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盾と矛

「矛盾」という言葉は、どんな盾でも貫ける無敵の矛とどんな矛でも貫けない無敵の盾を同時に売り込んだ武器商人の故事から来ているのは皆さんもよくご存じのことと思います。そして、現代において弾道ミサイルを矛に、ミサイル防衛システムを盾に準えて語られることもしばしばですね。

PAC3、初の迎撃試験に成功 米で航空自衛隊

 【ホワイトサンズ(米ニューメキシコ州)=樫本淳】日本の弾道ミサイル防衛(BMD)の地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)の初の実射試験が17日午前7時55分(日本時間17日午後10時55分)、米陸軍のホワイトサンズ・ミサイル発射試験場で実施された。航空自衛隊が2発を発射し、弾道ミサイルに見立てた標的を2分半後に迎撃、破壊することに成功した。

(中略)

 中距離弾道ミサイルは秒速3~7キロで飛来する。今回は標的の速度を実際より遅く設定し、発射時刻や飛来方向も事前に決められた状況で実施した。PAC3は1発8億円で、ほかに約15億4千万円の費用がかかっている。

 初期整備までで1兆円に上る費用が、今後どこまでふくらむのか見通しがたたないなど課題も多い。弾道ミサイルが米国を狙っていると判明した場合、日本のBMDシステムで迎撃することは憲法が禁じる集団的自衛権の行使にあたるが、政府での議論は進んでいない。

(C)朝日新聞 2008年9月17日


NHKのニュースなどでもこの実験映像が流れ、成功の瞬間に喜ぶクルーや防衛官僚(?)の姿も映し出されていました。私は専門家でもマニアでもないので詳しいところはよく解りませんが、彼らが無邪気に喜んでいる姿を見て思わず失笑してしまいました。

迎撃実験成功に歓喜するエライ人たち
実験成功で拍手が沸き、握手を交わして喜ぶエライひとたち。
動画はコチラで見られます。


日本の大衆メディアはこうしたミサイル防衛システムの導入について「アメリカに向けて発射されたミサイルを日本の迎撃ミサイルが撃ち落とせば集団的自衛権の行使を禁じる憲法に反する」といった浅薄な議論に終始しています。日本に向けられたミサイルを領空内で撃ち落とす分には適法ですから、憲法を遵守するなら日本以外の国に向けられたミサイルに手を出さなければよいのです。ただそれだけのことですから、議論もクソもないでしょう。

それ以前に議論されてしかるべきなのは、「そもそもミサイル防衛システムは本当に役に立つのか?」という極めて根本的な部分です。これがハナから無視されているのは非常に理解しがたいものがあります。

この種のミサイル防衛システムは敵国から発射されたミサイルを早期に捕捉し、迎撃ミサイルでこれを撃ち落とすものというのは改めてご説明するまでもないでしょう。が、ロシアなどではこれを無力化する方策が練られているという事実は何故か日本の大衆メディアで報じられることがありません。

具体的には、弾道ミサイルに囮となる筒状の金属を搭載し、迎撃ミサイルの発射が想定される空域に達したところでこの囮をばらまき、迎撃ミサイルに弾道ミサイル本体が撃ち落とされる確率を大幅に低減させるといったものです。

今回の実験では成功しましたが、これまで行われてきたミサイル迎撃実験は成功率が40%程度だといわれています。しかも、この確率は囮を想定していないミサイル単体を撃ち落す実験での結果です。囮を含む実戦を想定した場合、どれだけの確率でミサイルの迎撃に成功するのかというデータはないに等しいでしょう。

というより、ミサイル防衛システムの無能さが明らかになってしまったら、軍需産業やそことつながっている政治家や官僚にとっては大打撃になるでしょう。ですから、現状ではそんな実験など行う気すらないと思います。

日本政府はこの役に立つのかどうか全く以て疑わしいシステムの導入に引用記事の通り初期整備までに1兆円を超える血税を注ぎ込もうとしています。国民一人頭8000円ほどですが、役に立つ見込みが極めて薄いもの(だと私は思いますが)に私もあなたも生まれたばかりの赤ん坊も日本国民はみんな8000円ずつ払わされるというのは納得できませんし、今後もこの金額がさらに膨れあがっていくことは許し難いことだと思います。

PAC3.jpg
米軍ホワイトサンズ・ミサイル実験場から
標的の模擬弾めがけて発射されるPAC3


かつて、外国人記者クラブで海外のプレスが防衛省の研究員にパトリオットミサイルの迎撃能力を疑問視する質問が浴びせられました。このときの返答は「実際にどの程度迎撃できるかということより、迎撃システムを持っていることで国民が安心できることが重要だ」といった主旨だったそうです。

要するに、「北朝鮮のミサイルが飛んでくるかも知れないが、日本は迎撃システムを持っているから危機管理に懸念はない」と国民に信じ込ませるための1兆円ということなのかも知れません。

メディアはこうした疑問点を強かに指摘して国民が騙されているかも知れない状況を焙り出す必要があると思います。が、それをやらないのは彼らが単に無知なのか、政府のお先棒を担いでいるからなのか、どちらかということでしょう。どちらにしても実に情けないハナシだと思います。

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