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発想の転換(その3)

私が1年近く前まで乗っていたS2000のインテリアも決してオシャレではなく、近年のレースカーで常識となっているそれをイメージしたというデジタルメーターもデザイン的に見るべきものはありませんでした。全般的に無骨で、それを「スパルタン」と言い換えれば簡単なのかも知れませんが、デザイナーが良い仕事をしたと思える部分はなかった印象です(あくまでも個人的な感想です)。

マツダや日産は時々気合いを入れ、ペルソナとかティアナのようにインテリアデザインを売りにしたクルマを発売することもあります。が、日本のメーカーは全般的にそれを等閑にする傾向があり、ホンダもオシャレと思ったりカッコいいと思ったりした記憶がありません(あくまでも個人的な感想です)。

インサイトのインパネ周り

インサイトのインテリアも未来的なイメージが膨らむ夢のあるものを狙ったのかも知れませんが、造形的な美しさという点で成功しているとは思えません。わずかな視線移動で直感的に感じることができるメーター配置というようなことを謳っていますが、メーターバイザーの上に脈絡なくポッコリと乗っかっているスピードメーターは非常に無粋な感じです(くどいようですが、あくまでも個人的な感想です)。

もっとも、このメーターこそプリウスとの真っ向勝負を避け、低価格化と同時にホンダが発想を転換して(ある意味、開き直って?)採用した「ドライバー教育」の大きなポイントとなる部分といって差し支えないでしょう。上の写真ではこのスピードメーターの背景色がブルーになっていますが、この色はエコドライブができているほどグリーンに変わっていくのだそうです。

インサイトのコーチング機能
コーチング機能のイメージ

新型インサイトに採用されたエコドライブのアドバイス機能は、「コーチング機能」と称されていますが、最も目に付く位置に最も頻繁に見るメーターを置き、また数値やグラフなどではなく視覚的なイメージとしてエコドライブができているかどうかを常にドライバーに意識させることを狙っているのでしょう。背景色でエコドライブ度を知らせるこれは「アンビエントメーター」と称されていますが、その判定基準はやはりアクセルワークとブレーキングになるようです。このアクセルワークやブレーキングについてはさらに専用のインフォメーションが設けられています。

従来のメーターが備わるその中央に配置されたタコメーターの内側には「マルチインフォメーション・ディスプレイ」と称する表示スペースが設けられています。ここには「エコドライブバー」と称するインジケーターを表示し、加速や減速の度合いを視覚的に解りやすく示すことでエコドライブの大敵である急発進・急加速や急制動などを抑え、適切なアクセルワークやブレーキングを理解するためのアドバイスとするようです。

加速時はバーが右に、減速時はバーが左に伸びるそうですが、できるだけクリアゾーンに収るようにし、バーの伸びが小さいほどエコドライブになっているとされています。また、その評価がスピードメーターの背景色「アンビエントメーター」と連動しているため、常にこのバーの動きを目で追う必要はなく、自然に視界に入ってくるその色でイメージ的に伝えようということなのでしょう。

さらに、「ティーチング機能」と名付けられた評価機能も設けられています。「コーチング機能」で示されたインフォメーションのログなどが残され、どれだけエコドライブが出来ていたか採点されるそうです。その結果も蓄積されて、どれだけエコドライブのスキルを身につけてきたか、その成長度合いをグラフなどで示したりする機能も設けられています。これは努力を継続する良い動機付けにもなると思いますし、プリウスの燃費データ表示よりずっと直接的にエコドライブを促すものといえるでしょう。

インサイトのティーチング機能
ティーチング機能のイメージ
メーカーオプションのHDDナビを装着すると、ナビの液晶画面を用い
さらに詳しくエコドライブ度を分析、アドバイスしてくれるそうです。


昔なら、このように出しゃばった機能は敬遠されたかも知れません。「クルマに運転技術を採点されるなどゴメンだ」と思う人もいたでしょう。ホンダもその辺を憂慮して心を砕いたのかも知れません。その表示方法などについてはより解りやすく、尚かつ嫌味にならないよう、様々なパターンを試して機能を絞り込んできたような雰囲気を感じます。少なくとも、私の印象としてこのようなインフォメーションであれば全く違和感なく受け容れられます。

実際のところ、カラオケでどれだけ上手く歌えたか(というより、「どれだけ楽譜どおりに歌えたか」でしょうか?)という採点機能も喜んで使う人は沢山いますから、機械に判定されたり指南されたりすることに全く抵抗のない人も沢山いるでしょう(私はカラオケの採点機能など使いたくありませんけど)。

現在はユーザーの省エネ意識もかつてないレベルに高まっていますから、むしろこうした機能は望まれ、ゲーム感覚で楽しむ人も少なくないと思います。ま、かく言う私もプリウスの燃費データを見て結果が良ければ満足し、悪ければ残念に思いますますから、ゲーム感覚で楽しんでいる部分は確かにあります。

ただ、普通に乗れば誰でも20km/L前後くらいはいける現行プリウスに対し、クルマの言い付けを忠実に守って大人しく走ってもそれと大して変わらなかったり、劣っていたりするほど新型インサイトの実燃費が悪かったとしたら、幻滅される恐れもあります。実際、以前にもプリウスが27.8km/Lだった条件でシビックハイブリッドは18.3km/Lだったという例をご紹介しましたように、ホンダの実燃費はカタログ値より大きく劣る傾向がありますから、可能性として充分にあり得ることです。

新型インサイトの低価格は非常に大きな訴求力になっていると思いますが、新型プリウスが発売された暁には現行プリウスが10万円程度の価格差で迎撃態勢に入ると予告されています。姿形はよく似ていますが、考え方はかなり異なる両者に対してマーケットがどのような評価を下すのか、私の興味は益々深まってきました。

ここでホンダに対して一つ注文をつけたいのは、「エコカー」とか「グリーンマシーン」などと標榜しておきながら環境負荷に対する評価が全く不充分で、ありがちなイメージ先行になっているところです。公式サイトにある「燃費・環境性能」で「ひとりでもたくさんの人にハイブリッドカーを届けることができれば、地球全体としてCO2の排出を削減することができるはず。」と述べていますが、その根拠となるデータは現在のところ何一つ示されていません。

ハイブリッド車はモーターやバッテリーなどが普通のクルマより余計に搭載されていたり、その容量が普通のクルマに搭載されているそれよりずっと大きかったりします。また、それらを制御するためのインバータなど生産時に大変なエネルギー投入が必要な半導体デバイスも必要になりますから、その分だけイニシャルでかかる環境負荷が大きくなりがちです。

つまり、ただ「燃費が良い」というだけで「環境負荷が小さい」と結論づけるのは、部分比較による不正確な情報になりかねないわけです。以前、当blogでもプリウスについて単純計算で比較してみましたが、生涯走行距離が短いほどハイブリッド車はアンチエコカーとなる可能性も高まってくるというジレンマを抱えています。

プリウスの場合、評価結果を指数で示すなどやや疑問な点こそありますが、一応LCAを示し、従来のガソリンエンジンだけのクルマと生涯にかかる環境負荷にどの程度の差が生じるか比較しています。ま、これとて第三者機関による評価ではないようですから、どこまでアテになるのかは解りません。が、何も検討せず何も示さず、ただイメージだけを伝えるよりはマシでしょう。

こうした評価を一切行わず、青空と緑の大地と子供の絵を掲げてイメージに訴えかけようとするインサイトのプロモーションは、宗教的な領域にとどまっているといわざるを得ません。環境問題についてきちんと勉強している人には「環境負荷に対する評価の仕方でもホンダはトヨタに大きく遅れをとっている」といった印象を抱かれてしまいかねません。

当blogにも「プリウス LCA」というキーワード検索でアクセスされる方が時々います。それだけ「ハイブリッド車=エコカー」という世間一般の認識に疑いを持っている人がいるということでしょう。こうした核心を突いてくる人たちの存在を軽視し、適当なところで見切ってイメージ戦略に走るようでは、いつまで経ってもプリウスを超えるようなクルマを作ることなどできないかも知れません。

(おしまい)

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