
Volkswagen 38 Prototype
いまさら説明の必要もないでしょうが、クルマ好きで知られたヒトラーの国民車構想として企画され、ヒトラーお気に入りのエンジニアだったフェルディナンド・ポルシェ(それゆえ戦後にヒトラーの協力者と見なされ、戦犯としてフランス政府に収監されましたが)によって開発された銘車中の銘車ですね。
ちなみに、この国民車構想では国民がクーポンを購入して積立て、満額に達した者に車両を引き渡すシステムでしたが、この仕組みはホーネッカー体制下の旧東ドイツの国民車トラバントにそのまま受け継がれました。
ナチスの親衛隊によって走行テストが重ねられたフォルクスワーゲンですが、しかし第二次大戦の勃発によって計画は事実上破棄され、シュビムワーゲンやキューベルワーゲンといった軍用車両に応用されました。私たちがよく知るビートルの量産および市販はドイツの戦後復興に尽力したイギリス軍将校アイヴァン・ハーストがその価値を見いだしたからに他なりません。
フェルディナンドの息子フェリー・ポルシェがこのビートルをベースに開発したポルシェ356が今日の911へ受け継がれるパッケージングとなったのは皆さんもよくご存じのことと思います。
では、フェラーリに通じるものは何から見いだせば良いでしょう?
昨日のエントリで写真だけご紹介したアルファロメオなどもゆかりはあるでしょう。エンツォはあの当時、同社のワークスドライバーでしたし。でも、フェラーリが作ったクルマに通じるとしたら、この巨大なアメ車も外せないかも知れません。

Packard Twelve
第32代米大統領フランクリン・ルーズベルトが乗っていたパッカードの大統領公用車です。物凄い体躯で3457kg(防弾装備を含む)という巨漢ゆえ迫力満点ですが、エンジンは7752ccのV型12気筒でたったの175psでした。
パワーウエイトレシオが20kg/psにもならんとする鈍くさそうなこのクルマの何がフェラーリに通じるのかといいますと、それはエンジンなんですね。GAZOO.comの名車館の解説にはこうあります。
実はこのV12ユニットには、イタリアのエンツォ・フェラーリとフェラーリ最初のエンジンを設計したジョアッキーノ・コロンボにも感銘を与え、彼らが自社のエンジンをV12とする決断に決定的な影響を与えたという有名なエピソードもあるのだ。
確かに、青年期のエンツォがパッカードに惹かれていたというのは有名なハナシですから、さもありなんといったところでしょう。ま、かなりこじつけっぽくなってしまいましたが、こういう歴史を踏まえていけば、ひと味違って見えてくるような気もします。
とはいいつつも、やはりスーパーカーブームの洗礼を受けた私たちの世代にとって、1960~70年代くらいの外国車が展示されていない空間は寂しいものです。で、色々調べてみましたら、Wikipediaのトヨタ博物館の項にはこう書かれていました。
第二次世界大戦後に製造された外国車は、スペースの関係で原則として常設展示されていないが、特別展の場合は展示されたり、JETRO輸入車ショールームなどへ貸し出されたりしている。
ま、いまはJETROのショールームも閉鎖されていますから、トヨタ博物館での特別展がメインで、たまに何かのイベントに貸し出されるといった感じなのでしょう。今回は「世界の名車展―あなたの大好きなクルマ、ここに集まる。」という特別展(2008年4月8日から9月28日まで)で「羨望の的となったスポーツカー」としてメルセデスベンツ300SLとデロリアンDMC-12(ガルウィングドアつながりということでしょうか?)が展示されていました。

Mercedes-Benz 300SL

De Lorean DMC-12
デロリアンというと映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のイメージが非常に強烈でしたから、やはりこういうライティングでそれっぽい演出になってしまうのですね。ま、写真でも奥のほうに見えるように同映画のポスター、シリーズ1・2・3の3枚が並べて掲げられていたり、写真には写っていませんが、ドクによってタイムマシンに改造されたデロリアンのミニカーも展示されていました。
余談になりますが、実は私もサンスターの1/18スケール『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』仕様のデロリアンのミニカーを持っています。ミスターフュージョンの家庭用原子炉を背負い、タイヤが水平になって飛行モードチェンジするアレです(ミニカーにもちゃんとタイヤが水平になるギミックが仕込まれてます)。ちなみに、ミスターフュージョンの家庭用原子炉はドイツのクラプス社の電動コーヒーミル、タイプ223Aがベースだと見られています。

トヨタ博物館の展示車両は原則として触れてはならないことになっています。が、デロリアンについては無塗装ヘアライン処理のステンレスボディという特徴的なそれを実感させるためか、こんなものが展示されていました。

左前フェンダー部で板金作業中とのことです。「さわってみよう」とありましたので、私も遺憾なく触ってきました。
アーチ上部の白っぽく見えるところは槌痕です。ステンレスの素地のままヘアライン処理で仕上げるとなれば、これをキレイに消さなければなりません。普通に塗装するならパテ盛りで手間も省けますが、デロリアンの場合はそういうわけにいきません。つくづく誤魔化しの利かないボディだと思います。それだけに完璧なレストアを目指すとお金も手間もかかりそうです。塗装では絶対に出せない独特の輝きを放つボディがデロリアン最大の魅力の一つですが、それを維持するのも容易ではなさそうですね。
(つづく)