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トヨタはこの不況を追い風にする

景気の落ち込みが連日伝えられていますが、殊に自動車産業はアメリカの自動車ローンの審査基準が厳しさを増して販売面に大きな影を落とし、日本のメーカーでも派遣社員の契約打ち切りが(いつものように感情論に左右されながら)大きく取り上げられています。

レクサスの製造ライン(トヨタ自動車田原工場)
減産が決まったレクサスの製造ライン

トヨタに関していえば、管理職がボーナス1割カットとなったり、レクサスなどを生産している田原工場が昼夜二交代制から昼だけとして大幅減産に転じるなど、細かい情報も毎日のように報じられています。それ自体は決して悪いことではありませんが、針小棒大に報じて騒ぎを大きくし、悪循環に陥る状況をつくってしまったとしたら、それは許し難いことです。

少々脱線しますが、日本の大衆メディアの脳天気ぶりはいつもこうした不況局面で再確認できます。彼らは目先の販売部数や視聴率が欲しいのか知りませんが、センセーショナルに、あるいはセンチメンタルに騒ぎ立てては大衆の気を引こうとします。今回も解雇された派遣工/期間工たちを追いかけ回してはその声を拾い、哀れな境遇を憂う感情論に傾倒しがちです。

が、不況による先行きの不安を徒に煽ると、消費者の財布のヒモは益々固くなり、個人消費の落ち込みに拍車をかけかねません。すると、企業も広告費を削減する傾向が強まっていきますから、その広告収入によって経営が成り立っている彼らの多くも痛い目を見ることになるわけです。自分たちの「煽り」が巡り巡って自身の首を絞める格好になりかねないという実情を彼らはあまり自覚していないのかも知れません。

ま、それはともかく、トヨタはこれまで今期の収益予想を1兆6700億円としていましたが、今般の不況を受けて約7割下方修正し、6000億円としました。1兆円を超える減益見込みは確かにショッキングですが、日本国内に営業利益6000億円超の企業など好調だった昨期でもたったの7社しかありませんでした。アメリカのビッグ3が軒並み経営破綻の危機に直面している現状にあって、同じ業界で6000億円の収益を確保できる見込みのトヨタはやはり凄まじい実力です。

もちろん、トヨタだけではありません。3月末の営業利益予想は、ホンダが5500億円、日産2700億円、スズキ1000億円、ダイハツ560億円、マツダ500億円、三菱自動車254億円、富士重工184億円といった具合に、全社減益となりつつも、赤字転落を見込んでいるところはありません。 大衆メディアのそれを見ていますと、日本の自動車メーカーも総崩れしそうな勢いで報じられています。が、そこまで悲観的な状況ではなく、アメリカとは極めて対照的といっても過言ではないでしょう。

(追記:その後トヨタは2度目の下方修正、ホンダは3度目の下方修正で2008年度連結で赤字転落の見込みを発表しました。が、自力での復興が極めて難しいGMやクライスラーと比較するようなレベルではありません。)

いまアメリカのビッグ3は経営の立て直しに公的資金の注入を待っている状況です。真っ先に数字をまとめたフォードが政府に求めている「つなぎ融資」は約90億ドルに達しますが、それが実現するかどうかは予断を許しません。一方のトヨタは3ヶ月以内に現金化できる流動資本を少なくとも6兆円持っているといわれています。これはフォードが待っている融資額の7倍を超えます。

トヨタの渡辺社長は今般の不況を受けながら、「あらゆる費用を減らしても、技術開発費だけは絶対に減らさない」と明言しています。トヨタはこれまでも年間1兆円内外の技術開発費を投じてきましたが、大きく減益となりそうな現状でもその収益を維持できれば、現在の投資額を向こう15年は維持できる計算になります。これは世界中の自動車メーカーにとって大変な脅威といえるでしょう。

いま、地球上にトヨタほどの体力を温存している自動車メーカーは他にありません。彼らもマーケットの波には翻弄されるでしょうが、この苦しい時期にあっても莫大な開発費の投入を続け、他社が体力を消耗している間にアドバンテージを一気に広げてしまおうと強かに未来を見据えているように思います。

自動車業界の技術開発も「日進月歩」ではなく、「秒進分歩」ともいうべきスピードで進んでいます。ひとたび遅れをとると、その挽回には大変な労力と資本を奪われます。殊に、今日は従来のガソリンやディーゼルから次世代エネルギーへのパラダイムシフトを無視するわけにいかない時代です。

こうした修羅場にあって国から融資を受けつつ経営再建に尽力するメーカーと、その何倍もの流動資本をキープしながら新技術の開発部門は自分たちの仕事に没頭できるメーカーと、既に埋めがたい大きな差がついてしまったかも知れません。

トヨタが世界の自動車産業を支配する圧倒的な王者になったとして、それが自動車の未来にとって良いことかどうかは別問題ですが。

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