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バイオディーゼル燃料も問題山積 (その2)

バイオディーゼル燃料はバージン油を用いる場合も廃食用油をリサイクルする場合も現実には化石燃料の投入が不可欠で、実質的にカーボンニュートラルにはなっておらず、「本当に有効なエネルギー利用になっているのか?」という点があまり明確になっていません。廃食用油のリサイクルについては前回述べたとおりですが、バージン油でもエネルギー収支が本当に充分な黒字になっていて効果的な化石燃料の消費削減に繋がっているのかという疑いが持たれています。

例えば、大豆からバイオディーゼル燃料を生産するとエネルギー収支は約27%の赤字になり、却って多くの化石燃料を消費していることになるというレポートもあるそうです。ま、この種のレポートは賛否各々の持説にとって都合の良い値を採用し、意図的に結果が操作されてしまうこともあるでしょうから、どこまで信頼できるか非常に難しいところですが。

同様のハナシはよくあることで、例えば、NGO法人の環境団体、気候ネットワークは住宅をオール電化にするとCO2排出量を69%増加させると結論づけていますが、財団法人中央研究所はオール電化で16%削減できるとし、気候ネットワークの試算は前提条件に事実誤認があるとしています。ガス事業者向けサイトは前者を大々的に取り上げており、各々が自分たちの立場に都合の良いものを信じようとする対立ドグマとなっています。こうなるともう宗教紛争と何ら変わりませんね。

また、バイオディーゼル燃料の問題点はエネルギーの有効活用云々にとどまるものではありません。以前にも取り上げましたが、「環境に優しい」との触れ込みで普及が促進されていながら総合的な評価を受けている訳ではなく、むしろ部分的なメリットだけがクローズアップされ、イメージばかりが先行しているというケースは珍しくないようです。バイオディーゼル燃料もまさにイメージばかり先行し、デメリットが話題になることは極めて希で、例のNHKの中継車なども私が視聴していた範囲ではメリットしか伝えていなかったと記憶しています。

しかし、今月10日、国土交通省の自動車交通局技術安全部環境課が「高濃度バイオディーゼル燃料等の使用による車両不具合等防止のためのガイドライン」を制定した旨、パブリシティしました。一口にバイオディーゼル燃料といっても軽油のように全てがきちんと規格化されておらず、場合によっては車両に不具合を起こすことがあるそうです。

実際、同省が2006年に廃食用油由来のバイオディーゼル燃料の利用者を対象として実施したアンケートによれば、回答のあった127件のうち57件(約45%)という非常に高い頻度で不具合が発生していました。わざわざガイドラインを設けるに至ったということは、この高頻度で発生する不具合を看過できないと判断したからでしょう。

詳しくは上のリンク先にある添付資料をご参照頂きたいと思いますが、大まかに言えば軽油に植物油から精製されたFAME(脂肪酸メチルエステル)を質量分率5%超で混合したバイオディーゼル燃料は、以下のような不具合を起こすことがあるそうです。

・燃料フィルターの目詰まり
・燃料噴射ポンプの焼付き、寿命低下
・燃料噴射ノズルのコーキング、詰まり
・燃料系ホース、キャップシーリング材等の劣化、膨潤
・燃料系金属部品の腐食
・エンジン始動性低下
・エンジン回転不安定
・エンジン焼き付き
・エンジンオイルの劣化
・PM(粒子状物質)の増加
・NOx(窒素酸化物)の増加
・DPF(粒子状物質減少装置)自動再生装置の機能不全
・NOx吸蔵還元触媒システムの機能不全
・尿素SCR(NOx減少装置)システムの機能不全
・EGR(排ガス再循環)システム等の吸気系部品の機能不全

大きく分ければ、燃料系、エンジン本体、排気系や排ガス成分にかかる問題になりますが、普通に売られている軽油を使う限りにおいては滅多に起こらないトラブルがこれだけズラリと並んでしまうと、もはや「粗悪燃料」というべきでしょう。5%以下の混合燃料(B5)についてはJIS規格(JIS K 2390)が設けられており、特に問題はないようです。が、5%超に関して国土交通省は適切な車両改造、点検整備の実施を推奨しています。

そもそも、今日のディーゼルエンジンは排出ガスに含まれる大気汚染物質などを減らすために様々な技術が駆使されており、それらの技術はきちんと規格化された軽油に最適化されています。ですから、規格外の燃料を用いて不具合が生じたり、排出ガスに含まれる大気汚染物質が増えてしまったりするのはむしろ当然というべきなんですね。

バイオディーゼル燃料による不具合の事例
バイオディーゼル燃料による不具合の事例
ご覧のように燃料タンクが腐食したり
燃料噴射ノズルにカーボンデポジットが付着するなど
高濃度バイオディーゼル燃料の使用に当たって
相応の対策を実施しないと様々なトラブルが
かなりの頻度で発生するようです。


ま、この辺は使用するバイオディーゼル燃料に合わせた改造や調整などを行えば克服できない問題でもないと思いますが、何より植物油はその原料によって成分が異なります。場合によっては使用された農薬の影響を受けることもあります。FAMEに変換しても低温下での流動性やエンジン内部での熱安定性などの性状は、どのような原料油脂を使用するかに強く影響されるため、なかなか一筋縄ではいかないと思います。

バイオディーゼル燃料の原料となる油脂を特定の植物に限定し、厳しい基準を設けてしまうと、その普及の妨げになってしまうでしょう。が、広範囲で認めるとなると燃料性状の問題から最適化が難しくなり、運用に手間やコストがかかったり、却って大気汚染物質を多く排出してしまう恐れもあり、それこそ本末転倒の事態に陥る可能性も生じてしまうわけです。

バイオマス燃料の利用が本当に良いこと尽くめで問題はコストだけというのならば、政府や自治体などが補助金を出して普及を促すのも良いでしょう。しかしながら、現実には数多の問題が山積しており、そこにはエンジンや補器類のトラブルを招くだけでなく別の環境負荷を高めかねない要素も含まれます。そうした実態を顧みず、「バイオマス燃料は環境に良い」というイメージを徒に膨らませて妄信してしまうのは愚かなことです。

アメリカの新政権は風力発電や太陽光発電のほかにもこうしたバイオマス燃料開発を積極的に推進していく方針です。これを「グリーン・ニューディール」などと称することで大衆にアピールするイメージキャンペーンとして大いに盛り上がっています。その裏には穀物メジャーの影響力も見え隠れしていたりしますが、日本のメディアの多くはこれを理想的な政策であると盲信し、崇拝しています。

殆どの物事には二面性あるいは多面性があり、良いこと尽くめというケースはそれほど多くないでしょう。「持続可能エネルギー」などと呼ばれるこれらのエネルギー政策を推進しようとする人たちは良い部分を大々的にアピールする一方、悪い部分については積極的に周知させる気はないようです。ま、普通に物を作って売る場合もわざわざ欠点を宣伝することはありませんから、ごく自然な流れではありますが。

私たちが日常的に物を買うときは欠点についても確認しようとするでしょう。しかし、環境保全がらみの物やシステムを考えるときは良い部分ばかりがクローズアップされ、欠点については「これから技術が進めば何とかなるに違いない」と、極めて楽観的になってしまうことが多いように思います。さらに酷いエコミーハーたちはデメリットについて何の知識もなければ興味すらなく、メリットだけを宗教的に崇拝してしまいます。

日本の大衆メディアがイメージ先行の似非エコキャンペーンを煽動する傾向が強いのは、要するに彼等の多くがエコミーハーだからなのでしょう。

(おしまい)

コメント

寒冷地では使えないバイオディーゼル燃料

バイオディーゼル燃料の最大の弱点は、日中も外気が氷点下になる寒冷地の冬場に、屋外で用いる車両や発電機の燃料としては、全く使い物にならない点だと思います。
仕事の関係で、北海道の建設機械リース業の方から、トラブル事例を直接聞きましたので、間違いありません。

  • 2009/02/26(木) 13:38:09 |
  • URL |
  • スパイラルドラゴン #CeIfeFHM
  • [ 編集]

>スパイラルドラゴンさん

寒冷地においては軽油でも難しい場合があるんですね。私の会社のスタッフが北海道で開催された展示会に製品を出展するため、フェリーで苫小牧に着いてから給油したのですが、会場(確か網走)へ向かう途中に燃料の凍結でエンコしてしまったという経験をしています。

そのとき入れた軽油は3号(流動点=凍結限界温度-20℃以下)だったと思われますが、シャーベット状に凍り始めて燃料フィルターを通らなくなってくる「目詰まり点」は-12℃以下なんですね。市販の軽油で最も流動点が低い特3号(-30℃以下)でも目詰まり点は-19℃以下ですから、本当に寒いところへ行くと市販の軽油では動けなくなってしまうことがあるそうです。

そういう場合どうするかといいますと、本当はいけない事なのですが、灯油を混ぜてしまうんですね。実際、JAFでも緊急避難的な措置としてこの手を使うことがあるそうです。

バイオディーゼル燃料は全般的に流動点が高めですから、軽油よりさらに条件が悪く、残留水分もフィルターの目詰まりを引き起こす原因になるようです。が、残留水分量を減らし、ポリメタクリレートやアルキル化芳香族化合物などの流動点降下剤を添加した寒冷地対応のバイオディーゼル燃料の開発も進められているようですから、ある程度は対応可能ではないかと思います。

また、バイオディーゼル燃料用の流動点降下剤も既に市販されています。
Arctic Express Biodiesel Antigel (Power Service Products)
http://www.powerservice.com/aeba/
Wintron XC30 (Biofuel Systems Limited)
http://www.biofuelsystems.com/shop/

さらに、こうした化学的な対処法とは別に燃料ヒーターという物理的な手段もあります。

問題は、こうして追加投入されるエネルギーをどう評価するかですね。水分を抜いたり添加剤を加えたり、電気ヒーターで熱を与えたり、寒冷地でもバイオディーゼル燃料を使うために投入される余計なエネルギーを積算して本当にバイオディーゼル燃料を使用する意義があるのか、エネルギー収支がちゃんと黒字になっているのか、その辺もLCA的な検討をしなければエコと認めるべきではないと思います。

また、添加された流動点降下剤が大気汚染物質を増やすなどの環境負荷になっていないかもきちんと調査し、総合的に評価しなければなりませんね。こうしたことを怠って、メリットだけを唱え続けるというのでは、イメージ先行の似非エコキャンペーンになりかねません。

  • 2009/02/27(金) 00:26:57 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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