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ビンゴ! だけどねぇ・・・

例の高速道路1000円乗り放題について、当然のように民主党の菅氏が噛みついています。

高速1000円「なぜETCだけ?」 菅氏、政府批判

 民主党の菅直人代表代行は3日、水戸市で街頭演説し、政府の新総合経済対策に盛り込まれた休日の高速道路料金値下げについて「なぜETC(自動料金収受システム)がついている車だけが千円で乗り放題になるのか。ETCを推進している機構には、国土交通省のお役人がどどっと天下りをしているからだ」と批判した。

(後略)

(C)asahi.com 2008年11月3日


「ETCを推進している機構」というのは、国土交通省所管の財団法人道路システム高度化推進機構(以下ORSE)といいます。理事長(非常勤)はトヨタの現会長(前社長)の張富士夫氏ですが、常勤理事4名のうち専務理事の村岡憲司氏(元北海道局長)と常務理事の石原孝氏(元大臣官房総括監察官)の2名が国土交通省のOBです。

さらに、非常勤理事には経済産業省のOBが2名、常勤監事に警察庁のOBが1名います。「国土交通省のお役人がどどっと」がORSEの実態を正確に言い抜いているかどうかは解りませんが、官僚が少なからず天下っているのは間違いありません。

そもそも、ORSEなどという組織が国土交通省所管の公益法人である必要がないと思います。昨年5月、当時新党日本の荒井広幸氏(現在は改革クラブ)が「ETCシステムにおける新たな利用者負担の解消とORSEの廃止等に関する質問主意書」を提出しました(政府の答弁書はコチラ)。その7番目の質問はまさにその点についての政府見解を問うたものでした。

(前略)

既に、各高速道路株式会社がETCパーソナルカードを発行しており、ETCシステムの開発、情報管理等については、以後、民営化された各高速道路株式会社で行うことも可能であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、JRのスイカや私鉄・バス事業者が採用するパスモは、民間会社が運営している。仮に、ORSEを存続すると言うのであれば、民営化された各高速道路株式会社が、ORSEの業務を行うことが不可能である理由を示されたい。


非常に正鵠を射た良い質問だと思いますが、それに対する答弁はこうでした。

 ORSEが行う情報安全確保規格(ETC省令第四条第一項第一号に規定する「情報安全確保規格」をいう。以下同じ。)の提供の代行及び識別処理情報(同項第二号に規定する「識別処理情報」をいう。以下同じ。)の付与の業務については、これらを確実かつ効率的に実施するとともに複数の有料道路の利用者の利便に資するよう一元的な実施を確保する必要があり、これを各高速道路株式会社がそれぞれ行うこととすると、一元的な実施を図ることが困難となり、結果として複数の有料道路の利用者の利便を害する結果にもつながるため不適切であると考えている。
 したがって、今後もORSEにおいて引き続き当該業務を行うことが適切であると考える。


これはもう、小学生が聞いても答えになっていないと解るでしょう。荒井氏の言い分は至極もっともで、ETCなどよりSuicaやPASMOのほうが利用者数も桁違いに多く、駅等やそれらを結ぶ路線も遙かに膨大で複雑です。PASMOだけでも鉄道事業者26社、バス事業者78社、計104社を数えます(2008年10月現在)。

IC乗車カード相互利用相関図
JR東日本のSuicaを軸として、IC乗車カードは2010年までに
北海道や九州のとも互換性を持つようになります。


しかし、高速道路の管理会社は日本道路公団が分割民営化された東日本・中日本・西日本の高速道路会社3社、首都高速、阪神高速、本州四国連絡高速の計6社です。他にも名古屋高速道路公社、福岡北九州高速道路公社など、12の高速道路公社もETCのサービスに対応していますが、PASMOとは桁が違います。一部の駐車場などでも対応しているケースはありますが、電子マネーとしても普及しているSuicaと比べたら全く足下にも及びません。

こうしたIC乗車カードの利用状況を鑑みれば、「各高速道路株式会社がそれぞれ行うこととすると、一元的な実施を図ることが困難となり、結果として複数の有料道路の利用者の利便を害する結果にもつながるため不適切」などという政府答弁は愚の骨頂です。要するに、ORSEはETCの権利を牛耳ることで年間115億円もの巨額を搾取する利権団体ということでしょう。

今般の追加経済対策の発表を受け、カー用品店などにはETCの装着に関する問い合わせが急増しているそうで、やはりETCの普及促進としてかなりの起爆剤になりそうです。その分だけORSEにもカネが転がり込みます。「1000円乗り放題」の狙いとしては、コチラも無関係ではないでしょう。民主党の菅氏の批判も極めて真っ当なものだと思います。

が、民主党のマニフェストにはこうあります。

地球環境で世界をリードする。

●2050年までに、日本の温室効果ガス排出量を1990年と比べて50%削減することを目指します。そのために、国内排出権取引市場を創設するとともに、省エネルギーの徹底、環境教育などを進めます。

●風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーの利用を進め、その割合を2020年までに10%に引き上げます。

●地球温暖化防止の新たな国際的枠組みに、米国、中国、インドなどが参加するよう促します。


そして、同じ民主党のマニフェストは「高速道路原則無料化」の基本方針を示しています。自動車の利用拡大とCO2排出量増加が不可分なのはいうまでもありません。麻生政権のそれよりさらに救いがたい矛盾が民主党のマニフェストにはあるわけです。こうした部分をつつく人がいないのは何故なんでしょう?

コメント

私事ですが・・・
休日が平日なのでその恩恵にありつけないんですよね~
ま、無料じゃなくてもいいんですが・・・
もうちょっと現実的な案が欲しいところです。

  • 2008/11/07(金) 09:30:03 |
  • URL |
  • kay@ocha'sweb #-
  • [ 編集]

kayさん>

そもそも、この高速道路乗り放題は本当に必要としている人にあまりメリットがありませんしねぇ。例の給付金も1人頭1万何千円程度では大した足しにはならないでしょうし。麻生さんにしてみれば、今般の追加経済対策は選挙民のご機嫌取りが一番の目的なのでしょうけど、それとても実効性を考えると「現実的な案」といえるのか、かなり微妙な気がします。

ま、給付金の配り方や高額所得者を給付対象から外すかどうかといった基本的なこともロクすっぽ決まっていませんから、色々じっくり検討した政策でないのは確かでしょう。単なる思いつきに近いものなんだと思います。

  • 2008/11/08(土) 21:30:09 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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