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MD-11はやはり欠陥機か? (その1)

ご存じのように成田空港で貨物機が着陸に失敗し、炎上するという大きな事故が起こりました。私の個人的な感想を率直に述べさせて頂きますと、「またか」の一語に尽きます。

メディアはあまり詳しく伝えていないようですが、この事故を起こしたMD-11はかなり危険な機体で、全損事故率が100万便あたり3.45回(2005年までのデータですので今回の事故は含みません)という非常に高い値になっています。これは第4世代機としてダントツNo.1で、2位となっているA310の2倍を超えます。着陸に失敗して滑走路で裏返しになった事故も今回で3度目、フェデックスが所有しているMD-11が全損事故を起こしたのも今回で3度目です。


MD-11

機体破損に至らないマイナーアクシデントとなれば枚挙に暇がなく、この機体の危険性が広く認識されるようになったせいか、旅客機として導入されたMD-11の多くは下取りされ、貨物機に改装されています(確認していませんが、今回の事故機も同様の経緯になるかも知れません)。

追記:調べてみましたところ、やはり当該機は旅客機から改装されてものでした。この機体はMD-11F型で登録番号はN526FE、製造年月は1993年11月となっています。アメリカのデルタ航空で旅客機として使用されるも、2004年にフェデックスへ売却され、貨物機へ改装されて2006年から就航、総飛行時間は4万706時間とのことです。

なので、現在でも旅客機として運行されているMD-11は数えるほどしかなく、私がこの旅客機バージョンを目撃したのは数年前の成田が最後で、成田~サンパウロを往復していたヴァリグブラジル航空の機体でした。現在でも日本に乗り入れているMD-11はフィンランド航空だけのようです。関空~ヘルシンキをフライトされる方は要チェックかも知れません。

このMD-11は燃費の良いハイテク次世代機という前評判でJALも1993年から10機導入、「J-bird」(サッカーのJリーグ発足と同じ年ですから、それにあやかったネーミングだったのかも知れません)と称し、また1機1機に「イヌワシ」とか「ライチョウ」などという個別の愛称まで付け、テレビCMも流し、鳴り物入りで就航させたんですね。

ところが、1997年に香港(啓徳)~名古屋のJAL706便が志摩半島上空で姿勢を大きく乱し、4名が重傷を負う事故を起こしました。このとき脳挫傷などで意識不明となった客室乗務員は昏睡状態から回復することなく、1年8ヶ月後に亡くなっています。

直後の段階では死者もなく重軽傷者14名とされたこの事故をメディアは「乱気流に巻き込まれた」くらいの極めて簡略な報道しかしませんでしたが、後にパイロットが被告となる刑事裁判に発展しています。この裁判はパイロットの操縦ミスか機体の欠陥かが争点となりましたが、判決は「操縦システムの不具合が原因」とし、パイロットの無罪が確定しています。

こうして味噌が付いたせいか、JALは所有する全てのMD-11を2004年までに退役させました。MD-11はDC-10の後継機になりますが、JALが最後のDC-10を退役させたのはMD-11全機退役の翌年のことですから、如何に異例の早期退役だったかが伺えます。こうして僅か10年ほどでJALが手放したMD-11もやはり貨物機に改装され、現在はUPSが運行しています。

ま、いまでもこの機体を巡っては様々な論争がありますので私のような素人が結論づけることなどできませんが、ハイテクに依存しながら熟成が足りなかった操縦システムが問題なのではないかと思っています。また、そうした中で採用された「CGコントロール」というシステム(詳しくは次回に)も鍵になっているような気がします。

エルロンリバーサル」と題した他愛のないエントリ(でも、ググるとかなり上位にヒットするんですよねぇ)で軽く触れていますが、航空機の重心は「風圧中心」と呼ばれるポイントより前方に設定するのが一般的なんですね。「風圧中心」について詳しく述べているとハナシが進まなくなりますので大雑把に説明しますと、「主翼によって生じる揚力が機体の一点に作用すると考えた場合の作用点」といった感じでしょうか。もう少し噛み砕きますと、「機体を空へ引き上げる力が働く中心点」といった感じでイメージして頂いても大きな間違いはないかと思います。

この風圧中心は翼の仰角によって移動します(同時にベクトルの向きも大きさも変化します)し、重心は旅客や貨物の搭載状態などによって移動します。ですから、元々の機体重心を前方に寄せ、そのままでは前のめりになるような状態にしておき、水平尾翼でダウンフォース(下向きの力)をかけてやることで機体の前後方向の姿勢を保つのが一般的なんですね。

重心が風圧中心より前に行けば行くほど水平尾翼のダウンフォースを増やしてやる必要があるため、空気抵抗が増えて燃費は悪くなります。が、これら下向きの力と揚力とのせめぎ合いが強くなれば機体の安定性は高まります。つまり、空力的な安定性と空力的な燃費特性とは概ねトレードオフの関係になると見て良いかと思います。

空力スタビリティの概念
主翼によって生じる揚力で飛行機は空に引き上げられます。
大雑把に言いますと、その力の中心点が「風圧中心」で、
これより前方に重心を置けば機体は前のめりになります。
それに拮抗するよう水平尾翼で下向きの力を与え、
機体前後方向のバランスを取るわけですね。
重心による下向きの力と水平尾翼による下向きの力が
主翼による上向きの力とせめぎ合うことで機体は安定します。
これらの力が強くなるほど安定性は増しますが、
その分だけ空気抵抗が増え、速力や燃費が損なわれます。
(上図はあくまでも概念を示すもので、風圧中心や機体重心の位置
ベクトルの大きさなどは厳密なものではありません。)


で、MD-11はこうした水平尾翼のダウンフォースを減らし、空気抵抗を減らして燃費を向上させることに重きが置かれました。あくまでも私の主観ですが、「MD-11は燃費を優先して空力的な安定性を犠牲にした機体」というべきかも知れません。

(つづく)

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