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元に戻せば良いというものではない

舛添厚労相の(個人的な)意向である「製造業への派遣禁止」に民主・社民など野党4党も続き、中日新聞も社説でそれに同調しているのは前回お伝えした通りです。しかしながら、彼らはこうした安直な規制強化の弊害をきちんと考えているようには思えません。そんな彼らとは対照的に、日経新聞の社説は冷静に現実を見据えているといえるでしょう。

雇用激震に備え短期・中長期の対策急げ

(前略)

 年明け後、舛添要一厚生労働相が将来は製造業への派遣を制限する考えを表明した。民主党など野党4党も製造業派遣の規制を盛り込んだ法改正案を今国会に出すという。

 製造業への労働者の派遣事業が解禁された2004年以降、各地の製造現場では直接雇用の期間工などを派遣に置き換える動きが広がった。舛添氏の考え方、野党の案ともに細部は不明だが、04年以前の状態に戻すことを狙っているようだ。

 この規制強化は労働市場を不安定にする副作用がある。工場側にとって派遣社員は直接雇用の期間工を雇うのに比べ社会保険手続きなどを派遣会社に任せられる利点がある。働く側からみると派遣制度がないのと比べ雇われやすい。また、すぐに仕事に就けるなどの理由で自ら派遣での就労を希望する人も増えている。そうしたことを考えると多様な雇用形態を残しておくのが望ましい。

 日雇い派遣を原則禁止するために政府が国会に出し継続審議になった法改正案も問題が多い。派遣失業者にとって、今のようなときこそ1日単位で仕事を見付けられる日雇い派遣はありがたいものではないか。

 規制強化に走るのは賢いやり方ではない。国が真っ先に取り組むべきなのは、財政資金や雇用保険に積み立てたお金をうまく使い、緊急避難的に仕事を提供したり失業者が次の職場を遅滞なく見付けられるよう職業訓練をしたりすることだ。

(後略)

(C)日本経済新聞 2009年1月8日


当blogではこれまで「硬直した雇用環境は長期的に見れば国内の雇用を海外へ流出させる恐れがある」という面を強調してきましたが、日経新聞が「労働市場を不安定にする副作用がある」と述べているように短期的なマイナス要因も十二分に考えられます。

また、「派遣失業者にとって、今のようなときこそ1日単位で仕事を見付けられる日雇い派遣はありがたいものではないか」という意見も正論です。こうした短期的な雇用形態でなければなかなか職にありつけない人も少なくないのですから、これを「使い捨て」と表現し、嫌悪する風潮は当事者たちの苦悩をリアルに理解できていないゆえでしょう。

一方、今日の朝日新聞の社説「派遣切り拡大の衝撃―雇用を立て直す契機に」もこの件について述べています。製造業への派遣禁止に関する是非については直接言及していないものの

安全網からこぼれる人をなくすには、まず非正社員を原則としてすべて雇用保険に入れることだ。立場が不安定な非正社員を支えられる仕組みでなければ意味がない。


と述べ、非正規雇用の健全な在り方を提言しています。個人的な印象として、製造業への派遣禁止を唱える風潮に乗るところまでは至っていないだけ朝日新聞にしては上出来だと思います。

そもそも、製造業への派遣が解禁された労派法改正まで国会で議論が紛糾したという印象はありませんでした。そこでこの経緯を改めて調べなおしてみましたが、やはり与党が法案を提出した当初こそ野党からクレームが付いたものの、最終的には自民・民主・公明・自由・社民の共同修正案が提出され、共産党もこれを支持して全会一致という極めて穏やかな採決となっていました。

この決議は2003年5月のことですが、現在のような状況に至ることを当時の国会議員たちは読み切れなかったということですね。それで慌てて元通りにすれば文句はないだろうとでも言うのでしょうか?

この改正法の施行は2004年3月からですが、その後5年弱のあいだ国内にどれだけの雇用が創出され、海外への流出がどの程度抑制されたのかという点もきちんと調査し、評価しておくべきでしょう。大抵の物事には二面性あるいは多面性がありますから、良い面とそうでない面があり、それらをどう評価するかが意思決定において極めて重要なポイントになります。

朝日新聞の社説にも当時は失業率が戦後最悪の状況にあったことが法改正の契機になったという経緯が書かれています。つまり、これを元に戻せば失業率も再び戦後最悪の状況に戻りかねないわけです。ならば、感情論など排除し、こうした点を熟慮しなければなりません。

いま舛添厚労相や野党4党が唱えているような規制強化を敢行し、しばらくして景気が持ち直しても雇用の海外流出が続いて失業率上昇に歯止めがかからなくなっているといった状態は予見し得ることです。そこでまた慌てて規制緩和に転じるなどと日和見な政策転換を繰り返すような馬鹿げた状態になることだけは避けなければなりません。

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