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GMは小型車に消極的ではなかった (その1)

ご存じのように最近まで世界一の自動車メーカーだったゼネラル・モーターズ(以下GM)が連邦破産法の適用を申請し、経営破綻しました。この超大型倒産について各紙とも社説で論評を展開していますが、やはり彼等の認識は燃費の悪いSUVなどに傾倒していたというもので、小型車に消極的だったことが破綻に至った主因とする論調が支配的です。

特にこの点に関する勘違いが酷いのは日本経済新聞の社説です。

GMなど米国車の弱みがあらわになったのは1970年代の2度の石油ショックだ。燃費のいい小型車の人気が高まったが、「小さいクルマは利益も小さい」として小型車を軽視してきた米国車メーカーは対応が遅れた。


確かに、直近においては収益率のアップとシェアの回復を期してGMがピックアップやSVUに投資してきたのは確かです。が、オイルショック以来「小型車を軽視してきた」というのは正しくありません。特にGMは大宇やスズキなどからのOEM車を北米市場でもシボレーブランドで販売してきましたが、その成果は決して悪いものではありませんでした。そのシボレーはキャデラックと並ぶ採算部門で、今般の再建でも中心と位置付けられています。今後の成否の鍵を握る最も重要なブランドと見るべきかも知れません。

過去においてもGMは小型車マーケットに切り込むべく、様々なアプローチを試みてきました。例えば、「サターン」というブランドは北米市場に台頭してきた日欧の中小型車対策として立ち上げられたもので、2000cc前後の(アメ車としては小排気量の)ベーシックカーを展開してきました。が、今般のリストラ策ではポンティアックなどと共に不採算部門として切り捨てられることが決まっています。

また、彼らはシボレーの代理店を通じて「ジオ」というブランドを展開していました。このジオというのはGMがトヨタと合弁で設立した「ヌーミ(NUMMI)」で生産したプリズム(スプリンターがベース)や、スズキとGMカナダの合弁会社「カミ(CAMI)」で生産したトラッカー(日本名エスクード)、いすゞで生産したストーム(日本名PAネロ)など、OEMやそれに近い車種を軸としていました。

このプロジェクトの狙いは、日本のメーカーと手を組んでカンバン方式などの管理技術と小型車の生産手法を学び、そのマーケティングを経験し、小型車市場において、特に若年層をターゲットとした競争力を高めようというものだったわけですね。逆に、GMと合弁会社を設立したトヨタやスズキは北米での現地生産を行うに当たって、その叩き台にする意向もあったようで、各々の思惑が一致していたと見るべきでしょう。

ジオブランドそのものは1989~97年で終了していますが、一部の車種はその後もシボレーブランドでの販売が続けられてきました。2004年にトラッカーの打ち切りを以てその直系のラインナップは消滅していますが、上述のようにシボレーブランドでスズキや大宇などのOEM車が販売されるビジネスモデルは受け継がれています。また、生産拠点のヌーミもカミも健在です(ま、今後どうなるかは予断を許しませんけど)。

1980年代にメルセデスが190EをBMWが3シリーズを展開したように、キャデラックもシマロンという小型車を投入しています。190Eは「小(こ)ベンツ」3シリーズは「六本木のカローラ」などと日本でも投入された当初は散々揶揄されたものですが、これらのドイツ車はそれなりに良く纏まっており、190Eは後にCクラスとして、3シリーズはいまも同じシリーズ名で主力を担うラインナップを形成しています(今日ではかなり肥大化してしまいましたけどね)。

一方、シマロンという小型キャデラックは、前輪駆動のJプラットフォームに1835ccの直列4気筒OHVエンジン(88ps)という、要するにシボレー・キャバリエと同じコンポーネンツで成り立っていました。これにキャデラックのエンブレムとそれらしきボディを与え、オプションで本革シートなどの高級装備も選べるようにしていただけで、メルセデスやBMWなどのように本格的な作り込みが成されていたわけではありません。こうした安普請をユーザーに見透かされてしまったのが僅か6年という短命に終わった原因でしょう。

キャデラック・シマロン
Cadillac Cimarron
全長4,392mm、全幅1,694mmですから、
現在のカローラ・アクシオよりも僅かに小さいボディサイズになります。
メカニカルコンポーネンツはキャバリエとほぼ同じものでしたが、
贅沢なオプションをフル装備すると、価格はその2倍にも達したそうです。
さすがに直4ではチープということでV6も追加されましたが、
それからあまり時間を置かずに生産が打ち切られました。


サターンはそれほど上手くいっていなかったなりにも何だかんだと四半世紀近く存続してきましたが、キャデラックの小型車路線はブランド価値を損なう危険もありましたから、早々に見切りを付けたといったところでしょうか。ジオというプロジェクトに関してはヌーミやカミで日本式の生産手法を学んだという一面もありますから、商業的な失敗を以て全てが無意味だったとは言えないでしょう。

日本の大衆メディアの多くはGMがこのように小型車市場へ様々な形でアプローチを試みてきた経緯を知りません。ただガソリンをがぶ飲みするSUVばかりを作ってきたと思い込んでいる彼等がGMの経営悪化のプロセスを正しく理解できていないのは明らかです。日経が言うように「軽視」してきたわけではなく、やり方があまり上手ではなかったゆえ、マーケットを掴むことができなかったと見るべきでしょう。そういう意味では、朝日新聞の社説で述べられている

燃費のいい小型車を作ることが不得手だった。


という一文は「取り組んでは来たものの上手くいかなかった」という様子を窺わせる表現になっていますから、そこそこマトモな(朝日新聞にしては上出来というべき)捉え方ができていると言えるでしょう(たまたまそう読める書きぶりになっただけかも知れませんが)。

(つづく)

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