酒と蘊蓄の日々

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新幹線のEgo主張?

先週の水曜日、大阪へ行ってきました。図らずも往路で新型のN700系に乗りましたが、正直なところ従来の700系とあまり大きな差は感じられませんでした。もっとも、かなり早い時間帯でしたので、道中は殆ど寝てましたけど。

このN700系には両側壁の足元にAC100V電源があります。パソコンの電源をとったり、携帯電話の充電をしたり、といった用途が想定されてるようです。が、窓側席以外になったら他人の足元にあるそれを使おうという気にはまずなれませんね。車両最前席には各々目の前に付いていましたけど。

今回の大阪日帰り往復が何のためかといえば、もちろん業務です。私の会社は本社と工場が大阪にありますので、概ね年に3~5回くらい東京から往復します。新幹線にはその度に乗るんですね。昨年の夏などはクライアントが某航空会社で関西空港に行きましたが、そのときも新幹線です。普通なら義理立てしてクライアントの便を使いそうなものですが、一度本社に寄って、そこの人間と一緒に社有車で関西空港まで行きました。



で、JR東海のサイトを見ますと「新幹線でEco出張」というコピーと以下のような比較で新幹線の環境性能をアピールしています。

東海道新幹線のCO2排出量は航空機の約10分の1。


地球温暖化問題について殊にCO2原因説には科学的に未解決の疑問点も沢山ありますので、CO2排出量が少なければ環境にやさしいとか、その手の話を私は素直に信じられません。が、百歩譲ってその通りだったとしても、この数字には欺瞞を感じます。

まず、広告に比較前提がハッキリ明示されていないところで胡散臭いと思うのですが、確認してみましたら、これは羽田~伊丹または関西空港間でボーイング777-200を飛ばすのに要する航空燃料と、東京~新大阪間で700系のぞみを走らせるのに要する電力を元に、各々のCO2排出量を換算し、座席数で割ったものを比較した数字のようです。

つまり、インフラは全く考慮されていないわけです。これでは実態に見合いませんね。飛行機を飛ばすためのインフラと新幹線を走らせるためのインフラには桁違いの差がありますから、これを無視するのはフェアじゃないでしょう。

飛行機は文字通り空を飛んでいきますから、空港や航空管制施設は必要ですが、滑走路を離れてしまえば地面すら必要ありません。

しかし、鉄道が駅と管制システムだけで走らせられないのは幼稚園児でも解ることです。延々と続くレール、それを敷設するための基礎も必要です。殊に東海道新幹線の場合、都市部はことごとく高架化されており、山間部も極力迂回は避けてトンネルを通し、河川ももちろん橋梁が渡されています。当然、電力供給施設もまた各所に設ける必要があります。

各々のインフラ整備・維持にかかるエネルギーコスト、CO2排出量を比べたら、これはもう新幹線と航空とで全く比較にならないのは火を見るより明らかです。何故、そうした部分を無視してしまうのでしょうか? 自分たちに都合の良いデータをアピールするため? そういうのは一種の情報操作だと私は思うんですけど。

ま、そうはいっても、航空輸送より新幹線のほうが環境負荷はずっと小さいと思います。私が気に入らないのはそのフェアじゃないPRの仕方なんですね。何故、人を謀るような部分情報しか伝えないのかということです。


実は、個人的に交通機関のLCA(ライフサイクルアセスメント:作られてから廃棄されるまで、生涯を通じた環境負荷の評価)について調べていたら、面白い研究を見つけました。

名古屋市内では「ゆとりーとライン」というガイドウェイバスシステムが運用されています。これは通常のバス車両に案内装置を取り付け、専用軌道を走らせる新交通システムに似た輸送方式なのですが、名古屋大学がこのLCAをISO14040シリーズに準拠させ、インフラを含めた上で鉄道との比較をしているんですね。(LCAを適用した中量旅客輸送システムの環境負荷評価←PDFです)

guideway.jpg
ゆとりーとライン

この研究によれば、鉄道のインフラにかかるLC(ライフサイクル)-CO2は運行時に生じるLC-CO2のほぼ2倍の値になっています。新幹線はトンネルや高架の区間が非常に沢山ありますから、さらにその差は大きくなると想像できます。

いずれにしても、こうした手法を用い、インフラを含めて総合的に比較するのがフェアなやり方だと思いますし、LCAの定義についてもISO14040シリーズに準拠させれば(個人的にはそれでも完璧とは思えませんが)とりあえず文句をつける人は殆どいない一定の基準を満たすことはできるでしょう。ま、LCAを知らない環境対策に出遅れた企業ならこういう発想には至らないのかもしれませんが。

ある製品のライフサイクル全体の環境に対する影響の評価、環境負荷低減のための意志決定支援ツールとしてLCAが注目されている。(中略) そこで、鉄道車両に関するLCAの今後の発展の基礎とするために、主に0系新幹線車両を対象として、LCAに対する事前調査を実施した。


これはJRグループの財団法人である鉄道総研の月例発表会で材料技術開発推進部の主席技師が述べたものです。彼らはLCAを知らないどころか、もう既に研究に取り組んでいたんですよね。しかも、上記は1998年に発表されたものですから、10年も前から着手されていたわけですよ。日本の企業としてはかなり早いアプローチだったと思います。

東海道新幹線のCO2排出量は航空機の約10分の1。


JR東海のこの自分よがりな主張は鉄道総研で環境負荷について日々研究されている方たちを侮辱するものだと私は思うんですけどねぇ。

コメント

エコ出張ならぬエゴ主張・・・・。

久しぶりにブラックな笑いでした。
石墨さん節に乾杯です。

  • 2008/01/28(月) 20:26:28 |
  • URL |
  • Ocha #-
  • [ 編集]

Ochaさん>

実は、このエントリには元ネタがあります。

半年以上前ですが、某メールマガジンへ本文前半のように
インフラを考慮しない新幹線の環境性能の比較はおかしい
とする投稿をしたんですね。

すると、数日後に「仕事で環境に携わっております」という人から
LCAの見積りは突き詰めれば際限がないし、「部分最適」の情報も
それはそれとして額面どおりに受け取ればよい
とする反論があったんですね。

でも、新幹線の広告は「部分最適」なのか「全体最適」なのか
解りやすく示されていませんし、LCAについてはISO14040シリーズで
国際的な共通認識があるのですから、それに従えば良いことですし、
実際に名古屋大学の研究例もありますよ、とボコボコにやり返したんですね。
すると、何の反論もありませんでした。

私はガッカリしましたね。

環境に携わっているプロが私のようなアマチュアとのディベートで
何も言えなくなってどうするの? と。

世間では毎日エコエコと呪文のように唱えられているのに、
現場はこんなレベルかよと、心底虚しくなりました。

  • 2008/01/28(月) 21:42:42 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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