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ラチェットアダプターの正しい使い方

キリン・ファイアのテレビCMで福山雅治がランサー・エボリューションのメンテをしている『マ、イイカ』篇がオンエアされていますが、どうもあの工具の使い方が素人じみていて非常に気になります。

彼が手にしているのはラチェットアダプターにスライドTハンドルを組み合わせたものです。ラチェットアダプターをご存じない方のために説明しておきますと、これはラチェット機構の上下にメスとオスの差し込み角が設けられたもので、一般的に丸形のラチェットハンドルに用いられるヘッド部がベースになっています。

nepros_nbra3(1).jpg
KTC NEPROS NBRA3
件のCMで使われているのはスナップオンのTM67Aあたりかと思いますが、
これは私が愛用しているKTCネプロスのラチェットアダプターです。


もちろん、これ単体で大したトルクはかけられませんから、上部にあるメスの差し込み角にハンドルを取り付けて使用しますが、定番はやはりスライドTハンドルとの組み合わせになるでしょう。また、下部にあるオスの差し込み角にはエクステンションバーを取り付けるのも定番で、Tレンチにラチェットが組み合わさったような工具として用いるのが一般的です。

nepros_nbra3(2).jpg

世間一般の認知度はあまり高くないかもしれませんが、ハンドツールを扱ったムックなどではよく紹介されますから、このジャンルに興味のある人の間ではよく知られているでしょう。実際に使ってみるとこれがなかなか便利で、私も好んでよく使うアイテムの一つです。最初にこれを商品化したのはスナップオンになると思いますが、日本でもずいぶん前からKTCやコーケンなどから類似品が発売され、一部では定着してきたと思います。

で、件のCMですが、福山雅治(というより、彼に演技指導した演出家)がこの工具を使いこなせていないと思うのは、Tハンドルの中心付近を持ってラチェット機構を用い、往復運動で使っていたからです。

キリン・ファイア『マ、イイカ』篇

そもそも、Tハンドルを使うメリットというのは、まだ締め付けが緩い仮締めの状態(あるいは、高トルクが必要なくなってきた状態からの緩め)で迅速に作業を進められるという点にあるんですね。Tハンドルに人差し指(ま、他の指でも構わないと思いますが)を添え、クランクを回すような感じで円を描くようにクルクルと回してやれば、ラチェットで片道が空回りとなる往復運動より遙かに素早くボルトやナットを締めたり緩めたりできるわけです。

障害物があってハンドルを動かせる範囲が限られていたり、大きなトルクをかけるためにリーチの長いハンドルを用いる場合などを除き、往復運動ではなく回転運動になるような工具の動かし方をするほうが作業のスピードアップにつなげられる訳ですね。

ラチェットアダプターにスライドTハンドルを組み合わせたこのアイテムを有効に使いこなすとしたら、まずは上述のように指先でクランクを回すような要領で早回しし、大きなトルクが必要になる本締めの段階になってきたらTハンドルをスライドさせてリーチを長くし、ラチェット機構を活用して締め込んでいくというパターンがベストでしょう。緩めるときはこの逆になるのは言うまでもありません。

nepros_nbra3(3).jpg

こうすれば小さなトルクで回せる段階は素早く、大きなトルクが必要になってもハンドルをスライドさせるだけでそこそこのリーチがあるラチェットハンドルに早変わりしますから必要なトルクがかけられ、いちいち工具を持ち変える必要もありません。工具を持ち替える時間も無駄にしないアイテムともいえるでしょう。

逆に、こうした使い方をせず、CMで彼がやっているような使い方なら、普通のラチェットハンドルでもできることです。ハンドルではなくヘッドの部分を持って捻るように回してやれば状態としては殆ど同じになるわけですね。こうした使い方は少しラチェットハンドルに慣れた人なら誰でもやっているでしょう。

ラチェットアダプターは丸形のヘッドと同じ機構を用いていますから、見た目では駆動方向が解らないというデメリットがあります。また、ラチェットハンドルほどメジャーでないゆえマーケット規模も小さく、その分だけ値も張ります。普通のラチェットハンドルでできるような使い方をするのなら、わざわざコレを使う意味がないと思うんですけどねぇ。

私も本職の担当業務では基本的に工具を持つ立場にありませんが、何だかんだと工具が必要になる場面が巡って来ます。趣味で自転車をバラしたり組んだり、かつては愛車のユーノス・ロードスターにウマ(リジットラック)をかけて一日その下に潜り込んでいたこともありましたので、工具の扱いについてド素人というレベルではない自負もあります。が、プロのメカニックの方に比べると、格段に劣っているのはよく自覚しています。

もちろん、プロといってもピンキリですから、中には「プロのくせに解ってないな」と思わせる人もいます。が、本当に凄い人は判断も動作も何もかもが素早く的確で、一切の無駄がないんですね。やってはいけないことと知りつつ作業性を重視して(例えば、ホイールナットのインパクトレンチ一気締めとかを)やってしまうプロもいますが、一流のプロはそういう不適切なことは原則としてやらないんですね。

「原則として」と付したのは、不適切な処置でもやらなければ前に進むことも後に戻ることも出来ないことが現実には起こるからですが、その辺は臨機応変に対応し、単なる手抜きとしては絶対にやらないということです。それでいて、他の誰よりも作業が早かったりするんですね。そういう人は常に頭を使っているので、傍から作業を見ているだけで「おお、なるほど!」と思わされるシーンがよくあります。

ま、缶コーヒーのテレビCMごときに「おお、なるほど!」というシーンを望みはしませんが、「ちゃんと解ってるね」と思わせるだけでもかなり違ったと思います。「妥協ゼロ。糖分ゼロ。」というキャッチコピーなのですから、プロのメカニックに監修させるなどしてCMの演出も妥協することなく徹底して欲しかったところです。

とはいえ、まだメジャーとは言い難いラチェットアダプターを使っていたところはチョットだけ褒めてあげたいと思います。あのアイテムはもっと普及して、価格ももっと下がって欲しいというのが私の長年の希望ですから。

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  • 2011/09/11(日) 00:46:22 |
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