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ハブボルト折損は不可避なのか? (その1)

昨日のエントリで取り上げた例の東名高速の車輪脱落事故について、5大紙はいまのところ社説で取り上げていません。が、中日新聞は今日の社説で取り上げていましたので、気になった点を指摘しておこうかと思います。

【社説】 脱輪タイヤ事故 放置するな金属疲労

 走行中に脱輪したタイヤの恐怖がまた現実になった。タイヤを締めるボルトが破断しており、さびも出ていて金属疲労が一因とみられる。予測可能ともいえる事故を何度も繰り返してはならない。

(中略)

 タイヤのボルトは締めすぎや緩みすぎでも破断するが、近年は金属疲労によるボルトの劣化が原因とされるケースが増えている。

 金属部品はほっておいても一定年月がたてば疲労して抵抗力が弱くなる。ましてトラックのタイヤに使われるボルトには、過大な重力がかかる。時には過積載もあろう。こうした状態で高速道路や悪路を走れば、金属疲労の進む速度が通常より速くなるのは確実だ。

(中略)

 運輸当局やメーカーも業界に対し、定期点検を厳守させ金属疲労への警戒を強めることが急務だ。

 タイヤが人の生命を奪う悲惨な事故を二度と起こさない対応を強く求めたい。

(C)中日新聞 2008年4月15日


金属疲労について素人の思い込みで書いてしまったのがマズかったですね。読んでいて思わず失笑してしまいました。ここは専門家の査読を受けておくべきでした。特にダメなのが「金属部品はほっておいても一定年月がたてば疲労して抵抗力が弱くなる。」という部分です。

この社説に限らず、世間一般の金属疲労に対するイメージもこんな感じなのだと思います。恐らく、1985年の日航機墜落事故の原因となった圧力隔壁(アルミ合金製)の疲労破壊で金属疲労のイメージが刷り込まれてしまったのでしょう。その後も同様の原因と思われる事故は色々報じられていますが、いずれも金属疲労が生じる条件については無知のまま、単純な思い込みで消化してきたといったところでしょう。

そもそも、金属疲労は「一定年月」で生じるものではありません。どれだけの「荷重」がどれだけ「繰り返されたか」が決め手となります。つまり、どんな金属でも繰り返し荷重がかからなければ疲労は起こりません。ま、ハブボルトには繰り返し荷重がかかりますけどね。

アルミのように「疲労限界点」が存在しない金属の場合、どんなに小さな荷重でも繰り返されるうちに疲労が進行します。が、鉄やチタンなどのように「疲労限界点」がある金属の場合、この「疲労限界点」に満たない荷重であれば何度繰り返されても疲労は進行しません。トラックのハブボルトは言うまでもなく鉄で出来ています。

要するに、設計時の想定を上回る荷重が繰り返されない限り、理論的にハブボルトの折損は起こり得ないということです。裏を返せば、設計時の想定を上回った荷重が繰り返されれば、ハブボルトは折損してしまうこともあり得ます。ですから、今般のようなハブボルトの折損による車輪脱落事故が生じる条件は大きく分けて以下の二つが考えられます。

(1) 設計時の見積りが甘く、使用実態に見合っていなかった場合。または、製造工程にエラーがあり、設計基準を満たしていなかった場合。

(2) 指定トルクを遵守せずにホイールナットを締め付けたり、過積載で運行するなど、使用者の取り扱いに問題があった場合。または、極端な悪路での使用など、設計時の想定を超過する条件で酷使された場合。

(1)のケースは三菱ふそうのハブが破損した例の一件を思い浮かべられる方もいらっしゃるかと思います。が、個人的にはハブの強度不足と断定されてしまったのは事態の収拾を優先させるための拙速な判断だったかも知れないと思っています。というのも、ボルトの強度とハブの強度のバランス次第では、上記(2)の条件でもボルトではなくハブが破損してしまう可能性も充分にあり得るからです。(このことについては、いずれエントリを改めて述べたいと思います。)

tomei-expwy_accident2.jpg

現実的には、殆どのケースが(2)になるかと思います。実は、こうした車輪脱落事故は何年も前から問題になっており、2004年には国土交通省が自動車メーカーや自動車関係団体に対して緊急点検の実施を指示する一方、「大型車のホイール・ボルト折損による車輪脱落事故に係る調査検討会」を設置して対策が検討されていました。

中日新聞の社説を書いた論説委員はこうした経緯を知らず、小手先で「警戒を強めることが急務だ」と書いています。が、その取り組みは既に4年も前からスタートしていました。にも拘わらず、死亡事故が繰り返されてしまった訳です。「警戒を強めること」をしてきたのに、功を奏することがなかったのは何故か? 本当に問題視すべき点はここです。ここまで論が及ばなかった中日新聞の社説は、やはり浅薄な内容であったと評するしかないでしょう。

(つづく)

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