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日本にもあった (その2)

どう考えても怪しいジェネパックスの「水で走るクルマ」ですが、その発電システムの原理についてほんのさわりだけ日経BPnetで報じられていました。

ジェネパックスが水素生成のメカニズムを明らかに

(前略)

 金属または金属化合物には常温で水と酸化反応する金属を使っているとする。水と反応する金属はLiとNa、Mg、K、Caなどがある。今回発表したシステムの特徴はこの金属または金属化合物の反応性を制御して長時間に使うことを可能にした点にあるという。

 今回披露したシステムはMEA(膜/電極接合体)の燃料極内部にこうした金属や金属化合物をゼオライトなどの多孔質体に担持しているとする。水素生成反応による生成物は水に溶解し、システム中の水とともに排出される。反応が終了すれば、水素の発生も発電もストップする。

(C)日経BPnet 2008年6月16日


要するに、水を金属と化学反応させて水素を取り出すということのようですが、前回ご紹介した説明図にはインプットが「水」と「空気中の酸素」だけしか書かれていませんでしたから、全くハナシが違ってきましたね。しかも、こんな技術なら以前からありましたし。例えば、2006年に日立マクセルが水とアルミを水素発生源とした燃料電池を開発しています。

水とアルミニウムを水素発生源とした燃料電池を開発
~10ワット級の燃料電池をモバイル電源で実証~


 日立マクセル株式会社(執行役社長:角田 義人)は、水とアルミニウムとの反応による水素発生システムを確立し、このシステムを水素発生源とした燃料電池を開発いたしました。さらにこの燃料電池を使用した10ワット(W)級モバイル電源の開発に成功し、ノートPCを動作させることができました。

(中略)

 今回開発した燃料電池は、10~100W級の電源として用途の検討を進めています。今後、実用化に向けてさらなる開発を進めてまいります。

pefc.jpg

(C)日立マクセル 2006年4月24日


こうした水素発生システムは金属を消費します。日立マクセルのアルミと水を水素発生源とした固体高分子形燃料電池(PEFC)も1gのアルミから1.3リットルの水素を発生させるもので、アルミを消費しています。

しかし、アルミを得るにはアルミナ(酸化アルミニウム)から酸素を取り除く際に電気分解を行うため、膨大な電気エネルギーを必要とします。アルミが「電気の缶詰」と呼ばれるのはそれゆえなんですね。なので、アルミと水を反応させて最終的に電気エネルギーを取り出すという発電方法が有効な技術といえるのか、かなり微妙になってきます。

日立マクセルはアルミ廃材をリサイクルするなどの構想も練っているようですが、アルミをリサイクルするならそのまま金属素材として再利用したほうがエネルギー効率としては良いのではないか?という懸念もあります。実際、アルミは現状でも非常にリサイクル率の高い金属ですし。ま、この辺はきちんとLCA的な手法でエネルギー収支を検討しなければ最終的な評価を下すわけにはいかないでしょうけど。

いずれにしても、エネルギーを取り出すことができる物質というのは、その状態へ至る過程に(人為的か自然由来かは別として)何らかのかたちでエネルギーが投入されています。その点を無視して「環境負荷のない未来のエネルギー源」などと甘い言葉で宣伝されるものは、まず疑ってかかるべきです。

ということで、ジェネパックスの「ウォーターエネルギーシステム」が日経BPnetで報じられているとおりの原理ならば、水と化学反応させる金属の調達コストや全体を通じたエネルギー効率が本当に優れているのか否かという部分こそが重要になるわけで、「水を用いる」という部分だけを取り出して語るのは全くのナンセンスです。

しかし、ジェネパックスの説明資料(←リンク先はPDFです)を見ても「給水するだけで電気エネルギーが取り出せる」としか読めないような書きぶりになっています。水と化学反応させる金属を消費するとか、そのコストはどうだとか、その金属を得るために投入されるエネルギーと発電によって回収できるエネルギーの収支はどうなっているとか、そうした最も肝心な情報が完全に抜け落ちているんですね。(ま、コストやエネルギー収支については日立マクセルの広報にも書かれていませんが。)

また、前回のエントリに貼り付けた質疑応答のVTRの中で、「地球上から水が無くならない限り永久に電気を生み出す可能性のある技術ということですか?」という質問に対して代表者の平澤潔は「そういうことだと思います、はい。」と答えていますが、これは日経BPnetの記事と大いに矛盾します。彼がVTRで答えた通りなら永久機関に相当しますからペテンになるでしょうし、日経BPnetの記事が正しいならこのときの彼の発言は大ウソになります。どちらにしても、こんな出鱈目を真に受けるなど愚かなことです。

それにしても、『ワールドビジネスサテライト』によるレポートは実に間抜けでした。原理の確認やエネルギー収支がどうなっているのかという、重要な問題は全てスルーし、キャスターたちはピンボケなコメントに終始しています。何とも情けない限りですね。ま、元々大したレベルの報道番組ではありませんが(メインキャスターの小谷真生子などいつも頓珍漢なことを言ってますし)。

以前、「猫がムササビになる未来像を信じる人たち」と題したエントリでも書きましたが、子供の「理科離れ」などよりも、メディアのこの救いようのない「理科オンチ」のほうが遙かに危機的な状況にあると思います。

(おしまい)

テーマ:自動車全般 - ジャンル:車・バイク

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