酒と蘊蓄の日々

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ブレる主張

中日新聞が圧倒的なシェアを握っている名古屋圏はトヨタのお膝元でもあるせいか、同紙は社説で自動車業界絡みのネタを取り上げる機会が比較的多いように感じます。しかし、立場は一方的といって良いほど労働者サイドに大きく偏っています。以前、当blogで取り上げた今年1月7日付の社説は派遣切りを感情的にひたすら批判する内容で、法改正を以てこれを禁止するよう求め、以下のような言いがかりというべきことまで書かれていました。

 自動車や電機産業などでの最近の派遣社員や期間従業員の解雇ラッシュは目に余るものがある。経費節減や役員報酬カットなど自助努力もしない段階から派遣切りでは、国民の理解は得られまい。


以前に述べたことの繰り返しになりますが、トヨタの場合は管理職約8700人の賞与が10%カットされたり、3月期の役員賞与はゼロとなる予定だったりします。ま、この一節はトヨタに向けて発せられたものというわけでもありませんが、「自動車メーカーは非正規雇用を切る前に経費を節減しやがれ」という意思が込められているのは間違いありません。しかし、昨日(2月19日)付の社説ではこんなことを述べています。

賃上げ要求 不況だから意味がある

 人員削減や賃金カットが広がる中、トヨタ自動車など主要労組が春闘要求を提出した。賃上げは困難との空気だが、要求無くして労働者の待遇改善はない。労組は全力を挙げて交渉に臨むべきだ。

(中略)

 〇七年十月まで続いた戦後最長の景気拡大でも労働者の所得は減り続けた。春闘で訴えている所得分配のゆがみ是正や物価上昇による所得目減り分の回復などの要求は理解できる。不況克服には従業員の士気向上が不可欠だろう。

 一方、経営側は今年の賃上げに否定的だ。トヨタ自動車幹部は「賃上げどころか賃金維持分の確保すら極めて難しい」とベア拒否の構えだ。苦しい経営事情はわかるがここは一段の配慮を求めたい。

 主要企業の労使交渉は三月中旬の集中回答日に向けていよいよ本格化する。春闘は中小企業労働者のほかパートや障害者など非正規労働者の待遇改善にもつながる。連合は賃上げや雇用対策で成果を上げ、ナショナルセンターとしての責任を果たしてもらいたい。

(C)中日新聞 2009年2月19日


企業が投じられる経費には限りがあり、人件費もまた上限を設定していない企業などあり得ないでしょう。まして、コスト管理ということにおいてトヨタほどのレベルでそれを徹底している企業は世界的に見ても多くありません。そんなことはほんの僅かでもこの業界を眺めたことのある者なら知らないわけがありません。

トヨタは基本的に無駄なコストを許しませんから、初めから余裕は設けられていないでしょう。正規雇用の賃金を引き上げれば、必然的に非正規の雇用そのものを減らすなど、何らかの方法で調整が必要になってくるハズです。現実問題として正規雇用のベースアップと同時に「非正規労働者の待遇改善にもつながる」ような労使交渉が可能だとしたら、それは現在と正反対の景気拡大局面でしかあり得ないでしょう。この不況下でそれが可能だと信じているこの論説委員の思考回路がどうなっているのか、私には想像もつきません。

中日新聞は「経費節減や役員報酬カットなど自助努力もしない」などと言いがかりを付けるような社説を書いておきながら、僅か1ヶ月半足らずでベースアップ(=経費増大)要求を応援する社説を書いています。こうした矛盾に気付いていないのは企業経営の基本を全く理解していないからでしょう。労働者の立場に立つことは決して悪いことではありませんが、視点がブレまくった独善的な主張を展開しているようではジャーナリズムとしての信頼を損なうだけです。

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