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リンクザバディはロケフリを超えるか?(その2)

ツインバードのリンクザバディはソニーのロケーションフリー(以下、ロケフリ)のようにネット接続やPCでの利用を想定しておらず、このシステムだけで完結する非常にシンプルなものです。商品の成り立ちはごく普通の家電と変わらない印象で、あまりキワモノっぽい雰囲気は感じません(個人的な感想です)。

送信機には3系統のAV入力があり、そこにチューナーやプレイヤーの類を接続、受信機を内蔵した液晶モニタとは変調方式IEEE802.11a/g/b準拠、搬送周波数帯5GHz(11a)/2.4GHz(11g.b)で繋がります。もちろん、PSPをロケフリに繋ぐときのような初期設定の類も不要です(無線LANやBluetooth、あるいは電子レンジと電波が干渉しているときなど、条件に応じて通信チャンネルを変更することもできます)。

モニタ上部に設けられたキーは入力切替や音量調整、画質調整など簡単な操作しかできませんが、リモコンを使えばそのシグナルが送信機側に送られ、接続されているAV機器を遠隔操作することも可能です。しかも、付属のリモコンは学習機能を備えていますので、殆どのメーカーのリモコンに対応し、かなり込み入った操作もできるようになっています。

リンクザバディ(システム概要)

ただ、このリモコンのシグナルがリンクザバディの送受信機を経て接続されたAV機器に届き、そのリアクションを受けた映像が再びリンクザバディの送受信機を経て液晶モニタに反映されるまで相応のタイムラグがあります。特に問題となるのは早送りや早戻しなどを止めるときで、勘で早めに止めない限り絶対にタイミングが合いません。全般的にも慣れが必要で、せっかちな人は少しイラッと来るかも知れません。もっとも、これはロケフリも全く同じで、こうした方式ではこのタイムラグを少し短めにすることは可能でも、なくすことは不可能でしょう。

防水が売りのザバディシリーズですから、このリンクザバディももちろん防水仕様(JISの旧防水保護等級7防浸形相当)で、リモコンも同様に防水となっています。ロケフリのようにビニール製の防水ケースに入れる必要がないため、その分だけ画面も見やすく、操作性が犠牲になることもなく、音がこもったりもせず、非常にスマートで良い感じです。

液晶パネルは7インチの横長で、比較的安価なカーナビや液晶モニタ付ポータブルDVDプレイヤーなどにも使われているようなレディメイドのパネルになるのだと思います。解像度は480×234ドットですから、PSPと横は同じで縦が若干劣りますが、画面サイズは面積比で2.5倍以上になりますから、少し離れたところに置いても私の視力なら字幕が読みにくいというほどではありません。

個人的にはもう少し価格が上がっても、もうワンランク高解像度であって欲しかったところです。とはいえ、送信機にフルセグチューナーを繋げばワンセグのポータブルテレビとは全く比較にならないクォリティになります。動きが速い映像などでは若干のブロックノイズも出るようですが、この価格帯の商品に求められる性能としては充分に許容範囲といえるレベルかと思います。

映像入力はS端子と、RCA端子が備わる普通のアナログ入力になりますが、この画質なら当然のチョイスでしょう。モニタ側にはヘッドフォン端子のほかに4極ミニジャックになりますが、AV出力も備わっています。テレビモニタなどにつないでビデオトランスミッターとして使用することもできるというわけですね。

最大のネックは電波の到達距離が短いところでしょう。「通信距離の目安は、見通しの良いところで約30mです。」となっていますから、一般的な無線LANと比べてもかなり短めかと思います(ウチで使っている無線LANと比べると1/10くらいでしょうか)。送信機が置いてある部屋からバスルームまで5mくらいしか離れていないのですが、その間に2枚の壁(鉄筋コンクリート製)で隔てられているという建物の構造上の問題も加わっているのか、置く位置を吟味しないと電波が途切れがちになってしまいます。

具体的には、ウチのバスルームはガラスの引き戸になっているのですが、そのアルミ製の桟と同じ高さに置くと電波が遮蔽されてしまうようで、かなり切れ切れになり、場合によっては受信不能になることもあります。これを避けた高さに置けば電波強度を示すインジケーター(携帯電話のそれと同じアンテナマークに3本線)で中強度が示され、特に問題なく使えるようになります。

この辺は電波の出力を上げるなど改善を求めたいところですが、モニタ側からもシグナルを送信していますから、到達距離を伸ばすために出力を上げればバッテリによる駆動時間が短くなってしまうのかも知れません。この辺は色々なバランスの問題もあって難しいところなのでしょう。細かい部分については他にもいくつか気になるところはありますが、35,800円という価格を思えば、これはむしろ賞賛に値する内容だと思います。

ところで、ソニーのロケフリは一昨年の12月にハイビジョン対応のLF-W1HDが発売されました。が、このモデルに関してはネット接続ができないなど、機能が大幅に絞られています。

LF-W1HD.jpg
LF-W1HD

ハイビジョン対応ではありますが、音声はアナログ入力しかできないなど消化不良の感も否めません。また、入力が1系統しかないため、複数のAV機器を切り替えて利用することもできないようです。専用のポータブルモニタなども用意されておらず、PCやPSPなどとの接続も想定されていません。

受信機の増設にも対応していないようですから、例えばリビングルームにあるブルーレイレコーダーをベッドルームのテレビでも使えるようにするといった感じで、送受信機1セット以上の用途拡張は考慮されていないのでしょう。要するに、これまでのようなロケフリのコンセプトとは根本的な考え方が異なり、分野としては同じくソニーから発売されている「ルームリンク」と同列になるのかも知れません。

この割り切り方は、システムそのものの概念が解りにくかったり、セットアップが面倒だったりすると、その分だけマーケットも限られていくということを学習した結果なのかも知れません。が、接続機器を遠隔操作できる高品位ビデオトランスミッターともいうべき商品に「ロケーションフリー」という名はそぐわないような気もします。

せめて、専用のハイビジョン対応ポータブルモニタをラインナップさせるべきでしょう。いまこの原稿を執筆しているVAIO type Tは11.1インチで1366×768ドットの(フルではありませんが)HDパネルで、サイズ的にもかなり手頃な感じです。このパネルを使って受信機一体の防水モニタを作って送受信可能な範囲ならどこでもハイビジョン映像が楽しめるといったシステムにして欲しいところです。

こうしてみますと、ツインバードのリンクザバディはモニタの解像度や電波の到達距離にやや不満はあるものの、リーズナブルな価格、シンプルで扱いやすい構成、全般的なバランスは非常によくできており、私の個人的なニーズにはソニーのロケフリより纏まりが良いという点で勝っているように思います(あくまでも個人的な感想です)。

ロケフリのアイデア自体は非常に優れていると思いますが、商品企画がマーケットニーズを読みきれていないようで、アイデアを生かしきれていない印象です。ま、ソニーは得てして技術屋主導で自己満足に終わってしまうような失敗を過去に何度も繰り返してきたメーカーですが、そういう社風がいまでも息づいているということなのかもしれません。

もしかしたら、ソニーに纏まりの良いロケフリを期待するより、ツインバードにハイクォリティなリンクザバディの上位機種を望んだほうが私の理想に近いものが得られるかも知れません。

(おしまい)

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