
時間があれば人が退くまで待ってから撮るのですが、
今回はマトモな写真が撮れるまで待っていられる
時間的な余裕がありませんでしたので、公式画像で失礼します。
これまでマヴィックのメカトロニックをショップで見せてもらったことはありましたが、実際に触れたことはなく、小学生の頃に流行ったスーパーカーもどきなアレも未経験ですから、私は電動シフトと全くご縁がなく、それだけに興味津々でした。
が、結論から先に言わせて頂きますと、期待ほどではありませんでした。これは私の期待が無用に大き過ぎただけかも知れませんが、今回試した範囲で感じたメリットは、電気スイッチの僅かなストロークでシフトできるという点くらいでした。ワイヤー式より素早くシフトできるわけでもなく、キッチリとメンテナンスされたワイヤー式なら正確さでも全く劣らない印象です。
ま、シマノ自身も「従来のワイヤー式と電動式とを比較するためにシフト回数のデータを取ったところ、電動式のほうが増えており、その分だけストレスなくシフトできている」といった旨の説明をしているくらいです。劇的に良くなっていたら、こんな持って回ったような能書きを垂れる必要もないでしょう。
今後、増設用のシフトスイッチが発売され、上ハンを握った状態でもシフトできるとなれば相応のメリットにつながると思います。が、デュアルコントロールレバーに仕込まれたスイッチだけで操作するなら、フロントをアウターにシフトするのが楽ちんという以外に圧倒的なメリットがあるようには思えませんでした。
そのフロントの変速も慣れないうちは若干の違和感があります。ワイヤー式はレバーのストロークが長いですから、操作開始からディレイラーの動作完了までの時間を比べたら大差ないと思います。が、電動式は一瞬にして操作が終了してしまうため、その分だけディレイラーの動作完了までの時間を長く感じてしまい、「鈍い」と錯覚してしまうようで、ワイヤー式とは異なるアクションが違和感につながってしまうのでしょう。
特に私の場合、フロントの変速が一段とスムーズになったワイヤー式の79デュラに感動したばかりで電動デュラを体験しましたから、このダイレクト感のない変速感覚が気持ち悪いと思ってしまったのかも知れません。リヤはフロントほど大きなアクションではないため、その分だけ違和感も殆どない印象でしたが。
また、あまり目くじらを立てることではないと思いますが、電動はトラブルに気付きにくいというデメリットがあると感じました。メンテナンスに万全を期していても、走行中にゴミを拾ってディレイラーの動きが悪くなってしまうことがあります。ロードでは滅多に起こらないかも知れませんが、枯れ草やビニール紐の切れ端などがパンタフラフに絡まったという経験を私は過去に何度かしています。
ワイヤー式ならその引きが重くなるなど、ディレイラーの動きがワイヤーを通して指先に伝わってきますから、何か異常があればすぐに気付くことができます(もがいて死にそうなときは気付かないかも知れませんが)。しかし、電動ではディレイラーの動きが指先の感覚として一切伝わってきません。要するに、機械との会話ができないんですね。
MTBなどは泥まみれになってディレイラーやそこへ至るまでのワイヤーの動きが渋くなることがよくあります。それをメンテするのも楽しみの一つで、スムーズなシフト感を取り戻すと「今日も良い仕事をした」などと悦に入ってしまう私のような変態には、こういう機械との会話ができない仕組みは少々物足りない感じです。
でも、その一方で「ヒュン」といった感じでアクチュエータが一唸りし、シフトしていくあのハイテクな感じも決して嫌いではありません。リヤの動きに応じてフロントも自動的にクリアランスを調整する「オートトリム」の動きを見ると感心してしまったりして、これはこれで別の魅力を感じたりするんですね。我ながら何ともワガママだと思いますが。
逆の視点から見れば、あれだけ完成度の高いワイヤー式に劣らないレベルに仕上げてきたという点で電動デュラの完成度の高さは大したものだと思います。私の場合、経済的な理由も含めて、いまのところ必要性を感じないというのが正直なところですが、ここまで作り込んできたものが徒花に終わってしまうのは何とも勿体ないことですから、開発の手を緩めないで欲しいところです。普及に向けてのネックは価格だと思いますので、差し当たっての課題は如何にコストダウンしていくかでしょう。
多少穿った見方かも知れませんが、これはクルマのマニュアルシフトとセミオートの関係をなぞっていくかも知れません。クルマの場合、2系統のクラッチと変速系を交互に切り替えたり、F1のシームレスシフトのようにクラッチを切らずにシフトできるようになったり、シフトチェンジの早さという点でセミオートのほうが圧倒しています。もはやマニュアルでセミオートに勝とうというのは難しい時代になってきました。が、御する楽しさという点でマニュアルが色あせたわけでもありません。
現在の電動デュラはそうしたレベルに程遠いものですが、将来的にこうなっていける素質はあると感じました。レース機材としてシフトの素早さを求めるなら電動式、機械を操作したりメンテしたりする趣味的な要素を重視するならワイヤー式という時代が来るかも知れません。
(つづく)