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徹底抗戦(その2)

先般のデトロイトショーで発表された新型インサイトの燃費は、アメリカの規準で41mi/gal(1ガロン当たり41マイル)とされています。この数字だけを見れば現行プリウスの46mi/galにやや劣る程度ということになりますが、ホンダの公称値は実燃費との差が極めて大きいという悪評が高く、私も実際の性能差はもっと大きいのではないかと推測しています。

例えば、中古車買い取り業者のガリバーが運営するCORISMというサイトの企画で現行プリウスとシビックハイブリッドを同条件でテストしています。これによれば、10・15モード燃費で33.0km/Lの現行プリウス(G)が27.8km/Lをマークしたのに対し、シビックハイブリッド(MXB)は31.0km/Lの公称値に対して18.3km/Lという惨憺たる結果でした。このテストでプリウスは公称値と実燃費の差が16%程度でしかなかったのに対し、シビックハイブリッドは40%を超える差が出てしまったわけですね。

また、従来の10・15モードより実走に近いとされるJC08モード燃費では、現行プリウスが29.6km/Lと10%程度しかダウンしていないのに対し、シビックハイブリッドは25.8km/Lと17%近くダウンしている点も気になるところです。

フィットもクラストップレベルの実燃費を誇りますが、10・15モード燃費で24.0km/L(1.3Gの場合)という恐るべき数字をカタログに載せているばっかりに損をしている感じですし、アンチホンダにとって絶好の突っ込みどころになっているようです。「ホンダは実燃費より燃費測定で有利なセッティングにしているのではないか?」などと噂されてしまうのも仕方ないところでしょうか。

こうしたことを考え合わせますと、新型インサイトも実燃費はあまり期待できないように思います。が、予定されている低い価格設定には非常に大きな訴求力があります。前回も触れたように、200万円以下となればカローラの上位モデルともろに競合しますから、プリウスとの比較はあまり重要ではなくなり、カローラより実燃費でずっと優れていながら同価格帯となる点に着目する必要が生じてきます。トヨタもこうした観点からかなりの危機感を抱いているのでしょう。

トヨタ、「プリウス」新旧モデル併売 現行型、200万円程度に

 トヨタ自動車は5月に全面改良するハイブリッド車「プリウス」について、新型と現行モデル車を併売する。新型プリウスはエンジンを大型化することなどから、現行より価格が高くなる見通し。2月にはホンダがハイブリッド車「インサイト」を200万円を切る価格で発売する予定で、トヨタは現行モデルを200万円前後で販売して対抗する。トヨタが同一車種の新旧モデルを併売するのは初めて。

 新型プリウスはエンジン排気量を1500ccから1800ccに拡大し、燃費性能も約1割改善。ガソリン1リットル当たりの走行距離は36―40キロメートルに達する見通し。機能向上に伴い販売価格は200万円台半ばまで上昇するとみられる。現行モデルを取り扱う「トヨタ」店と「トヨペット」店に加え、量販車種を扱う「カローラ」店と「ネッツ」店でも販売する。

(C)NIKKEI NET 2009年1月19日


現行プリウスの最廉価グレードはS“スタンダードパッケージ”(以下、スタンダードパッケージ)といいますが、昨秋の値上げ前は215万円でした。現在はそれが233万円ほどになっていますが、これを新型インサイトに対抗し得る200万円前後に値下げするというわけですね。もちろん、そのまま30万円も値下げすれば、高い値段で買わされたユーザーに対して申し開きができませんから、装備をある程度簡略化することになるようですが。

プリウスSスタンダードパッケージ
PRIUS S“STANDARD package”

余談になりますが、スタンダードパッケージは普通の「S」グレードとの価格差が52,500円しかなく、外観上の違いもホイールキャップが付かないくらいです(プリウスは全車アルミホイールですが、空力特性を向上させるため15インチホイールについてはスタンダードパッケージ以外リム付近に整流効果を狙ったリング状のキャップが付きます)。主要装備もリヤワイパーの間欠動作がない、ラゲッジルームにトノカバーが付かないといった些細な差しかありません。

スタンダードパッケージ最大のネックはメーカーオプションのナビが付けられない点でしょう。プリウスはホーンパッド脇のスイッチでエアコンやオーディオなどの基本的な操作が可能ですが、細かい操作はタッチパネル式の液晶モニタを用います。そのため、一般的なクルマのように2DINサイズのナビを装着するスペースが設けられておらず、ディーラーオプションのナビは設定されていません。もし後付けしたいとなれば、ポータブルナビなどをオンダッシュで装着するか、1DINのスペースが設けられている小物入れを取り外して改造し、インダッシュモニタ式のそれを導入するしかないでしょう。

もっとも、新型が発売されれば当然のことながら上位モデルは新型へ移行し、継続生産される現行モデルは廉価版にオンリーになるでしょう。上位モデルとの価格差を埋め合わせるために標準装備やオプション設定で差別化し、「ナビを付けたければもっと上のグレードにしなさい」といった誘導を行う必要もなくなるハズです。

ハナシを戻しましょうか。新型インサイトは現行プリウスにも劣る燃費性能とプリウスほど作り込まれていない簡略なハイブリッドシステム、プリウスもどきなスタイリングなどクルマおたく的な観点ではあまり高い評価を受けないかも知れません。高校生くらいまでは熱狂的なホンダファンで大のアンチトヨタだった私としても、初代に比べれば遙かにマシと思いますが、ハイブリッド専用車としてのポテンシャルはまだまだプリウスの敵ではないと感じます。

しかしながら、新型インサイトはプリウスとの直接対決を避け、カローラの上位モデルに競合する価格帯に抑えるという、ビジネス的な戦略でかなり上手いところを突いてきたように思います。また、どんなに燃費が良くても高くて買えなければ意味がない、価格を安く抑えて普及を促し、グロスでガソリンの消費を抑えていくのも意味があるとするホンダの言い分も正論です。

トヨタが新型プリウスを発売しても現行モデルを存続させ、その廉価版を併売していくという前代未聞の対抗策でホンダの低価格路線を露骨に潰しに来たということは、それだけホンダの戦略はトヨタを焦らせ、本気にさせたということでしょう。

もしかすると、新型プリウス最大のライバルは現行プリウスだったということになるかも知れません。現行プリウスを廉売して大して利益を上げられず、新型プリウスの販売にも影響して開発費などの償却に時間がかかり、表向きにはホンダとの戦いに勝利したように見えても実際は痛み分けだったということもあり得るかも知れません。

ま、トヨタのことですからそう遠くない将来、プリウスよりワンランク下のハイブリッド専用車を開発してインサイト対策にぶつけてくるかも知れませんけどね。実際、ハイブリッドシステムの小型軽量化とコストダウンを本格的に推し進め、廉価モデルの開発を急がなければならないという方針は既に昨年のパリショーでも公言していましたし。公言したということは、それよりもっと早い段階で社内的な指示が出ているのは違いないでしょう。

プリウスvsインサイトのバトルは、クルマの性能差に見るべきところはなさそうですが、ビジネス面での争いは両者ともかなりの本気モードに突入しているようですから、なかなか面白い展開になってきたように思います。

(おしまい)

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まとめ

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