酒と蘊蓄の日々

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形骸化の達人

私は業務で役人との接触が度々ありますので、彼らの狡猾さをよく知っています。いえ、大半の方は真摯にお仕事をなさっていますから、狡猾な役人というのは一握りになるのだと思います。が、官製談合を仕切ったりするのは、その一握りの狡猾な役人の中でもとりわけ悪質な人たちだったりするのでしょう。ま、幸運にも私はそうした役人に出くわしたことがありませんけど。

メディアは複雑怪奇な競争入札の仕組みをよく理解していませんから、煙に巻かれていたとしてもなかなか気づくことはないでしょう。今日の朝日新聞の社説を見てもそんな印象が拭えませんでした。

談合を防ぐ―入札改革をさらに進めよ

(前略)

 福島県では事件後、新知事の下で官製も含めた談合を全面的になくそうと、入札制度を改革した。

 目玉は、従来の「指名競争入札」を全面的に「一般競争入札」に変えたことだ。入札に参加させる業者を行政機関が指名することが談合の温床になっていた。だれでも自由に参加できる「一般」になれば、行政が落札業者をあらかじめ決めておくことも、業者間で談合することも難しくなる。

 その結果、何が起きたか。予定価格に対する落札率が93%から85%に下がった。本来の競争が行われ、業者の取り分が減ったからだ。それだけ余分な税金を使わずに済んだことになる。

 こうした入札改革の動きは、和歌山、宮崎両県を含めて全国に広がりつつある。全国知事会が調べたところ、1千万円以上の工事について入札方法をすべて「一般」に切り替えた道府県は22になった。それに伴って落札率も下がり始めた。

 すべての都道府県で、同様の入札見直しを急いでもらいたい。

(後略)

(C)朝日新聞 2008年8月20日


まず、「一般競争入札」が本当に「だれでも自由に参加できる」と思い込んでいる時点で、この社説を書いた論説委員は実態を知らないと断言できます。

現実には「何処の馬の骨とも知れない業者に任せ、粗悪な仕事をされては困る」という理由の下、一般競争入札であっても入札に参加する資格があるか否かが問われるケースは少なくありません。具体的には複雑な技術審査資料や過去の取引実績を証明する書類などを提出させられ、一定の基準に達していない業者は弾かれてしまいます。

もちろん、参加資格がないと判定された場合、ほぼ例外なく説明を求める権利が認められています。が、そこは小難しい制度をつくるプロ達ですから、細かい条件を設けて何だかんだと難癖を付け、コントロールしてしまうことは充分に可能でしょう。

殊にこれまで「指名競争入札」で参加できなかった業者などは入札そのものの煩雑な手続きがよく解らないケースも多いでしょうから、手玉に取るのは簡単かも知れません。そもそも、過去の実績を求めるパターンなどは、新規参入を排除するにはうってつけの条件となります。

また、官製談合をやっていたようなところなら、故意に落札率をコントロールすることも難しくはないでしょう。例えば、予定価格5000万円の案件が4750万円で落札され、落札率95%で疑いの目が向けられていたとします。そこで、仕様書を見直して書きぶりを大きく変更し、従来の案件との違いを解りにくくしてしまいます。その上で、予定価格を5600万円と従来より高く設定すれば、同じ4750万円で落札させても落札率を約85%に抑えることができます。

発注者である行政機関が予定価格を設定するためにコストを積算するにしても、限度というものがあります。なので、結局は業者から参考見積を取って、それをベースに予定価格を決定する格好になるわけですね。担当の役人と業者が「つうかあ」の仲であれば、「これじゃあ落札率が高くなるから、見積金額をもう少し高めに出してよ」の一言で懇意の数社から高めの見積を取り、予定価格を引き上げる工作が出来てしまうケースもあり得るでしょう。

一般競争入札の体は成していても参加条件を厳しく縛り、言うことを聞きそうにない業者を排除、同時に落札率も下げる工作を行えば、そこしか見ない部外者達に「指名から一般に切り替えて落札率が下がり、改革に成功した」と思い込ませることができるわけです。

もっとも、最近は(財)経済調査会などの第三者機関に調査を依頼し、広範囲な市場価格を把握しようとする動きもあります。私の会社にもそういう調査依頼票が送られて来ることが増えましたから、本気で透明化を進めようとしている政府機関や自治体なども増えているのでしょう。が、そういう真面目なところは従前から官製談合などやっていなかったと思います。

あるいは、メディアや市民オンブズマンなど目が厳しくなっていることを懸念して、偶然高い落札率が続いてしまっても疑いの目で見られないよう、自衛のために調査依頼をかけ、公正さのアピールに努めているといったケースもあるかも知れません。もっとも、そうしたことのために余計なコストが裂かれるのも微妙な感じはありますが。

私は土建業界の人間ではないので公共工事などの分野はよく知りませんが、これまでバラマキで利権に浴してきた役人達が本気で心を入れ替えない限り、入札の形態が変わったとしても中身まで変っている保証はないと思います。より巧妙な仕掛けで表向きには改善されたように見せかけ、実は同じことが繰り返されているかも知れません。

少なくとも、一般競争入札が増えたとか、落札率が下がったとか、そんな表面的な部分しか見ないで論評しているようでは、いつまで経っても実態を知ることなどできないでしょう。日本が「官僚国家」「役人天国」といわれるのは、法令や制度を形骸化させる達人が少なからず存在するからでしょう。その辺の認識が少々甘すぎるように思います。

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まとめ

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