酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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ホンダの首脳陣は案外正直者かも (その3)

差し当たって電気自動車しか推すものがない三菱自動車の益子修社長はi-MiEVの国内発売の折に「2010年代半ばまでに顧客の負担額が200万円を切るレベルを実現したい」と語っていました。あえて「顧客の負担額」と断っているのは、つまり補助金抜きではビジネスが成り立たないということの裏返しで、5年くらいでは自力で採算ベース乗せることなど不可能であると暗に認めているだけ正直だったと思います。

ホンダはご存じのようにハイブリッド車を採算ベースに乗せており、燃料電池車にも熱心ですから、先進性をアピールする道具としての電気自動車など必要ないでしょう。伊東社長の「現実にはほかの課題もある。米カリフォルニア州の法規制だ」という言葉や、北条取締役の電気自動車で「採算は取れない」という発言も、現実をありのままに伝えたものに違いありません。そうでなければ、こんなマイナスイメージに繋がりかねないことは言わないでしょう。

ホンダの福井前社長は「バッテリー嫌い」などとも言われており、「500km以上走れないクルマはクルマじゃない」というような発言で電気自動車に対してかなり否定的でした。プラグインハイブリッドにも消極的だった福井前社長は、それゆえプリウスのような2モーター式ではなく、ガソリンエンジンを主役としてそれをアシストする1モーター式のハイブリッドシステムに拘りがあったのかも知れません。

現在の伊東社長は電気自動車の発売を決めた方針転換について「私はそれほどでもない」と述べ、福井前社長ほど電気自動車やプラグインハイブリッド車に否定的ではないことを公言しました。とはいえ、現実問題として電気自動車の実用性が低いのは明らかですし、三菱の益子社長もビジネス面では自立できる段階にないことを認めているくらいですから、今後もホンダの軸足がハイブリッド車に置かれるのは間違いありません。

7月20日の会見でホンダが「いまは生産全体の5~6%だが、2014年にかけてHVのラインアップを増やし 、2015年には10%以上にしていく」と発表したのもそれゆえでしょう。彼らは既存車種のモデルチェンジに伴ってハイブリッド仕様を追加し、そのラインナップを拡充しながら生産比率を上げていく方向で考えているわけですね。

プリウスのようにパワートレーンの構成そのものが普通のガソリンエンジンだけで走るクルマとは大きく異なっていると、こうした展開は難しいでしょう。が、ホンダの簡易的なシステムはフライホイールを薄型モーターに差し替え、トランスミッション以下のコンポーネンツも従来のものを応用できるレトロフィットに近いものであるゆえ、既存車種への展開が比較的容易に行えるようです。

こうしたシステムなら生産面でのハードルも決して高くないハズですから、今後5年で10%以上という数字はむしろ謙虚であるように感じます。もしかしたら、これはインサイトの販売実績が物語っているように、ただ作っただけで売れるとは限らないということを痛いほど思い知らされたからかも知れません。そう考えれば、この5ヶ年計画はかなり堅実なものと理解できます。

そこへいきますと、2020年には世界の自動車需要の10%が電気自動車になると豪語し、プリウスでさえ12年以上かかった年産50万台規模を電気自動車で2012年までに実現させる計画だと吹聴している日産のゴーン社長は、もはやペテン師に近いというのが私の個人的な印象です。日産とルノー合わせて年産50万台ということは、両社が生産する乗用車の8%以上が電気自動車になるということを意味します。

同じく電気自動車を推す三菱は「2020年までに当社の生産台数の20%を電気自動車、およびプラグイン・ハイブリッド車にする」と計画しており、ホンダのハイブリッド車倍増5ヶ年計画より遙かに野心的ですが、その三菱と見比べても日産とルノーの2年で8%強という電気自動車の生産計画は突飛すぎます。

ゴーン社長はこのように無謀ともいうべき大袈裟な数字を振りかざして電気自動車推進を唱えてきました。その一方でハイブリッド車は「世界需要の2%に過ぎないニッチ商品」などいう詭弁で散々扱き下ろし、またハイブリッド車では「地球温暖化問題の根本的な解決にはならない」といった旨も度々述べてきました。

そこまでハイブリッド車を悪し様に言うのなら何故フーガを電気自動車仕様ではなくハイブリッド仕様で発売するのか大いに疑問です。要するに、都合の良いことだけ言いたいように言っている独善者ということなのでしょう。

こうしたゴーン社長の発言を日本のメディアの多くは全般的な状況などに照らして妥当なものなのか否か検討もせず、大いなる期待感と共に伝えてきました。が、事情が解っている業界関係者はもちろん、欧米のメディアにも冷ややかな反応は少なくないようです。

例えば、メールマガジン『自動車ニュース&コラム』9月13日号の日替わりコラム「電気自動車を作る意味って?」(寄稿者はアメリカ在住の元自動車エンジニアの方)によりますと、アメリカの自動車雑誌に「どんな流れでリーフができたか」という主題の記事があったそうで、44%が「カルロス・ゴーンのエゴ」と書かれていたそうです。

昨年行われたリーフの発表会や東京モーターショーでゴーン社長は電気自動車について熱く語っていましたが、そのときから「10年で自動車の世界需要の10%が電気自動車になるなどという数字は何を根拠にしているのか?」といった疑問をはじめとして、業界内では懐疑的な声で溢れていました。そうした声に対してゴーン社長は「これは地球を守るということだ。我々が最初から懐疑的であれば、何も実現しない」などと宗教的とも取れるようなスタンスで反論する始末です。

広げてしまった風呂敷があまりにも巨大すぎたため、もはや自分でこれを畳むことが出来ない状況に陥ってしまい、完全に開き直ってしまったようにも見えます。そうした彼の発言に疑いの声が上がると、彼は子供のようにムキになり、さらに意固地になっていくというスパイラルに陥っているようにさえ見えます。

先月、フジテレビの『LIVE2010ニュースJAPAN』で「EVが拓く“エコカーの未来”」という特集が放送されましたが、そのインタビューでも彼の暴走はとどまるところを知らないといった感じでした。

「我々は、EVに関するすべてに携わる唯一の会社なのです。政府や街にどのようにインフラを構築すべきか、消費を促す補助金システムがつくれるか、EVに興味を持っている世界の街に指標を提供することができます」「リーフは大成功するだろう。バッテリーや車本体も機能が向上し、コストもどんどん下がっていくだろう。EVは今、長い物語の始まりに立ったにすぎないのです」

ま、電気自動車が「長い物語の始まりに立ったにすぎない」という点については否定しませんが、ハナシの内容はいずれも具体性に欠けており、説得力のカケラもありません。インフラ面でもテネシー州の大都市を結ぶ幹線道路に充電ステーションを設置する計画や、イスラエルでルノーと共に例のベタープレイス社と提携したバッテリー載せ替え方式のインフラを展開する計画を発表していますが、「計画」なら何とでも言えます。

日本やアメリカで全国を網羅するような急速充電器の整備計画がなされているわけでもありませんし、現段階で特筆するような実績があるわけでもありません。「EVに興味を持っている世界の街に指標を提供することができます」というような台詞は、それなりの実績を重ねて比較的早期に採算が見込めるビジネスモデルくらいは示してからいうべきことです。

(つづく)
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ホンダの首脳陣は案外正直者かも (その2)

ホンダに電気自動車の発売を決意させたのは、伊東社長が述べたことからも明らかなように、カリフォルニア州の規制が強化されるからに違いありません。北条取締役が述べたように採算度外視で、ビジネス的には実のないものというわけですね。こうした規制さえなければ、現段階ではさほど有意義と言い難い電気自動車の市販にホンダは余計なリソースを裂く気などなかったと思います。

そのカリフォルニアは全米随一というべき狂信的な(そしてかなり偽善的な)環境保護政策を進めています。ホンダがあまり乗り気でないのに電気自動車を発売することになったのも、トヨタがテスラと組んでRAV4ベースの電気自動車を発売する予定なのも、同州の「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制」が年々強化されていくゆえでしょう。この規制は州内年販6万台以上の大手メーカーに対し、電気自動車や燃料電池車などZEVの販売比率を高めるよう求めています。

具体的には、州内の販売総数に対するZEVの比率をフェーズ1(2009~2011年)で11%、フェーズ2(2012~2014年)で12%、フェーズ3(2015~2017年)で14%、フェーズ4(2018年以降)で16%としなければなりません。ただし、販売総数に対して単純にこの割合を当てはめるわけではなく、航続距離などの性能差が考慮されており、以下のようなカテゴリーが設けられています。

・タイプ0: 50マイル未満の近距離用電気自動車→1クレジット/台
・タイプ1: 50~75マイル走る電気自動車→2クレジット/台
・タイプ1.5: 75~100マイル走る電気自動車→2.5クレジット/台
・タイプ2: 100~200マイル走る電気自動車→3クレジット/台
・タイプ3: 200マイル以上走る電気自動車または100マイル以上走る燃料電池車→4クレジット/台
・タイプ4: 200マイル以上走る燃料電池車→5クレジット/台
・タイプ5: 300マイル以上走る燃料電池車→7クレジット/台

航続距離が長いものほど多くのクレジットが与えられ、少ない販売台数で規制をクリアできるようになっているわけですね。燃料電池車が電気自動車より優遇されているのは、エネルギーの充填時間が短いという点が考慮されているからのようです。いずれにしても、実用性の高いZEV(その分だけ高価になりがちです)ほど有利になるようカテゴライズされています。

カリフォルニア州のZEV規制は、これまでも現実の壁にぶち当たって当初の高い目標から何度も緩和策が講じられ、半ば骨抜きになっていきました。従来はハイブリッド車や燃費の良いガソリンエンジン車などにも別枠でクレジットが与えられ、それでかなりの部分を補填することも出来ました。

が、昨今の電気自動車ブームなどが追い風となったのか、これまでに比べると彼らもかなり強気になっているようで、今後は必ず一定のクレジット分だけZEVを売るよう迫っている状況です。不足分1クレジット当たり5,000ドルの罰金を支払わなければならない規定は変わりませんが、従来に比べると緩和策の幅が大きく狭められているようで、そのことが各メーカーにとって頭痛のタネになっているようです。

2008年までのZEV規制では総数250台以上の燃料電池車を販売することとされ、ホンダは48台が割り当てられていました。本当は同州での販売シェアに準じて分担されるハズですが、1990年代から続いてきたZEV規制で販売した電気自動車の獲得クレジットで補填することができるという仕組みになっていたようです。電気自動車からは早期撤退していたホンダの保有クレジットが少なかったゆえ、販売シェア(12~13%程度)より少し大きく割り当てられたというわけですね。

このとき、ホンダは水素ステーションが比較的多く設置されている南カリフォルニアを中心として一般消費者向けにFCXクラリティを3年リースで販売しており、そのリース料は月額600ドルというとんでもない破格でした。これは日本での官公庁や企業向けリースが概ね同じ条件で月額80万円であることを考えれば極めて異常な安さです。

1台1億円ともいわれるこのクルマを600ドル×36ヶ月=21,600ドルでリース販売したのですから、残価設定がどうなっていようともホンダとしては大変な出血大サービスだったわけですね。これを取り違えて「燃料電池車が現実的な価格で買えるようになるのも間近」と報じていたメディアもありましたが、ま、そういう勇み足の記事はこの分野ではよくあることです。

このときホンダはテスラのように小規模でZEV規制にかからないメーカーからクレジットを購入したり、罰金を払ったりするくらいなら、その分のコスト+αでFCXクラリティをリース販売したほうがイメージアップにも話題づくりにも繋がり、オマケにリースアップした車両を回収すればデータの収集にも活用できると考えたのかも知れません。

が、今後の台数増加にこんな大出血サービスのリース販売でFCXクラリティをバラ撒いていったら、ホンダは莫大な損失を計上することになってしまいます。実際、ホンダはフェーズ1の自力クリアを諦め、テスラから「655台分のクレジット※」を購入したと伝えられています。(※これはブルームバーグによる報道ですが、「655台分のクレジット」というのが655クレジットを意味しているのか、テスラ・ロードスター→タイプ3→4クレジット/台×655台分=2620クレジットなのか、そこまでは書かれていませんでした。)

こうしたカネで解決する方法を続けるとイメージダウンに直結していくでしょう。ホンダが電気自動車を発売する方針を打ち出したのは、要するにそれを避けることと、コスト面との兼ね合いによる判断なのでしょう。

ホンダが電気自動車の発売を予定している2012年にかかるのはフェーズ2の12%です。2009年のカリフォルニア州内での新車販売台数は100万台強で、そのうちホンダは13%程度を占めていました。フェーズ2の適用期間もその規模を維持するとしたら、毎年15,600クレジット分のZEVを売らなければなりません。

毎年7,800万ドル(円高の現在でも約66億円)もの罰金を支払いながら企業イメージを低下させていくか、1台約1億円といわれるFCXクラリティ(タイプ5→7クレジット/台)を毎年2,230台売るか、i-MiEVクラスの電気自動車(タイプ2→3クレジット/台)をつくり、それを毎年5,200台売っていくか、どれが最も無難かといえば、これは誰が考えてもだいたい同じ結論に至るでしょう。

実際にはハイブリッド車なども全く考慮されないわけではないようですから、ここまでたくさん売る必要はないと思います。が、どちらにしてもi-MiEVクラスの電気自動車で良いのなら1台当たりの販売価格は400万円程度に収まるでしょうから、FCXクラリティとの価格差は桁違いとなります。これはそのままハードルの高さにも繋がるわけですから、電気自動車を選択するのは必然ということになってくるわけですね。

(つづく)

ホンダの首脳陣は案外正直者かも (その1)

昨年5月初旬、3代目プリウスの発売が約半月後に迫っていた頃、自販連が同年4月の新車販売台数(軽自動車を除く)を発表しました。このとき1位となったインサイトがまるで「天下を取った」「トヨタを打ち負かした」とでも言わんばかりに大衆メディアは大騒ぎしましたね。テレビのニュース番組ではこれをトップで伝えたところもあったくらいです。

しかし、インサイトはそれから約7ヶ月で受注残を吐き出したらしく、今年1月以降の月販はそれまでの1/3前後まで急激に落ち込みました。現在、毎月3万台前後で推移しているプリウスとの差は実に10倍近くまで広がり、誰がどう見ても「勝負あった」という状況になってしまいました。

主要車種の登録台数推移09.02-10.07
インサイトが首位に立ったのは赤い矢印で示した
わずか1ヶ月の瞬間的なものでした。
それも普通は年度末の追い込みで増えるべき3月に減り、
その反動で激減する4月に反転急上昇するという
実に不自然な動きでこの結果です。
こんな状況でメディアは騒然となったのですから、
いまにして思えば恐ろしく読みが甘かった
と評さざるを得ないでしょう。


2代目プリウスは2008年の秋に値上げされ、3代目へのモデルチェンジでもその価格に据え置かれていたら、インサイトとの価格差は40~50万円にもなっていました。当初は排気量アップも考慮し、このモデルチェンジでさらなる値上げもあるのではないかと噂されていたくらいですから、本当にそうなっていれば完全に棲み分けができたのは間違いありません。トヨタとしても利益率を考えれば値上げないし据え置きという選択もビジネス面で決して悪くない判断だったでしょう。

が、トヨタは利益よりシェアを取る判断を下しました。恐らく、ハイブリッド車のリーディングカンパニーとして例え単一車種でもパイオニアであるプリウスに限っては逆転を許したくないという強い意志が働いたのでしょう。最廉価グレードでたったの16万円差という恐るべき低価格でインサイトに対抗したのはご存じの通りです。

この価格差では装備の違いを差し引いただけで既にインサイトのほうが割高になってしまいますが、全般的な技術水準やそれ以前に車格そのものもプリウスのほうが上です。また、よほどクルマを見る目がない人でない限り、軽自動車並みと評されるインサイトの安普請に気付かないわけがありません。これでは全く勝負にならないのは明らかでした。

私は当初から両者の車格や技術レベルの違いが解っていましたので、本来であればライバル扱いするような関係ではないと考えていました。なので、3代目プリウスの価格が正式に発表された段階でインサイトに勝ち目はないと予測し、当blogでも何度となくその旨を述べてきましたが、実際にその通りになったわけですね。しかし、これは決して自慢するようなことではなく、冷静に見比べれば当然の判断で、そうした判断を下せないほうが問題と考えるべきかも知れません。

分別のない大衆メディアは両者を比肩するライバルとして扱っていましたが、それは根本的に大間違いでした。しかも、この争いをハイブリッド専用車同士のシェア争いという構図にとどめず、ホンダとヤマハが二輪車全般の覇権を競った「HY戦争」に準えて「TH戦争」というフレーズまで用いて煽る始末です。またしても彼らの価値判断能力の低さを露呈した程度の低い乱痴気騒ぎだったわけですね。

思い起こせば、新型プリウスの価格が205万円からというハナシが出たとき、ホンダの商品統括責任者である阿野主幹は「あの価格で出してビジネスが回るのならば、トヨタさんは本当に凄い会社だなと思う」とコメントしていました。

私はこのコメントを紙媒体を通してしか知りません(つまり、どのような口調で言っていたのかは想像に任せるしかありません)が、当時はまだ噂の段階だった状況も踏まえて常識的に捉えれば、205万円という価格に同氏は半信半疑だったと見るべきでしょう。いずれにしても、ホンダにはこの価格設定でプリウスのような高水準のハイブリッド車を販売することなど不可能ということを暗に示す、本音の発言だったと考えて差し支えないでしょう。

また、今年7月20日の会見の席でホンダの近藤副社長はプリウスに大きく水をあけられたことについてコメントを求められると「値段と性能は、残念ながらプリウスの方がインサイトよりも上。その結果だろうと思う」と述べました。

一般メディアではそれほど大きく扱われなかったかも知れませんが、自動車関連のメディアやその筋のライターたちは一様にこれを「敗北宣言」と捉え、それなりに話題になっていました。

中にはこうした発言を不甲斐ないと感じたり、この発言でインサイトの下取価格が下がるのではないかと心配している人もいるようですが、上掲のグラフでもマーケットによる評価は明らかです。私はむしろ近藤副社長の冷静さと下手な言い訳に走らなかった潔さを讃えたいくらいです。

ホンダは同じく7月20日の会見で2012年に電気自動車を発売する旨を発表しました。昨今の異様な電気自動車ブームに浮かれている大衆メディアの中には「ホンダも電気自動車市場に本格参入する意向を示した」と捉えたところも少なくなかった印象です。が、それも全くの的外れで、実際にはもっと現実的な理由があります。

その理由についてもホンダの伊東社長は実直に述べています。「電気自動車などの発売を決めたのは、積み重ねてきた技術を発表できる時期に来たこともあるが、現実にはほかの課題もある。米カリフォルニア州の法規制だ。」 また、北条取締役は電気自動車について「採算は取れない。限定的な生産販売のみ」と語っています。

世間一般には先進的なイメージを持たれることが多い電気自動車の発売計画を発表しながら、こうした後ろ向きのことを述べるのはかなり損なことだと思います。が、これが現実なのでしょう。他社でも事情は変わらないハズで(トヨタがテスラと組んでRAV4をベースとした電気自動車を発売するというアレも同様でしょう)、ホンダの首脳陣がこうしたマイナスイメージとなりかねない発言をしたのは、本当に正直なところを吐露したとしか考えようがありません。

(つづく)

塾の広告が勉強不足というのも・・・

私が通勤に使っている電車にも学習塾や予備校などの広告が色々掲示されています。日能研の広告はフジテレビの『平成教育委員会』に似た感じで中学の入試問題が出題されており、ついつい解いてみたくなってしまいますね。

一方、みすず学苑のあのシュールな広告になると私の感性では全く理解不能です。いつもヤマトタケルが大きく扱われてきたのは学苑長である半田晴久氏が神道系宗教団体ワールドメイトの教祖である深見東州氏と同一人物であるというところで繋がっていると考えれば理解できます。が、その画像に大量のプリンがちりばめられるようになったのは、彼らが合格者を「合格プリンス」「合格プリンセス」と呼んでいるところから短絡した駄洒落だそうで、私にはこのセンスがサッパリ理解できません。

ワールドメイトの各支部にも「ハトよりもワシよりもタカじゃい三鷹支部」とか「犬も歩けば銀座!人も歩けば銀座!カエルが飛んでも銀座!そうさ銀座は皆が行きたいところなのさ支部」といった常識にとらわれない奔放な名称が付けられているそうで、恐らく半田(深見)氏がそういう感性の人なのでしょう。私の身近にもいわゆるオヤジギャグを言う人はいますが、ここまでシュールな人が身近にいたら、さぞ鬱陶しかろうと思います。(あくまでも個人的な感想です。)

さて、このところ私が引っ掛かっているのは栄光ゼミナールのドア上広告で、デカデカとこのように書かれています。

お父さん、COP10ってなに?

その回答は以下のように書かれていました。

*COP10(生物多様性条約第10回締約国会議) 10月名古屋で開催


しかし、いくら何でもこれでは乱暴すぎるでしょう。この場合の「COP」は「Conference of Parties」の略で「締約国会議」という意味です。生物多様性条約だけでなく、ワシントン条約でも気候変動枠組条約でもラムサール条約でもバーゼル条約でも、締約国会議は「COP」という略称で表されます。

ワシントン条約のCOP10は1997年にジンバブエのハラレで開催されました。気候変動枠組条約のCOP10は2004年にアルゼンチンのブエノスアイレスで、ラムサール条約のCOP10は2008年に韓国のチャンウォンで開催されました。バーゼル条約はCOP9が2009年にインドネシアのバリで開催され、COP10の開催地はまだ未定だったと思いますが、2011年に開催される予定になっています。

他にも色々ありますが、「COP10ってなに?」と問われただけで「生物多様性条約第10回締約国会議」などと断定することはできません。

例えば、「フジワラってだれ?」と聞かれたとき、もしかしたら女優の藤原紀香さんのことかもしれないし、プロレスラーの藤原喜明さんのことかもしれないし、お笑いコンビのFUJIWARAのことかも知れないのに、「藤原鎌足 飛鳥時代の政治家」と勝手に断定してしまうようなものです。

単にこの広告を製作した人が「COP=生物多様性条約締約国会議」と思い込んでいたのかも知れません。が、学習塾の広告にしてこの甚だしい勘違いは何とも情けないことです。

すべてがそうだとは言いませんが、ワシントン条約にしても気候変動枠組条約にしても、この種の条約を巡っては政治的な思惑や利権が渦巻くことも多く、締約国会議がパワーゲームの舞台となることもしばしばです。殊に気候変動枠組条約の締約国会議では「CO2の排出枠」が議題の中心に据えられることが多いわけですが、視点を変えれば「化石燃料の消費枠」を縛る争いになっています。

昨今のIPCCに対する信頼低下もあり、欧米諸国では地球温暖化問題に関してトーンダウンの様相が否めなくなってきました。その一方で先般頂いたコメントにもありましたように、生物多様性条約は「生物多様性オフセット」という地球温暖化問題におけるカーボンオフセットに近似したミティゲーション・バンキングを設けるようになり、新たな金融商品として萌芽しつつあります。こうなると、他の分野でも似たような構造を作って利権を掌握してやろうと考える人が現われても不思議ではありません。

今後も人類や自然環境などにとって脅威となる可能性が指摘される問題は、それを巡って条約が制定され、締約国会議が開催され、国際的な枠組みとして様々な政策が検討されるようになるでしょう。その中には悪知恵の働く人たちがつけ込んでパワーゲームの舞台としたり、カネづるにしようとするパターンに陥ってしまうケースもあるかも知れません。

かつては軍事力を主軸として比較的解りやすい争いで済むことが多かったように思います。が、そうした争いにウンザリしている大衆を上手く丸め込むため、より巧妙な仕組みが手を変え品を変え、いくつも創作されていくことになるかも知れません。(振り込め詐欺がそうであるように、人を手玉に取ろうと思ったら「手を変え品を変え」というパターンになるものです。)

そんなものに踊らされ、私たちが納めた血税が食い物にされたり、莫迦げた要求を突きつけられるようなことが繰り返されたのではたまりません。ですから、この種の「締約国会議」が取り沙汰されるようになったら、政府やメディアが伝えることを鵜呑みにせず、様々な角度からその内容を注意深く観察していくべきです。

そういう意味でも、「COP10=生物多様性条約第10回締約国会議」などと理解しているようではハナシにならないでしょう。

それはソニーの悪癖でしょう

家電量販店などのPOSデータから販売状況を集計しているBCNが9月2日付で発表した携帯音楽プレイヤーの国内販売シェアで、ソニーのウォークマンがアップルのiPodを抜き、初めて首位に立ったとの旨が報じられましたね。(参考:読売新聞『ウォークマン、iPod抜く…8月販売台数シェア』)

iPodがシェアを落とした要因については上掲の記事でも指摘されているようにiPhoneユーザーの拡大や新機種発売を前にした買い控え及び出荷調整などによる影響が大きかったと見て間違いないでしょう。単月の結果を以てソニーの躍進といえるかどうかは微妙で、あまり大騒ぎすることでもないと思います。なので、その点については改めて論じる必要もないでしょう。

若い人以外には説明の必要もないと思いますが、ソニーは1979年にカセットテープ(正式な規格名称は「コンパクトカセット」ですが)を再生するポータブルプレイヤー「ウォークマン」を発売し、歩きながら音楽を聴くライフスタイルを提唱しました。このマーケットの始祖である「ウォークマン」はポータブルカセットプレイヤーの代名詞となり、世界を席巻していました。が、デジタル音楽ファイルを再生する現在の携帯音楽プレイヤーではアップルの後塵を拝し続けてきました。

アップルのiPodはそのデザインが非常に優れており、インターフェイスについてもよく練られていました。また、他社が半導体メモリやCD-Rなど容量の小さいデータストレージで利便性がそれほど高くなかったとき、初めてHDDを採用することで大量の音楽ファイルを持ち歩けるようにしたというのも画期的でした。(他にも「iTunes Store」という音楽産業の構造を変革してしまったコンテンツビジネスなどトピックは色々ありますが、話題を広げすぎても纏めが面倒になりますので、ここでは触れないことにします。)

iPodは初代の発売時から極めて洗練された高い商品力を持っていたと思います。ソニーの製品にはそこまでの魅力がなかったというのも、iPodに遅れをとる大きな要因だったと見て間違いないでしょう。が、こうしたこと以外にもウォークマンには非常に大きなネックがありました。それはソニーが時々やる判断ミスですが、一般メディアはその点を見落としてしまうことが多いようです。

このニュースが流れた9月2日、私はたまたまNHKの『ニュースウオッチ9』を見ていたのですが、この件について家電量販店にも取材するなど意外なほど時間を割いていました。しかしながら、そのとき専門家として取材に応じていた人の解説はかなり頓珍漢で、思わず失笑してしまいましたね。曰く、「ソニーは当初MDに力を入れており、携帯音楽プレイヤーには消極的だった」と。

こういう実情を知らない人を「専門家」と勘違いして取材し、勝手な思い込みを「解説」として垂れ流してしまったのは、この方面に詳しい記者がNHKにいなかったからなのでしょう。

私は通勤電車の中で読書に集中したいということもあって、高い遮音性で定評のあるSHUREのイヤホンを用い、ヴォーカルがない静かなジャズを聴いています。携帯音楽プレイヤーは私の通勤時に不可欠のアイテムで、約10年の間に5つのそれを乗り換えてきました。なので、大雑把な動きは素人なりにも心得ているつもりです。

世界で初めて市販されたこのジャンルの携帯音楽プレイヤーは、韓国のセハン情報システムズの「mpman(エムピーマン)」とされています。日本では1998年の5月から秋葉原の「あきばお~」で発売されたそうで、これが先駆けになるようです。(参考:AKIBA Hotline!『衝撃の問題作!?携帯型mp3プレーヤー「mpman」販売開始』)

初代iPodが発売されたのは2001年ですから、その3年も後のことです。ソニーは「メモリースティックウォークマン NW-MS7」でこのマーケットに参入しましたが、その発売は1999年のことでした。iPodより2年も早く、mpmanが市場を開拓した翌年だったのですから、これで「消極的」ということはあり得ないでしょう。そのタイミングから推察しますと、ソニーはmpmanを見て即座に商品開発に着手したと考えるべきかも知れません。

NW-MS7.gif
メモリースティックウォークマン NW-MS7

ポータブルMDプレイヤーの出荷台数は2003年がピークで、HDDや半導体メモリなどの携帯音楽プレイヤーにシェアを逆転されたのは2005年のことでしたから、ソニーがMDに力を入れていたということ自体は間違ともいえません。

が、現在の携帯音楽プレイヤーに繋がるマーケットへの参入時期に関してソニーは非常に早く、大手メーカーとしてはどこよりも積極的でした。それはこのカテゴリーの将来性もキチンと認識しており、カセットテープからCD、MDを経て牽引役を果たしてきた「ウォークマン」をここでもトップブランドとして維持しようと考えていたからでしょう。

では、ソニーが大きく出遅れてしまった印象を持たれている本当の理由は何だったのでしょうか? 私は家庭用VTR「ベータマックス」などで喫した敗北に学ばず、独自規格に拘り続けるというソニーの悪癖が出たからだと考えます。

この種の携帯音楽プレイヤーは俗に「MP3プレイヤー」とも呼ばれ、そのファイル形式はMP3が他を圧倒しています。パイオニアとなったmpmanも「MP3」と「ウォークマン」を合成した非常にベタなネーミングだったわけで、このファイル形式は既にデファクトスタンダードとして広く用いられていました。

しかし、ソニーはMDで採用した圧縮方式の「ATRAC」を発展させた「ATRAC3」という独自のファイル形式を唯一の対応コーデックとし、MP3には対応しないという愚を犯しました。MP3をATRAC3に変換するソフトも付属させましたが、非可逆圧縮フォーマットであるMP3をATRAC3に変換すれば音質の低下は避けられません。

それ以前に、多くのMP3ファイルを持っているユーザーの場合、そんな七面倒くさいことまでして使いたいとは思わないでしょう。逆にソニーでこの種のプレイヤーを使い始め、せっせとATRAC3ファイルを増やしていった場合も、他社に乗り換えようと思ったら非常に面倒なことになります。

私がこの種の携帯音楽プレイヤーを初めて購入した時には既にソニーも商品展開を進めていましたが、MP3非対応という時点で購入候補から真っ先に除外しました。同様の判断をした人は決して少なくなかったでしょう。

途中、一部の機種ではMP3対応策が講じられることもありましたが、主流はやはりATRAC3およびATRAC3plusで貫かれていました。また、PCから音楽ファイルを転送する際に必要な付属ソフト「SonicStage」の完成度の低さなども手伝って、このマーケットにおけるソニーの評判は芳しくない状況がずっと続いていました。

余談になりますが、接続キットを用いるとPCに繋いでデータ管理や編集ができるMDデッキMXD-D40の付属ソフト「M-crew」も操作性が非常に悪く、私は使う度に舌打ちしていました。PSP goにデータを転送する「Media Go」も完成度が低く、私の環境ではセキュリティソフトを一時停止しないとPSP go本体の内蔵メモリへ転送できないという厄介なことになっています。

PCへ接続してデータを仕込むアイテムは、使い勝手という部分で転送ソフトが極めて重要な鍵を握るものです。が、ソニーはその開発が呆れるほどヘタクソで、この点ではアップルと大きな実力差を感じます。現在のウォークマンはドラッグ&ドロップでファイルを送れますから、ソニーが苦手とする転送ソフトを使わなくても良い仕様になっています。こうした部分もシェア拡大に寄与しているのかも知れません。

携帯音楽プレイヤーの国内販売シェア
ドラッグ&ドロップに対応したウォークマンSシリーズは
2009年10月10~28日にかけて順次発売されました。
それまで30%前後だったシェアが40%前後に上昇していますから、
使い勝手の悪い付属ソフトを使用しなくても済むようになった
ということもシェア拡大に寄与しているのではないか
と私は読んでいますが、如何でしょう?


ハナシを戻しましょうか。ソニーが本格的に改心してMP3完全対応に転じたのは2004年のことです。ソニーは5年という長きに渡って独り相撲をとり続けていたといっても過言ではないでしょう。その間、iPodが圧倒的なブランドバリューとシェアを獲得し、築き上げられたこの牙城を突き崩すのにソニーはタップリ苦しめられたのだと私は見ています。

iPodも発売当初はMacの周辺機器といいますか、そのガジェット的な位置付けだったように思います。Windowsには対応しておらず、Macユーザーしか視野に入っていなかったんですね。しかしながら、アップルは1年足らずでWindowsに対応したiPodを発売しており、つまらない拘りでソニーのように商機を逸することはありませんでした。

ま、アップルも一時は倒産寸前まで経営を悪化させており、その要因の一つには独自路線への拘りもあったでしょう。現在もiPhoneやiPadでFlashに対応せず、議論の的になっています。もっとも、このFlash非対応はアップルの将来的な戦略とも絡んでいるようですから、さほど戦略的とはいえなかったソニーのATRAC3偏重路線とは違うようにも見えますが。

現在も携帯音楽プレイヤーなどに用いられているヘッドホン端子「ステレオミニプラグ」は、初代ウォークマンで初めて採用されたソニーの独自規格です。これがデファクトスタンダードとなった一方、リモコンに接続するヘッドホン端子「マイクロプラグ」に他社は追従せず、結局ソニーもこれを諦めました。

デジカメなどに用いるメモリーカードでもソニーは独自規格の「メモリースティック」に拘り続け、デファクトスタンダードとなった「SDカード」になかなか迎合しませんでした。メモリースティックはSDカードより2年も先行していたゆえ、同事業部をそう簡単に改編したくなかったという事情もあったと思います。最近になってようやくデジカメでもSDカードに対応する機種を増やしてきましたが、やはり判断の遅れを感じずにはいられません。

ソニーは得てしてこうした独自規格に拘り過ぎ、判断の時期を誤ることがあります。とはいえ、「ソニーらしさ」というのは独自技術を追求するところにありますから、何でもかんでも周囲の流れに乗ってしまうとソニーの立つ瀬がなくなってしまう恐れもあります。ま、その辺はバランスの問題なのでしょうけど、昔からソニーは引き際の判断が悪いように感じます。

件のニュースで頓珍漢な解説を流したNHKは取材するならもう少し状況を弁えている人にすべきでした。私も年齢的には充分にオッサンですが、NHKの報道局は記者を若返らせないと今後ますます恥をかくことになると思います。

日本のメディアは世界の将来より大相撲の将来のほうが大切らしい

当blogで何度も批判してきましたように、日本のメディアは地球温暖化問題を巡るスキャンダラスな事件となったいわゆる「クライメートゲート事件」についてお得意のバイアスをかけ、極めて小さな扱いにとどめました。

その後、IPCCの評価報告書には科学的根拠を逸したいい加減な記述が幾つもあると指摘され、その信頼性が地に墜ちたといわれたり、パチャウリ議長の個人的な利益誘導疑惑などを含めて風当たりが強まったり、様々な批判にさらされていました。しかし、日本のメディアはごく一部を除いてそうした情勢についても軽くいなし、IPCCに向けられたこれらの批判を重大な問題とは見なしませんでした。

実際には、こうした批判に抗しきれなくなったIPCCは世界の学術団体からなるIAC(インターアカデミー・カウンシル)にIPCCの組織や評価プロセスに問題がないか検証を委託をしていました。一連の騒動が極めて小さく断片的にしか報じられなかった日本ではその流れもあまり知られていないと思いますので、ここでザッとおさらいしてみましょうか。

「クライメートゲート事件」と呼ばれたメールなどの流出事件が昨年11月、コペンハーゲンで開催されたCOP15で各国の意見集約がままならず、ポスト京都議定書の策定に失敗したのが同12月でした。ヒマラヤの氷河消失などIPCCの評価報告書に明らかな誤りや科学的根拠が不充分な記述が多数あったことを指摘されたのが今年の1~2月くらいでした。

こうした不祥事もあって欧米のメディアや世論からの批判がいよいよ強まり、単なる弁解では収拾が付かなくなっていったのもその頃です。潘国連事務総長とパチャウリIPCC議長がIACに検証を依頼したのが3月、その委員の人選に手間取ったこともあって実際に調査が始まったのが5月、結果が出たのが8月30日です。

日本の大手新聞もこの週末くらいまでにIACの検証結果を伝えたようですが、その扱いの多くは単発的で至って小さなものにとどまり、状況としてはクライメートゲート事件のときと大差ありません。結局は日本国民の殆どに知られないまま終わってしまいそうな勢いのなさです。唯一、読売新聞だけは今日(9月6日付)の社説『気候変動パネル 組織・運営の抜本改革を急げ』で取り上げていますが。

当blogで何度かご紹介してきましたように、読売新聞はこのところ改心したのか、他紙に比べて地球温暖化問題を巡るバイアスのかけ方が緩やかなようです。この社説でも「不信が広がっては温暖化対策は停滞しかねない」と人為説を支持するスタンスこそ相変わらずですが、IPCCの現状を批判したIACの報告とその改善勧告に触れながら「勧告を確実に実行していくことが肝要だ」と結んでIPCCの現状に懸念を示す論説を展開しています。この件について読売新聞はジャーナリズムとして最低限の仕事はできていると評すべきでしょう。

いずれにしても、IACは現在のIPCCに幾つもの注文を付けており、組織として早急に改善すべき点を示しました。日本のメディアはこうした一連の流れをマトモに伝えないというバイアスをかけましたが、これは明らかに公平性が求められるジャーナリズムにあるまじき状態です。

私の個人的な感想としましては、IACの勧告もまだ手緩いという印象が拭えません。また、この結果から懸念されるのは、IPCCの組織としての脆弱さが示されたことでこれを逆手に取られ、予算と権限の拡大にハナシをすり替えられてしまう可能性です。

地球温暖化問題という使いでのあるツールを手放したくない人は世界中にゴマンといますから、そうした人たちの思惑が強く働けばあり得ないことではないと思います。そのようなことを許さないためには私たちも常に厳しく監視していなければなりません。その際にメディアの果たす役割は決して小さくないでしょう。

ところが、全世界の人々に大きな影響を及ぼし、日本でも毎年1兆円を超える莫大な国家予算が投じられているその根拠に疑念が生じていても、それを示してきたIPCCという組織の置かれている状況にも、日本のメディアの殆どはあまり関心を示しません。

彼らはIPCCという極めて大きな影響力を持つ組織の不祥事よりも、賭博や薬物などで揺れた日本相撲協会の不祥事を桁違いに大きく扱ってきました。当事者である親方などが記者会見を開いただけでもテレビのニュース番組はこれをトップで扱い、異様な入れ込みようでした。大手新聞各紙も相撲界に何か不祥事かあると一斉に社説でその批判を展開しましたが、IPCCの不祥事については実に等閑です。

この出鱈目なプライオリティの付けかたには小さからぬ意図が働いていると見なさざるを得ないでしょう。もし、ここに何の意図も働いていないとしたら、日本のメディアにとっては地球温暖化問題を巡る世界の将来よりも大相撲界の将来のほうがずっと大切だとということになってしまいます。

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まとめ

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