酒と蘊蓄の日々

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出生率が上がらない本当の理由 (その1)

先週発表された統計で日本の出生率が若干上がったことが話題になり、4日の読売新聞と毎日新聞、5日の産経新聞、昨日も朝日新聞と日本経済新聞が社説で取り上げていましたね。いずれも「子育て支援はまだまだ不充分」「さらなる国家的な対策が必要」といった論調で、目新しいことは何一つ書かれていませんでしたけど。

少子化の原因としてよく言われるのは女性の社会進出による晩婚・未婚の増加、あるいは晩産化、高学歴化による養育コストの増加、ワーキングプアの問題、日本では婚外子を忌避する文化が根強いことから社会制度などの面で不利といったものなど様々です。が、どれも一次的な原因というより二次的な原因だったり、枝葉に属するものといった印象です。

特に婚外子を巡る問題は大した原因といえないでしょう。実際、婚外子も婚内子と同等に扱われる制度が整っているフランスでさえ1994年には1.65まで下がっており、現在は2.00を僅かに超えていますが、それは国や企業が手厚い支援を実施するようになったからです。日本では婚外子の割合が欧米諸国に比べて圧倒的に少ないのも確かですが、ここ20年ほどで2倍以上に増えていますから、「結婚できないから子供も産まない」と考える人は日本でも着実に減っています。また、一部には未婚のシングルマザーという生き方が美化されることもあるくらいです。

私は少子化に向かおうとする根源が一般的によく語られている上述のような原因説の中には含まれていないと考えています。かなりの予算が投じられていながら国や地方自治体の少子化対策があまり上手くいっていないのも、その辺の読みが間違っているからだと思います。では、そのあまり語られることのない根源とは何でしょうか? これは出生率が高い国と低い国を比較してみれば見えてくるでしょう。

フランスやアメリカなどは先進国として珍しく2.00を超える出生率を維持しています。が、1人の女性が2人生んだだけではこの水準は維持できません。子供を産む年齢に達する前に病気やケガなどで亡くなってしまう人もいますし、不妊症で子供が欲しくてもつくれない人もいますし、何の問題がなくても様々な理由や巡り合わせで子供を産まない人も少なからずいます。

ですから、子供を産める女性が2人以下しか子供を産まないのであれば出生率が2.00を上回ることはありませんし、人口減少の傾向から逃れることもできません(平均寿命が伸びて減少分が相殺されたり、移民を受け入れたりすればハナシは別ですが)。こうしてみますと、主要な先進国で楽観できる国は非常に少ないと思われます。

高福祉国家というイメージが強いスウェーデンも1980年代に1.6台まで下げたことから政府による支援で一時は2.0台に乗せました。しかし、財政悪化に伴う各種手当ての一部廃止や減額などで2000年には1.5台まで急落し、その後さらなる体制の見直しで再び上昇に転じ、2006年には1.85まで戻しました。要するにスウェーデンのケースも国家支援に大きく左右される格好になっており、自然に少子化が解消されるような方向付けをすることは非常に困難であるという現実を示しているように思います。

他のヨーロッパ諸国も似たり寄ったりで、ドイツやイタリアは日本と大差ない1.3台、イギリスやオランダの1.7台後半も決して高い出生率とは言えませんが、先進国の中では比較的マシな方といったところでしょうか。

一方、出生率が高い国を見てみますと、東ティモールやニジェールの7.8、アフガニスタンの7.4、ウガンダの7.1、マリやリベリアなどの6.8などとなっています。いずれも内戦や貧困に喘ぐ国ばかりといった感じで、先進国のような高福祉とは無縁です。ま、こうした異常に出生率が高い国は成人になるまでの死亡率が高いとか、特殊な事情も少なくないようですが、おしなべて見ますと、高福祉で社会保障が充実した先進国のほうが出生率が低い傾向にあるのは明らかです。

出生率が高い国に共通しているのは、「子供を沢山生み育てて労働力を確保しないと一家の生活が成り立ちにくい」とか、「国や社会が老後の面倒を見てくれない」といった状況が挙げられます。要するに、社会が支えてくれない以上、自分の子や孫たちに支えてもらわないと生活が困窮してしまったり、老後の生活が破綻してしまうということですね。こうした状況に甘んじている国は例外なく出生率が高くなっています。かつての日本もそうでした。

ただ、労働力として沢山の子供を抱えていても、そこは零細な事業経営と同じですから、様々な理由で(煎じ詰めれば経済的な理由ですが)養いきれなくなることは充分にあり得ます。そうしたときは子殺しが行われたり、人身売買などが行われたりといったことが多くの国で見られました。

もちろん、「口減らし」という言葉がある日本も例外ではなく、かつては子殺しも行われていましたし、身売り同然の年季奉公などは第二次大戦が終わってGHQによる法整備が成されるまで決して珍しいことではありませんでした。NHKの連ドラ『おしん』でも明治から昭和を生きた主人公が数え年で7歳のとき、材木屋へ奉公に出されたのは皆さんもよくご存じのことと思います。

経済が発展し、暮らしが安定すれば一家を支える労働力として子供を増やす必要もなくなりますし、何より公的年金や医療制度、介護制度などが整備され、高齢者を社会全体が支えようとする福祉政策が充実してくると、自分の子供に面倒を見てもらわなくても良いという状況になります。要するに、現在の日本や他の主要先進国では子供がいないという状態が自分たちの暮らしにとってかつてほど切実な問題ではなくなっているわけです。

(つづく)

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