のマーケットも初めから欧米並みにシビアな評価を下していたら、インサイトはホンダのハイブリッド車戦略を大きく後退させていたに違いありません。

それにしても、日本国内でバックオーダーを抱えていた当時、ホンダはインサイトの増産体制に入ったようなことを吹聴していましたが、ここまで目標割れが顕著な状態では増産もクソもないでしょう。少なくとも欧米向けは相当ダブついていたハズですから、あの情報は一体何だったのでしょう? 唯一の希望である日本のマーケットを活性化しようとしてハッタリをかましていたのでしょうか?

今般のプリウスのリコール問題を受けてインサイトには少し追い風が吹く可能性もありますが、メディアは三菱ふそうのときほど引っ張りませんでした(トヨタと三菱ふそうとではスポンサーとしての格も桁違いですし)。

もし、プリウスの問題がもっと引っ張られていたら、普通のクルマとは違うブレーキシステムが注目され、ハイブリッド車全体にそのイメージが広がってインサイトにも飛び火してしていたかも知れません。フォード・フュージョンなどのハイブリッド車でもプリウスと似たような不具合が出ていますから、これがプリウスと同等に扱われていたら、そうした流れになっていた可能性もあったでしょう。

が、実際にはそこまで至らず、フォードの件もいつもの偏向報道で多くの人は知らないまま終わってしまいましたから、そうした心配もなくなりました。また、忘れっぽいのも日本人の特性の一つですから、しばらくして落ち着いてきたら、何事もなかったかのような状態へ戻るのではないかと想像されます。

プリウスは信頼を取り戻しさえすればビジネス的な懸念材料はありませんが、インサイトは信頼を失うような事件などなくても欧米では初めから大不振で日本でも先行きが心配される状態です。ビジネス的に危ぶまれるのはプリウスよりインサイトのほうかも知れません。

(おしまい)

ビジネス的にはインサイトのほうがヤバイかも? (その1)

アメリカでは大規模リコールを行ったトヨタに対し、「下取価格が下がった」とするユーザーが集団訴訟を起しているようです。訴訟大国アメリカでこうしたリコールを行えば、必ず同様の訴訟は起こされますから、いつものパターンですね。その一方でABCテレビが行った世論調査では「今後もトヨタ車を買いたいか」との質問に「買う」と答えた人が72%、「買いたくない」と答えた人は22%で、冷静に受け止めている人のほうがずっと多いようです。

ま、GMやフォードだって大規模リコールは珍しいことではありませんし、コンシューマーレポートがフォード・フュージョンのハイブリッド仕様にもブレーキの不具合があったことを伝えましたから、実情を理解して米政府やメディアの過剰な扱いを冷ややかな目で見ている人も少なくないということなのでしょう。日本でもプリウスユーザーの多くは冷静と報じられていますし、祭り状態になったメディアとユーザーとの温度差はかなり大きいように感じられます。

一部には今回のリコールでプリウスの販売に影響が生じるのではないかと推測しているメディアもあります。確かに、あれだけ酷い偏向報道で劣悪なイメージを擦り込まれてしまったら、空気に流されやすい人がそれに乗ってしまっても不思議ではありません。が、日本では相変わらず毎月の供給能力に対して6倍近いバックオーダーを抱えていますから、その影響がすぐに現れることはないでしょう。

納期が半年近いプリウスは、これまでもキャンセルが出れば販売店同士での争奪戦になっていたといいます。なので、仮に今般のリコール騒動で一部の人がキャンセルしても、その影響が見られるようになるのは何ヶ月も先になるでしょう。その頃までには落ち着きを取り戻して影響はかなり薄まっているかも知れません。1月出荷分から既に問題の制御プログラムは変更済みだといいますから、アメリカでのアクセル部品の問題のように対策実施を優先させて販売が途切れるといった心配もありません。

それよりも私が心配しているのはインサイトのほうです。

当blogではインサイトに関してかなりシビアな論評を展開してきましたが、比較的硬派な自動車専門誌の評価も似たような傾向が見られます。インサイトはハイブリッド車だと解りやすくするためにプリウスによく似た専用ボディを与えられただけで、兼用車であるシビックハイブリッドよりもハイブリッド車として作り込まれていない専用車という何とも中途半端なコンセプトが評価を下げているのでしょう。

また、コストダウンを考えた場合もそうですが、スペースユーティリティという点でもボディだけの専用車などに寄り道せず、素直にフィットのハイブリッド仕様をリリースしていたほうが良かったのではないかという意見もときどき耳にします。実際、インサイトの購入を考えてディーラーへ行ったものの、フィットに流れてしまったという人は結構いるそうです。

インサイトは後部座席の天井が低く、フィットより乗降性が劣りますし、そんなつくりですからヘッドクリアランスも充分とはいえません。その点はプリウスも同様ですが、3代目ではルーフの曲線の頂点となる部分を2代目より後方へずらし、多少は改善されています。が、2代目プリウスを横目で見ながらデザインされたと思われるインサイトは、後部座席に座ると天井に頭を抑えられているような圧迫感がありますし、座高が高い人は髪が天井に触れてしまうこともあるようです。

3rd-prius_vs_2nd-insight.jpg
インサイトとプリウスの側面シルエット比較
青が2代目インサイト、赤が3代目プリウスの側面シルエットになります。
ボンネットやルーフの曲率が異なり、インサイトは低めに抑えられていますが、
全般的なフォルムやエンジンコンパートメントとキャビンのバランスなど
多くの部分に共通性が見られると思います。
(外寸図を加工したものですので、多少の誤差はあるかも知れません。)


後部座席を畳んだときの積載効率なども、初代からそれを熟慮して作られたフィットに比べるとインサイトはかなり見劣りします。車両本体の価格差と実燃費の差を比較検討した場合、インサイトにはコストメリットがなく、ユーティリティの高さと小回りの利くボディ外寸などからフィットのほうがバランスがよいと判断する人も少なくないといいます。

ホンダは当初、価格の安さを前面に打ち出してインサイトの広告を展開していました。が、PR会社にそそのかされたのかどうか解りませんが、メディアの利用の仕方が結果的にトヨタの神経を逆撫でしてしまったと見られます(関連記事『インサイトは日本でもジリ貧か? (その3)』)。インサイトの最廉価グレード189万円に対してプリウスも205万円という低価格で対抗してくるとは、ホンダの首脳陣は夢にも思わなかったでしょう。

これも何度か触れてきたことですが、この16万円という価格差も装備の違いを考慮すれば割安感が逆転します。プリウスは最廉価グレードでもアルミホイールやスマートキー、サイドエアバッグ類を標準装備しているのに対し、インサイトはいずれもオプションとなっており、全て装着するとプリウスより割高になってしまいます。

それでいてインサイトの内装は軽自動車並みのチープさ、ドアを閉じたときの音なども最近はウエザーストリップの材質や形状などでチューニングするものですが、そこまでコストを裂いていないのがバレバレの安っぽさです。足回りの硬さは乗用車として過剰だと思いますが、あの硬さに見合った仕上げになっていないのもやはりコストダウンを優先させた結果であるように感じました。

ラバーブッシュの硬さでサスペンションコンプライアンスを上手くチューニングしてやれば、多少硬めの足回りでも突き上げ感を幾らかマイルドにできるものです。20年くらい前に私の父が乗っていたBMW525iなどはこの辺が凄く上手でした。硬めで芯のある足なのに突き上げ感はかなり抑えられており、上品な乗り心地なのにコーナーではちゃんとスポーティに走るという見事なセッティングでした。

ま、あのような高級車と比べるのはナンセンスですが、インサイトはコンプライアンスのチューニングもチープな感じですし、ダンパーも廉価な乗用車にありがちな安物を使っている感じです。そうしたコストの足枷があるのならもっと普通の足にして、無理にスポーティを演出するべきではなかったと思いますが、その辺はいわゆる「差別化」なのでしょう。

かくして、インサイトの乗り心地は現代の乗用車の標準からかなり劣る部類になってしまいました。鏡のようにキレイに舗装されたところでは問題ありませんが、轍や段差などで荒れ気味のところを走るとかなり下品な突き上げが来ます。ま、あくまでも短時間の試乗による個人的な感想ですが、イギリスの辛口ジャーナリスト、ジェレミー・クラークソン氏が「木にぶつけてやりたい」と酷評していたほどでもなかったと思います。(関連記事『アメリカではプリウスとインサイトの明暗が分かれた』)

肝心のハイブリッドシステムや効率アップを狙う諸々のハードウェアもプリウスとは全く次元が異なります。もっとも、今回のリコール騒動でプリウスもシステムの詰めの甘さを露呈してしまいましたけど。ついでですから、この辺についてザックリと触れておきましょうか。

初代プリウスの特に前期モデルは回生ブレーキと摩擦ブレーキの切り替えが下手で、制動力の立ち上がりが急峻ないわゆる「カックンブレーキ」だったといいます。つまり、リコールされた3代目のABS作動時ように制動力が一時的に低下してしまうのとは逆に、摩擦ブレーキの利き始めが急激すぎたということなのでしょう。

そうした部分に関しては私が所有する2代目になると全く違和感がないレベルまで煮詰められていたわけですが、電動ポンプやソレノイドからのノイズが微振動としてブレーキペダルに伝わることがある(私は殆ど気になりませんが)という細かい指摘にトヨタは応え、3代目でシステムを変更しました。そこでABS作動時の切り替えに甘さを残してしまったということのようです。

インサイトも停車時にセレクターをPレンジにするとエンジンが勝手に始動してしまうという意味不明な仕様になっています。こうしたところを見ますと、インサイトも充分にシステムが煮詰められているとはいえないかも知れません。ま、制動力に影響が生じることがあるプリウスのそれとは次元の違うハナシではありますが。

で、インサイトが心配ということですが、これまで好調をキープしてきた日本国内の販売台数が先月急激に減少してしまったんですね。理由はよく解りませんが、かなりの落ち込みかたをしています。欧米では初めから大不振だったインサイトが日本でも売れなくなってしまったら、それは引導を渡されたも同然です。

(つづく)

愚者は同じ過ちを繰り返す (補足)

ご存じのようにトヨタは新型プリウスを含む4車種のハイブリッド車についてリコールを正式に届出ました。過去にあったABS関連の類例に比べれば決して遅い対応とはいえませんが、これだけメディアの注目を浴びる中での振る舞いとしては無様だったといわざるを得ません。トヨタも日頃からPR会社などの指導を受け、こうしたケースを想定したメディア対応をシミュレートし、心証を害さないようなトレーニングをしておくべきだったかも知れません。

それにしても、フォード・フュージョンおよびその兄弟車であるマーキュリー・ミランのハイブリッド仕様でも新型プリウスと殆ど同じ問題が発生しているのですが、日本の主要なメディアがこれを大きく扱わないのは何故なんでしょう? ここまで偏向報道が徹底されているのは極めて不自然で、単なる無知では済まされない気がします。何らかの意志が働いているようで、少々気味が悪くなってきますね。

さて、先の『愚者は同じ過ちを繰り返す』と題したエントリの後半でリコール制度についてメディアの解釈が間違っていると批判した部分ですが、頂いたコメントを読んで言葉が足りず誤解を与えかねない状態だということに気付きました。取り急ぎ追記させて頂いたのですが、どちらにしてもリコール制度について詳しく触れないままでは舌っ足らずな状態を完全に解消できませんので、補足させて頂くことにしました。

日本における自動車のリコール制度については今なお不充分と思われる状態で、いずれそれを含めてキチンと纏めたエントリを設けようと考えていましたが、ここではリコール制度の概要を踏まえながら、先のエントリで引用した記事などに見られるような報道の問題点を改めてご説明します。

まず、自動車メーカーが国土交通省に届出て改修を行う手続には先にも触れましたように「リコール」と「改善対策」と「サービスキャンペーン」の3種類があります。各々の違いは以下のようになっています。

リコール:自動車の構造、装置または性能が「道路運送車両の保安基準」に適合しないと認められる、もしくは適合しなくなる恐れがあるもの

改善対策:自動車の構造、装置または性能が「道路運送車両の保安基準」に適合しなくなる恐れはないが、安全上もしくは環境保全上看過できないもの

サービスキャンペーン:リコールおよび改善対策に該当せず、品質の改善のために国土交通省へ届出て不具合の改修を実施するもの

道路運送車両の保安基準」(以下、「保安基準」と略します)というのは、道路運送車両法第三章の規定に基づくもので、「公道を走ることのできる自動車の要件」を定めているものとご理解頂けば良いかと思います。私たちが自動車を購入する場合も普通は公道を走ることが前提となりますから、車検を受けてナンバーを取得しますが、そうして登録される自動車は保安基準に適合している必要があります。

「リコール」に該当するということは、要するに「公道を走る自動車として欠格している、もしくはその恐れがある」ということになります。先のエントリで引用した記事もそうですが、多くのメディアが「リコール」について「不具合の原因が設計や製造段階にあったことを認める」といった説明をしており、これは明らかに的外れです。

先のエントリではABSの不具合で「サービスキャンペーン」となった例についても触れましたが、あれも警告灯が誤作動する恐れがあるとか、通常のブレーキとしては問題なく作動するもののABSが働かなくなる恐れがあるといった不具合を解消するための改修が行われました。「改善対策」もまた不具合の原因が設計や製造段階にあったことを認めないというものではありません。

「リコール」と「改善対策」を分ける定義は保安基準を満たさなくなる恐れがあるか否か、「改善対策」と「サービスキャンペーン」を分ける定義は安全上もしくは環境保全上の問題があるか否かということになります。

当初、トヨタは新型プリウスのブレーキ問題を「サービスキャンペーン」として処理しようとしているとの報道もありました。が、制御プログラムに起因するABSの不具合の前例では殆どが「改善対策」となっており、一部が「リコール」として処理されています。

ですから、新型プリウスの場合もこのどちらかに該当し、「サービスキャンペーン」で済まされることはなかったと思われます。トヨタが「サービスキャンペーン」とし、「リコール」に該当しないと主張しても、国土交通省が「リコール」に該当すると判断した場合、最終的にはそれに従わなければなりません。

件の記事では“自主的な改修である「サービスキャンペーン」などがあるが、トヨタの今回の対応には国内でも批判が強まっており、「リコールせざるを得ない」(業界関係者)との見方もある”と書かれており、あたかも批判が強まっていなかったら「サービスキャンペーン」で済まされてしまうように読める書きぶりになっていました。しかしながら、国土交通省が「リコール」に該当すると判断した場合、批判があろうがなかろうが、最終的には「リコール」を届出なければなりません。

今回の新型プリウスの場合、ABSの作動時に回生ブレーキから摩擦ブレーキに切り替わる段階で若干のタイムラグが生じることがあるとされています。そうしたタイムラグの存在が保安基準に適合するか否か判断されるわけで、その結果が「リコール」に該当するか否かに直結します。これが保安基準を満たしていると判断された場合でも安全上看過できるか否かが「改善対策」になるか「サービスキャンペーン」になるかの分岐点というわけです。こうした点でメーカーの見解と国土交通省の見解が食い違ったとしても、最終的には国土交通省の判断に従わなければならないというわけです。

件の記事やそれに類する報道では、まるでトヨタの判断だけで全て決まってしまうような述べかたになっていました。また、その判断について国土交通省の関与を触れているものは私の見聞きした範囲では一切ありませんでした。そうした点が問題だと感じたことから、批判を展開したというわけです。

少々言い訳になってしまいますが、先のエントリでは過去の類例に気付かず新型プリウスの問題だけを大きく扱っている状態がかつて三菱車の火災のみを伝えた偏向報道と同じことの繰り返しであると述べるのが主題で、今回補足した部分はついでに書いたものでした。しかしながら、推敲が足りず、誤解を与える恐れがあったのは確かですので、ここは真摯に反省しなければなりませんね。

愚者は同じ過ちを繰り返す

これまでも何度となく触れてきましたが、三菱ふそうのクレーム隠しが発覚した2004年、三菱車に車両火災が発生する度にメディアはこれを大きく取り上げ、あたかも三菱車だけが頻繁に燃えているといった誤った印象を形成してしまいました。しかし、毎日平均20台くらいが燃えていながら、報じられたのが三菱車だけだったことから、この一件は偏向報道の具体例として松永和紀著『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』やWikipediaの「偏向報道」の項にある「一方的なバッシング・過度の肩入れ」でも紹介されています。

いまメディアが大きく報じている新型プリウスのブレーキ関係の不具合(トヨタはまだ正式に不具合とは認めていませんが、ここでは便宜上「不具合」と標記することにします)も結局はABS絡みの制御系プログラムに原因があったとのことで、一般的なABS装着車にも見られる不具合と大きな差異は認められません。

これは車両火災の実態を知らぬまま三菱車の火災だけしか扱わなかった偏向報道と全く同じで、ABSに関する不具合の前例を全く調べず、実態を知らぬまま新型プリウスの一件のみを問題視するという状況になっています。彼らに進歩を期待するのは無理なことなのでしょうか?

ABSの不具合については先にもご紹介しましたようにいすゞエルフ(および同型のOEMである日産アトラス)やシトロエンC3およびC2のようなハードウェアに因むものも何件かありましたが、今回のプリウスと同じく制御プログラムの問題、即ちソフトウェアに因んでリコールやそれに準ずる改善対策となったケースはさらに多く、決して希なことではありません。ABSの制御プログラムの不具合でリコールおよび改善対策となった実例を以下に列挙してみましょうか。

1999年に届出のあったダイハツ・ミラ等の26,166台、2000年に届出のあった日野中型トラック・中小型バス等の14,766台、2005年に届出のあった三菱ふそう大型バス等の2,243台、2006年に届出があったトヨタ・エスティマの18,149台、2007年に届出のあったジープ・チェロキー等の1,985台などです。

全てのリコールおよび改善対策をしらみつぶしに確認するのは大変な手間がかかりますので、ここで取り上げたのはサーチエンジンで「ABS リコール」「ABS 改善対策」で検索してヒットした案件だけです。なので、漏れがある可能性も低くないと思いますが、少なくとも最近11年の間にABSの制御プログラムの問題で制動距離が長くなる恐れがある不具合は以上のように5件ありました。2年に1回くらいのペースで起こっていたということですね。

また、トヨタの対応に批判が集まっていますが、「対応が遅い」というのは当たらないでしょう。上に挙げたリンク先をご覧頂けばお解りのように、発売から1~2年して対応しているケースが殆どで、三菱ふそうのケースでは最大で16年経過しているものもあります。要するに、こうした前例を全く把握せずに新型プリウスの発売からまだ9ヶ月弱しか経過していない段階でトヨタへの批判を高めているという状況です。

確かに、トヨタのメディア対応も酷いものでした。当初「調査中」としておきながら一夜明けたら「先月出荷分からプログラムを修正して対策済み」と翻してしまったのはお粗末としか言いようがありません。トヨタ内部でもマトモな意思疎通ができていなかったということで、こうした点は批判されても仕方ありません。それに加えて、修正を行ったからにはやはりプログラムが適切ではなかったということですから、国土交通省への報告をしておくべきでした。この点は私もトヨタに対して大いに批判しておきたいところです。

しかしながら、不具合そのものは直接の原因がABSの動作を制御するものか、ABSを働かせるために回生ブレーキから摩擦ブレーキに切り替える際の動作を制御するものかの違いこそあれ、全く同種の問題であって、新型プリウスのそれだけが問題視されるのは公平性を欠くものです。無知は偏向報道に直結するという、三菱車の火災問題と同じ過ちをそっくりそのまま繰り返してしまったわけです。

また、こんな出鱈目な報道が横行しているのも笑止千万です。

不具合の改修方法には、不具合の原因が設計や製造段階にあったことを認める「リコール」と、自主的な改修である「サービスキャンペーン」などがあるが、トヨタの今回の対応には国内でも批判が強まっており、「リコールせざるをえない」(業界関係者)との見方もある。


この「業界関係者」がどういうレベルの人なのか解りませんが、日本における自動車のリコール制度のイロハも知らないようなド素人の意見を拾ってどうするのかと思いましたね。

(2月8日追記) 今般の新型プリウスの件でトヨタはまだ欠陥を認めていないということが頭にあって書き進めていたため、少し言葉が足りませんでした。以下のように赤字の部分を付け加えさせて頂きました。

日本の制度では自動車メーカーが国土交通省に不具合情報を報告したら、その処置をどうするかメーカーと見解が食い違っていても最終的には国土交通省が決めます。それには「リコール」「改善対策」「サービスキャンペーン」の3つありますが、メーカーが「サービスキャンペーン」に該当すると主張してもどれに該当するかを最終的に決めるのは国土交通省であって、メーカーが勝手に判断することはできません。

「リコール」「改善対策」「サービスキャンペーン」の違いは何なのか、メーカーの報告以降の手続きがどうなっているのか、詳しく述べていると長くなってしまいますので、いずれ別にエントリを設けることにします。が、日本のメディアは3度も繰り返されたクレーム隠しの問題を経、三菱ふそうのときはあれだけ猛烈なバッシング大会を繰り広げておきながら、リコール制度については何一つ勉強してこなかったということです。

ちなみに、ABSに関するリコールや改善対策の前例からしますと、制御プログラムの改修で済んだものは殆どの場合がリコールに準ずる「改善対策」になっています。私が知る範囲ではジープ・チェロキー等の1件が「リコール」になりましたが、上記5件中4件は「改善対策」となりました。一般にハードは「リコール」、ソフトは「改善対策」になる傾向が強いように見られますが、この辺は紙一重なのでしょう。

なお、ABS絡みの不具合で「サービスキャンペーン」となった前例は、ABS警告灯が誤作動するとか、通常のブレーキとして正常に作動するもののABSが働かなくなるといったケースがありました。いずれも欠陥とはいえないレベルの軽微なものですね。

こうした前例に照らしますと、プリウスのケースも「改善対策」もしくは「リコール」に該当する可能性が高いと思われます。が、いずれにしても国土交通省に届け出て正式に対応するとなれば、トヨタが「サービスキャンペーン」を主張してもどのカテゴリーに属することになるのか最終的な判断をするのはトヨタではなく、国土交通省自動車交通局技術安全部審査課の仕事です。

こうしたことは専門家に聞けばすぐに解ることですが、そうした取材も行わず、前例の確認も怠って、ただ流れてくる情報の受け売りに終始しています。日本中がこうした低レベルな報道に翻弄されるのは実に情けないことです。もう少しマシな報道ができるようになって欲しいと望むのは無い物ねだりなのでしょうか?

インドが独自の温暖化監視機関を設立

例のクライメート・ゲート事件に続いて、ヒマラヤの氷河が2035年までに消失する可能性が非常に高いとした記述に科学的な根拠がないことが明るみに出るなど、IPCCの評価報告書に疑問符が付く事態が相次いできました。何かと問題の多い環境保護団体グリーンピースの報告書からの引用登山専門誌の記事、大学院生の論文など専門性が低いレポートからも引用があったとされ、その編纂作業のレベルの低さが次々に暴露されています。

また、日本のメディアは殆ど伝えませんでしたが、BBCが予想したように先のCOP15ではクライメート・ゲート事件を受けてサウジアラビアがIPCCの評価報告書の信憑性に疑問を投げかけていました。途上国や中東の産油国にはこうした懐疑的な立場をとる国が少なくなかったわけですね。

こうした状況のなか、イギリスのテレグラフ紙はインドが独自の温暖化監視機関を設立したとの旨を報じました。

India forms new climate change body

The Indian government has established its own body to monitor the effects of global warming because it “cannot rely” on the United Nations’ Intergovernmental Panel on Climate Change, the group headed by its own Nobel prize-winning scientist Dr R.K Pachauri.

(後略)

(C)Telegraph.co.uk 2010年2月4日


その理由についてIPCCが「cannot rely(アテにならない)」と思いっきり書かれていますね。現在、IPCCの議長を務めているラジェンドラ・パチャウリ氏はご存じのようにインド人ですが、インド政府はそのIPCCを見限ったというのですから、何とも皮肉なハナシです。

ま、インドは風力発電や太陽光発電などにも熱心ですから、地球温暖化問題というツールを手放す気はなく、従来通り利用し続けると思います。が、IPCCを中心にヨーロッパ諸国が主導権を握っている現状から抜けだそうと考えているのかも知れません。

同じく、IPCCに対して懐疑的な中東諸国がどのような動きを見せるのか、今後の動向が注目されますね。

騒ぐ前に少しは自分で調べなさい (その2)

フェラーリのように年産5000~6000台規模のメーカーでは逆立ちしても一つの不具合でリコール対象車が何十万台といった規模にはなり得ません。実際、フェラーリが今日までに生産してきたロードカーの総数は15万台くらいですし。余談になりますが、初期のフェラーリのロードカーはレース活動の資金を獲得するためにレースで使った数台のマシンを改造して公道を走れるようにし、パトロンともいうべき大金持ちに売るという格好でした。

逆に、大規模なマーケットで沢山のクルマを売り、尚かつコストダウンの一貫として部品の共用を進めると、リスクを分散できずに大規模リコールに繋がってしまう傾向が強くなります。各紙とも社説でこのことに触れていながら、台数の多さを徒に問題視しているのですから、実状を察する能力が低いと言わざるを得ないでしょう。

リスクを分散させるために共用化を見直し、個別の部品を与えるかつてのような方法に戻っても、根本的な解決にはならないでしょう。共用をやめて個別の部品を与えるとなれば、その分だけ設計から試験、生産に至る一連の管理項目が増えてしまいます。管理能力を高めずに管理項目が増えればエラーが生じる確率も必然的に高くなってしまいます。

部品の共用を減らして個別のリコール対象車の台数が少なくなったとしても、品質管理体制を根本的に見直さなければリコールの届出数は逆に増えてしまい、全体的なリコール対象車の台数も減るどころか増えてしまうかも知れません。そういう意味でも一つのリコールで台数が多いといって騒ぎ立てるのは無意味で、数の多少に関わらず品質管理の不充分さを問題視すべきなのです。

産経新聞も今日(2月3日)付で『トヨタ 危機管理強め信頼回復を』という見出しの社説を載せています。他紙と見比べても全般的に大差ない印象ですが、ここまで問題が広がった要因の一つとして以下のように述べています。

米製品を使わなければ「輸入車と変わらない」といった批判を浴びたこともあり、急速に現地化を進めた。


こうした発想も日本国内の状況がどうなっているのか調べていないゆえでしょう。日本とアメリカの市場規模の差は2.5倍くらいですから、アメリカでの100万台規模は日本での40万台規模に相当すると見なせます。前回ご紹介した日本国内で過去3年間に届け出られたリコール案件のうち、対象が40万台を超えるものは3つありました。つまり、毎年のようにこの規模のリコールは届け出られているということです。

日産マーチ/キューブの約101万台も2.5倍の市場規模に換算すれば約253万台に相当します。ましてや、クレーム隠しが発覚した1997年に富士重工が届け出たリコールは先日ご紹介しましたように素の数字で259万台です。日本国内で生産してもこんなものですから、アメリカでの急拡大云々といったストーリーはかなり苦しいものがあります。

不具合の具体的な内容を見ても、アクセルペダルとフロアマットの干渉ということでは似たような事例が日本国内にもあり、今回が特別というわけではありません。同種のリコールは先般ご紹介しましたトヨタ・タウンエースの10,198台のほかにも、前回列挙した中にありますように、ダイハツ・ハイゼットでも109,167台がリコールされています。前者が昨年5月、後者は一昨年12月に届け出られたものですから、比較的最近の案件といえますが、メディアはこうした前例に気付いていません。

他にも、前回列挙した10万台規模に満たないリコールを含めれば、今回騒がれているものと似たような不具合は幾つもあります。例えば、トヨタの一件とワンセットで騒がれたホンダのパワーウィンドウの不具合に似た案件もありました。トヨタ・ヴィッツの運転席側パワーウィンドウスイッチ内部の接点にグリースの塗布が不完全なものがあり、最悪の場合、発煙・発火し、火災に至る恐れがあるとして82,226台を対象にしたリコールが昨年9月に届け出られているんですね。

これなどはグリースの塗布という基本的な工程の管理が不充分だったということなのでしょう。対象車が8万台強で済んだのもそれゆえかも知れませんが、仮に高速道路の料金所を抜けてウィンドウを閉じた際に発火し、100km/hで走行している状態で火災に至ってしまったら、やはり大変な事故に繋がってしまう可能性があります。

もっとも、可能性だけで騒ぎ始めたらキリがありませんから、個別のリコール案件を取り上げる際にはその辺を弁えるべきでしょう。目に付いたものだけを取り沙汰し、同レベルの責任があってもたまたま目に付かなかったら看過されるというのでは不公平です。

今回の騒動はトーンこそ異なるものの、三菱ふそうのときの偏向報道を思い起こさせます。何度も繰り返して恐縮ですが、あのとき彼らは三菱車の火災しか伝えませんでした。日本では毎年7000~8000台、平均すると毎日20台くらいが燃えているのですから、その中に三菱車が1台や2台あっても何ら不思議ではありません。が、あのときの彼らは車両火災の実態を何一つ把握していなかったゆえ、三菱車が燃える度に莫迦騒ぎを繰り返したわけです。

こうした指摘を受けたメディアは行き過ぎがあったことを認めて何社かは反省のコメントを出し、その直後に首都高で三菱ふそうのマイクロバスが燃えても社名は出ず、執拗な三菱バッシングは幾らか沈静化しました。が、今回の騒動を見ると彼らは何も進歩していないようです。今回も彼らは自ら過去の類例や近年の状況を調べもせず、実態を把握しないまま流れてきた情報に乗っかるだけという同じ過ちを繰り返しています。

それに加えて、今回の騒動で非常に気に入らないのは、トヨタやホンダなど日本のメーカーばかりが槍玉に挙げられているという状況です。

GMは昨年4月に燃料漏れで車両火災に繋がる恐れがあるとして約150万台規模のリコールを実施しました。一昨年8月にもウォッシャータンクヒーターがショートして車両火災に繋がる恐れがあるとし、約86万台のリコールを実施しました。大規模なリコールがケシカランというのなら、何故これを大きく取り上げなかったのでしょう?

さらに、フォードは昨年10月にクルーズコントロールのスイッチ部分が過熱し、発火する恐れがあるという不具合でリコールしていますが、これなどは対象車が450万台に上っています。2007年にも同じ不具合で360万台をリコールしており、同社が届け出た同種のリコールは過去10年間で1600万台に達しているといいます。が、これも今回ほどの騒ぎには発展していません。

アクセルが戻らなくなる恐れがあるのと、発火の恐れがあるのとではどちらがより危険か一概には言えないでしょう。冷静な人ならアクセルが戻らなくなっても慌てずにブレーキをかけながらニュートラルにして暴走に至らないよう対処できるでしょうし、クルマが火を噴いても安全な場所に停車させて避難することができるでしょう。が、パニックに陥ったらどちらも死亡事故に直結する可能性があります。

また、トヨタの対応が後手に回ったということで批判されるのは当然のこととしても、フォードのクルーズコントロールのリコールが問題視されないのは極めて理不尽です。10年に渡って同種の不具合で1600万台がリコールされているということは、10年経っても根本的な問題解決に至らなかったということを意味します。こうした状況をスルーしてトヨタだけが責められているのですから、これは誰がどう見ても公平とはいえないでしょう。

GMやフォードの火災に繋がる恐れがある不具合は騒がれず、トヨタのアクセルが戻らなる恐れがある不具合は烈火のごとく騒ぎ立てられている現状は、風評による集団ヒステリー状態と見るべきでしょう。意図的な印象操作があったのか否かは解りませんが、こうした状況の中で、GMやフォードはトヨタ車からの買い替えを優遇するキャンペーンを大々的に展開しているのですから、彼らの厚顔には恐れ入るしかありません。

1997年の富士重工の件も今回とは明らかな温度差がありましたが、あれは死亡事故が絡まなかったゆえにメディアが重大な問題と見なさなかったからかも知れません。GMやフォードで相次いだ火災に至る恐れのある大規模リコールも実際には大きな事故に繋がっていないようです。が、大事故に至るか否かは完全に「運」の問題で、メーカーが選択できる範疇にないのは言うまでもありません。

理想的なジャーナリズムには広い視野に立って冷静に物事を見据える能力が求められます。世論を誤った方向へ誘導しない公正な報道は彼らに課せられた最も基本的な義務かと思いますが、そのバランス感覚を維持するのは非常に難しいことでもあります。そのための努力を惜しまない姿勢が常に望まれるわけですが、大衆メディアにはそういう気概などないのでしょう。私のような素人でも少し手間をかければ簡単に解るようなことも調べずに、流れて来る情報を受け売りしながら騒ぎ立てるだけでは単なる野次馬です。

ま、今回のアメリカでの一件は、同様に大規模なリコールがあったGMやフォードのそれを棚に上げてトヨタばかりが血祭りにされ、その一方でトヨタ車から買い替えれば1000ドルがキャッシュバックされたりローン金利ゼロになったりといった優遇キャンペーンが展開されるという実に胡散臭い状況になっています。この裏には何らかの意図が働いているのかも知れません(確証はありませんが)。日本のメディアも生来の野次馬体質から自覚のないまま片棒を担がされているのかも知れません。もし、本当にそんな状況だったとしたら、実に情けないことです。

ところで、新型プリウスのブレーキが一時的に利かなくなることがあるといった不具合が大きく報じられています。現象から推測しますと、回生ブレーキと通常の摩擦ブレーキの連携が上手くいかない制御系のトラブルである可能性が高いように思います。もっとも、この件に関してはトヨタも国土交通省も詳細を把握していないようですので、私もこれ以上のコメントができる段階ではありません。

(2月4日追記) ABSが作動する際に回生ブレーキから摩擦ブレーキに切り替わるそうで、そのとき僅かに空白時間があると発表されました。トヨタは既に詳細を把握しており、1月出荷分から対策済みだったといいます。このトヨタの対応には問題があると思いますが、一般的なABS装着車でも制御プログラムの問題はよくあることですので、これが特別とはいえないでしょう。

ただ、ABSの誤作動で制動力が低下したり、フロントとリアのブレーキバランスを正しく制御できなかったりといったリコールやそれに準ずる改善対策が届け出らることも決して珍しいハナシではありません。

例えば、いすゞエルフとか、シトロエンC3およびC2とか、クライスラーのダッジ・ダコタおよびラム、三菱レイダーとか探せばいくらでも出てきます(具体的な内容はリンク先をご参照ください)。ちなみに、エルフに関しては仙台市でコンビニの駐車場に進入した際にブレーキが利かず、駐車していた乗用車に接触して負傷者が出るといった事故に繋がっています。ですから、このプリウスのケースもいまの段階で大騒ぎするのは公平な報道とはいえないでしょう。

メディアはこうしたニュースを流す前に類例がないか調べ、あまり過剰に反応しないよう促すべきです。が、彼らは率先して煽動したがるという非常に困った習性がありますから、望むべくもないのでしょうね。

(おしまい)

騒ぐ前に少しは自分で調べなさい (その1)

誤解がないように予めお断りしておきますが、今般のトヨタのリコール騒動に関して私はトヨタを擁護するつもりなど毛頭ありません。アクセルペダルまわりのリコールについても大型ピックアップのタンドラで同種のクレームが3年前に寄せられていながら正式にリコールとして対応せず、「安全には関係ない運転のしやすさの問題」として個別に処理していたということが明らかになってきました。

これでは富士重工や三菱ふそうがやっていたクレーム隠しおよび闇改修と全く同じ状況です。ここに至ってメディアが「クレーム隠し」という言葉を避けているのも少々引っかかるところですが、大スポンサー様であらせられるトヨタに遠慮しているのでしょうか?

なお、日本のメディアは自動車のリコール制度について全く無知なため、「リコール隠し」という適切とはいえない表現をしていましたが、日本の制度に従って厳密さを求めるなら「クレーム隠し」ないし「欠陥隠し」というのが適切です(国土交通省は専ら「クレーム隠し」という言葉を使ってきました)。その理由を説明していると少々長くなってしまいますので、いずれ改めてエントリを設けます。

さて、このリコール問題を巡っては五大紙でも産経新聞を除いてこの週末に相次いで社説で取り上げられました。が、やはりトヨタに対して遠慮気味といった印象で、三菱ふそうのときとは全く比べものにならない穏やかさです。各紙とも過去の事例や普段からどのようなリコール案件が届け出られているのかといったバックグラウンドを全く把握していない非常に軽薄なものという点でも共通しています。

朝日新聞 『トヨタ車回収―安全への感度が生命線だ』 (2010年1月30日付社説)
日本経済新聞 『トヨタは信頼回復できるか』 (2010年1月30日付社説)
毎日新聞 『トヨタ車回収 安全の確保に全力を』 (2010年1月31日付社説)
読売新聞 『トヨタリコール 安全への信頼回復が急務だ』 (2010年1月31日付社説)

当blogではこれまでメディアのリコールに関する扱い方が出鱈目だということを述べてきました。先にも触れましたように、近年はコストダウンのための合理化策として部品の共用が進められてきました。それゆえ、以前に比べれば一つの不具合が大規模なリコールに繋がってしまうケースが増えています。各紙ともそのことについて触れながら、しかし類例については何一つ調べていないようです。

このタイミングでホンダもパワーウィンドウの不具合から発煙・発火の恐れがあるとして海外で約65万台のリコールを発表しましたが、これもまたトヨタの一件に絡めながら騒がれてしまいました。彼らは発表された情報を受け売りするばかりで、やはり自ら実態を知ろうという気がないようです。

ということで、彼らに期待しても無駄なようですので、私が独自に調べてみました。とりあえず、過去3年間に日本国内で届け出られたリコール案件のうち、対象車が10万台以上で重大事故に繋がる恐れのあるものや火災、燃料漏れの恐れがあるものを列挙してみます。

●シートベルトテンショナーの巻取装置付近に遮音補助材を設定したため、テンショナーが作動した際に発生する高温ガスで遮音補助材が溶け、最悪の場合、火災に至る恐れがある。対象車:トヨタ・ヴィッツ、ヴェルタ、ラクティスの456,790台

●燃料タンクの取付方法が不適切なため、亀裂が発生することがあり、最悪の場合、燃料が漏れる恐れがある。 対象車:トヨタ・ノアの628,239台

●燃料パイプのパイプ材溶接部に対する曲げ位置が不適切なため、微小な亀裂が発生することがあり、最悪の場合、燃料が漏れる恐れがある。対象車:トヨタ・クラウン、マークXの215,020台

●燃料パイプと取付金具の接合部に塗装が施されていないものがあるため、パイプに錆びが発生することがあり、最悪の場合、燃料が漏れる恐れがある。対象車:日産セレナの313,033台

●燃料タンクの取付方法が不適切なため、亀裂が発生することがあり、最悪の場合、燃料が漏れる恐れがある。対象車:日産マーチ、キューブの1,010,843台

●駐車ブレーキレバーを保持するラチェットの嵌合部形状が不適切なため、最悪の場合駐車ブレーキが保持できないまたは駐車ブレーキが突然解除される恐れがある。対象車:ホンダ・フィット、エアウェイブの144,409台

●エンジン制御コンピュータのプログラムが不適切なため、アクセルペダルを戻してもエンジン回転が下がりにくくなることがあり、ブレーキ倍力装置に供給される負圧が不足し、最悪の場合、制動力が低下する恐れがある。対象車:マツダ・デミオ、ベリーサ、アクセラの170,300台

●コイルスプリングシートとコイルスプリングの組合せが不適切なため、スプリングの塗装の剥離から錆が発生して折損することがあり、折損したスプリングとタイヤが干渉し、タイヤが損傷して、最悪の場合、走行不能に至る恐れがある。対象車:マツダ・デミオ ベリーサの264,276台

●前席ドアガラスの組付け作業が不適切なため、ドアガラスを下げた際にガイドレールから外れてドア開閉用ロッドに干渉し、最悪の場合、ドアが開く恐れがある。対象車:三菱コルトの185,382台

●エンジンルーム内のエアコンコンデンサー前側に装着している遮風用インシュレーターの材質が不適切なため、破断したインシュレーターが排気管に接触し、最悪の場合、火災に至る恐れがある。対象車:三菱ekワゴン、ミニカトッポ、トッポの241,775台

●後輪差動装置のピニオンシャフトの強度不足で、最悪の場合、車輪がロックする恐れがある。対象車:スズキ・エブリイ、キャリイ、マツダ・スクラムの129,766台

●リヤプロペラシャフト軸受の材質が不適切なため、リヤプロペラシャフトが脱落し、最悪の場合、走行不能になる恐れがある。対象車:スズキ・エブリイ、キャリイ、マツダ・スクラムの381,551台

●前照灯用電気配線が不適切なため、最悪の場合、前照灯が点灯しなくなる恐れがある。対象車:スズキ・キャリイ、マツダ・スクラムの103,040台

●クランクプーリの防振ゴムの接着面が剥離することがあり、最悪の場合、発電機が作動しなくなってエンジンが停止する(エンジンが停止するとブレーキの倍力装置が働かず、制動力が低下する)恐れがある。対象車:スバル・R1、R2、ステラの108,071台

●エアコンコンプレッサの電磁クラッチ面の接触面積が小さく、条件によってクラッチ部が異常発熱することがあり、最悪の場合、火災に至る恐れがある。対象車:スバル・サンバーの114,232台

●アクセルペダル下端部の形状が不適切なため、フロアマットに穴があくことがあり、最悪の場合、アクセルペダルが穴に引っかかってエンジン回転が下がらなくなる恐れがある。対象車:ダイハツ・ハイゼットの109,167台

●CVTのオイルクーラーホースの製造工程に不適切なものがあり、エンジンの振動などによりホースが抜けてオイルが漏れ、最悪の場合、火災に至る恐れがある。対象車:ダイハツ・ムーヴ、ミラ、タント、ソニカの136,810台

●ステアリング機構のユニバーサルジョイントとギヤボックスの連結部がずれた状態で締め付けたものがあり、最悪の場合、ステアリング操作が利かなくなる恐れがある。対象車:いすゞ・エルフ、日産アトラスの161,296台

余談になりますが、今回調べて驚いたのは、三菱は対象車が1台とか3台とか、極めて微少なものまでちゃんとリコールを届け出ているんですね(他社では同じくクレーム隠しの前科がある富士重工を除いて1桁など見かけませんでした)。それだけに三菱が届け出ているリコールは数が多く、確認作業が大変でした。彼らはあの一件でよほど懲りたのでしょう。

さて、上に列挙したリコール案件は日本国内のみを対象としたもので、最近3年間に届け出があったものに限っています。そのせいか、100万台を超える規模の案件は日産マーチ/キューブの燃料漏れの恐れがあるという1件のみでした。が、燃料漏れも周囲に火の気があれば火災に直結するものですから、軽視してよいというものでもないでしょう。

また、この約101万台のほかにも約46万台や約63万台といった規模のリコールがありましたので、いまトヨタの一件と絡めながら「日本車の信頼も地に墜ちたと」騒がれているホンダの約65万台も稀な台数とはいえませんし、いまに始まったことでもありません。

メディアが台数の多さを徒に問題視しているのは、こうした状況を把握していないということもあるのでしょう。が、さらに調べてみますとGMやフォードの大規模リコールは棚に上げてトヨタばかりが槍玉に挙げられている状況だということが解ってきました(詳しくは次回に)。またしても狡猾なアングロ・サクソン人に乗せられているだけなのかも知れません。(あくまでも個人的な感想です。)

(つづく)

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まとめ

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