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誇大エコ広告

当blogでも「エコ替えのウソ」と題したエントリでトヨタのそれはLCAを無視したインチキ広告であることを述べました。同様の批判は多方面から相次いでいて、YouTubeには実際にトヨタへメールで問い合わせたという人からこんな動画が投稿されています。



この質問を受けたのは恐らくトヨタのお客様相談室あたりで、担当者は環境問題などに関して素人レベルの知識しかなかったのでしょう。論点をすり替え、適当にあしらったような印象で、かなり酷いものです。が、この回答をした担当者個人にあまり大きな責任はないと思います。

誰が悪いのかといえば、それは根拠がいい加減な広告を企画し、それにGOサインを出した人たちです。この代替え促進キャンペーンの内容そのものに錯誤があると認めない限り、納得させられるような回答はできません。まさかお客様相談室の担当者レベルで企業を挙げてテレビCMまで流しているキャンペーンを否定することなどできないでしょう。

さすがにトヨタもこうした状況に気づいたのか、最新のCMは以前のように「まだ使えるけど」といった表現を控え、「新しいクルマはエコ」という点に絞ってきたようです。もっとも、代替え促進のCMであることに違いはなく、代替えを早めることがLCA的に有利だという根拠が示されていないのも相変わらずですし、当blogや様々な人たちに指摘されていることが根本的に改められたわけでもありません。単に表現がマイルドになっただけです。


そもそも、環境を考えるならマイカーなど持たないのが一番です。どうしても必要なときにレンタカーを利用し、普段は公共交通機関や自転車などを利用するほうが遙かに環境負荷の小さいライフスタイルになるのは火を見るよりも明らかです。

私は世間一般に「エコロジスト御用達」のように思われているプリウスに乗っていますが、自分が環境保全に努力しているなどとは毛頭思っていません。クルマを持たないほうが遙かに環境負荷の小さいライフスタイルであることが解っているからです。私の基本的なスタンスは、自分が与えている環境負荷を棚に上げることなく認識し、偽善的な発言は慎むというところにあります。ま、開き直っていると解釈されても良いでしょう。

しかし、世の中には環境負荷について正しい認識が出来ていないにも関わらず、「自分は環境問題について常に意識している」というようなことを語る似非エコロジストたちが山のようにいます。何台も高級車を所有していながら、オスカーの授賞式などにはプリウスで乗り付けるハリウッドスターたちはその代表格といえるでしょう。彼らの場合は偽善かも知れませんが、単なる無知で思い違いをしている人もやはり山のようにいます。

数ヶ月前、TBSの情報番組『王様のブランチ』で、確か『アース』という映画のナレーションを務めた絡みだったと思いますが、俳優の渡辺謙氏がVTR出演したときのことです。同番組の映画コーナーを担当しているスウェーデン出身のタレントLiLiCo氏によるインタビューの中で、まさに上述のような現実を理解していない会話がありました。交わされた言葉は正確に覚えていませんが、だいたいの主旨はこんな感じだったと思います。

渡辺氏が「買い物の際にマイバッグを使っている」というハナシの流れになったとき、LiLiCo氏が「いつも自宅に置き忘れてついついレジ袋をもらってしまう」というと、彼は「クルマに置きっぱなしにしておけばいいんですよ。私はいつもそうしています。」とアドバイスしました。すると、彼女は「クルマを持ってないんですけど、どうしたらいいでしょう?」と尋ねたのですが、それを聞いた彼は一言「知らないよ!」と返し、その話題はそこで終わってしまいました。

これはどう考えてもLiLiCo氏のほうが環境負荷が小さい生活をしていると見て間違いありません。「レジ袋をもらわずにマイバッグを使ったほうが環境に良い」と世間一般に信じられているのも本当にその通りなのか微妙な部分はありますが、買い物へ行くのにクルマを使わなければ、その分だけ環境負荷を抑えられるのは間違いありません。

仮に買い物にクルマを使わなかったとしても、クルマを持っているか否かという時点で優劣は決しています。毎日何枚もレジ袋を消費する生活を生涯続けたとしても、それで与える環境負荷が自動車1台の生産にかかる環境負荷を上回ることはないでしょう。

この馬鹿げた倒錯エコ談話は「マイバッグを使っている人=環境のことを考えている人」という短絡思考に陥って、全体が全く見えていない愚かな状況に他なりません。ただ、こうしたハナシは決して珍しいものではありません。最近の日本はエコヒステリーがエスカレートしていく一方ですが、実際にはそれを宗教的に盲信するばかりで、科学的に実効性を検討している人はさほど多くありません。

一方、イギリスでは昨年こんなハナシがありました。プリウスの広告に使われたデータがアメリカでの一般的な走行距離を基に算出されたもので、イギリスの国内事情には合わず、誇大広告になっているといった主旨のクレームが付いたんですね。

最近もトヨタが「環境を考えるならレクサス」という内容のイメージ広告をメジャー紙に出したところ、広告監督委員会から「誤った情報を伝達した」として広告掲載全面禁止の裁定を受けたそうです。これは「レクサスに乗れば環境を改善できる」とも受け取れるような表現になっていたからのようで、消費者団体や環境保護団体から「自動車が環境に好影響を与えるわけではない」「消費者の判断基準を誤らせる」と指摘されたそうです。

同様のハナシはオーストラリアにもあります。「サーブが1台売れるごとに17本の木を植える」というキャンペーンをGMが展開し、「すべてのサーブはグリーンだ」という広告を出したところ、広告審議機構からクレームが付いたそうです。

日本ではトヨタに限らず、自動車メーカーに限らず、「環境負荷を低減させたいなら消費活動を控えたほうが良い」という当たり前のことを棚に上げ、独善的な似非エコ広告を展開しているケースが非常に目立ちます。その点についてそれなりにシビアなイギリスやオーストラリアなどで「エコ替え」の類のCMを流したら、即刻禁止の裁定が下ることでしょう。

JR東海も相変わらずインフラにかかる環境負荷を無視して新幹線と航空機の比較広告を流し続けています。これだけ毎日エコエコと唱えられていながら、ライフサイクル全般を通じて与える環境負荷を検討する「LCA」という概念を全く考慮しない部分比較の広告も何の疑問も持たれることなくまかり通っています。

以前、当blogでご紹介したエンジンスターターのようにインドの風力発電からCO2排出権を買っているから無人状態でアイドリングをしても「京都議定書が定めた日本の温室効果ガス削減目標に貢献する」などという言語道断な商品PRも全くお咎めなしです。

何でも「エコ」を謳えば良いと思っているこの低レベルな乱痴気騒ぎを見ていても、如何に「エコ」という美名がツールとして悪用されているか、日本では如何に似非エコの誇大広告が蔓延しているか解るというものです。

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まとめ

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