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東京都の「ディーゼル車NO作戦」とは何だったのか? (その2)

現在主流となっている酸化触媒とフィルターを組み合わせたDPF(粒子状物質減少装置)の元祖であるジョンソン・マッセイの「CRT」はディーゼル燃料の品質に縛りがありました。当時の日本では殆ど流通していなかった含有硫黄分が5ppm以下の低硫黄軽油を要求するものだったんですね。

ヨーロッパに供給されている石油は北海油田産も多く、その原油は硫黄分が少ないため、硫黄分を取り除く「脱硫」は技術的にもコスト的にもさほど難しくないそうです。が、日本が輸入している原油の9割近くはアラブ産で硫黄分が非常に多いといいます。そのため、北海油田産より脱硫は容易ではないと言われ、当時は低硫黄軽油の生産も殆ど試験段階でしかありませんでした。

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ジョンソン・マッセイのCRT

ジョンソン・マッセイのCRTに低硫黄ではない通常の軽油を使用すると、排出ガスが酸化触媒を通過する際に硫黄分が酸化して硫酸ミストとなり、それがフィルターの目詰まりを引き起こす原因となってしまいました。また、その硫酸ミストは粒子状物の排出レベルを測定する際に使われる濾紙に付着してしまうことから粒子状物質と見なされ、逆に数値を悪化させるなどの問題もありました。あの段階においてこの装置の普及は見込めない状況だったわけです。

現に、私もかなり早い段階でジョンソン・マッセイの日本法人へ日本車へのフィッティングが可能か否か問い合わせていました。その回答は、「適合試験の結果や低硫黄軽油の供給体制に対する懸念から市販の予定はない」といったものでした。それからしばらくして同社は「どの車種に適合できるのかが非常にあいまいなために一般にはこのままの形では販売しない事にいたしました」と、この段階での市場展開を見合わせる表明をしました。

似たような装置はアメリカのエンゲル・ハード(2006年にドイツのBASFに買収されました)も手掛けていました。こちらは低硫黄軽油を要求しないもので、台湾ではスタンダードとなっていました。最大の理由は政府から百数十%の助成金が出たからです。

こうした装置を装着するには車両を工場に入れるため、その間の運行はできなくなります。台湾政府は助成金で減収となる分を補償したということでしょう。そうした理由から、エンゲル・ハードの「DPX」は台湾であっという間に普及しました。が、当時の日本では走行条件などに応じた細かいチューニングなど同社の供給体制、販路などが整っていない状況だったと記憶しています。

国内メーカーの製品も前回ご紹介したようにイビデンの構内フォークリフト用など一部特殊なものについて市販されているケースもありましたが、トラックやバス用としては試験段階だったり、フィッティングの目処が立たず性能を保証できる段階ではなかったり、という状況でした。

つまり、東京都が「ディーゼル車NO作戦」を発動し、全車にDPFの装着義務づけを画策していた頃、既に試験段階を終えて本格的な市販を開始していたDPFで日本国内の状況に問題なく対応できる製品は殆ど存在しなかったということです。

前回の冒頭で触れた東京都建設局の保有車両を代替えする入札案件では、その開発途上にあったDPFを装着するよう仕様書に書かれていた故、不調に終わったのは当然の結果でした。

しかし、この指名競争入札にある一社が指名されなかったことが様々な憶測を呼びました。それまで「東京都と癒着しているのではないか?」という噂さえ流れていたある自動車メーカーの系列販社が指名から外された理由は何だったのか?

「癒着の噂に抗するため」という人もいましたが、その前後の状況も踏まえて考えてみますと、元々癒着というほどの関係はなかったと私は思います。

(つづく)

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