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酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

好都合な予見 (その1)

今日、東京駅の改札口を出てすぐのところに普段はいない制服姿の警官が踏み台に乗って仁王立ちしていました。洞爺湖サミット開催まで1週間と迫りましたから、警備が強化されているのでしょう。

the_windsor-hotel.jpg

一方、新聞各紙もまた社説でサミット絡みの論評を展開していますね。

サミットと温暖化―現役世代に見える目標を

 難題山積で地球が悲鳴を上げている。そんななかでのG8サミット、主要国首脳会議である。

(中略)

 「50年までに半減」は、世界の科学者の知恵を集めた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の見立てをもとにしている。

 その報告書には、温暖化の悪影響が全地球に及ぶのを避けるシナリオが描かれている。重要なのは、50年に必要な削減幅だけでなく、世界の排出増をいつまでに止めるべきかをセットではじき出していることである。

 それによると、50年に半減するなら20年ぐらいまでに排出量を減少に転じさせなければならない。これは密接不可分のひとつながりの目標である。

 「50年」が子や孫の時代であるのに対し、「20年」は現役世代がまだ社会の中心にいる近未来である。だからこそ、いま中期目標の旗を振ることが求められているのだ。

(後略)

(C)朝日新聞 2008年6月30日


今般のサミットで主要議題になることははじめから解っていた「2050年までにCO2排出量を半減させよ」というストーリーが出鱈目であることについては以前にも取り上げました。が、少し書き漏らしたこともありましたので、ここで書き加えておきたいと思います。

温暖化人為説を唱える人達は、人類が「膨大な量」のCO2を排出しているため、大気中のCO2濃度が上昇しているのだと言い張ります。が、当然のことながら自然界からも大変な量のCO2が放出されています。人為説論者達は決して自ら口にすることがないので、大衆メディアでも伝えられることはまずありませんが、地球の大気へ放出されるCO2のうち、人為的なものの割合はどれくらいになるか皆さんご存じでしょうか?

人類が1年間に排出しているCO2は炭素換算で約63億tとされていますが、これは自然界から放出されるCO2も含めた総トータルに対してわずか3%程度に過ぎません。63億tという数字だけを扱うことによって「膨大な量」というイメージを刷り込んでいるに過ぎず、人類の営みなど自然界のそれに比べたら微々たるものでしかないというのが実態です。

IPCCや日本の国立環境研究所などはこの3%程度でしかないCO2排出量を半分以下に減らして1.5%程度にすれば気候変動は回避され、このまま放置すれば取り返しの付かない気候変動が進行すると豪語しているわけです。

ご存じのように、自然界は機械仕掛けのようにキッチリと巡っているわけではありません。ちょっとした揺らぎで数%くらいの変動は日常的に繰り返されています。が、彼らは僅か1.5%程度に過ぎない極微細な変動であっても、人為的なものだけは許容されず、暴走状態に陥る可能性を示唆しているわけです。私には荒唐無稽な作り話としか思えません。


私の個人的な印象から言わせて頂きますと、この出鱈目なストーリーは「CO2の排出枠」という名を借りた「化石燃料の消費枠」、すなわち、工業生産能力に決定的な影響を及ぼす「エネルギー分配の枠組み」を固定するための方便というような気がします。

ある年を基準に何%削減するといった方式でCO2の排出枠(=化石燃料の消費枠)を決めようとする現在のやり方では、必然的に基準となる年にたくさんCO2を排出している(=化石燃料を消費している)国、すなわち先進国にとって有利な状況となります。

人口減少(=国力低下)の傾向に頭を抱えている西欧先進国や日本などが先導役となって、新興工業国や発展途上国に追いつき追い越されることのないよう、自分たちに有利なエネルギー分配の枠組みを策定するパワーゲームを展開しているのではないか?地球温暖化問題はそのためのツールではないか?と思われるわけです。

CO2の排出削減が目的なのではなく、ジリ貧を懸念する先進国が保身のために不平等な世の中の仕組みを作ることが本当の目的なのではないかと考えれば、科学的根拠が矛盾だらけの政策指針をゴリ押ししようとするのも不自然には感じられなくなります。

IPCCが繰り出してくるデータも単なる数字合わせに過ぎず、政治的に都合の良いそれを御用科学者達に纏めさせた結果に過ぎないのではないかと考えれば、出鱈目であっても何の不思議もありません。古今東西を問わず、政治家や官僚たちがこうした茶番を繰り返してきたのは歴史の事実ですし。

もちろん、これは私の勝手な憶測に過ぎませんけどね。

(つづく)

テーマ:環境問題 - ジャンル:ニュース

コメント

Re好都合な予見 (その1)

はじめまして。
お説に賛同いたします。

フロンの時と同じ手口のようですが、
今回のCO2の方が今後の世界に与える影響は格段に大きいですね。
多分に、エネルギー、資源、食料、そのどれも無い日本はいい様に利用された挙句、ふるい落とされ気がついた時には欧米各国から見放されているのではと危惧しています。
各国政府、巨大資本家など真の黒幕が誰かは分かりかねますが、ほんと困ったモンです。なんとかなりませんかね。

  • 2008/07/01(火) 17:49:06 |
  • URL |
  • ちーすけ #MCWqbLaQ
  • [ 編集]

ちーすけさん>

初めまして。
コメント頂きまして有難うございます。

仰るとおりで、地球温暖化問題もフロンのときと同じ轍を踏んでいると思います。
フロンより影響の及ぶ範囲が格段に違うというのも正にその通りですね。

それゆえ、特定の業界が関与していたと想像されるフロンの問題と違って、
温暖化問題を利用(悪用)しようとしている人間も極めて広範にわたるのではないか
と思います。

ここへ至るきっかけを作った固有の人物なり組織なりはあったかも知れません。
当初は原子力業界陰謀説など色々うわさも絶えませんでしたが、
ここまでハナシが広がってしまうと、すべてに通じる黒幕というべき向心力は
もはや存在しないかも知れません。

この問題をツールとして利用したがっている人間たちが各々の利害を内に秘め、
暗黙の了解の上で覇を競っているような、そんな状態なのかも知れませんね。

  • 2008/07/01(火) 23:35:36 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

>暗黙の了解の上で覇を競っている
そう言われるといろいろと合点がいきます。
石墨さんの冷静で深い考察に敬服です。
過去のページもこれから拝見させていただきます。
どうぞよろしく。

  • 2008/07/02(水) 18:38:15 |
  • URL |
  • ちーすけ #MCWqbLaQ
  • [ 編集]

ちーすけさん>

趣味についてもごちゃ混ぜに取り留めもなく
思いつくままに書いている拙いblogですが、
今後とも宜しくお願いします。

  • 2008/07/03(木) 00:05:52 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

> 人類が1年間に排出しているCO2は炭素換算で約63億tとされていますが、これは自然界から放出されるCO2も含めた総トータルに対してわずか3%程度に過ぎません

3%の出典はどこですか
ほんとに3%だったら大発見ですけど、総トータルはストックということですか
フローとストックを比べても意味ないですね

  • 2008/07/03(木) 02:51:11 |
  • URL |
  • まさる #-
  • [ 編集]

まさるさん>

当blogはほぼ毎日更新というかたちでやらせて頂いています。
(今日は帰宅が遅くなったので無理でしたが。)
なので、万全を期しているつもりですが、行き届かない部分も多々あるかと思います。
不備についてのご指摘を賜りまして、有り難うございました。

さて、ご指摘頂きました「3%」についてですが
IPCCのレポートを元に計算しますと、必然的にこうなります。

分母は自然界の「炭素循環」になりますが、彼らが採用している推計では
大気中のCO2は炭素換算で約7300億t、毎年このうちの約1200億tは陸と交換され、
約900億tは海と交換されるとしています。

つまり、自然界では毎年約2100億tのCO2が大気を出入りしていることになります。

一方、人為的に排出されるCO2は毎年約63億tですから、
自然界から毎年放出され、自然界が毎年吸収している約2100億tの
3%程度ということになります。

もちろん、IPCCが採用しているこの炭素循環モデルも科学的に実証されたものではなく、
単なる「推計」に過ぎませんから、これ自体が誤っている可能性もあり得るでしょう。

例えば、海洋における炭素リザーバーとしてはマリンスノーなども注目されており、
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の深海研究部はこんなことを述べています。

《マリンスノーは必ずしも高い密度で存在するわけではないのですが、
海洋にまんべんなくあるので、全体としてその量は膨大です。
また、マリンスノーの主成分が炭素なので、膨大なマリンスノーは
やはり膨大な炭素を保有しているということができます。
二酸化炭素の増加などによる地球の温暖化を考える上で、
マリンスノーは重要な役割を担っていると考えられます。》

しかし、こうした微小粒子は測定が非常に困難であることなどから、
具体的にどれだけの炭素を蓄積し、どれだけを循環させているか
といった研究はまだまだ極めて未熟な状態だといえます。

国際研究協力として海洋炭素循環モデル相互比較研究(OCMIP)が行われ、
北海道大学の研究チームを含む10チームによって集計された見積は
IPCCの評価報告書に採用されていますが、その当事者である北大の山中康裕氏は
彼の『海洋の雪(マリンスノー)と将来の気候』という講座の中で
以下のように述べています。

《残念ながら、これらのモデルではまだ海洋生態系を十分に正しく
表現しているものではありませんので、現在、より適切な生態系を表現する
モデルを開発し、新たな見積もりを行おうとしているところです。》

こうしたIPCCの評価報告書を構成するデータの出典そのものが
不確定な要素を内包している以上、間違いがないと断定することは
できないと思います。

また、こうした不確定な要素を内包している仮説が既成事実化されるのも
決して好ましいことではないと思います。

  • 2008/07/03(木) 23:52:30 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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