酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

高速道路の値下げは逆モーダルシフトを引き起こした (その2)

ご存じのように、今年の大型連休は高速道路の利用者が増加しました。高速道路会社の集計によりますと、前年比で16.5%増となったそうです。昨年はガソリン価格が高騰していましたが、それでも平成19年比で1.2%しか減少していませんでした。ですから、今回の高速道路料金引き下げ効果は決して小さくなかったと見るべきでしょう。

逆に鉄道の利用者は前年比で約7%減とのことですから、この全てとはいえないまでも、かなりの人が自動車へ流れたと見て間違いないと思います。要するに、逆モーダルシフトとなってしまったわけですね。

ゴールデンウィークの曜日配列
一昨年は5月1日と2日を休業して9連休となるケースも
少なくなかったと思いますが、昨年も今年も前半が分散し、
旅客の移動には好条件と言い難かったかも知れません。
が、今年は後半が5連休となるケースが多かったでしょうから、
昨年よりはマシだったと言えるかも知れません。
それでも鉄道の利用者は減少してしまいました。


こうした人の流れの変化から高速道路のパーキングエリアなどでは売上を大幅に伸ばし、郊外型のショッピングモールも堅調だったといいます。金子国交相は「それなりの経済効果はあった」という見解を示していますが、駅の売店など鉄道に付随する商業施設は売上を落としているハズですから、それを差し引くとどの程度の効果があったのか不明瞭と言わざるを得ません。少なくとも、CO2排出量の削減という部分においては完全に逆行してしまったのは間違いないでしょう。

以前取り上げましたように、国交省のメールマガジンは高速道路の平日3割引が効いてCO2排出量の削減になるとする稚拙な読みをしていました。ま、本気でそう考えているのか、単なる方便なのかは解りませんが。いずれにしても、そもそもは「自動車の利用を促進する」という政策なのですから、こうした結果に至るのは当然のことです。

民主党のマニフェスト(←リンク先はPDFです)も「高速道路は、一部大都市を除いて無料とします」と謳う一方、「京都議定書の温室効果ガス6%削減の達成はもちろん、中期的には2020年までに1990年比20%、長期的には2050年よりも早い時期に50%の温室効果ガス排出量の削減をめざします。その際、人為的排出の削減を優先します」と謳っており、相反する要素を並べるという愚を犯しています。ついでにいうなら、1990年というのはEU諸国が強硬に主張する彼等にとって都合の良い基準年ですが(詳しくはコチラ)、民主党はその基準を何の疑いもなく採用している時点で彼等の術中にはまっているというべきかも知れません。

交通手段別旅客輸送量の国際比較
交通手段別旅客輸送量の国際比較
これは人口比ではなくグロスでの比較ですから、
人口が日本の半分ほどでしかないヨーロッパ各国と大差なく
また、エネルギー効率に優れた鉄道輸送の占める割合が大きい日本が
如何に少ないエネルギーで遣り繰りしているかが解ります。
大風呂敷を広げるばかりのEU諸国をイメージだけで崇拝するのは
いい加減にやめるべきです。


メディアも高速道路の値下げはCO2排出量削減に逆行するという点は認識しているようで、5月11日の毎日新聞の社説にもそうした点は触れられています。が、「今年は9月にも5連休がある。連休前後にも割引を行うなど、渋滞を緩和するための方策を検討してもらいたい。」などと本質が理解できておらず、かなり頓珍漢なことが書かれています。

各高速道路会社では先の大型連休で起こった渋滞原因の多くが事故によるものと分析していますから、交通集中の緩和だけで渋滞が防げるとは限りません。それ以前に、連休前後も割り引いたところで、本当に分散させることができるでしょうか? 既に仕事をリタイヤした高齢者や個別に仕事や学校を休む人は喜んで利用するでしょうが、そうした人たちが占める割合など全体から見れば微々たるものです。こんな現実を無視した発想で分散利用が進み、渋滞を緩和できると考えるのは、全く以て浅はかとしか言いようがありません。

また、この毎日新聞の社説は渋滞が起ったことがCO2の排出増加に繋がり、時代に逆行したとしか読めない点も問題です。仮に渋滞が起こらなかったとしても、鉄道による移動でも良いと考えている人を自動車に引き込むのは逆モーダルシフトとなり、やはりCO2排出削減に逆行するという考え方ができていないようです。こうした初歩的なことも理解できていない、ツッコミどころ満載の社説を載せるのは恥をさらすだけだと思うんですけどねぇ。

ま、私もクルマをよく利用しており、プリウスに買い替えたといってもその燃費の良さから走行距離は以前より格段に増えています。特に昨年の秋に左膝を痛めてからスポーツやレジャーとして自転車に乗る機会が減り、普段の足としても以前なら自転車を使っていたような距離をクルマにすることも増え、私個人も逆モーダルシフト状態になっていると認めざるを得ません。

私はレジ袋の利用を控えたり、ハイブリッドカーに乗っていたり、世間一般のイメージではCO2の排出を抑えるエコなライフスタイルと見られているかも知れません。が、そのイメージが根本的に間違っています。本質を捉えれば、私のライフスタイルは全くエコではありません。

ということで、私も偉そうなことを言える立場でないのは重々承知しています。それだけに先日の朝日新聞の社説にもみられるような、ハイブリッドカーに乗っている人は「環境指向」とする認識は、私にとって心外なことです。あえていうなら、偽善的なエコミーハーと同列に見られることに嫌悪すら感じます。

政治家や官僚やメディアなどの多くは物事を深く理解していないのか、理解していながら安易にダブルスタンダードを許容しているのか、いずれにしても環境問題に関して支離滅裂な主張を繰り返しています。ここで取り上げたようにクルマの利用を拡大するような高速道路料金の値下げ政策を示しながら、一方ではCO2排出量の削減を唱えるこの分裂状態を看過すべきではありません。私のように非を認めてしまえば、偽善とは言えなくなるだけマシだと考えるべきなのです。

エコカー(何処まで本当にエコなのか解りませんが)に対する減税は、あの偽善的なトヨタの「エコ替え」を国策的に推進するものです。明日から始まる(未定だらけで訳のわからない)家電のエコポイント制度も全く同様ですが、要するに「エコ」という聞こえの良い言葉を使って国内の個人消費を掘り起こすのが本当の狙いで、自動車や家電製品を生産する際に生じる環境負荷を無視した似非エコロジーであるという現実にやっている本人達が何処まで気付いているのかが問題です。

私の周囲にも「最近はあまり乗らなくなったのでクルマを手放そうか?」と考えている人はいます。カーシェアリングというシステムはこうした人たちに支持されて急拡大しているのは前回触れたとおりです。こうしたクルマを手放そうとしている人たちに対して、例えば、これまで支払ってきた税金を還付し、それを促す政策を展開したほうが、代替を促すより遙かに「環境指向」であるのは間違いありません。

本当に環境のことを考えてクルマを手放す決心をした人たちには何一つメリットがない政策を「環境指向」などと有り難がる人は、世の中の仕組みを理解していない己の無知を恥じるべきです。プリウスのようなクルマを持つ私のような人間より、クルマを持たない人のほうが遙かにエコなライフスタイルであるという事実を正しく認識しなければ、いつまで経ってもイメージ先行の似非エコブームから抜け出すことはできません。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/394-9695e8fc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。