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研究の意義はいずこ?

昨日、TBSの『夢の扉~NEXT DOOR~』という番組で「水素を利用したエコカーを作り燃料不足を解消したい」という内容のドキュメンタリーが放送されていました。公式サイトで紹介されている概要は番組のナレーションと異なっていますが、「大量のCO2排出によって引き起こされた地球温暖化」といった言い回しは番組内でもなされていました。

いつ、誰によって「CO2温暖化説」が事実であると証明されたのでしょうか?

以前は「大量のCO2排出によって引き起こされたと言われている地球温暖化」といった感じで、断定的な表現は避けられていました。しかし、最近は単なる仮説に過ぎない(しかも疑問点が山のように指摘されている)CO2温暖化説があたかも事実であるかのように断定された言い回しで扱われています。これは彼らが根拠など全く頓着していない証左といえるでしょう。ま、この番組に限ったハナシではありませんけどね。

さて、件の番組ですが、概要についてはリンク先をご参照頂くとして、非常に気になった点がありました。水素生成菌というバクテリアを使って糖から水素を生成させ、燃料電池車を走らせるということですが、そのプロセスに関する説明がかなり乱暴だったんですね。糖というのは炭素と水素と酸素の化合物ですから、そこから水素を取り出せば炭素と酸素が残ります。これがどうなるのかということが全く触れられていませんでした。

実際にはこのプロセスでCO2やメタン(CH4)が発生するようですが、これらは言うまでもなく温室効果ガスですから、のっけに「大量のCO2排出によって引き起こされた地球温暖化」としておきながら無視するのはいかがなものかと思います。私は温室効果ガスが地球温暖化の原因だとは考えませんが、温室効果ガスによって地球温暖化が進行していると信じている人たちとって、これは看過できない問題でしょう。

植物由来の原料から副産物としてCO2が生成されてしまうことについては、元々大気中にあったそれが光合成を経て固定されたものだから差し引きゼロの「カーボンニュートラル」だと認識されるでしょう。が、これは以前バイオエタノールについてお話ししたことと全く同じです。原料となる植物を生産したり輸送したり加工する段階において実際には化石燃料が投入されますから、それらとの差し引きでどれだけ黒字になっているかが問われなければなりません。

さらに問題なのはメタンのほうで、そのGWP(地球温暖化係数:CO2を1としたとき、何倍の温室効果があるかという係数)は21となっています(23となっているものもありますが、つまり算出基準が完璧でないということでしょう)。要するに、自動車の燃料として供給できるほど大量の水素をバクテリアに生成させるとなれば、CO2の21倍もの温室効果をもたらすとされるメタンも大量に発生させてしまうことになりかねないわけです。

ま、メタンは水素よりずっと比重が大きい気体なので、プラント内であれば取り分けて有効利用することも可能でしょうから、大きな問題にはならないかも知れません。が、この番組で紹介された玉川大学の小原教授は水素の生成槽も車載式にしたいと語っていましたから、これは少々面倒なことになりそうな気がします。

水素生成菌によって水素を発生させるプラントを車載し、同時にメタンが生成されれば取り分けて燃やすなどの処置が必要になるでしょう。ただ燃やして捨てるのは勿体ないので、ボンベなどに回収するか補助動力や空調などの熱源として利用したほうが良いかも知れません。が、そうなればどんどん余計な補器類が増えていきます。

そもそも、自動車を安定して走行させるには、エネルギーも安定して供給しなければなりません。となれば、水素を蓄えるためのコンプレッサーとボンベを装備したり、大容量のバッテリーを装備する必要に迫られるでしょう。ただでさえ猛烈に高価な燃料電池を搭載した上にこうした付属の装置を設けるとなると、どれだけコストがかかるのか想像も付きません。また、人が乗ったり荷物を積んだりするのに充分なスペースが確保できるのかも怪しくなってきます。

加えて、バクテリアは言うまでもなく生き物ですから、周囲の温度による影響も軽視できないハズです。真夏の炎天下に停めた自動車の中がどのような温度になるかを考えれば、これは絶望的かも知れません。まさか、バクテリアを死なせないために駐車中も絶えずエアコンをかけっぱなしにするというわけにもいかないでしょう。

さらに、乗用車などは特にそうですが、冷蔵庫のように絶えず運用されるものではありません。何日もあるいは何週間も利用しないときは休眠させ、無駄な糖を消費させて無駄な水素を発生させることなく保守し、常に必要なときに必要なだけ都合良くバクテリアを働かせるようなマネジメントが可能だとは到底思えません。

バイオ水素カー
この写真は小屋の中で作ったバイオ水素をボンベに詰めて
普通に燃料電池車を走らせているだけです。


それはともかく、バクテリアの働きで生成させるという点ではバイオエタノールも全く同様です。しかも、その元となる物質も基本的には同じ「糖」になります。バイオエタノールの生産拡大によって食糧供給に悪影響が生じ、農地の拡大から自然林の減少も懸念されているのはご存じの通りですが、バイオ水素も現状では全く同じ問題を繰り越すことになるわけですね。しかも、燃料電池は普及価格帯までコストダウンできる目処が全く立っていないのが現状です。

ならば、同じ原料を用いるバイオエタノールの開発に資本を集中させ、食糧供給に悪影響を及ぼさず、化石燃料の投入も最小限で済むような体制を確立させる研究に注力したほうがずっと有効でしょう。バイオエタノールよりバイオ水素のほうがエネルギー効率が圧倒的に優れているというのならハナシは別かも知れませんが、そうした点についても番組は完全に無視していました。

もちろん、「すぐに役立たない研究は無駄だ」などと言うつもりは毛頭ありません。が、メディアは地球温暖化問題について常々「待ったなしの危機的状況」などと扇動しているのですから、そうした姿勢とこのような番組の姿勢は全く符合しません。そこが個人的には非常に気に入らないわけです。

ほぼ全ての大衆メディアはCO2温暖化説を支持し、一刻の猶予もないとしています。そうした立場でこのような番組を製作するのであれば、いかにも回りくどく、早い段階での実用化など見込めそうもないバイオ水素に拘る必要があるのか、それでコスト的に普及の目処が全く立たっていない燃料電池車を走らせる研究の意義は何処にあるのか、その点を追求する内容にしなければならなかったハズです。

大衆メディアが伝えるエコロジー関連の情報はこのように極めて偏っています。地球温暖化による影響は悪いことしか伝えず、その対策技術とされるものは夢や希望みたいな部分を含めて良いイメージのことばかり伝えています。何故、全体を見渡して中立な立場をとろうとしないのでしょうか?

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