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朝日新聞も原発活用へ転身

最近は読売新聞も真っ青というくらい右に傾いている産経新聞は随分前から「地球温暖化対策として原発を推進すべし」といった主旨を声高に唱えてきました。かつては殆どの国内メディアが原発に批判的だったことを思えば、地球温暖化問題の影響力はやはり凄まじいものがあります。それでもリベラルなメディアは原発について反対や慎重論を根強く唱え続けていました。が、ここに来て朝日新聞もついに転身したようです。

原発と温暖化―安全に、うまく使いたい

(前略)

 原発稼働率が落ちることで不足する電力は主に火力発電で補われるため、二酸化炭素(CO2)の排出が増えてしまう。稼働率の低迷は、地球温暖化の防止の点から問題を抱えている。

 温室効果ガスの削減を先進国に義務づけた京都議定書で、日本は「08~12年度の平均で90年比6%削減」という義務を負っている。それ以降の次期枠組みでは、さらに意欲的な削減目標を国際的に求められるだろう。

 原発は運転の際にCO2をほとんど出さない。さまざまな負の側面を抱えているとはいえ、こうした国際公約を達成するには、少なくとも当面の間は、安全性に配慮しつつ今ある原発を活用せざるをえない。

 今年、原発の定期検査の間隔を、従来の13カ月から最大24カ月にまで広げることに道を開く新たな仕組みができた。政府が安全性を認めた原発に適用される。電力各社の品質管理の努力によっては、諸外国なみの稼働率の実現も可能になる。

(中略)

 だが、そもそも原発の新たな立地が難しいことを考えると、原発にばかり依存していては日本の温暖化対策は進まない。

 社会や産業のグリーン化で温暖化に立ち向かうことを基本にしたい。長い目で見れば、自然エネルギーの拡大やエコカーの普及など、原発に頼らない低炭素化の充実が不可欠だ。

(C)朝日新聞 2009年5月6日


ま、朝日新聞の論旨は産経新聞のようにあからさまな原発推進ではなく、「原発に頼らない低炭素化の充実」に至るまで当面の間、今ある50基あまりの商用原発の稼働率を上げてCO2排出量を削減すべしといったところなのでしょう。が、9年前にドイツ国内の電力4社が19基ある原発を段階的に全廃する方向で政府と合意したとき、朝日新聞は社説でこのようなことを述べていました。

「原発を増やせる時代ではなくなった。ドイツでは、先進国が共通して直面するこの現実を政治が受け止め、新しい道を示した」「日本への新鮮なメッセージである」

要するに、「日本もドイツを見習って脱原発に邁進すべし」ということを暗に唱えていたわけですね。このことを思えば、原発の活用を訴える今回の内容は転身と見て間違いないでしょう。地球温暖化問題を巡って、当初から原発業界の陰謀説は語り草になってきましたが、こうした意識の変化を見れば疑惑の目で見られるのも無理からぬことです。

余談になりますが、日本のメディアはあのドイツでの合意を「脱原発宣言」と受け止めたようですが、あの段階では具体的な全廃時期が示されておらず、安全基準を維持して法律に則っている限り、寿命を全うするまでの操業を保証していました。なので、ドイツ国内のメディアや環境保護団体からはむしろ非難の声が上がっていたといいます。こうした事実関係を彼等は知らず、いつもの曲解で崇拝していたわけですね。

それはともかく、上掲の社説では「原発は運転の際にCO2をほとんど出さない」とし、わざわざ「運転の際」と断りを入れています。つまり、これを書いた論説委員も核燃料の精製や核廃棄物の処理などに莫大なエネルギーが投入されることを知っており、システム全般を考慮すれば相応のCO2が排出されることをちゃんと認識しているわけです。にも関わらず、その部分には一切触れませんでした。地球温暖化問題を巡る欺瞞をこの社説も単純になぞっているということですね。

さらにいえば、原発は基本的に出力調整ができません。また、風力や太陽光発電も自然任せですからコントロールできる範囲が限られますし、発電できない状況も度々巡ってきます。少なくとも太陽光は夜間の発電ができません。冬場の電力需要は日没前後にピークを迎えますから、太陽光発電の比率を高めた場合、このタイミングを別の発電方法で補わなければなりません。しかも、以前から何度か示してきたように電力供給はその需要に見合ったレベルに制御しなければなりません。

電源の組み合わせ

原発に多くを依存するフランスも風力発電でかなりの電力を賄っているデンマークも隣国へ余剰電力を輸出しなければ帳尻が合わないというのが現状です。結局は出力調整が容易な石油火力や天然ガス火力などが調整代(しろ)とならなければ、上手くいかないということですね。自然エネルギー推進派の人たちはそうした一切合切を無視して盲目的に理想のイメージを膨らませているだけで、きちんと現実を見据えているようには見えません。

ところで、同じく昨日の朝日新聞の社説にはこんなことも書かれていました。

エコカー―低価格で普及に弾みを

 ガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド車が、ガソリン車と同じぐらいに安くなってきた。新しいクルマの世紀がいよいよ開く。

 ホンダが2月に発売した新型「インサイト」(排気量1.3リットル)は189万円だ。トヨタ自動車も対抗して、今月発売の3代目「プリウス」(1.8リットル)では、現行型より30万円近く安い205万円ほどに抑える。

 ハイブリッド車の燃費は軽自動車を上回り、二酸化炭素の排出量を大幅に減らすことができる。

 だが同クラスのガソリン車より数十万円割高で、買うのは環境志向の人に限られていただけに、低価格競争で普及に弾みがつくよう期待したい。

(後略)

(C)朝日新聞 2009年5月6日


何度も繰り返しになって恐縮ですが、ハイブリッドカーは電気モーターを制御するためにインバータなどの半導体を多用した装置を要し、生産時のエネルギー投入が普通のクルマより大きくなる分だけ、イニシャルにかかるCO2排出量が多くなる傾向があります。当blogでも「プリウスのジレンマ」と題したエントリで検討したように、生涯走行距離が短くなるほどアンチエコカーになる可能性が高くなるというわけですね。

朝日新聞はプリウスを買うのは「環境志向の人に限られていた」などといつもの思い込みで断言していますが、LCAで見ればプリウスもエコカーとして胸を張れるほど大したクルマでないことを私は看破しています。それ以前に私はCO2温暖化説にかなり否定的な立場で、「CO2排出量が少なければ環境負荷が小さくエコである」とする考え方は全く信じていません。

そもそも、ここで似非エコという偽善を厳しく批判してきましたが、私自身のライフスタイルは決して環境指向というわけではありません。私がプリウスを買った理由は、その凝ったメカニズムの面白さに惹かれたことと、原油価格の高騰が続いていた昨年、日常的に出て行く燃料代を抑えられるメリットを買ったからです。

私が時々利用する会社のクルマはパッソですが、あれは普通のガソリンエンジンに普通のトルコンATですが、思った以上に燃費が良く、高速なら20km/Lくらい、一般道でも頑張れば17km/L前後はいけます。下手な人が乗るハイブリッドカーにも遜色ないでしょう。ま、プリウスで培った省エネ走法を駆使してのハナシですから、誰でもというわけにはいかないかも知れません。こうした乗り手に依存する部分が大きいのは確かですが、パッソもLCAで見ればプリウスと大差ないかむしろ優れているかも知れません。

しかし、世間一般にはこうしたコンパクトカーも軽自動車もプリウスやインサイトなどのハイブリッドカーには劣ると見られているます。要するにランニングにかかる性能しか評価せず、イニシャルにかかる部分を無視してイメージをだけを膨らませているわけですね。この辺は先ほどの燃料精製や廃棄物処理を無視した原発のハナシと全く同じです。

朝日新聞の社説がいう「環境志向の人」とは、こうした断片で結論を得ようとする極めて短絡的な人たちで、自己満足に浸るだけの似非エコ信望者ということになるでしょう。少なくとも、朝日新聞の論説委員の「環境指向」はそういうレベルでしかありません。

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