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ツバルの虚と実 (その1)

南太平洋の島国、ツバルといえば「地球温暖化による海面上昇で水没の危機に瀕している国」というイメージが完全にすり込まれてしまいました。しかし、個人的な結論を先に述べさせて頂きますと、「地球温暖化の被害者」「先進国の所業のしわ寄せを被る哀れな小国」といったイメージは、メディアなどによるセンセーショナリズムに煽られた結果であり、虚構に近いものだと思っています。

全世界の海面上昇は1961年から2003年まで平均1.8±0.5mm/年と見られています。一方、オーストラリア政府(国際開発局)の出資により、ツバルで信頼できる潮位の観測が始まったのは1993年からで、2005年までの12年間の海面上昇は平均4.3mm/年と、比較的大きな値になっています。が、これは短期の観測結果ゆえ、エルニーニョや短期的な潮汐変動などの影響を除いた値ではありません。長期変動の傾向がきちんと把握されていないのが実情というわけです。

いずれにしても、10年単位で数cm程度でしかない海面上昇だけで深刻な洪水を説明するのは無理があります。というのも、南太平洋応用地球科学委員会の報告書によりますと、ツバルの高潮時の海水面は平均海水面から1.2mも高くなるそうですから。10年でたかだか数cmの海面上昇が洪水の決定的な主因であると考えるのは非現実的です。

そもそも、ツバルでこうした洪水が発生するようになったのは最近のことではありません。イギリス王立協会が保有している100年前のツバルの地質図には首都フナフティのあるフォンガファレ島はラグーン(環礁に囲まれた浅い環湖)側の高地に100人程度の集落があるだけでした。中央低地は沼地などからなり、そこでは海水が湧き上がる現象が見られたという記述も残されているそうです。

現在、洪水に見舞われている地域もまさにこうした低地になります。つまり、解っているだけでも100年前から繰り返されてきた現象で、その頻度についてはともかく、近年の地球温暖化による海面上昇によって生じるようになったと考えるのは明らかに誤りです。

日本の国立環境研究所(以下、環境研)の江守正多氏(地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室室長)はNHKをはじめとしてテレビ番組にもよく出演しており、「地球温暖化人為説」を盛んにプロパガンダしています。彼らの公式見解は「温室効果ガスの増加が最近の温暖化の主要な原因であることはほぼ間違いない」というもので、この仮説を既成事実化したくてしたくてどうしようもない機関になります。

その環境研にあっても、ツバルの洪水を地球温暖化による海面上昇だけのせいにはしていません。

ツバルにおける海水の湧き出しによる洪水の深刻化は、潮位だけでなく、島の地形、土地利用、地下水、降水、波力など複数の要因が関わって生ずる現象であると考えられますが、その全体のメカニズムは十分に解明されていません。しかしながら、原因と疑わしきものをいくつか挙げることが出来ます。

まず、上述の近年の短期的な平均潮位の上昇傾向は、その原因の候補の一つです。また、月・太陽と地球の位置関係によって起きる潮の干満と潮位の季節変動との組み合わせにより、毎年春先に記録される年間最高潮位は約4年半の周期で上昇・下降することが分かっており、年間最高潮位は高い年と低い年で10cm以上の差があります。この年間最高潮位の周期的変化は平均潮位の変化傾向には直接影響しませんが、大きな洪水が生ずるのは、その年間最高潮位が発生する時ですので、これもまた島の住民が証言する洪水被害の深刻化に関わりがあるかも知れません。

さらに、20世紀に続いた人口増加にともない、1970年代以降に、沼沢地を埋め立てて出来た低地にまで居住地が拡大されてきたことが分かってきました。それらの地域の中には、春先の高潮時に海水面以下となるところもあり、海面上昇に対して脆弱な地域への居住者が増えたことになります。そのような社会的条件の変化も、高潮時の洪水被害増加に関わりがあると考えられています。


以上が環境研の見解(一部抜粋)になりますが、やはり大衆メディアが伝える短絡的な結論ではなく、それなりに慎重な評価を行っているようです。

ただ、環境研は現地での詳細な調査活動など行っていないと思います。潮位の観測データなどは検討しているようですが、現地では他にも深刻な環境問題が山積しています。そのうちいくつかは洪水に影響する可能性が否定できないものです(詳しくは次回に述べます)が、それらについては殆ど触れていないのが何よりもの証拠です。

ところで、先々週の土曜日、NTVで『北京開幕直前 さんま&櫻井翔 栄光への道SP』という番組を放送していました。この中で元女子レスリング選手の山本聖子氏をレポーターとして北京オリンピックのツバル代表、陸上女子短距離選手を取材していました。が、やはり一般にイメージされがちな青い海と白い砂浜、牧歌的な生活を送っている現地民の映像ばかりが流され、ツバルが直面している現実からは完全に目を背けていました。その現実とは・・・

ツバルは海に沈む前にゴミに沈む国

ということです。ツバルは首都フナフティの近郊を中心として島のあちこちにおびただしい量のゴミが投棄されています。その理由は政府がゴミの焼却施設を作ったり、計画的な最終処分場を確保するなど、常識的なゴミ処理の手立てを行おうとしないからです。そのため、民家にゴミの山が迫っている地域がいくつもあります。

ツバルのゴミ
フォンガファレ島のゴミ投棄現場
『Newsweek(日本版)』2007年7月11日号に掲載された
首都フナフティ近郊にあるゴミ投棄の現場写真です。
右手の建物には衣類などの洗濯物が干してありますから、
実際に人が住んでいる民家であるのは間違いないでしょう。


上述のNTVの番組もそうですが、日本のメディアもツバルの現地取材を何度となく行っています。しかし、このような写真や映像は決して流されることがありません。それは要するに、彼らが「事前に準備したストーリーに合わないから」というのがその理由なのでしょう。

(つづく)

テーマ:環境問題 - ジャンル:ニュース

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