酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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アルコールが覚醒剤のように効く人たち

以前にも取り上げたように朝日新聞は大相撲界で大麻汚染が問題になった折に以下のような莫迦げた社説を掲載しました。

 大麻などの薬物は、何かを達成したときに脳の中で満足感を生じる「報酬系」と呼ばれる部分に作用すると考えられている。いわば生きる活力を生む源泉に働いて、依存や異常を引き起こすのが違法薬物のこわさだ。

 身体への害が大きいたばこやアルコールと、単純に比較はできない。それぞれ、質の違う健康への脅威と考えるべきだ。


これを普通に読むと「アルコールは身体への害が大きく、精神的な依存や異常を引き起こす違法ドラッグとは違う」としか理解しようがありません。しかし、昨日のエントリで触れたデビッド・ハッセルホフ氏の事例を見ても、依存症という心の病においてアルコールと他の薬物とを区別する意味などないことが解ります。朝日新聞のような浅薄な認識がアルコール依存症に対する誤解を生み、偏見を広げるのです。

先月26日、フジテレビで放送された『エチカの鏡』という番組に漫画家の西原理恵子氏が出演していました。自殺した父親のことも語られていましたが、中心となったのは戦場カメラマンでアルコール依存症だったご主人、鴨志田穣氏との半生を綴った内容で、彼女はこのようなことを語っていました。

「アルコール依存症は本人が怠けているわけではなく、れっきとした病気。アルコールが人によっては覚醒剤のように効いてしまう」

彼女はこの番組の中で何度も「人によってアルコールは覚醒剤と同じ」との旨を唱え、アルコールの危険性を甘く見てはいけないことを重ねて述べていました。この病は本人がなかなか自覚を持てないゆえ、本人の意志だけで克服することは殆ど不可能だといいます。専門の医療機関に入るか、専門医の指導を受けながら家族の協力を得ながら、完全にアルコールを断って生涯それと決別しなければ何度でも同じことを繰り返してしまうそうです。

アルコールは違法ドラッグと違ってコンビニや駅の売店、街角の自販機でも簡単に入手できます。普通に生活していても仕事の打ち上げや冠婚葬祭など、振る舞われる機会が少なからず巡ってきます。しかし、一度アルコール依存症から立ち直った人でも再びアルコールを口にするとかなりの確率で元の木阿弥になってしまうといいます。つまり、生涯戦い続けなければならない病ということですが、違法ドラッグよりもずっと身近に沢山の誘惑が存在する分だけアルコール依存症の克服は難しいといえるかも知れません。

家族と共にこの難しい病と闘っている人がどれだけいるのか、その具体的な数字は解りませんでした。日本国内のアルコール依存症患者はWHOの算出方法で約230万人と推計されています(久里浜式アルコール症スクリーニングテストによる推計では427万人とされています)が、重度の依存症の割合がどれくらいかとか、詳しいデータには行き当たりませんでした。本人はもちろん、共に闘っている家族を含めれば、その数が決して少なくないのは確かだと思います。西原氏のあの言葉はこうした多くの人たちを代表する非常に重みのあるものだと感じました。

朝日新聞のあの愚かな社説は違法ドラッグを許さない意思を強調したかっただけなのかも知れません。そのためにアルコールなどの合法ドラッグと明確な線を引きたいと思ったのでしょう。しかし、それを書いた論説委員は一度依存症になってしまえばアルコールも違法ドラッグも全く同じものだという実態を知りませんでした。結果、こうした病と闘っている人たちの苦悩を踏みにじる社説になってしまったのです。

公称では毎日800万部を発行しているという大新聞の社説がこのような無知で罪深い内容になっているのは憂うべきことです。

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