ま、それはともかく、マヴィックのメカトロニックのシフトスイッチを模倣したプロトタイプの電動デュラは、何故スイッチの向きを90度変える必要があったかといえば、それはブラケットの上に手を置いているときも下ハンを握っているときも一つのスイッチで対応しようとしたからでしょう。

電動デュラのプロトタイプはブラケットの上からも
下ハンからも指を伸ばして操作できるよう、
シーソースイッチを横からクリックする方式が試されていました。
一方、メカトロニックはブレーキレバー裏のスイッチを下ハン専用とし、これとは別にブラケット先端にもスイッチを設け、親指で(あるいは人差し指と親指で挟んで手首のスナップで)操作するようになっていました。もっとも、この尖った形状が危険ということで、UCIからNGを食らってしまいましたが。

さらに、メカトロニックはサイコンにもスイッチを設け、ヒルクライムなどで上ハンを握った状態でも親指を伸ばすだけでシフト可能という電動シフト最大のメリットを遺憾なく引き出すアイデアが凝らされていました。

ただし、フロントの変速は手動のままで、微妙な位置に設けられたレバーで操作する方式になっていましたけどね。

マヴィックの電動シフトが成功を収められなかった理由は、ひとえに信頼性の低さにあったと見て間違いないでしょう。メカトロニックの前身であるザップシステムはユニットとそこへつながるハーネスとの隙間から水が滲入する問題があったようで、雨中ではことごとく作動不良に陥ったといわれています。その反省からメカトロニックはワイヤレスとしてユニットの水密性を高めたものの、今度は電波障害で作動不良が発生しやすかったといいます。
また、リヤディレイラーの張り出しも非常に大きく、右側に転倒するとかなりの確率でユニットを破損してしまったようです。加えて、この巨大なメカが通り道をふさいでしまったため、一度シャフトを引き抜かないとホイールの着脱ができなかったようです。

マヴィックがコンポメーカーとしての大復活を期したメカトロニックは前世紀末に市販へこぎ着けたものの、結果を見ればあだ花に終わってしまいました。このチャレンジは結果を急ぎ過ぎたのかも知れません。が、コンポメーカーとして踏みとどまるために彼らに残された時間を思えば、これは致し方なかったのかも知れません。
(つづく)