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ハイテク水着は不公平? (その2)

競技者が用いる機材や身につけるもので成績が向上するのであれば、その改良が進められるのは自然な流れです。多くの場合は「競技者が少しでも有利になるように」といったレベルであったり、場合によっては単なる「プラセボ効果」に過ぎないこともあるでしょう。

しかし、競技によっては機材の性能差が成績に大きな影響を与えます。故に、そうした分野の競技では機材の性能を制限し、より公平な条件に揃えられるように事細かく競技規則が整えられているわけですね。

F1マシンに対して「速さのみを追求した理想のカタチ」という人もいますが、それは完全な誤解です。F1マシンのあのカタチにもっとも大きな影響を及ぼしているのは「理想」ではなく、「レギュレーション」です。車体の寸法や構造、使用できる素材に至るまで非常に細かい制限が山のようにあるF1マシンは、「レギュレーションが許す中で速さを追求したカタチ」に他なりません。各コンストラクターは定められたその中で如何に速いマシンを作るかを競っているわけです。

こうしたマシンの競い合いをもっとも重視しているのは、恐らくイタリアのティフォシ(熱狂的なファン)たちでしょう。彼らが望んでいるのはイタリア人ドライバーのヤルノ・トゥルーリがトヨタのマシンで活躍することではありません。フィンランド人ドライバーのキミ・ライコネンがフェラーリのマシンで活躍することこそ、彼らが望んでいることなのです。

「氷上のF1」とも呼ばれるボブスレーも、やはり似たような厳しいレギュレーションが設けられています。フレームの素材はスチールでなければならず、細部の寸法についても非常に細かい制限が設けられています。また、ランナー(氷を捉える刃)も1シーズン1パイロット当たり3組までしか使用が認められておらず、分光計などを用いてそれを厳しく検査するといった徹底ぶりです。

ハイテク水着の「レーザーレーサー」が不公平だ何だと大騒ぎされますが、もし競泳界に問題があるとしたら、こうした制限が全くといってよいほど確立されていないところかも知れません。

ただですね、今回の騒動も私はバカバカしいと思っているんですね。というのも、8年前にも非常によく似たことがあったのにメディアはすっかり忘れ去って、今回のハイテク水着で再び大騒ぎしているからです。この様を端から見ているとやはり失笑を禁じ得ませんね。

あれは2000年のシドニーオリンピックのときでした。スピード社とミズノが共同開発したハイテク水着「ファーストスキン」がやはり競泳界を席巻していたんですね。男子の金メダルのうち54%、女子の金メダルのうち61%、全メダリストの約70%がこれを着用していました。


ミズノ・スピードのファーストスキン
素材開発を担ったミズノはサメの皮膚をヒントにした
リブレット(溝)加工、うろこ状の撥水プリント加工を施し、
スピード社は全般的な理論設計と流体力学の検討などから
動的要素を考慮したカッティングを開発しました。
シドニーオリンピックでこの水着を着用した選手は
メダルを量産し、12の世界記録を生みました。


このファーストスキンを「サメ肌水着」と囃し立て、やはり大学の水泳部の選手に着せてタイムを計ってどれだけ短縮したみたいなデータを示すテレビの報道番組もありました。このときは日本水泳連盟とミズノが契約を交わしており、日本代表選手にこの水着が供給されていたことから、「日本のハイテク素材が選手を後押しし、メダルの期待も膨らむ」みたいな感じで極めて好意的に報じられていました。今般の騒動のように「不公平ではないか?」といった論調は一切なかったと私は記憶しています。

いま「スポーツは純粋に選手の能力が競われるべきで、それ以外の条件に差があるのは不公平ではないか?」的な論調が目立つのは、つまり日本水泳連盟がミズノ、デサント、アシックスの3社と供給契約を交わしており、現状では日本代表選手がレーザーレーサーを使えないという一点のみがその理由でしょう。

この契約が見直されず、レーザーレーサーに負けない水着の開発がオリンピックに間に合わない場合、日本にとって不利な状況になり得るという危機感が日本人に「不公平ではないか?」と思わせているわけです。逆に、ファーストスキンのときように日本代表選手にレーザーレーサーが供給される状況であれば、「メダルの期待も膨らむ」といった好意的な報道となって「不公平ではないか?」的な論調にはならなかったと思います。

たぶん、また何年かして好記録を連発するハイテク水着が出てきたとしても、そのときには「魔法の水着」と大騒ぎされたこのレーザーレーサーも「サメ肌水着」と騒がれたファーストスキン同様にすっかり忘れ去られていることでしょう。そして、そのハイテク水着が日本代表選手に供給されるか否かで日本のメディアが好意的に報じるか、ひがみっぽく報じるかも決まるのだと思います。

(おしまい)

テーマ:スポーツ - ジャンル:ニュース

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