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東京都の「ディーゼル車NO作戦」とは何だったのか? (その5)

一時、東京都はすべてのディーゼル車にDPF(粒子状物質減少装置)の装着を義務づけようとしていました。が、これは決して安価なものではありません。業界から離れて久しいので現在の相場は把握していませんが、私が関係していた頃は部品代だけで100万円前後になる装置でした。ものにもよりますが、大型車などは取付け工賃を含めて百数十万円もかかったんですね(もちろん、排気量が大きくなるほど装置も大きくしなければなりませんから、車格によって相応の価格差はありますけど)。

これが台湾のように車両の運行を止めている期間の補償も含めて行政の全額負担ならハナシは別ですが、自腹でこれだけの費用を投じた車両を1年や2年で代替えするわけにもいきません。百数十万円を投じて装置を取付け、その費用の償却を毎年数十万円と見たら5年くらいは延命させなければなりません。

これでは徒に古い車両を増やすことになり、排ガスのキレイな新型車への代替えを遅らせ、結果的に大気汚染抑制には逆効果ではないかという意見も多く聞かれました。もちろん、トータルでの環境負荷を考えると代替えサイクルを伸ばすべきか否かは非常に難しい要素を含みます。例の「エコ替え」のような部分評価では全く無意味で、厳密なLCAを行わなければ正しい評価できないでしょう。

ただし、トラック業界には10年で100万kmを走る車両もゴロゴロありますし、十何年も酷使されるケースは決して珍しいハナシではありません。生涯走行距離が自家用乗用車の10倍など当たり前で、使用年数も1.5倍~2倍くらいになる業界ですから、適切なタイミングでの代替えが有効になるとする考え方もあながち間違いとはいえないでしょう。

また、古いディーゼル車の使用を制限する「自動車NOx・PM法」という国の法律もあります。基準をクリアしていない車両は特定の年数を過ぎたら対策区域内に使用の本拠を置くことができなくなりますから、従来から代替えの目処の一つになっていました。しかし、そのタイミングは東京都の条例が定める猶予期間と一致していませんから、過剰にユーザーを圧迫する条例ではないかとする反発も根強くあります。

兎にも角にも、東京都が推進した公害防止条例は、ひとえに「目に見える」排ガス成分であるPM(粒子状物質)を減らすことのみに集中し、「目に見えない」NOx(窒素酸化物)その他の物質には何の網も張らなかったのは事実です。

これでは片手落ちとしか評しようがない排ガス規制になりますが、そうしたことを指摘していたメディアは皆無でした。要するに、規制の中身など知らない、勉強する気もない、そういうメディアが石原都政を持ち上げて、世論もそれを支持するというバカげた状況を創っていたということです。

あれから約2年後の2001年4月、東京都は30年ぶりに全面改正した東京都公害防止条例を施行しました。同年7月には「東京都粒子状物質減少装置指定要綱」に基づいてDPFの指定申請の受け付けが始まり、11月には東京都指定粒子状物質減少装置装着車のステッカー貼付式がとり行われました。

しかし、あのとき他社系メーカーの車両にも適応できると豪語し、多くの関係者を振り回した××セラ研は東京都へDPFの指定申請を行っていませんでした。

東京都が条例案として「全車にDPF装着義務付け」を表明していたその拠り所になっていたのは、あの時点で××セラ研の「全車対応可能」というハナシだけでした。が、例の指名競争入札で全社辞退し、メーカーの保証が受けられなくなる非現実的なものだということが明らかになりました。そのことが直接関係していたかどうかは解りませんが、いずれにしても、東京都が方針転換を迫られたのは事実です。

ま、東京都環境科学研究所との絡みで××セラ研が表立ってしまって、彼らはスケープゴートにされてしまったという可能性もありますが、いずれにしても当初あれだけ突っ走っていた××セラ研が結果的にドロップアウトしてしまったのは、相応の「何か」があったのは間違いないでしょう。

その後、個人的に調べてみましたが、やはり××セラ研は例の一件の後、事実上撤退していたようです。東京都環境科学研究所との共同プロジェクトがあった手前、あからさまな撤退はできなかった様子で、しばらくは市場にとどまる素振りだけは示していました。

しかしながら、小型車用400万円、中型車用500万円、大型車用600万円という、およそ現実的ではない価格を設定し、あえて誰からも相手にされない状況をつくっていたようです。そして、ひっそりとフェードアウトし、2001年の条例改正の頃には既に忘れ去られた存在になっていったわけですね。

彼らが東京都を振り回した故に撤退するハメになったのか、むしろ振り回されたのは彼らのほうだったのか、その真相は闇の中です。

(つづく)

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