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また繰り返される「臭いものに蓋」

先週末、文部科学省が児童・生徒の携帯電話について、小中学校は「持ち込みを原則禁止すべき」とし、高校は「授業中の使用禁止」「校内での使用禁止」を例示し「持ち込み禁止も考えられる」とする指針を都道府県教育委員会などに通知したそうです。五大紙の中で社説に取り上げているのはいまのところ産経新聞だけですが、彼等はこれを「当然」としています。

携帯禁止 依存脱する環境整えたい

 子供の携帯電話に関し文部科学省が小中学校では持ち込みを原則禁止とする通知を出した。高校では校内の使用禁止などを求めている。通知は当然である。

 携帯電話を持つ子供は急速に増え、内閣府調査では小学生で約3割、中学生で約6割、高校生で9割超が使っていると答えた。通話以外にメール交換ができる機能があり、指1本の簡単な操作で情報交換できる。

 便利な一方、性や暴力など有害情報に触れたり、出会い系サイトなどで見知らぬ大人と知り合い犯罪に巻き込まれたりする事件が後を絶たない。悪口が書かれるなどいじめの温床にもなっている。対応が強く求められながら指導は追いつかない現状だ。

(中略)

 地域ぐるみで携帯電話を持たせない運動により、非行を防止しているところもある。四六時中、携帯電話を手放せない子供たちの現状は変えねばならない。社会が連携して歯止めをかけたい。

(C)産経新聞 2009年2月2日


こうした「禁止」を原則とする方針で思い出されるのは「バイク三ない運動」です。「乗らない」「買わない」「(免許を)取らない」というスローガンで高校生をバイクから遠ざけ、事故を起こされて学校に責任が及ぶことのないよう保身をはかり、卒業してからなら思いっきりバイクに乗って死亡事故を引き起こしても構わないとする考え方がかつて全国に蔓延していました。

実際、こうした運動によって高校生のバイク事故を減らす効果はあったようですが、それより上の世代の事故はむしろ増えたといいます。また、こうした運動のエスカレートから福島県では生徒指導の教員が違反生徒をクルマで追走して事故死させるという事件も起こるなど、本末転倒の事態に至りました。さらに、有識者や国会議員などの間からも「バイクに乗る際のルールや危険性を教えるのが教育ではないのか」という声が高まっていきました。

こうした流れに転じて以降、生徒をバイクから遠ざけるのではなく、正しい乗り方を指導する方針に切り替える高校が全国各地増えていき、着実に成果を上げていったといいます。もはや「バイク三ない運動」は過去のものになってきたといっても過言ではないでしょう。

児童・生徒の携帯電話も基本的には同じことです。学校への持ち込みを禁止したところで放課後について規定できないのなら、携帯電話にかかる弊害から子供たちを遠ざけることはできません。そもそも、有害サイトやネットいじめなどの問題は携帯電話に限らず、パソコンによるネット利用でも同じことですから、携帯電話だけを取り沙汰するのは片手落ちもいいところです。

要するに、政府や学校サイドは「自分たちの責任のおよぶ範囲では禁止しているのだから、それ以外のところでどうなろうと知ったことではない」というのが本音なのでしょう。

文科省の通知には「学校や教委が情報モラル教育を充実させることや、保護者に携帯電話の危険性やフィルタリング機能などを説明する機会を設ける」ことを求めているそうです。本気で携帯電話の弊害から子供を守りたいというのであれば、禁止よりもまずこれこそ前面に打ち立て、徹底していくべきでしょう。

しかしながら、その「情報モラル教育」とやらをどのようなカタチで行っていくのか、具体的な指針は全く伝わって来ません。「教育」という面から見れば最も肝心な部分は単なる「かけ声」でしかなく、先んずるのは「禁止」というのでは、「バイク三ない運動」と同じ臭いものに蓋をしただけの教育放棄になるでしょう。

産経新聞は「四六時中、携帯電話を手放せない」ことを単純に害悪だと見なしているようです。ならば、自ら「中毒」と公言し、娘のサッカーの観戦中も携帯電話に目を落として夫人にたしなめられたアメリカの新大統領も徒に美化せず、その人間性を大いに批判すべきです。

多機能携帯電話を手にする米大統領
多機能携帯ブラックベリーを手にするアノ人
セキュリティの問題から当初は手放すよう促されたようですが、
国家安全保障局が高度な暗号技術を導入するなど
セキュリティ機能を高めるため3350ドルの予算を充て、
携帯メール中毒の新大統領に専用機が支給されたといいます。
メディアはこの専用機を「バラックベリー」と呼んでいるそうです。

コメント

いつも興味深く見ております。
産経新聞の書き方は何ですが、携帯電話は基本的に生徒達にはおもちゃですから持ってきて欲しくないと思いますが・・・如何ですかね。

  • 2009/02/04(水) 00:39:01 |
  • URL |
  • cno #-
  • [ 編集]

cnoさん>

ご愛顧賜りまして、有り難うございます。

>携帯電話は基本的に生徒達にはおもちゃ

果たして、全ての生徒についてそういえるでしょうか? 具体的なデータは取られていないと思いますのであくまでも想像になりますが、「時と場所をわきまえるように」という親や教員からの言いつけを守り、コミュニケーションツールとして問題ない使い方ができている生徒も少なくないように思います。

例えば、ある中学生は学校帰りに予約制の英会話教室へ通っているため、学校の授業が終わったら携帯サイトからレッスンの予約を入れ、親にその旨を携帯電話の音声通話で連絡してそのまま英会話教室へ直行するそうです。こうして無駄な時間を省き、何時頃に帰宅できそうだといった連絡もできるようになり、夕飯も家族が揃うことが多くなったというケースもあるそうです。

このような利用方法は当然「おもちゃ」ではなく、立派な「コミュニケーションツール」です。この中学生のように家族とこまめなコミュニケーションをとったり、時間を有効活用するために学校へ携帯電話を持ち込んでいるようなケースでも、これを禁止しなければいけないのでしょうか?

もちろん、授業の妨げになるような使われ方がされているなら厳しく指導するのは当然ですし、そうした指導に従わないなら持ち込み禁止の措置も妥当とすべきでしょう。が、それは個別に対処すべきことで、正しい使い方ができている生徒まで巻き込んで全国一律禁止とする必要はないというのが私の個人的な見解です。

そもそも、望ましくない使い方をしている生徒とそうでない生徒を同列に並べること自体が乱暴すぎると思います。良くない行いをしている人間を野放しにして秩序は維持できませんが、良くない行いをしている人間とそうでない人間を区別せず同じ枠にはめてしまうのも秩序が維持された状態とは言えないでしょう。

こうした見方をすれば、一律禁止は「連帯責任」的な発想だということが解ります。本来であれば問題を起こしている生徒に対してのみ行うべき措置をそうでない生徒にも行うというのは、問題の所在を曖昧にする恐れもあります。よく言われる「連帯責任は無責任」というやつですね。

「学級崩壊」という状況もある現代ですから、中にはとりあえず禁止しなければ収拾がつかないという現場もあるかも知れません。が、それは学校単位で独自に検討すればよいことで、政府が介入して全国展開するようなことではないと思います。

  • 2009/02/05(木) 01:05:25 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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