酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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木を見て森を見ず

トヨタの強さはトヨタ本体だけでなく、そのグループ会社を含めた総合力にも裏打ちされていると思います。1990年代にGMから独立した部品メーカー、デルファイが2005年に負債総額2兆5000億円で経営破綻したのに対し、戦後数年でトヨタの電装部が分離独立したデンソーはいまや世界最大の自動車部品メーカーとなり、売上高4兆251億円、営業利益3486億円(いずれも2007年度連結)を誇ります。

また、戦時中の航空機増産計画を受け、トヨタ60%、川崎航空機(現在は川崎重工の一部門)40%の出資で創設された東海飛行機は戦後の民需転換でアイシン精機となり、トヨタグループの一員として自動車部品を軸足に今日へ至っています。

アイシンは事業規模が大きくなる度に分社化を進めるという面白い社風でやってきたため、現在ではグループ企業が150を超えているといいます。中でも成長著しいのがアイシンAWで、オートマチックトランスミッションの世界シェア1位、カーナビゲーションシステムの世界シェア2位を誇り、親会社であるアイシン精機に迫る事業規模まで拡大しています。両社を合わせると年商はデンソーのそれに匹敵するレベルになります。

もちろん、デンソーもアイシンも取引先はトヨタグループにとどまらず、内外の自動車メーカーに広く販路を確保しており、堅実なビジネスをやってきました。経営状態はデルファイと極めて対照的といえるでしょう。しかしながら、自動車業界を直撃した今般の不況は彼らのような優良部品メーカーの業績にも大きな影を落としました。

12月24日、デンソーは今年度連結(2008年4月~2009年3月)の業績予想を発表しましたが、売上高を3兆6500億円から3兆3000億円へ、営業利益を1780億円から380億円へ下方修正しました。アイシン精機も売上高2兆5200億円から2兆2000億円へ、営業損益を800億円の黒字から100億円の赤字へ下方修正しました。

グループの長であるトヨタのように今後もコロコロ変えないとは限りませんが、現状としてはこんなところなのでしょう。クルマが売れなくなったのに部品だけは堅調という状態はあり得ませんから、当然のことではありますけどね。

GMビル
ビッグ3関連のニュースが流れる際、
必ずといってよいほど映し出されるため、
GMビルの外観は日本でもお馴染みになりましたね。


日本の大衆メディアがアメリカのビッグ3の窮状を伝えるとき、バカの一つ覚えのように「燃費の悪いSUVなどに重きを置いてきたツケ」的な論調になりがちですが、実際にはもっと根深く、様々な要因が積み重なっています。

例えば、GMの場合も現状へ至った伏線は数多あります。大きな要因の一として9.11テロ直後の市場停滞とその際の対応も挙げておくべきでしょう。彼らはマーケットの動向を軽視して生産調整を行わず、膨大な在庫をかかえてしまうという失敗を犯しました。

このとき、彼らは販売店へインセンティブをバラ撒いて大幅な値引きによる乱売を行ったわけですが、収益の悪化はもちろん、中古車の値落ちも誘発させました。新車が安く叩き売られていれば 、当然のことながら下取り価格も値崩れし、GM車そのものの市場価値を損ないます。新車価格が多少高めでも下取りで値落ちしなければトータルではお得という経済観念がないほどアメリカ人も馬鹿ではないということです。

いま、世界中の自動車メーカーが市場縮小の動向を睨んで一気に減産へ突っ走っていますが、それはGMが喫したこの失敗劇を教訓にしているからではないかと私は見ています。いわゆる「派遣切り」問題で日本の大衆メディアは祭り状態ですが、彼らは市場縮小にも減産を行わなかったらどれだけのリスクを抱えるか、あまりリアルには認識していないのでしょう。

上述のように巨額の負債を抱えたデルファイの経営破綻は、要するにGMの体力では支えきれなかったからといっても過言ではありません。また、フィアットとの提携解消を巡る巨額の違約金(15億5000万ユーロ:当時のレートで約2100億円)なども弱り目に祟り目だったでしょう。退職年金や退職者への医療費負担など福利厚生の厚遇も年々ボディーブローのように効いて彼らの体力を奪っていったのでしょう。

ビッグ3がSUVを主軸のひとつとして注力してきたのは確かですが、彼らがそればかり作ってきたわけでないのは言うまでもありません。もちろん、ビッグ3がアメリカ国内市場だけでビジネスをやっているわけではないということも改めて述べる必要はないでしょう。

しかし、日本の大衆メディアは何でも単純に伝えることが「解りやすさ」と勘違いしているようですし、救いようのない自動車業界オンチ揃いです。こうした初歩中の初歩も失念し、子供並みの短絡思考で「燃費の悪いSUVでコケた」と結論を急ぎ、達観したつもりになっているわけですね。

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